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第181話 邪神ちゃんと意外な依頼
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薬草園の一角に建てられた建物で、レイドたち四人はドラコと一緒に紅茶を飲んでいる。強大な古龍であるドラコは、見た目こそ幼女ではあるものの、実力はレイドたちをはるかに凌ぐ存在だ。そんな彼女を目の前に、レイドたちは平静を保てるわけもなかった。
「え……と……、俺たちに用とは一体……」
おそるおそるドラコに尋ねるレイド。すると、ドラコは紅茶を口に含み、口を開いた。
「それはじゃな……」
ドラコがもったいぶる。それに合わせるようにレイドたちは息を飲む。
「この薬草園で使う肥料を手に入れてもらいたいんじゃ。わしが行けば一瞬で済むのじゃが、いかんせん、ここの薬草はデリケートでのう。あまり離れるわけにはいかんのでおぬしらに依頼をしようというわけじゃ」
「えっ、それでそれで、何を持ってくればいいのさ」
ピックルの食いつきが凄い。彼女は冒険ができれば文句はなさそうである。
「おい、内容だけなら採集依頼だぞ。なんでお前がそんなにはしゃいでるんだよ」
「んー、冒険のにおいをバシバシ感じるのさ。あたしの勘だけどね」
レイドのツッコミにピックルは浮かれ気味に答えている。グルーンとブルムは、何も言うまいと黙って見ている。
「かっかっかっ、いい勘をしておるのう」
ピックルの反応にドラコは、けらっけらと笑っている。その瞬間、ピックル以外の三人に悪寒が走る。嫌な予感がしたのだ。
「おい、ピックル。この依頼、断った方がいいぞ」
「なんでさ。あたし、すごくわくわくしてるんだけど?」
ピックルはまったく動じていない。まったく肝が据わっているというか、ただの能天気というか、不思議な感じがするサポーターである。
「薬草の肥料というのがな、魔物から取れる素材なんじゃよ。だからこそ、野生で育つばかりで人工的に栽培がなされぬというわけじゃよ」
レイドたちはごくりと息を飲む。
「わしが指定する魔物を狩ってきてもらいたい。なに、ちゃんと優秀なガイドもつけるから安心せい。なあ、フェリス」
ドラコがそう言うと、奥からひょっこりとフェリスが姿を現す。ものすごく嫌な顔をしているのはご愛敬である。
「フェリっち!」
ピックルが目を輝かせている。さすがはモフラー、反応が人一倍大きい。
「くそう、フェリっちが居るのに気が付かないなんて、モフラーとしての矜持が許さぬ、ぐぬぬぬぬ……」
フェリスが居る事に気が付かなかったピックルが、歯を食いしばっている。これだからもふ狂いは……。ちなみに悔しがるピックルを、フェリスがゴミを見るような目で見ている。できれば二度と会いたくない相手だったから、この反応も仕方のない事なのだ。
「それでじゃ、引き受けてくれるかの?」
「おこと……」
「引き受けますーっ!」
「おい、ピックル!」
レイドが断ろうとすると、ピックルが立ち上がって大声で了承する。グルーンが即ツッコミを入れて、ブルムは隣で頭を抱えていた。ピックルはフェリスと一緒に行動できると知って、ものすごく鼻息を荒くしていたのだ。それはもう頭を抱えるのがよく分かるというものである。
「まあ、慌てるな。とにかく、どんな魔物を相手にするのか聞いてからでもよかろう?」
「確かにそうだな。それを聞いてから判断してもいいか」
ドラコの言い分に、グルーンは冷静に納得していた。
「では、そこの浮かれた小娘は放っておいて話を始めるぞ」
ドラコはピックルの舞を無視してレイドたちに依頼内容を話し始めた。
「薬草はその土地に含む養分ではなくて魔力を吸収して成長する特徴がある。肥料を与えても普通の草でしかなく、効果を高めるには魔力を含んだものを与えるがよいとされておる」
「なるほど。だから、傷をあんなにあっさり治す事も出来たりするわけですね」
ドラコの説明で、ブルムはあっさり納得をしている。
「わしの鱗を砕いて与えてもいいのじゃが、それでは魔力が強すぎて、逆に枯れる可能性がある。植物でもあるじゃろう、水を与えすぎて根腐れを起こす、あんな感じになるんじゃよ」
レイドたちは納得しかなかった。
「ここに植えられた薬草類のレベルは低い。となると、せいぜい中級クラスの魔物までの魔力しか与えられん。街で飼っておるクルークでは魔力が少なすぎるしな」
黙って説明を聞くレイドたち。気が付いたらピックルも座って一緒に話を聞いていた。
「そこで、お前さんたちに討伐を依頼するのは、この街の上流にある森に棲むアクアバットの討伐じゃ。奴の牙と魔石なら、いい肥料になるじゃろうて」
「ちょっと待ってよ、そこってマイムの領域よ。勝手にそんな事をして済むと思ってるの?」
「なんでおぬしを送り込むと思っておる。わしがそんなに浅慮と思うてか」
「ぐぬうっ!」
ドラコの言い分に、フェリスは言葉を詰まらせる。
「えっと、そのマイムというのは?」
「マイムというのはわしらの知り合いの水の精霊じゃ。さっき言った森の泉に住んでおる。あの森はあやつの領域じゃからな、そのせいもあって水属性の力にあふれておる」
ここまで言うと、ドラコはにやりと悪い笑みを浮かべていた。
「その森で素材を採集するという事は、肥料と同時に薬草に与える水分も得られるという事じゃ。それに、そこそこの強さもある間もじゃからな、お前さんたちの鍛錬にもなる。どうじゃ、一石三鳥じゃろう?」
そう話すドラコの様子に、レイドたちはすっかり飲み込まれそうになってしまった。
しかし、確かにおいしい話ではある。
「フェリスもついていくから、そこまで危険でもないさ。別に無理強いはせんぞ」
「いえ、やらせて下さい」
ドラコがすました顔で煽るように言うと、レイドたちからは間髪入れずに了承の返事があるのだった。
「え……と……、俺たちに用とは一体……」
おそるおそるドラコに尋ねるレイド。すると、ドラコは紅茶を口に含み、口を開いた。
「それはじゃな……」
ドラコがもったいぶる。それに合わせるようにレイドたちは息を飲む。
「この薬草園で使う肥料を手に入れてもらいたいんじゃ。わしが行けば一瞬で済むのじゃが、いかんせん、ここの薬草はデリケートでのう。あまり離れるわけにはいかんのでおぬしらに依頼をしようというわけじゃ」
「えっ、それでそれで、何を持ってくればいいのさ」
ピックルの食いつきが凄い。彼女は冒険ができれば文句はなさそうである。
「おい、内容だけなら採集依頼だぞ。なんでお前がそんなにはしゃいでるんだよ」
「んー、冒険のにおいをバシバシ感じるのさ。あたしの勘だけどね」
レイドのツッコミにピックルは浮かれ気味に答えている。グルーンとブルムは、何も言うまいと黙って見ている。
「かっかっかっ、いい勘をしておるのう」
ピックルの反応にドラコは、けらっけらと笑っている。その瞬間、ピックル以外の三人に悪寒が走る。嫌な予感がしたのだ。
「おい、ピックル。この依頼、断った方がいいぞ」
「なんでさ。あたし、すごくわくわくしてるんだけど?」
ピックルはまったく動じていない。まったく肝が据わっているというか、ただの能天気というか、不思議な感じがするサポーターである。
「薬草の肥料というのがな、魔物から取れる素材なんじゃよ。だからこそ、野生で育つばかりで人工的に栽培がなされぬというわけじゃよ」
レイドたちはごくりと息を飲む。
「わしが指定する魔物を狩ってきてもらいたい。なに、ちゃんと優秀なガイドもつけるから安心せい。なあ、フェリス」
ドラコがそう言うと、奥からひょっこりとフェリスが姿を現す。ものすごく嫌な顔をしているのはご愛敬である。
「フェリっち!」
ピックルが目を輝かせている。さすがはモフラー、反応が人一倍大きい。
「くそう、フェリっちが居るのに気が付かないなんて、モフラーとしての矜持が許さぬ、ぐぬぬぬぬ……」
フェリスが居る事に気が付かなかったピックルが、歯を食いしばっている。これだからもふ狂いは……。ちなみに悔しがるピックルを、フェリスがゴミを見るような目で見ている。できれば二度と会いたくない相手だったから、この反応も仕方のない事なのだ。
「それでじゃ、引き受けてくれるかの?」
「おこと……」
「引き受けますーっ!」
「おい、ピックル!」
レイドが断ろうとすると、ピックルが立ち上がって大声で了承する。グルーンが即ツッコミを入れて、ブルムは隣で頭を抱えていた。ピックルはフェリスと一緒に行動できると知って、ものすごく鼻息を荒くしていたのだ。それはもう頭を抱えるのがよく分かるというものである。
「まあ、慌てるな。とにかく、どんな魔物を相手にするのか聞いてからでもよかろう?」
「確かにそうだな。それを聞いてから判断してもいいか」
ドラコの言い分に、グルーンは冷静に納得していた。
「では、そこの浮かれた小娘は放っておいて話を始めるぞ」
ドラコはピックルの舞を無視してレイドたちに依頼内容を話し始めた。
「薬草はその土地に含む養分ではなくて魔力を吸収して成長する特徴がある。肥料を与えても普通の草でしかなく、効果を高めるには魔力を含んだものを与えるがよいとされておる」
「なるほど。だから、傷をあんなにあっさり治す事も出来たりするわけですね」
ドラコの説明で、ブルムはあっさり納得をしている。
「わしの鱗を砕いて与えてもいいのじゃが、それでは魔力が強すぎて、逆に枯れる可能性がある。植物でもあるじゃろう、水を与えすぎて根腐れを起こす、あんな感じになるんじゃよ」
レイドたちは納得しかなかった。
「ここに植えられた薬草類のレベルは低い。となると、せいぜい中級クラスの魔物までの魔力しか与えられん。街で飼っておるクルークでは魔力が少なすぎるしな」
黙って説明を聞くレイドたち。気が付いたらピックルも座って一緒に話を聞いていた。
「そこで、お前さんたちに討伐を依頼するのは、この街の上流にある森に棲むアクアバットの討伐じゃ。奴の牙と魔石なら、いい肥料になるじゃろうて」
「ちょっと待ってよ、そこってマイムの領域よ。勝手にそんな事をして済むと思ってるの?」
「なんでおぬしを送り込むと思っておる。わしがそんなに浅慮と思うてか」
「ぐぬうっ!」
ドラコの言い分に、フェリスは言葉を詰まらせる。
「えっと、そのマイムというのは?」
「マイムというのはわしらの知り合いの水の精霊じゃ。さっき言った森の泉に住んでおる。あの森はあやつの領域じゃからな、そのせいもあって水属性の力にあふれておる」
ここまで言うと、ドラコはにやりと悪い笑みを浮かべていた。
「その森で素材を採集するという事は、肥料と同時に薬草に与える水分も得られるという事じゃ。それに、そこそこの強さもある間もじゃからな、お前さんたちの鍛錬にもなる。どうじゃ、一石三鳥じゃろう?」
そう話すドラコの様子に、レイドたちはすっかり飲み込まれそうになってしまった。
しかし、確かにおいしい話ではある。
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