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第178話 邪神ちゃんと薬草園
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ドラコがモスレに出掛けていた間、フェリスもフェリスでいつも通り活動していた。その間は特にメルに対してべったりしていた。なにせここのところ構ってあげられなかったからだ。あれだけピックルに対して嫌がっていた肉球へ触れたり、全身をもふもふさせたりというのも、メルには気兼ねなく心ゆくまでさせていた。これが忠臣たる眷属の特権なのである。
メルと一緒にクレアールやフェリスメルをじっくり見て回っている。それが責任者たる務めなのである。特にクレアールに関してはアファカとヘンネにこっぴどく言われたので、念入りに見て回るくらいだった。
それにしても、ちょっと離れたクレアールに行くにしても、メルはまったく文句を言わない。完全にフェリスに懐いているので、フェリスと一緒に居られるだけで嬉しいのだ。本当にメルは、フェリスの事が好きすぎるのである。
クレアールに出向いたフェリスは、中心部から離れた畑にヘンネとゼニスの姿を見つけた。
「おーい、ヘンネー! ゼニスさんもいらっしゃるんですね」
フェリスは大声で呼びかけて畑へと近付いていく。
「ああ、フェリス。不用意にそこら辺の草に触らないで下さいね。あなたの能力は無意識に発動する事が多いんですから」
「何よ、いきなりひどいわね」
フェリスの呼び掛けに反応したヘンネからの言葉に、フェリスはぷんすかと怒っている。
「あの、ここで一体何をなさってられるのですか?」
ヘンネたちの様子を見たメルが、おそるおそる尋ねている。
「ええとですね。コネッホたち錬金術師や薬師たちの使う薬草を育てているんですよ。まだ飢えたばかりなので殺風景ですけれどね」
フェリスたちが畑を見ると、確かに目の前には草を育てるための畝がたくさん広がるばかりで、草の一本も見当たらなかった。
「あー確かに、薬草の確保自体はコネッホも苦戦しているようだったものね。そういえば、薬とか作るのは好きだけれど、その材料を自分で集めようなんていうのはあまりしなかったわね……」
フェリスは昔の様子を思い出しながら、腕を組んで肘を指でトントンと叩いていた。
というわけでこの目の前に広がる畑というわけだ。現状は冒険者たちに頼んで集めてもらっている薬草を、自前で集められるようにするのである。よく使う初級、下級のポーションはいくらあっても足りないわけだし、薬草を育てればクレアールの名にふさわしい名産となりうるのだ。フェリスは真剣に畑を見ている。
「フェリス、真剣に見るのは構わないけれど、くれぐれも地面には触れないで下さいね。いいですか、絶対ですよ」
「わ、分かったわよ……」
ヘンネが目を血走らせてフェリスに迫っている。さすがにこれだけの剣幕を見せられてしまえば、フェリスも了承せざるを得なかった。その様子を、メルは苦笑いをしながら眺める事しかできなかった。
ランクの低いポーション用の薬草の成長は速いので、まあフェリスが手を出さなくてもひと月からふた月で収穫できるようになる。その一方で、育て方は一筋縄ではいかないという特徴があるのだ。このような普通の畑で育つかどうかというのは、地味に初めての試みなのである。この辺りはヘンネの記憶にもないので、完全に手探りだ。だからこそ、フェリスのとんでも能力を入り込ませたくないのである。
「ねえ、触らなくても鑑定くらいはいいでしょう?」
ところが、フェリスもここで引き下がる事はしなかった。散々責任だのなんだの言われたのだから、それを果たそうと考えたからだ。
「まあ、それくらいはいいですよ」
ヘンネからの許可が出た事で、フェリスは地面に植えられた若芽たちに鑑定魔法を発動する。すると、薬草の詳しい情報が浮かび上がる。フェリスはその情報を固定化して、ヘンネたちにも見えるようにする。こういう情報は商人たちの方が詳しいだろうから、フェリスはそのようにしたのだ。
「どれどれ?」
ヘンネとゼニスがその鑑定結果を覗き込んでいる。
「ふむ、全部が同じ薬草というわけではないのですね」
「芽が出たばかりの若芽では、区別をつけるのが難しいから仕方ないでしょうね」
どうやら、違う種類の草が紛れ込んでいたようだった。
「違う種類の草はどれ? 一か所にまとめておかないと面倒だから、フェリス、教えてちょうだい」
ヘンネとゼニスが動き出す。しかし、フェリスには絶対触るなと再度言い聞かせていた。その代わり、メルに手伝わさせている。フェリスは不機嫌を浮かべながらも、鑑定魔法を使って違う種類の草を指摘していく。そして、無事に植え替えが終わると、その種類を書き記した札と、境界を示すために仕切りを作っていた。
「ふぅ、助かったわよ、フェリス」
「ふふん、あたしだってちゃんと役に立つんだからね!」
ここまでのヘンネからの扱いに抗議するように、フェリスは渾身のドヤ顔を決めていた。
「まったく、フェリスはすぐ調子に乗るんだから……。まあ、今回は役に立ったから感謝しますけれどね」
フェリスの態度に、ヘンネは呆れてため息を漏らすばかりだった。
こうして始まったクレアールでの薬草栽培。はたしてクレアールの目玉として定着する事ができるのだろうか。
メルと一緒にクレアールやフェリスメルをじっくり見て回っている。それが責任者たる務めなのである。特にクレアールに関してはアファカとヘンネにこっぴどく言われたので、念入りに見て回るくらいだった。
それにしても、ちょっと離れたクレアールに行くにしても、メルはまったく文句を言わない。完全にフェリスに懐いているので、フェリスと一緒に居られるだけで嬉しいのだ。本当にメルは、フェリスの事が好きすぎるのである。
クレアールに出向いたフェリスは、中心部から離れた畑にヘンネとゼニスの姿を見つけた。
「おーい、ヘンネー! ゼニスさんもいらっしゃるんですね」
フェリスは大声で呼びかけて畑へと近付いていく。
「ああ、フェリス。不用意にそこら辺の草に触らないで下さいね。あなたの能力は無意識に発動する事が多いんですから」
「何よ、いきなりひどいわね」
フェリスの呼び掛けに反応したヘンネからの言葉に、フェリスはぷんすかと怒っている。
「あの、ここで一体何をなさってられるのですか?」
ヘンネたちの様子を見たメルが、おそるおそる尋ねている。
「ええとですね。コネッホたち錬金術師や薬師たちの使う薬草を育てているんですよ。まだ飢えたばかりなので殺風景ですけれどね」
フェリスたちが畑を見ると、確かに目の前には草を育てるための畝がたくさん広がるばかりで、草の一本も見当たらなかった。
「あー確かに、薬草の確保自体はコネッホも苦戦しているようだったものね。そういえば、薬とか作るのは好きだけれど、その材料を自分で集めようなんていうのはあまりしなかったわね……」
フェリスは昔の様子を思い出しながら、腕を組んで肘を指でトントンと叩いていた。
というわけでこの目の前に広がる畑というわけだ。現状は冒険者たちに頼んで集めてもらっている薬草を、自前で集められるようにするのである。よく使う初級、下級のポーションはいくらあっても足りないわけだし、薬草を育てればクレアールの名にふさわしい名産となりうるのだ。フェリスは真剣に畑を見ている。
「フェリス、真剣に見るのは構わないけれど、くれぐれも地面には触れないで下さいね。いいですか、絶対ですよ」
「わ、分かったわよ……」
ヘンネが目を血走らせてフェリスに迫っている。さすがにこれだけの剣幕を見せられてしまえば、フェリスも了承せざるを得なかった。その様子を、メルは苦笑いをしながら眺める事しかできなかった。
ランクの低いポーション用の薬草の成長は速いので、まあフェリスが手を出さなくてもひと月からふた月で収穫できるようになる。その一方で、育て方は一筋縄ではいかないという特徴があるのだ。このような普通の畑で育つかどうかというのは、地味に初めての試みなのである。この辺りはヘンネの記憶にもないので、完全に手探りだ。だからこそ、フェリスのとんでも能力を入り込ませたくないのである。
「ねえ、触らなくても鑑定くらいはいいでしょう?」
ところが、フェリスもここで引き下がる事はしなかった。散々責任だのなんだの言われたのだから、それを果たそうと考えたからだ。
「まあ、それくらいはいいですよ」
ヘンネからの許可が出た事で、フェリスは地面に植えられた若芽たちに鑑定魔法を発動する。すると、薬草の詳しい情報が浮かび上がる。フェリスはその情報を固定化して、ヘンネたちにも見えるようにする。こういう情報は商人たちの方が詳しいだろうから、フェリスはそのようにしたのだ。
「どれどれ?」
ヘンネとゼニスがその鑑定結果を覗き込んでいる。
「ふむ、全部が同じ薬草というわけではないのですね」
「芽が出たばかりの若芽では、区別をつけるのが難しいから仕方ないでしょうね」
どうやら、違う種類の草が紛れ込んでいたようだった。
「違う種類の草はどれ? 一か所にまとめておかないと面倒だから、フェリス、教えてちょうだい」
ヘンネとゼニスが動き出す。しかし、フェリスには絶対触るなと再度言い聞かせていた。その代わり、メルに手伝わさせている。フェリスは不機嫌を浮かべながらも、鑑定魔法を使って違う種類の草を指摘していく。そして、無事に植え替えが終わると、その種類を書き記した札と、境界を示すために仕切りを作っていた。
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ここまでのヘンネからの扱いに抗議するように、フェリスは渾身のドヤ顔を決めていた。
「まったく、フェリスはすぐ調子に乗るんだから……。まあ、今回は役に立ったから感謝しますけれどね」
フェリスの態度に、ヘンネは呆れてため息を漏らすばかりだった。
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