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第167話 邪神ちゃんの街への帰還
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「なるほどね。組合で新しい街の事を聞いて、向かっている最中だったのね」
冒険者たちの話を聞いたフェリスは、ふむふむと頷きながら話を聞いていた。
「かっかっかっかっかっ、おぬしらは運がよかったのう。わしらもちょうどそっちに向かっておったところじゃ」
いつも以上に上機嫌に笑うドラコ。その笑いっぷりに冒険者たちは体をぴくりと震わせた。そのくらいにドラコというのは強大な存在なのである。
だが、目の前に居るフェリスもドラコも、自分たちとは敵対しそうにない雰囲気を漂わせている。それでいて目的地が同じというのであるなら、この冒険者たちに選択肢はないように思える。冒険者たちは慎重に話し合った結果、フェリスと一緒にドラコの背に乗って、新しい街まで移動する事になったのだった。
「うひゃーっ! 高えっ!」
空を飛ぶドラコの背で騒ぐ冒険者。
「これあまり激しく動くでない。落っこちても知らんぞ」
ドラコが叱ると、冒険者はおとなしくなった。いくら鍛えているとはいっても、この高さから落ちればただでは済まないだろう。
そんな中、フェリスがふと思い出して四人に尋ねる。
「そういえば、あなたたちの名前をまだ聞いてなかったわね。あたしたちだけに名乗らせてそのままだなんて、あり得ないわよ?」
フェリスが四人を見ながらチクリと棘のある言葉を放つ。さすがにこう言われてしまえば、四人もこのままというわけにはいかなかった。なにせ相手はものすごく強い魔族なのだから、下手に逆らえないのである。
「す、すまなかった。俺はこのパーティーのリーダーのレイドだ」
「俺はタンクをしているグルーンという」
「私は魔法使いのブルム」
「あたしは、サポーターのピックルというの」
前衛職は男性、後衛職は女性という、よくある組み合わせの冒険者たちだった。それにしても、治癒師ではなく、支援職と名乗るのは珍しい。
「ふむ、もっと話を聞きたいところじゃが、どうやらもう着いたようじゃぞ」
名前を聞いたところで下を見てみると、そこには確かに、フェリスが思い付きで整備した街が見えてきていた。
「もう着いたのか……」
「ドラゴンってこんなに飛ぶのが速かったのね」
「かっかっかっ、ここからならセンティアやモスレなども1日もあれば着けるぞ。古龍の力を舐めてくれるな」
レイドたちがぽつりとこぼした言葉に、ドラコはしっかりと反応をしていた。これには冒険者たちは更なる恐怖を感じたのだった。
「震えるのは構わんが、これから着陸するからな。舌を噛んでも知らんぞ?」
「そうそう、ドラコの着陸は気分次第じゃ荒れるからね。覚悟なさいよ?」
くすくすとドラコとフェリスがレイドたちを脅す。
そんな中、ドラコが一気に降下を始めて、地面が思わぬスピードで迫ってくる。だが、ドラコが一度翼をはためかせると、すっと減速して静かに地面に降り立った。ところが、感動の着地だというのに、冒険者たちは目を回していた。
「なんじゃ、だらしのない」
「いやあ、あれだけ乱暴に着陸すればそうなるものよ?」
「この上なく慎重に降りたんじゃぞ? この程度で参るようならこやつらの鍛え方が足りんのじゃ!」
フェリスの冷静なツッコミにドラコが噛みつくように反論している。
「いや、あたしたち魔族と人間を一緒にしちゃいけないわ。あたしたちがちょっと掴んだだけで骨折するような存在なのよ? あたしたちが大丈夫だからって、人間が耐えられるわけがないじゃないの」
「ぐうう……」
冷静なフェリスの言葉に、ドラコは言葉を失ってしまった。
その間、フェリスは慎重にレイドたちをドラコの背から降ろしている。全員を降ろし終わると、ドラコは安心したかのように幼女の姿へと変身する。
「それにしても、まだ目を回しておるとは、本当に軟弱じゃのう。とっとと叩き起こして街に移動するぞ」
「そうね。おーい、起きなさーい」
フェリスは両手と尻尾でぺちぺちとレイドたちをぶっ叩く。ぺちぺちという可愛い音で表しているが、実際のところは頬が腫れ上がるくらいの激しいビンタである。さすがにかなり痛かったのか、四人はうめき声を上げながら目を覚ました。
「お目覚めかしら?」
目の前にはにこやかな笑顔のフェリスと、仏頂面のドラコが立っていた。そんな可愛い姿を目の前にしながら、レイドたちは飛び起きるとずざざざと後退っていた。
「いやー、さすがにその反応はショックだわー……」
そう言いながらもフェリスの笑顔は崩れない。しかし、その笑顔が逆に怖いのである。
「こ、ここは? 俺たちは生きているのか?」
「ボケかうわごとかはっきりせんのう……」
きょろきょろとするレイドたちに、ドラコはものすごく呆れていた。
「まったく、先が思いやられるところだけれど……」
フェリスは頭をぽりぽりと掻きながら、くるりと新しい街の方へと手を向ける。それに釣られるようにして、レイドたちはその方向へと視線を向ける。
「ようこそ。ここが組合で話に出ていた新しい街よ」
フェリスは、精一杯の笑顔で言い放ったのだった。
冒険者たちの話を聞いたフェリスは、ふむふむと頷きながら話を聞いていた。
「かっかっかっかっかっ、おぬしらは運がよかったのう。わしらもちょうどそっちに向かっておったところじゃ」
いつも以上に上機嫌に笑うドラコ。その笑いっぷりに冒険者たちは体をぴくりと震わせた。そのくらいにドラコというのは強大な存在なのである。
だが、目の前に居るフェリスもドラコも、自分たちとは敵対しそうにない雰囲気を漂わせている。それでいて目的地が同じというのであるなら、この冒険者たちに選択肢はないように思える。冒険者たちは慎重に話し合った結果、フェリスと一緒にドラコの背に乗って、新しい街まで移動する事になったのだった。
「うひゃーっ! 高えっ!」
空を飛ぶドラコの背で騒ぐ冒険者。
「これあまり激しく動くでない。落っこちても知らんぞ」
ドラコが叱ると、冒険者はおとなしくなった。いくら鍛えているとはいっても、この高さから落ちればただでは済まないだろう。
そんな中、フェリスがふと思い出して四人に尋ねる。
「そういえば、あなたたちの名前をまだ聞いてなかったわね。あたしたちだけに名乗らせてそのままだなんて、あり得ないわよ?」
フェリスが四人を見ながらチクリと棘のある言葉を放つ。さすがにこう言われてしまえば、四人もこのままというわけにはいかなかった。なにせ相手はものすごく強い魔族なのだから、下手に逆らえないのである。
「す、すまなかった。俺はこのパーティーのリーダーのレイドだ」
「俺はタンクをしているグルーンという」
「私は魔法使いのブルム」
「あたしは、サポーターのピックルというの」
前衛職は男性、後衛職は女性という、よくある組み合わせの冒険者たちだった。それにしても、治癒師ではなく、支援職と名乗るのは珍しい。
「ふむ、もっと話を聞きたいところじゃが、どうやらもう着いたようじゃぞ」
名前を聞いたところで下を見てみると、そこには確かに、フェリスが思い付きで整備した街が見えてきていた。
「もう着いたのか……」
「ドラゴンってこんなに飛ぶのが速かったのね」
「かっかっかっ、ここからならセンティアやモスレなども1日もあれば着けるぞ。古龍の力を舐めてくれるな」
レイドたちがぽつりとこぼした言葉に、ドラコはしっかりと反応をしていた。これには冒険者たちは更なる恐怖を感じたのだった。
「震えるのは構わんが、これから着陸するからな。舌を噛んでも知らんぞ?」
「そうそう、ドラコの着陸は気分次第じゃ荒れるからね。覚悟なさいよ?」
くすくすとドラコとフェリスがレイドたちを脅す。
そんな中、ドラコが一気に降下を始めて、地面が思わぬスピードで迫ってくる。だが、ドラコが一度翼をはためかせると、すっと減速して静かに地面に降り立った。ところが、感動の着地だというのに、冒険者たちは目を回していた。
「なんじゃ、だらしのない」
「いやあ、あれだけ乱暴に着陸すればそうなるものよ?」
「この上なく慎重に降りたんじゃぞ? この程度で参るようならこやつらの鍛え方が足りんのじゃ!」
フェリスの冷静なツッコミにドラコが噛みつくように反論している。
「いや、あたしたち魔族と人間を一緒にしちゃいけないわ。あたしたちがちょっと掴んだだけで骨折するような存在なのよ? あたしたちが大丈夫だからって、人間が耐えられるわけがないじゃないの」
「ぐうう……」
冷静なフェリスの言葉に、ドラコは言葉を失ってしまった。
その間、フェリスは慎重にレイドたちをドラコの背から降ろしている。全員を降ろし終わると、ドラコは安心したかのように幼女の姿へと変身する。
「それにしても、まだ目を回しておるとは、本当に軟弱じゃのう。とっとと叩き起こして街に移動するぞ」
「そうね。おーい、起きなさーい」
フェリスは両手と尻尾でぺちぺちとレイドたちをぶっ叩く。ぺちぺちという可愛い音で表しているが、実際のところは頬が腫れ上がるくらいの激しいビンタである。さすがにかなり痛かったのか、四人はうめき声を上げながら目を覚ました。
「お目覚めかしら?」
目の前にはにこやかな笑顔のフェリスと、仏頂面のドラコが立っていた。そんな可愛い姿を目の前にしながら、レイドたちは飛び起きるとずざざざと後退っていた。
「いやー、さすがにその反応はショックだわー……」
そう言いながらもフェリスの笑顔は崩れない。しかし、その笑顔が逆に怖いのである。
「こ、ここは? 俺たちは生きているのか?」
「ボケかうわごとかはっきりせんのう……」
きょろきょろとするレイドたちに、ドラコはものすごく呆れていた。
「まったく、先が思いやられるところだけれど……」
フェリスは頭をぽりぽりと掻きながら、くるりと新しい街の方へと手を向ける。それに釣られるようにして、レイドたちはその方向へと視線を向ける。
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フェリスは、精一杯の笑顔で言い放ったのだった。
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