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第165話 邪神ちゃんは帰還の途
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ひと通りモスレの街を散策したフェリスたちは、日が暮れる頃にはコネッホの工房に戻ってきていた。それにしても、あれこれあり過ぎて何かと疲れたフェリスなのである。
「かっかっかっ、引きこもりにはつらかったかな?」
「あのねえ……」
机に突っ伏しているフェリスに、ドラコが煽りを入れてくる。まったくもって昔はよく見るた事のある光景である。
「ドラコ、あたいもどっちか言えば引きこもりだ。やめてくれ、その言い方はあたいにも効く」
フェリス同様に、コネッホからも苦情が出ている。しかし、ドラコは相変わらず笑っている。
「かっかっかっ、分かったわい。ならば詫びも兼ねて、今夜の飯はわしが作ろう。厨房はこっちでよかったか?」
「ああ、そっちでいい。正直豪快過ぎるゆえに、どんなご飯が作られるか想像つかないな」
コネッホは街の案内ついでに買ってきた物を片付けながら、ドラコに苦言を呈している。
「かっかっかっ、わしは暇じゃからな、フェリスの眷属であるメルやペコラたちと一緒に作る事があるぞ。一応ペコラからも大丈夫だとは言われておる」
「そっか、なら期待しよう。炭でなければいいのだがな」
コネッホはそう言って、ある程度片付いた事から自分の部屋へと引っ込んでいった。
「よし、それじゃわしが頑張ってみるかな。フェリス、おぬしも手伝わんでいいぞ」
コネッホが引っ込んだのを見て、ドラコはエプロンをまとう。服を汚さないようにペコラからしつこく言われたからだ。しかし、ドラコが普段着ている服はドラコ自身の鱗が変形したものである。料理で使う火とかそんなもので傷が付くような軟なものではないのだ。しかし、あまりにペコラが言うものだから、仕方なく着けているのである。
正直心配だったフェリスだったが、手伝うなと言われたので客室へと引っ込んでいった。はてさて、ドラコの料理の腕前はいかに。
結論から言うと、フェリスの料理にも負けないくらいの腕前になっていた。
さすがは古龍。ちょっとした努力でここまで腕を上げられるのかと思うフェリスとコネッホである。
「さすがに予想外だわ……」
「あたいも同感だね」
フェリスたちは食事を平らげると、特にやる事もないのでそのまま眠る事にしたのだった。
そして、翌日の朝の事。
「それじゃコネッホ、あたしたちはそろそろ帰るわね」
フェリスとドラコは、フェリスメルに戻る事にした。
「ああ、久しぶりにゆっくり一緒に過ごせてよかったよ。さすがに優先的にとは言えないが、できる限りポーション類なんかは融通させるようにしておくさ」
コネッホも満足した様子で話している。
「かっかっかっかっ、なかなかいい街じゃったのう。まあ、変なのが一匹ほどおったが、こういう雰囲気は悪くはない」
ドラコも相当に上機嫌である。一匹なんて単語を言ってはいるが、そりゃ古龍から見れば他の存在などどれもこれも矮小な存在だろう。あのインフェルノウルフであるルディだって、ドラコからしたらかなり小さいのだ。
ちなみにその一匹というのは、言わずと知れた元冒険者組合の長であるバサスである。今頃どうなっているかは分からないが、ドラコたちはさして興味がないようだ。まあ、モスレに貢献してきたというか、モスレの象徴ともいえるコネッホに対してあの態度だったのだ。少なくとも街からの追放はされているだろう。
フェリスたちは出発する前に、商業組合に寄っていった。何かと今後も長い付き合いになるからだ。フェリスたちは、その商業組合からはかなり感謝されていた。保管方法を適切にした効果は、なんとたった1日で現れたらしいのだ。それは感謝されてしまうというものである。挨拶の際に、フェリスとドラコは職員たちから握手を求められ、いずれフェリスメルを訪れるみたいな声まで掛けられていた。そして、最終的には職員総出で街の外でお見送りをされたのであった。
フェリスはドラコの背に乗って、手を振りながら見送りに応えていた。
あっという間にモスレの街は豆粒のように遠くに見えるようになる。
「なかなかいい街じゃったのう」
「そうね。あたしの所もあんな感じになるのかしらねぇ」
「さてな。そもそもあそこならフェリス以外にも居るから分からんぞ」
「ちょっと、一言余計!」
空の旅を楽しみながら、フェリスとドラコはいろいろと言い合っていた。
そんな中、フェリスたちは異様な光景に気が付いた。
「ドラコ、あそこっ!」
「うむ、何やら魔物に襲われておるようじゃのう」
高度が高すぎて豆粒というよりかただの点にしか見えないのだが、フェリスとドラコの目にはしっかりと人間とそれに群がる魔物の姿が映っているようである。
「わしはいいとしても、さすがにフェリスは寝覚めが悪くなるじゃろうな。手を貸すとするかな」
「さっすがドラコ!」
ドラコは群れに向けて急降下をしていく。
「さーて、久々にいっちょ暴れてやりますか!」
こう話すフェリスは、とても嬉しそうに笑みを浮かべている。フェリスもやっぱり好戦的な魔族だという事なのだろう。
そして、ある程度下がったところで、フェリスはドラコから飛び降りたのだった。
「かっかっかっ、引きこもりにはつらかったかな?」
「あのねえ……」
机に突っ伏しているフェリスに、ドラコが煽りを入れてくる。まったくもって昔はよく見るた事のある光景である。
「ドラコ、あたいもどっちか言えば引きこもりだ。やめてくれ、その言い方はあたいにも効く」
フェリス同様に、コネッホからも苦情が出ている。しかし、ドラコは相変わらず笑っている。
「かっかっかっ、分かったわい。ならば詫びも兼ねて、今夜の飯はわしが作ろう。厨房はこっちでよかったか?」
「ああ、そっちでいい。正直豪快過ぎるゆえに、どんなご飯が作られるか想像つかないな」
コネッホは街の案内ついでに買ってきた物を片付けながら、ドラコに苦言を呈している。
「かっかっかっ、わしは暇じゃからな、フェリスの眷属であるメルやペコラたちと一緒に作る事があるぞ。一応ペコラからも大丈夫だとは言われておる」
「そっか、なら期待しよう。炭でなければいいのだがな」
コネッホはそう言って、ある程度片付いた事から自分の部屋へと引っ込んでいった。
「よし、それじゃわしが頑張ってみるかな。フェリス、おぬしも手伝わんでいいぞ」
コネッホが引っ込んだのを見て、ドラコはエプロンをまとう。服を汚さないようにペコラからしつこく言われたからだ。しかし、ドラコが普段着ている服はドラコ自身の鱗が変形したものである。料理で使う火とかそんなもので傷が付くような軟なものではないのだ。しかし、あまりにペコラが言うものだから、仕方なく着けているのである。
正直心配だったフェリスだったが、手伝うなと言われたので客室へと引っ込んでいった。はてさて、ドラコの料理の腕前はいかに。
結論から言うと、フェリスの料理にも負けないくらいの腕前になっていた。
さすがは古龍。ちょっとした努力でここまで腕を上げられるのかと思うフェリスとコネッホである。
「さすがに予想外だわ……」
「あたいも同感だね」
フェリスたちは食事を平らげると、特にやる事もないのでそのまま眠る事にしたのだった。
そして、翌日の朝の事。
「それじゃコネッホ、あたしたちはそろそろ帰るわね」
フェリスとドラコは、フェリスメルに戻る事にした。
「ああ、久しぶりにゆっくり一緒に過ごせてよかったよ。さすがに優先的にとは言えないが、できる限りポーション類なんかは融通させるようにしておくさ」
コネッホも満足した様子で話している。
「かっかっかっかっ、なかなかいい街じゃったのう。まあ、変なのが一匹ほどおったが、こういう雰囲気は悪くはない」
ドラコも相当に上機嫌である。一匹なんて単語を言ってはいるが、そりゃ古龍から見れば他の存在などどれもこれも矮小な存在だろう。あのインフェルノウルフであるルディだって、ドラコからしたらかなり小さいのだ。
ちなみにその一匹というのは、言わずと知れた元冒険者組合の長であるバサスである。今頃どうなっているかは分からないが、ドラコたちはさして興味がないようだ。まあ、モスレに貢献してきたというか、モスレの象徴ともいえるコネッホに対してあの態度だったのだ。少なくとも街からの追放はされているだろう。
フェリスたちは出発する前に、商業組合に寄っていった。何かと今後も長い付き合いになるからだ。フェリスたちは、その商業組合からはかなり感謝されていた。保管方法を適切にした効果は、なんとたった1日で現れたらしいのだ。それは感謝されてしまうというものである。挨拶の際に、フェリスとドラコは職員たちから握手を求められ、いずれフェリスメルを訪れるみたいな声まで掛けられていた。そして、最終的には職員総出で街の外でお見送りをされたのであった。
フェリスはドラコの背に乗って、手を振りながら見送りに応えていた。
あっという間にモスレの街は豆粒のように遠くに見えるようになる。
「なかなかいい街じゃったのう」
「そうね。あたしの所もあんな感じになるのかしらねぇ」
「さてな。そもそもあそこならフェリス以外にも居るから分からんぞ」
「ちょっと、一言余計!」
空の旅を楽しみながら、フェリスとドラコはいろいろと言い合っていた。
そんな中、フェリスたちは異様な光景に気が付いた。
「ドラコ、あそこっ!」
「うむ、何やら魔物に襲われておるようじゃのう」
高度が高すぎて豆粒というよりかただの点にしか見えないのだが、フェリスとドラコの目にはしっかりと人間とそれに群がる魔物の姿が映っているようである。
「わしはいいとしても、さすがにフェリスは寝覚めが悪くなるじゃろうな。手を貸すとするかな」
「さっすがドラコ!」
ドラコは群れに向けて急降下をしていく。
「さーて、久々にいっちょ暴れてやりますか!」
こう話すフェリスは、とても嬉しそうに笑みを浮かべている。フェリスもやっぱり好戦的な魔族だという事なのだろう。
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