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第164話 邪神ちゃんの不明な感性
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モスレの服屋で売られている服の材質は、一般的な動物や魔物の毛皮、革、毛糸や植物の蔓といった感じだった。その中でもひときわ光沢が違うのがスパイダーヤーンである。さすが高級品としてゼニスの商会やフェリスメルの商業組合が取り扱っているだけある。値札が掲げられているので確認してみると、他の製品と比べても、桁が一つ完全に違っていた。普通の服が銅貨や銀貨で買える中、スパイダーヤーンを素材とする服は金貨じゃないと買えない服となっていたのだ。さすがにちょっと驚くばかりである。
何と言っても、他所ではこの扱いのスパイダーヤーンが、生産地ではフェリスやメルが魔法縫製で作ってしまう上に、気前よく配っているのでタダ同然。破格どころの話ではなかった。まあ、その分村人たちからは貢物があるので、言ってしまえば物々交換だ。何も問題ないはずである。
まあそれはさておき、店内を見回っていると、ハイナがフェリスたちを探して大声を出していた。
「ちょっと、一体どこに行かれたんですか~?」
「ハイナ、フェリスたちなら店内を見て回っている。君の声が聞こえたはずだから、じきに戻ってくるよ」
慌てふためくハイナの相手をするコネッホ。さすがにそれなりに面識があるせいか扱いに慣れていた。コネッホがハイナを落ち着かせている間に、フェリスたちはコネッホのところに戻ってきたのだった。
「あー、どこに行ってらしたんですか、もう!」
ハイナが怒っている。
「いやすまない。時間が掛かると思って、どんな服を扱っているのか見ておったのじゃ。見たところじゃと、主に一般人向けの服を扱っておるようじゃな。冒険者たちがの好むようなものはなかったように思うぞ」
弁明をしながらも、店舗の売り物をしっかりチェックしていた。
「そうですね。こちらでは一般市民向けの既製服と、貴族様向けのオーダーメイドを主に扱っています。冒険者たち向けとなると、斜め向かいのお店ですね」
そう言いながら、店の外に出て、その方向を指差すハイナだった。
「ふーむ、ならば、あちらも後で見させてもらうか。このバカ猫が新しい街を造りおったから、そこに出す店の参考にさせてもらおう」
「誰がバカよ! それに、店を出すのはドラコじゃないでしょうが!」
ドラコがさらりと貶めてきたものだから、フェリスは両手を腰に当てながら、怒りを滲ませながらドラコに文句を言っている。
「後先考えずに思い付きで行動するのはバカじゃろうが!」
「なんですってーっ!」
けんかにはならないが、睨み合いになるフェリスとドラコ。すると、コネッホはため息を吐きながら二人の顔に肉球パンチをお見舞いしていた。それを見ていたハイナは、どういうわけか羨ましそうに口を開けていた。
「店先で騒ぐんじゃない。下手に目立つと後々面倒だぞ」
「うむ、そうじゃな」
「あたたたた……。まぁ、確かにそうね」
フェリスとドラコは揃って顔を押さえながら、コネッホの忠告に素直に従った。
「とりあえずぅ、あたしが見立てた服を着てもらうのですぅ!」
そう言ってハイナは、店の奥の貴族たちとの商談に使う部屋へとフェリスたちを案内した。そのため、部屋へ移動する前に、他の店員に店番をお願いしていた。
「お二人はぁ、翼と尻尾があるので選ぶのに苦労しましたぁ」
そう言ってハイナが見せた服は、当然ながら背中が大きく開いた服だった。まあ当然そうなってしまう。そして、尻尾の細いフェリスならまだしも、ドラコの尻尾は太い。それがゆえにさらに服選びに苦戦したようだった。
「あー、悪いな。わしの尻尾は消せるんじゃよ」
「えーっ!!」
ドラコが実に申し訳なさそうに謝ると、ハイナは大口を開けて驚いていた。
「そんな……、せっかく一生懸命探しましたのにぃ!」
泣き始めるとか大げさだが、それだけ必死に探してくれたのだろう。嘆くハイナの姿を見たドラコは、仕方なくその衣装を着る事にしたのだった。
とりあえず部屋の中は女性ばかりとはいえど、いきなり人が入ってくる可能性があるので、カーテンで遮った空間の中で着替えるフェリスとドラコ。しばらくして中から出てきた二人の姿に、コネッホとハイナは思わず息を飲んだ。
「ああ、やはりあたしの見立ては間違ってなかったわ~」
ハイナが歓喜の声を上げて喜んでいるが、フェリスとドラコはどうにもお気に召さないようである。
「ちょっと背中の開きが下過ぎないかしら」
フェリスはこんな事を言っているが、フェリスメルに初めてやって来た時の服装と、一体どこが違うというのだろうか。あれはホルターネックだったからもっと露出が多かったのだ。それなのに文句を言うとは、本当に魔族の感性はよく分からない。
「本当になぁ。こういう体の構造上、こういう服になってしまうのは仕方がないが、もうちょっとどうにかならんかったのか」
当の本人たちにはどうやら不評のようである。というわけで、フェリスたちはすぐさま元の服装に戻っていた。しかし、両方の服装を見比べたところで、どう見たようともあまり違いはなかったのだった。
「はあ、二人の感覚が分からないわ」
コネッホも呆れる始末である。
というわけで、ハイナが用意した服装は不評だったものの、モスレ・テーラの仕事自体は評価されたようだった。なので、無事にモスレへのスパイダーヤーンの販売は継続となったのであった。
何と言っても、他所ではこの扱いのスパイダーヤーンが、生産地ではフェリスやメルが魔法縫製で作ってしまう上に、気前よく配っているのでタダ同然。破格どころの話ではなかった。まあ、その分村人たちからは貢物があるので、言ってしまえば物々交換だ。何も問題ないはずである。
まあそれはさておき、店内を見回っていると、ハイナがフェリスたちを探して大声を出していた。
「ちょっと、一体どこに行かれたんですか~?」
「ハイナ、フェリスたちなら店内を見て回っている。君の声が聞こえたはずだから、じきに戻ってくるよ」
慌てふためくハイナの相手をするコネッホ。さすがにそれなりに面識があるせいか扱いに慣れていた。コネッホがハイナを落ち着かせている間に、フェリスたちはコネッホのところに戻ってきたのだった。
「あー、どこに行ってらしたんですか、もう!」
ハイナが怒っている。
「いやすまない。時間が掛かると思って、どんな服を扱っているのか見ておったのじゃ。見たところじゃと、主に一般人向けの服を扱っておるようじゃな。冒険者たちがの好むようなものはなかったように思うぞ」
弁明をしながらも、店舗の売り物をしっかりチェックしていた。
「そうですね。こちらでは一般市民向けの既製服と、貴族様向けのオーダーメイドを主に扱っています。冒険者たち向けとなると、斜め向かいのお店ですね」
そう言いながら、店の外に出て、その方向を指差すハイナだった。
「ふーむ、ならば、あちらも後で見させてもらうか。このバカ猫が新しい街を造りおったから、そこに出す店の参考にさせてもらおう」
「誰がバカよ! それに、店を出すのはドラコじゃないでしょうが!」
ドラコがさらりと貶めてきたものだから、フェリスは両手を腰に当てながら、怒りを滲ませながらドラコに文句を言っている。
「後先考えずに思い付きで行動するのはバカじゃろうが!」
「なんですってーっ!」
けんかにはならないが、睨み合いになるフェリスとドラコ。すると、コネッホはため息を吐きながら二人の顔に肉球パンチをお見舞いしていた。それを見ていたハイナは、どういうわけか羨ましそうに口を開けていた。
「店先で騒ぐんじゃない。下手に目立つと後々面倒だぞ」
「うむ、そうじゃな」
「あたたたた……。まぁ、確かにそうね」
フェリスとドラコは揃って顔を押さえながら、コネッホの忠告に素直に従った。
「とりあえずぅ、あたしが見立てた服を着てもらうのですぅ!」
そう言ってハイナは、店の奥の貴族たちとの商談に使う部屋へとフェリスたちを案内した。そのため、部屋へ移動する前に、他の店員に店番をお願いしていた。
「お二人はぁ、翼と尻尾があるので選ぶのに苦労しましたぁ」
そう言ってハイナが見せた服は、当然ながら背中が大きく開いた服だった。まあ当然そうなってしまう。そして、尻尾の細いフェリスならまだしも、ドラコの尻尾は太い。それがゆえにさらに服選びに苦戦したようだった。
「あー、悪いな。わしの尻尾は消せるんじゃよ」
「えーっ!!」
ドラコが実に申し訳なさそうに謝ると、ハイナは大口を開けて驚いていた。
「そんな……、せっかく一生懸命探しましたのにぃ!」
泣き始めるとか大げさだが、それだけ必死に探してくれたのだろう。嘆くハイナの姿を見たドラコは、仕方なくその衣装を着る事にしたのだった。
とりあえず部屋の中は女性ばかりとはいえど、いきなり人が入ってくる可能性があるので、カーテンで遮った空間の中で着替えるフェリスとドラコ。しばらくして中から出てきた二人の姿に、コネッホとハイナは思わず息を飲んだ。
「ああ、やはりあたしの見立ては間違ってなかったわ~」
ハイナが歓喜の声を上げて喜んでいるが、フェリスとドラコはどうにもお気に召さないようである。
「ちょっと背中の開きが下過ぎないかしら」
フェリスはこんな事を言っているが、フェリスメルに初めてやって来た時の服装と、一体どこが違うというのだろうか。あれはホルターネックだったからもっと露出が多かったのだ。それなのに文句を言うとは、本当に魔族の感性はよく分からない。
「本当になぁ。こういう体の構造上、こういう服になってしまうのは仕方がないが、もうちょっとどうにかならんかったのか」
当の本人たちにはどうやら不評のようである。というわけで、フェリスたちはすぐさま元の服装に戻っていた。しかし、両方の服装を見比べたところで、どう見たようともあまり違いはなかったのだった。
「はあ、二人の感覚が分からないわ」
コネッホも呆れる始末である。
というわけで、ハイナが用意した服装は不評だったものの、モスレ・テーラの仕事自体は評価されたようだった。なので、無事にモスレへのスパイダーヤーンの販売は継続となったのであった。
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