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第161話 邪神ちゃんのトラブル解決
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魔族とはいえどもただの錬金術師であるコネッホに冒険者組合の組合長であるバサスが一瞬で倒された光景に、冒険者たちはまったく微動だにできないでいる。そのコネッホの実力は圧倒的過ぎたのだ。
「やり過ぎてしまったかな。どう思う、フェリス、ドラコ」
「うーん、懲らしめるにはちょうどいいんじゃないかしら」
「かっかっかっかっ、弱い奴ほどよく吠える典型じゃのう。うぬの実力と相手の実力の差を見極められん愚か者にはちょうどいい末路じゃ。ここが街の中でよかったな、もしわしの巣で出くわしておったら、その灰も残らなんだぞ?」
フェリスはそこまでしなくてもいいんじゃないかといった感じに話しているが、ドラコは容赦がなかった。しかし、これが別に大げさな話ではないのだ。マリアとフェリス以外にドラコにけんかを売って生き残った者は居ないのだから。
「で、この落とし前はどうつけさせたらいいかな」
コネッホは実に冷静である。冒険者たちに睨みを利かせたまま、フェリスとドラコにもう一度尋ねている。
「とりあえず、そこで気絶してる組合長一人に責任を押し付けた方がいいわよ、更迭とかさ」
「そうじゃのう。任命の仕組みがどうなっておるかは知らんが、こやつの失態は聖女とかお偉さんの耳に入れておいた方がいいじゃろうのう」
ドラコはこう言いながら、気絶しているバサスへと近付いていく。聖女という単語も出た事で、冒険者たちはまったく動けないでその様子を見守っている。
「とりあえず、こやつのやらかした事はこの街にとっては不利益になる事じゃ。多分商業組合から散々言われてようやく依頼を出したようなクチじゃろう。縛って牢屋にでも放り込んでおくか」
ドラコは髪の毛を一本引っこ抜くと、それをロープに変えて手足をぐるぐる巻きに縛っておいた。
「ほれ、こやつを牢屋に放り込んでおけ。商業組合の方にわしらから話を付けておく。こやつに協力してないのなら、お前さんたちも被害者じゃ。わしらは魔族とて、無慈悲ではないからのう」
それを聞いた冒険者たちは、ぐるぐる巻きになって動けなくなっているバサスを担ぎ上げ、とっとと冒険者組合の牢屋へと運んでいった。鍛えている冒険者とはいえどバサスの筋肉はかなり重いようで、五人がかりでようやく運べていたようだった。
バサスが担ぎ出されていったのを見送ると、
「さて、コネッホの作るポーション類は効果抜群じゃからな、できるだけ要求を聞いてやってくれ。それに、こやつは危険な事は他人にさせるような真似はせんから安心せい」
ドラコは冒険者たちに向けてにこりと微笑みながら語り掛ける。ドラコの笑みを見た冒険者たちは、それは激しく頭を前後に振っていたという。コネッホですら十分強いというのに、その横で堂々と立っているフェリスとドラコに凄まじいまでの恐怖を覚えたからだった。巻き添えを食ったようなフェリスは、何とも言えない顔で冒険者たちを見つめていた。
とりあえず、冒険者組合での話(?)が決着したフェリスたちは、その足で商業組合に戻ってきた。
「ああ、コネッホさん。よくご無事で」
商業組合の職員が入口から入ってきたコネッホを見つけて駆け寄ってきた。
「あの程度の小童、別に何ともない。それよりも確認してきたが、やっぱりあの筋肉だるまがあたいの依頼を故意に止めておったようだ。みんながしつこく聞いてくれたおかげで渋々貼り出したようだよ」
コネッホは駆け寄って来た職員に冒険者組合でのあらましをすべて説明していた。そしたらば、その職員の顔は、驚いたりおろおろしたり真っ青になったりとものすごく忙しそうになっていた。でも、最終的にはバサスの処遇について検討してくれる事になった。組合長レベルならば、組合長レベルの人物や街の長など話をして辞めさせたり変えさせたりができるようなのである。
正直、あのバサスはあの筋肉もりもりであったがために、不適切と見てもなかなか変えさせる事ができなかったようなのだ。それをコネッホがたったの一発でのしてくれた事で、その機会がやって来たようなのである。この事はすぐに商業組合の組合長に報告が上がり、組合長はさっさと町長のところへと出掛けていった。行動が早い。これでモスレの街もよくなると思われる。
「はあ、暴れたらお腹が空いたな。せっかくだから、朝行きそびれたパン屋にでも行くかな」
「それは賛成。コネッホが薦めてくるんだから、あたしとしても食べてみたいわ」
商業組合を出たところでコネッホがフェリスたちに話し掛ければ、フェリスはお腹をさすりながらそんな事を言っていた。朝は冒険者たちが詰め寄っていたので行きそびれていたのだ。その割にはその後の一幕ではかなり冒険者たちが冒険者組合に集まっていた。モスレの街の冒険者は一体どのくらい居るのだろうか。冷静に考えれば謎である。
といった感じにいろいろあったものの、どうにかこうにか、ようやく目的のパン屋に行く事ができたフェリスたち。
到着したパン屋は今度はお昼時の賑わいで人がいっぱいである。とはいえども、朝のむさ苦しさに比べれば我慢できるレベルである。
いろいろとパンを買い込んだフェリスたちは、にこやかにパン屋から出てきたのだった。
「やり過ぎてしまったかな。どう思う、フェリス、ドラコ」
「うーん、懲らしめるにはちょうどいいんじゃないかしら」
「かっかっかっかっ、弱い奴ほどよく吠える典型じゃのう。うぬの実力と相手の実力の差を見極められん愚か者にはちょうどいい末路じゃ。ここが街の中でよかったな、もしわしの巣で出くわしておったら、その灰も残らなんだぞ?」
フェリスはそこまでしなくてもいいんじゃないかといった感じに話しているが、ドラコは容赦がなかった。しかし、これが別に大げさな話ではないのだ。マリアとフェリス以外にドラコにけんかを売って生き残った者は居ないのだから。
「で、この落とし前はどうつけさせたらいいかな」
コネッホは実に冷静である。冒険者たちに睨みを利かせたまま、フェリスとドラコにもう一度尋ねている。
「とりあえず、そこで気絶してる組合長一人に責任を押し付けた方がいいわよ、更迭とかさ」
「そうじゃのう。任命の仕組みがどうなっておるかは知らんが、こやつの失態は聖女とかお偉さんの耳に入れておいた方がいいじゃろうのう」
ドラコはこう言いながら、気絶しているバサスへと近付いていく。聖女という単語も出た事で、冒険者たちはまったく動けないでその様子を見守っている。
「とりあえず、こやつのやらかした事はこの街にとっては不利益になる事じゃ。多分商業組合から散々言われてようやく依頼を出したようなクチじゃろう。縛って牢屋にでも放り込んでおくか」
ドラコは髪の毛を一本引っこ抜くと、それをロープに変えて手足をぐるぐる巻きに縛っておいた。
「ほれ、こやつを牢屋に放り込んでおけ。商業組合の方にわしらから話を付けておく。こやつに協力してないのなら、お前さんたちも被害者じゃ。わしらは魔族とて、無慈悲ではないからのう」
それを聞いた冒険者たちは、ぐるぐる巻きになって動けなくなっているバサスを担ぎ上げ、とっとと冒険者組合の牢屋へと運んでいった。鍛えている冒険者とはいえどバサスの筋肉はかなり重いようで、五人がかりでようやく運べていたようだった。
バサスが担ぎ出されていったのを見送ると、
「さて、コネッホの作るポーション類は効果抜群じゃからな、できるだけ要求を聞いてやってくれ。それに、こやつは危険な事は他人にさせるような真似はせんから安心せい」
ドラコは冒険者たちに向けてにこりと微笑みながら語り掛ける。ドラコの笑みを見た冒険者たちは、それは激しく頭を前後に振っていたという。コネッホですら十分強いというのに、その横で堂々と立っているフェリスとドラコに凄まじいまでの恐怖を覚えたからだった。巻き添えを食ったようなフェリスは、何とも言えない顔で冒険者たちを見つめていた。
とりあえず、冒険者組合での話(?)が決着したフェリスたちは、その足で商業組合に戻ってきた。
「ああ、コネッホさん。よくご無事で」
商業組合の職員が入口から入ってきたコネッホを見つけて駆け寄ってきた。
「あの程度の小童、別に何ともない。それよりも確認してきたが、やっぱりあの筋肉だるまがあたいの依頼を故意に止めておったようだ。みんながしつこく聞いてくれたおかげで渋々貼り出したようだよ」
コネッホは駆け寄って来た職員に冒険者組合でのあらましをすべて説明していた。そしたらば、その職員の顔は、驚いたりおろおろしたり真っ青になったりとものすごく忙しそうになっていた。でも、最終的にはバサスの処遇について検討してくれる事になった。組合長レベルならば、組合長レベルの人物や街の長など話をして辞めさせたり変えさせたりができるようなのである。
正直、あのバサスはあの筋肉もりもりであったがために、不適切と見てもなかなか変えさせる事ができなかったようなのだ。それをコネッホがたったの一発でのしてくれた事で、その機会がやって来たようなのである。この事はすぐに商業組合の組合長に報告が上がり、組合長はさっさと町長のところへと出掛けていった。行動が早い。これでモスレの街もよくなると思われる。
「はあ、暴れたらお腹が空いたな。せっかくだから、朝行きそびれたパン屋にでも行くかな」
「それは賛成。コネッホが薦めてくるんだから、あたしとしても食べてみたいわ」
商業組合を出たところでコネッホがフェリスたちに話し掛ければ、フェリスはお腹をさすりながらそんな事を言っていた。朝は冒険者たちが詰め寄っていたので行きそびれていたのだ。その割にはその後の一幕ではかなり冒険者たちが冒険者組合に集まっていた。モスレの街の冒険者は一体どのくらい居るのだろうか。冷静に考えれば謎である。
といった感じにいろいろあったものの、どうにかこうにか、ようやく目的のパン屋に行く事ができたフェリスたち。
到着したパン屋は今度はお昼時の賑わいで人がいっぱいである。とはいえども、朝のむさ苦しさに比べれば我慢できるレベルである。
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