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第160話 邪神ちゃんと筋肉大男
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それからしばらくして、フェリスとドラコはコネッホに連れられて冒険者組合に来ていた。モスレの冒険者組合は少しガラの悪い印象を受ける。とはいっても、コネッホにはかなり世話になっているはずなので、そう問題にならないだろう。
「さあさあ、出てきてもらおうかい。あたいの出した依頼に対してケチ付けるたあ、相変わらずチケな真似をしたくないようだな、バサス」
コネッホは組合の奥の方に向けてけんか腰な言葉を投げ掛ける。すると、奥から明らかに体格のおかしい大男が出てきた。
「はっ、誰かと思えばウサギ野郎じゃねえか。何だ、今日はけんかでも売りに来たってのか?」
「何を言う。売られたけんかを買いに来ただけだ」
見下すように喋るバサスに対して、けんか腰で言葉を返すコネッホ。まさに売り言葉に買い言葉である。一触即発の状態に、組合内が一気に緊張に包まれる。
「あたいが出先から出しておいた依頼を、ついおとといまで掲出しなかったらしいな。7日から10日前にはこちらに届いていたはずなんだが? 一体どういう事か説明してもらおうか」
モノクルを直しながら、コネッホはバサスに詰め寄っていく。
「……けんかを売ろうっていうのなら考え直した方がいい。これでもあたいは邪神とまで言われた魔族だ。それに、あたいより上位の実力を持つ邪神が、後ろに二人も控えている。あんたらが全員束になっても敵いっこない相手だ」
ずずいっとせり出すようにバサスを睨み付けるコネッホ。普段は錬金術師として冷静な感じを漂わせているコネッホだが、この時ばかりは身の毛もよだつほどの殺気を放ち続けている。これでは並大抵の冒険者たちでは耐えられたものではなかった。
「さあ、どうした。さっきまでの勢いはどこに行ったんだ、ええ?」
コネッホがバサスに顔を近付けていく。それに気圧されるようにしてバサスが身を引いていく。慎重はバサスの方が高いのでコネッホは背伸びをしているのだが、現在の迫力という点ではそれをすっかり逆転してしまっていた。
「わ、悪かったな。謝る」
「いいや、許せぬな。大体、お前たち冒険者たちが元気に冒険していられるのは、誰のおかげだと思うておる。あたいの作ったポーション類が無ければ、今頃はこの辺りは死屍累々で埋まっておった、そうじゃないのか?」
「ううっ……!」
さらに迫るコネッホに、バサスはついに顔を背けてしまった。
「草むしりのようなみみっちい依頼を受けたくないのは、冒険者としたらそうかも知れないが、お前さんたちを助けるポーションはそういったものからできておるのだ」
コネッホは背伸びをした体を元に戻し、腕を組んでバサスを睨み付けている。
「まったく、ガキっぽい感性で依頼を選り好みするな。ポーションの有無は、装備品よりは地味だが死活問題に直結する。それをゆめゆめ忘れるでない」
コネッホがこう言い放てば、周りの冒険者たちは揃ってコネッホに頭を下げていた。なんだかかっこいい感じである。
「さてまあ、そうとなればバサスにはそれ相応の罰を与えておくか。人が不在だからと、さっきの理由と合わせてごねたのだろう?」
「うっ、ぐっ……」
「図星か。あたいにはそこまでの権限はないが、一時的に冒険者組合に卸すポーションの価格を上げさせてもらう。1割増し、冒険者どもには悪いが、これで手を打たさせてもらうぞ。商業組合にもそう伝えておくからな」
コネッホは腕を組んだまま、周りを見回してそう言い放った。これには冒険者たちはかなりショックを受けていたのだが、トップのやらかしなのであおりを受けてもらう事にした。
「恨むなら、みみっちいプライドであたいの依頼を止めていたこやつを恨むんだな。あたいのポーションだって、材料がないと作れんのだからな」
コネッホがもう一度バサスに視線をやると、バサスはぶるぶると震えていた。
「なんだ、やる気か? いいだろう。あたいをただの錬金術師だと思うなよ?」
「はっ、言いやがったな? だったら気の済むまで叩きのめしてくれる。この俺をコケにした報いを受けてもらうぜ!」
「すまんな、フェリス、ドラコ。こうなったら遠慮なくあやつをのしてくるから、しばし待っておいてくれ」
コネッホはフェリスとドラコに謝罪をすると、バサスについて裏の訓練場へと移動していった。
訓練場にはその時冒険者組合に居た冒険者たちも移動してきており、かなりの観客であふれている。バサスの実力は冒険者たちには知られているところだが、コネッホの戦いを見た事がない。なので、冒険者たちの興味は主だってコネッホの方に注がれていた。
「相手を気絶させるか、降参させるか、それが決着だ」
「いいだろう。実戦は数100年ぶりだが、お前ごときに負ける気はしない」
「ほざきやがれ、ウサギ野郎!」
バサスはそう叫ぶと、そのままコネッホに襲い掛かってきた。まったく気の早い事である。
しかし、コネッホはそれを難なく躱す。
「ほう、お前の武器はその拳か。実に分かりやすくていいな。ならば、あたいも肉弾戦で応じてやろう」
「ちょこまかと動くんじゃねえっ!」
ぴきぴきと血管を浮かべてコネッホに殴り掛かるバサスだが、その攻撃はどれもコネッホを捉える事はできなかった。
「すげえ。ただの錬金術師だと思ってたが、あの動きはただ者ではないぞ」
観戦している冒険者たちが、その動きに見惚れていた。
「さて、そろそろ決着をつけてあげようか」
「うるせえ! くそっ、俺の拳が当たらねえとは、一体何をしてやがるんだ!」
「何って、普通に躱しているだけ、さっ!」
コネッホの初めての反撃が、バサスのみぞおちに見事に決まる。そして、バサスはその一撃だけでその場に倒れ込んでしまった。よく見ると白目をむいている上に泡まで吹いていた。
「ちょいとやり過ぎちまったか」
頭をぽりぽりと掻くコネッホだったが、その圧倒的な一撃に、訓練場の中は静まり返ってしまったのだった。
「さあさあ、出てきてもらおうかい。あたいの出した依頼に対してケチ付けるたあ、相変わらずチケな真似をしたくないようだな、バサス」
コネッホは組合の奥の方に向けてけんか腰な言葉を投げ掛ける。すると、奥から明らかに体格のおかしい大男が出てきた。
「はっ、誰かと思えばウサギ野郎じゃねえか。何だ、今日はけんかでも売りに来たってのか?」
「何を言う。売られたけんかを買いに来ただけだ」
見下すように喋るバサスに対して、けんか腰で言葉を返すコネッホ。まさに売り言葉に買い言葉である。一触即発の状態に、組合内が一気に緊張に包まれる。
「あたいが出先から出しておいた依頼を、ついおとといまで掲出しなかったらしいな。7日から10日前にはこちらに届いていたはずなんだが? 一体どういう事か説明してもらおうか」
モノクルを直しながら、コネッホはバサスに詰め寄っていく。
「……けんかを売ろうっていうのなら考え直した方がいい。これでもあたいは邪神とまで言われた魔族だ。それに、あたいより上位の実力を持つ邪神が、後ろに二人も控えている。あんたらが全員束になっても敵いっこない相手だ」
ずずいっとせり出すようにバサスを睨み付けるコネッホ。普段は錬金術師として冷静な感じを漂わせているコネッホだが、この時ばかりは身の毛もよだつほどの殺気を放ち続けている。これでは並大抵の冒険者たちでは耐えられたものではなかった。
「さあ、どうした。さっきまでの勢いはどこに行ったんだ、ええ?」
コネッホがバサスに顔を近付けていく。それに気圧されるようにしてバサスが身を引いていく。慎重はバサスの方が高いのでコネッホは背伸びをしているのだが、現在の迫力という点ではそれをすっかり逆転してしまっていた。
「わ、悪かったな。謝る」
「いいや、許せぬな。大体、お前たち冒険者たちが元気に冒険していられるのは、誰のおかげだと思うておる。あたいの作ったポーション類が無ければ、今頃はこの辺りは死屍累々で埋まっておった、そうじゃないのか?」
「ううっ……!」
さらに迫るコネッホに、バサスはついに顔を背けてしまった。
「草むしりのようなみみっちい依頼を受けたくないのは、冒険者としたらそうかも知れないが、お前さんたちを助けるポーションはそういったものからできておるのだ」
コネッホは背伸びをした体を元に戻し、腕を組んでバサスを睨み付けている。
「まったく、ガキっぽい感性で依頼を選り好みするな。ポーションの有無は、装備品よりは地味だが死活問題に直結する。それをゆめゆめ忘れるでない」
コネッホがこう言い放てば、周りの冒険者たちは揃ってコネッホに頭を下げていた。なんだかかっこいい感じである。
「さてまあ、そうとなればバサスにはそれ相応の罰を与えておくか。人が不在だからと、さっきの理由と合わせてごねたのだろう?」
「うっ、ぐっ……」
「図星か。あたいにはそこまでの権限はないが、一時的に冒険者組合に卸すポーションの価格を上げさせてもらう。1割増し、冒険者どもには悪いが、これで手を打たさせてもらうぞ。商業組合にもそう伝えておくからな」
コネッホは腕を組んだまま、周りを見回してそう言い放った。これには冒険者たちはかなりショックを受けていたのだが、トップのやらかしなのであおりを受けてもらう事にした。
「恨むなら、みみっちいプライドであたいの依頼を止めていたこやつを恨むんだな。あたいのポーションだって、材料がないと作れんのだからな」
コネッホがもう一度バサスに視線をやると、バサスはぶるぶると震えていた。
「なんだ、やる気か? いいだろう。あたいをただの錬金術師だと思うなよ?」
「はっ、言いやがったな? だったら気の済むまで叩きのめしてくれる。この俺をコケにした報いを受けてもらうぜ!」
「すまんな、フェリス、ドラコ。こうなったら遠慮なくあやつをのしてくるから、しばし待っておいてくれ」
コネッホはフェリスとドラコに謝罪をすると、バサスについて裏の訓練場へと移動していった。
訓練場にはその時冒険者組合に居た冒険者たちも移動してきており、かなりの観客であふれている。バサスの実力は冒険者たちには知られているところだが、コネッホの戦いを見た事がない。なので、冒険者たちの興味は主だってコネッホの方に注がれていた。
「相手を気絶させるか、降参させるか、それが決着だ」
「いいだろう。実戦は数100年ぶりだが、お前ごときに負ける気はしない」
「ほざきやがれ、ウサギ野郎!」
バサスはそう叫ぶと、そのままコネッホに襲い掛かってきた。まったく気の早い事である。
しかし、コネッホはそれを難なく躱す。
「ほう、お前の武器はその拳か。実に分かりやすくていいな。ならば、あたいも肉弾戦で応じてやろう」
「ちょこまかと動くんじゃねえっ!」
ぴきぴきと血管を浮かべてコネッホに殴り掛かるバサスだが、その攻撃はどれもコネッホを捉える事はできなかった。
「すげえ。ただの錬金術師だと思ってたが、あの動きはただ者ではないぞ」
観戦している冒険者たちが、その動きに見惚れていた。
「さて、そろそろ決着をつけてあげようか」
「うるせえ! くそっ、俺の拳が当たらねえとは、一体何をしてやがるんだ!」
「何って、普通に躱しているだけ、さっ!」
コネッホの初めての反撃が、バサスのみぞおちに見事に決まる。そして、バサスはその一撃だけでその場に倒れ込んでしまった。よく見ると白目をむいている上に泡まで吹いていた。
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