152 / 290
第152話 邪神ちゃんと寄り道
しおりを挟む
それからさらに7日が経過した。いよいよコネッホがモスレに戻る日がやって来た。
「久しぶりに懐かしい面々に会えてよかったよ。ペコラの料理も相変わらずの絶品だったな」
どうやら、ペコラたちもこの街に顔を出したようだった。まあ、昔の仲間が近くに居ると知ったら、会いたくなるのは仕方のない話なのだ。
「ハバリーにお礼を言っておいてくれ。こんな良質なインゴットはなかなか手に入るものではないからね」
「分かったわ、ちゃんと伝えておくわよ」
上機嫌のまま、コネッホは帰り支度をしている。元々ひと月の外出とモスレの商業組合に伝えて出てきているのだ。となれば、期日までにちゃんと戻るのがコネッホというものなのである。本当にフェリスたちは律儀な邪神たちなのである。
さて、肝心の街の方の話はというと、移住希望者はそこそこ集まっているようだった。さすがにフェリスメルから近いというのが、最大の魅力だったようである。ジャイアントスパイダーの糸、スパイダーヤーンを使った布がすぐに手に入り、純度の高い金属インゴットも手に入り、おいしい料理もたくさん転がっているとなれば、それは魅力的過ぎたのだ。
ちなみに商売の方でもいろいろと人はやって来ていた。スパイダーヤーンやインゴットなどの取引の中継地点としての注目度が高いのである。
フェリスメルでの直接取引と行きたいところだが、フェリスメルには大きな欠点があったのだ。それは、元々が小さな村であった事。村人たちの感覚のずれが、一部の商人たちの間では敬遠されていたのだった。新しい街での取引には、フェリスメルの商業組合が必ず挟まってくれるので、商人たちも安心して取引ができるというわけなのだ。
まぁ、全部その辺りはアファカやヘンネに任せておけば大丈夫だろう。
「ところで、コネッホ」
「何かな、フェリス」
「帰る前にマイムに会っていく?」
フェリスがマイムの名前を出すと、コネッホを少し考えていた。
「マイムが居るのか? すぐに会えるなら会っておきたいな」
どうやら会いたいようである。ただ『すぐに』という単語が付いているので、時間にシビアなのがよく分かる。
「大丈夫よ。頼めるかしらドラコ」
「おお構わんぞ。上流の森の中だろう? そこへ寄ってからでも7日以内にモスレに着く事は可能だな」
フェリスが話を振ると、ドラコは快く了承していた。どうやら、ドラコの背に乗ってコネッホをモスレまで送り届けるつもりらしい。
「話が早くて助かるわ」
「どれだけの付き合いがあると思っておる。マイムは水の精霊だ。この街の中を流れる水にマイムの魔力を感じるから、すぐにその結論にたどり着いたぞ」
ドラコもマイムとはしっかり面識があった。というか、フェリスたちは全員が面識を持っているのである。
「マイムの出す水は純度が高くて錬金にはもってこいなんだ。もっと早く話してほしかったな」
「仕方ないでしょう。あたしは街の建設のためにずっと詰めてたし、あんたはあんたでずっと引きこもってたじゃないのよ。タイミングが無さすぎたのよ」
フェリスとコネッホが互いに文句を言っている。
「まあまあ、二人ともよさないか。アファカたちに挨拶を済ませて、さっさと出掛けようではないか」
ドラコが仲裁すると、二人ともおとなしくそれに従っていた。さすがは古龍である。
フェリスたちはアファカとヘンネに挨拶をすると、ドラゴンの姿に戻ったドラコの背に乗った。
「メル、しばらくこの街の事をお願いね。コネッホを送り届けたらすぐ戻ってくるから」
「分かりました、フェリス様。こちらの事はお任せ下さい」
実に頼りになる返事である。
というわけで、挨拶を済ませたフェリスたちは、まずはマイムの居る森へ向けて出発した。
ドラコで移動となると、あっという間にマイムの居る場所にたどり着いた。ルディでも1日掛かるというのに、さすが古龍である。
「おーいマイム。居るかしら?」
フェリスが泉に呼び掛けると、ざざざっと水が集まっていく。そして、あっという間に人の形を成してしまった。
「フェリス、久しぶりですね」
マイムが挨拶をすると、
「おー久しぶりだな、マイム」
「本当、久しぶり」
「ドラコとコネッホですか。本当に久しぶりですね」
ドラコとコネッホも挨拶をする。ルディの時とは違って、マイムは二人の事を毛嫌いしていなかった。
「なるほど、錬金術用の水というわけですか。構いませんよ」
「さっすがマイム。話が早い」
そう言いながら、コネッホは大きめの容器を取り出して栓を抜く。それをマイムに向けると、マイムはそこへと水を流し込んでいった。
「いやあ、助かる。モスレの街の水は一度浄化しないと使えないからね。マイムの水ならその手間が省けていいし、あたいの魔力との相性がいいからな」
「確かに、不思議と魔力の親和性は高いですね」
それからというもの、マイムとコネッホは少し語り込んでいた。
「いやあ、久しぶりに話ができてよかった。それにしても定期的にマイムの水は欲しくなるな」
「だったら、そちらの近くの水の精霊に相談してみればいいのです。私に劣るとはいえど、味方に付ければ水に苦労はしなくなるはずですから」
「劣るのなら、また研究し直さないといけないから面倒だな」
「それなら、その水の魔力を覚え込ませればいいだけの事。私の名を出せば、必死になるはずですからね」
「なるほどなぁ」
マイムの言葉にコネッホはどことなく納得した。こう見えてもマイムは水の精霊王とまではいかなくても、かなり上位の精霊だ。邪神とまで言われたくらいには力も認められているのである。そのマイムに言われたとなれば、精霊だって頑張ってしまうのである。
「では、そろそろ行きなさい。街に早めに戻るのでしょう?」
「そうだった。マイム、水をありがとう」
コネッホはマイムに礼を言って、ドラコに乗ってフェリスと一緒に飛んでいってしまった。
「……相変わらずのようね。本当に、誰も変わってないんだから」
一人残されたマイムは、嬉しそうに笑っていたのだった。
「久しぶりに懐かしい面々に会えてよかったよ。ペコラの料理も相変わらずの絶品だったな」
どうやら、ペコラたちもこの街に顔を出したようだった。まあ、昔の仲間が近くに居ると知ったら、会いたくなるのは仕方のない話なのだ。
「ハバリーにお礼を言っておいてくれ。こんな良質なインゴットはなかなか手に入るものではないからね」
「分かったわ、ちゃんと伝えておくわよ」
上機嫌のまま、コネッホは帰り支度をしている。元々ひと月の外出とモスレの商業組合に伝えて出てきているのだ。となれば、期日までにちゃんと戻るのがコネッホというものなのである。本当にフェリスたちは律儀な邪神たちなのである。
さて、肝心の街の方の話はというと、移住希望者はそこそこ集まっているようだった。さすがにフェリスメルから近いというのが、最大の魅力だったようである。ジャイアントスパイダーの糸、スパイダーヤーンを使った布がすぐに手に入り、純度の高い金属インゴットも手に入り、おいしい料理もたくさん転がっているとなれば、それは魅力的過ぎたのだ。
ちなみに商売の方でもいろいろと人はやって来ていた。スパイダーヤーンやインゴットなどの取引の中継地点としての注目度が高いのである。
フェリスメルでの直接取引と行きたいところだが、フェリスメルには大きな欠点があったのだ。それは、元々が小さな村であった事。村人たちの感覚のずれが、一部の商人たちの間では敬遠されていたのだった。新しい街での取引には、フェリスメルの商業組合が必ず挟まってくれるので、商人たちも安心して取引ができるというわけなのだ。
まぁ、全部その辺りはアファカやヘンネに任せておけば大丈夫だろう。
「ところで、コネッホ」
「何かな、フェリス」
「帰る前にマイムに会っていく?」
フェリスがマイムの名前を出すと、コネッホを少し考えていた。
「マイムが居るのか? すぐに会えるなら会っておきたいな」
どうやら会いたいようである。ただ『すぐに』という単語が付いているので、時間にシビアなのがよく分かる。
「大丈夫よ。頼めるかしらドラコ」
「おお構わんぞ。上流の森の中だろう? そこへ寄ってからでも7日以内にモスレに着く事は可能だな」
フェリスが話を振ると、ドラコは快く了承していた。どうやら、ドラコの背に乗ってコネッホをモスレまで送り届けるつもりらしい。
「話が早くて助かるわ」
「どれだけの付き合いがあると思っておる。マイムは水の精霊だ。この街の中を流れる水にマイムの魔力を感じるから、すぐにその結論にたどり着いたぞ」
ドラコもマイムとはしっかり面識があった。というか、フェリスたちは全員が面識を持っているのである。
「マイムの出す水は純度が高くて錬金にはもってこいなんだ。もっと早く話してほしかったな」
「仕方ないでしょう。あたしは街の建設のためにずっと詰めてたし、あんたはあんたでずっと引きこもってたじゃないのよ。タイミングが無さすぎたのよ」
フェリスとコネッホが互いに文句を言っている。
「まあまあ、二人ともよさないか。アファカたちに挨拶を済ませて、さっさと出掛けようではないか」
ドラコが仲裁すると、二人ともおとなしくそれに従っていた。さすがは古龍である。
フェリスたちはアファカとヘンネに挨拶をすると、ドラゴンの姿に戻ったドラコの背に乗った。
「メル、しばらくこの街の事をお願いね。コネッホを送り届けたらすぐ戻ってくるから」
「分かりました、フェリス様。こちらの事はお任せ下さい」
実に頼りになる返事である。
というわけで、挨拶を済ませたフェリスたちは、まずはマイムの居る森へ向けて出発した。
ドラコで移動となると、あっという間にマイムの居る場所にたどり着いた。ルディでも1日掛かるというのに、さすが古龍である。
「おーいマイム。居るかしら?」
フェリスが泉に呼び掛けると、ざざざっと水が集まっていく。そして、あっという間に人の形を成してしまった。
「フェリス、久しぶりですね」
マイムが挨拶をすると、
「おー久しぶりだな、マイム」
「本当、久しぶり」
「ドラコとコネッホですか。本当に久しぶりですね」
ドラコとコネッホも挨拶をする。ルディの時とは違って、マイムは二人の事を毛嫌いしていなかった。
「なるほど、錬金術用の水というわけですか。構いませんよ」
「さっすがマイム。話が早い」
そう言いながら、コネッホは大きめの容器を取り出して栓を抜く。それをマイムに向けると、マイムはそこへと水を流し込んでいった。
「いやあ、助かる。モスレの街の水は一度浄化しないと使えないからね。マイムの水ならその手間が省けていいし、あたいの魔力との相性がいいからな」
「確かに、不思議と魔力の親和性は高いですね」
それからというもの、マイムとコネッホは少し語り込んでいた。
「いやあ、久しぶりに話ができてよかった。それにしても定期的にマイムの水は欲しくなるな」
「だったら、そちらの近くの水の精霊に相談してみればいいのです。私に劣るとはいえど、味方に付ければ水に苦労はしなくなるはずですから」
「劣るのなら、また研究し直さないといけないから面倒だな」
「それなら、その水の魔力を覚え込ませればいいだけの事。私の名を出せば、必死になるはずですからね」
「なるほどなぁ」
マイムの言葉にコネッホはどことなく納得した。こう見えてもマイムは水の精霊王とまではいかなくても、かなり上位の精霊だ。邪神とまで言われたくらいには力も認められているのである。そのマイムに言われたとなれば、精霊だって頑張ってしまうのである。
「では、そろそろ行きなさい。街に早めに戻るのでしょう?」
「そうだった。マイム、水をありがとう」
コネッホはマイムに礼を言って、ドラコに乗ってフェリスと一緒に飛んでいってしまった。
「……相変わらずのようね。本当に、誰も変わってないんだから」
一人残されたマイムは、嬉しそうに笑っていたのだった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる