邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

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第152話 邪神ちゃんと寄り道

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 それからさらに7日が経過した。いよいよコネッホがモスレに戻る日がやって来た。
「久しぶりに懐かしい面々に会えてよかったよ。ペコラの料理も相変わらずの絶品だったな」
 どうやら、ペコラたちもこの街に顔を出したようだった。まあ、昔の仲間が近くに居ると知ったら、会いたくなるのは仕方のない話なのだ。
「ハバリーにお礼を言っておいてくれ。こんな良質なインゴットはなかなか手に入るものではないからね」
「分かったわ、ちゃんと伝えておくわよ」
 上機嫌のまま、コネッホは帰り支度をしている。元々ひと月の外出とモスレの商業組合に伝えて出てきているのだ。となれば、期日までにちゃんと戻るのがコネッホというものなのである。本当にフェリスたちは律儀な邪神たちなのである。
 さて、肝心の街の方の話はというと、移住希望者はそこそこ集まっているようだった。さすがにフェリスメルから近いというのが、最大の魅力だったようである。ジャイアントスパイダーの糸、スパイダーヤーンを使った布がすぐに手に入り、純度の高い金属インゴットも手に入り、おいしい料理もたくさん転がっているとなれば、それは魅力的過ぎたのだ。
 ちなみに商売の方でもいろいろと人はやって来ていた。スパイダーヤーンやインゴットなどの取引の中継地点としての注目度が高いのである。
 フェリスメルでの直接取引と行きたいところだが、フェリスメルには大きな欠点があったのだ。それは、元々が小さな村であった事。村人たちの感覚のずれが、一部の商人たちの間では敬遠されていたのだった。新しい街での取引には、フェリスメルの商業組合が必ず挟まってくれるので、商人たちも安心して取引ができるというわけなのだ。
 まぁ、全部その辺りはアファカやヘンネに任せておけば大丈夫だろう。
「ところで、コネッホ」
「何かな、フェリス」
「帰る前にマイムに会っていく?」
 フェリスがマイムの名前を出すと、コネッホを少し考えていた。
「マイムが居るのか? すぐに会えるなら会っておきたいな」
 どうやら会いたいようである。ただ『すぐに』という単語が付いているので、時間にシビアなのがよく分かる。
「大丈夫よ。頼めるかしらドラコ」
「おお構わんぞ。上流の森の中だろう? そこへ寄ってからでも7日以内にモスレに着く事は可能だな」
 フェリスが話を振ると、ドラコは快く了承していた。どうやら、ドラコの背に乗ってコネッホをモスレまで送り届けるつもりらしい。
「話が早くて助かるわ」
「どれだけの付き合いがあると思っておる。マイムは水の精霊だ。この街の中を流れる水にマイムの魔力を感じるから、すぐにその結論にたどり着いたぞ」
 ドラコもマイムとはしっかり面識があった。というか、フェリスたちは全員が面識を持っているのである。
「マイムの出す水は純度が高くて錬金にはもってこいなんだ。もっと早く話してほしかったな」
「仕方ないでしょう。あたしは街の建設のためにずっと詰めてたし、あんたはあんたでずっと引きこもってたじゃないのよ。タイミングが無さすぎたのよ」
 フェリスとコネッホが互いに文句を言っている。
「まあまあ、二人ともよさないか。アファカたちに挨拶を済ませて、さっさと出掛けようではないか」
 ドラコが仲裁すると、二人ともおとなしくそれに従っていた。さすがは古龍である。
 フェリスたちはアファカとヘンネに挨拶をすると、ドラゴンの姿に戻ったドラコの背に乗った。
「メル、しばらくこの街の事をお願いね。コネッホを送り届けたらすぐ戻ってくるから」
「分かりました、フェリス様。こちらの事はお任せ下さい」
 実に頼りになる返事である。
 というわけで、挨拶を済ませたフェリスたちは、まずはマイムの居る森へ向けて出発した。
 ドラコで移動となると、あっという間にマイムの居る場所にたどり着いた。ルディでも1日掛かるというのに、さすが古龍である。
「おーいマイム。居るかしら?」
 フェリスが泉に呼び掛けると、ざざざっと水が集まっていく。そして、あっという間に人の形を成してしまった。
「フェリス、久しぶりですね」
 マイムが挨拶をすると、
「おー久しぶりだな、マイム」
「本当、久しぶり」
「ドラコとコネッホですか。本当に久しぶりですね」
 ドラコとコネッホも挨拶をする。ルディの時とは違って、マイムは二人の事を毛嫌いしていなかった。
「なるほど、錬金術用の水というわけですか。構いませんよ」
「さっすがマイム。話が早い」
 そう言いながら、コネッホは大きめの容器を取り出して栓を抜く。それをマイムに向けると、マイムはそこへと水を流し込んでいった。
「いやあ、助かる。モスレの街の水は一度浄化しないと使えないからね。マイムの水ならその手間が省けていいし、あたいの魔力との相性がいいからな」
「確かに、不思議と魔力の親和性は高いですね」
 それからというもの、マイムとコネッホは少し語り込んでいた。
「いやあ、久しぶりに話ができてよかった。それにしても定期的にマイムの水は欲しくなるな」
「だったら、そちらの近くの水の精霊に相談してみればいいのです。私に劣るとはいえど、味方に付ければ水に苦労はしなくなるはずですから」
「劣るのなら、また研究し直さないといけないから面倒だな」
「それなら、その水の魔力を覚え込ませればいいだけの事。私の名を出せば、必死になるはずですからね」
「なるほどなぁ」
 マイムの言葉にコネッホはどことなく納得した。こう見えてもマイムは水の精霊王とまではいかなくても、かなり上位の精霊だ。邪神とまで言われたくらいには力も認められているのである。そのマイムに言われたとなれば、精霊だって頑張ってしまうのである。
「では、そろそろ行きなさい。街に早めに戻るのでしょう?」
「そうだった。マイム、水をありがとう」
 コネッホはマイムに礼を言って、ドラコに乗ってフェリスと一緒に飛んでいってしまった。
「……相変わらずのようね。本当に、誰も変わってないんだから」
 一人残されたマイムは、嬉しそうに笑っていたのだった。
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