151 / 290
第151話 邪神ちゃんの錬金術商談
しおりを挟む
コネッホがやって来てから7日ほどが経過した。さすがにこれだけ時間が経つと、それなりに人の姿が見られるようになっていた。特に、コネッホが向かったという話が広まると、それに釣られるようにして人の移動があったらしい。それなりの有名人が向かうと、そりゃあ気になるというものである。
さて、そのコネッホはというと、1週間でかなりの数のポーションをこしらえていた。しかもそれだけではなくて、錬金術師としてあれこれ作っていた。薬の調合や合成だけではなくて、武具への効果付与やら魔道具の作製もお手の物なのだ。本当にこのウサギは何でもできるのである。
「コネッホ、人参持ってきたけど、この辺でいいかしら」
「悪いわね、フェリス。フェリスメルだっけか、そこの人参はみずみずしさに身の締まり、硬さに甘さ、どれをとっても極上品だわね。残念なのはモスレに戻ると味わえなくなるってところか」
非常に落ち込むような事を言いながらも、その手が止まらないコネッホである。根っからの研究者気質の魔族なのである。
「いやまぁ、まったく手が止まらないわね。どんだけ錬金術が好きなのよ……」
その光景には、フェリスもちょっと呆れるばかりである。
「錬金術というのは実にシビアなんだ。少しでも配合の割合やタイミングがずれれば、それだけで別物になる事だって珍しくはない。やり始めたらなかなか手が止められないのはそのせいだよ。そういう意味では、料理とは似て非なるものなんだ」
呆れるフェリスに、大真面目に話をしているコネッホなのである。
「せっかく持って来てもらって悪いからな。後でしっかり食べさせてもらうよ」
「はいはい。1時間くらいしたらまた見に来るからね。アファカさんやヘンネも話があるっぽいみたいな事言ってたから」
「分かった。そのくらいには終われるように作業を調整するよ」
コネッホと言葉を交わしたフェリスは、コネッホの工房となっている建物から出ていったのだった。
工房に一人残ったコネッホは、約束の時間までずっと錬金を行っていたのだった。
約束の1時間後、フェリスがアファカとヘンネを連れてコネッホの工房を訪れると、約束通りコネッホは錬金の作業を終わらせて座っていた。その目の前にはさっきフェリスが届けた人参が皿に盛り付けられていた。
「やあ、約束通り、時間には終わらせておいた。話をするならさっさと始めてくれ」
優雅に人参を生のままでかじりながら、コネッホはフェリスたちに話の催促をしていた。そのコネッホの態度に呆れながらも、フェリスたちも席についてとりあえず話をする事にした。
その会合の席では、とにかくコネッホの錬金術で作ったアイテムの取引の話題が中心となった。
コネッホの錬金術については、さすがにあちこちに話が広まっている。実のところ、センティアでも結構話には出ていたのだが、フェリスの耳にはまったく届いていなかった。なぜか。
「我ながらいい仕事をしたと思ってるのじゃがな」
「どうされたんですか、ドラコ様」
「なんでもないわい。それよりも入居予定者どもの相手をせねばな。あの二人が揃ってあっちに行ってしまった以上、わしらが相手をせねばならんのだからな」
「まったくだ。なんで俺がこんな事をせにゃならん!」
商業組合と隣接した冒険者組合の中では、ドラコとボーゲンがメルや他の職員たちと一緒に移住希望者たちの相手をしていた。
実は、コネッホの情報をセンティアで遮断していたのはドラコの仕業だった。引きこもりのフェリスに下手に情報を与えないための策略だったのだ。それがゆえに、この新しい街で感動の再会となったわけだったのだ。変なところで気を遣うドラコのなのである。にっこにこのドラコを見て、メルはしばらく首を傾げていたのだった。
「こんな感じでしょうかね。コネッホ様のポーションは性能が高いですから、この価格での流通ははっきり言って破格ですよ」
アファカが興奮気味に喋っている。
「実際そうですね。銅貨で買えるポーションなんて、品質は低級ですからね。銀貨に満たない金額で買えるなんてあり得ないわ」
ヘンネも唸っている。
「それだったら、輸送賃を込めて銀貨1枚でどうだ。これなら銅貨20枚分は輸送員に充当できるぞ」
「そうね、関わる人への分配を大きくできるのはいいですね。銀貨1枚でも、この品質ならかなり安いですからね」
コネッホの提案をアファカは受け入れていた。アファカがこれでも安いと言っているのは、コネッホのポーションは1つ上のポーションの低級品質よりも効果が高いからなのである。
それだけの品質を持ちながらも価格が抑えられるのは、単純にコネッホが邪神だからというだけではない。圧倒的なアドバンテージを持つ知識量で、効率の良い作製方法を知っているからである。だから、同じ分量の材料を使ったとしても、一般的な錬金術師とコネッホとの間では恐ろしいまでの差が出てしまうといわけなのだった。
こうやって、コネッホの作ったポーションなどの販売価格が次々と決められていったのである。
コネッホがモスレに戻るために街を離れるまであと1週間。その間に街の形をある程度作ろうと、アファカたちは精力的に動くのだった。
さて、そのコネッホはというと、1週間でかなりの数のポーションをこしらえていた。しかもそれだけではなくて、錬金術師としてあれこれ作っていた。薬の調合や合成だけではなくて、武具への効果付与やら魔道具の作製もお手の物なのだ。本当にこのウサギは何でもできるのである。
「コネッホ、人参持ってきたけど、この辺でいいかしら」
「悪いわね、フェリス。フェリスメルだっけか、そこの人参はみずみずしさに身の締まり、硬さに甘さ、どれをとっても極上品だわね。残念なのはモスレに戻ると味わえなくなるってところか」
非常に落ち込むような事を言いながらも、その手が止まらないコネッホである。根っからの研究者気質の魔族なのである。
「いやまぁ、まったく手が止まらないわね。どんだけ錬金術が好きなのよ……」
その光景には、フェリスもちょっと呆れるばかりである。
「錬金術というのは実にシビアなんだ。少しでも配合の割合やタイミングがずれれば、それだけで別物になる事だって珍しくはない。やり始めたらなかなか手が止められないのはそのせいだよ。そういう意味では、料理とは似て非なるものなんだ」
呆れるフェリスに、大真面目に話をしているコネッホなのである。
「せっかく持って来てもらって悪いからな。後でしっかり食べさせてもらうよ」
「はいはい。1時間くらいしたらまた見に来るからね。アファカさんやヘンネも話があるっぽいみたいな事言ってたから」
「分かった。そのくらいには終われるように作業を調整するよ」
コネッホと言葉を交わしたフェリスは、コネッホの工房となっている建物から出ていったのだった。
工房に一人残ったコネッホは、約束の時間までずっと錬金を行っていたのだった。
約束の1時間後、フェリスがアファカとヘンネを連れてコネッホの工房を訪れると、約束通りコネッホは錬金の作業を終わらせて座っていた。その目の前にはさっきフェリスが届けた人参が皿に盛り付けられていた。
「やあ、約束通り、時間には終わらせておいた。話をするならさっさと始めてくれ」
優雅に人参を生のままでかじりながら、コネッホはフェリスたちに話の催促をしていた。そのコネッホの態度に呆れながらも、フェリスたちも席についてとりあえず話をする事にした。
その会合の席では、とにかくコネッホの錬金術で作ったアイテムの取引の話題が中心となった。
コネッホの錬金術については、さすがにあちこちに話が広まっている。実のところ、センティアでも結構話には出ていたのだが、フェリスの耳にはまったく届いていなかった。なぜか。
「我ながらいい仕事をしたと思ってるのじゃがな」
「どうされたんですか、ドラコ様」
「なんでもないわい。それよりも入居予定者どもの相手をせねばな。あの二人が揃ってあっちに行ってしまった以上、わしらが相手をせねばならんのだからな」
「まったくだ。なんで俺がこんな事をせにゃならん!」
商業組合と隣接した冒険者組合の中では、ドラコとボーゲンがメルや他の職員たちと一緒に移住希望者たちの相手をしていた。
実は、コネッホの情報をセンティアで遮断していたのはドラコの仕業だった。引きこもりのフェリスに下手に情報を与えないための策略だったのだ。それがゆえに、この新しい街で感動の再会となったわけだったのだ。変なところで気を遣うドラコのなのである。にっこにこのドラコを見て、メルはしばらく首を傾げていたのだった。
「こんな感じでしょうかね。コネッホ様のポーションは性能が高いですから、この価格での流通ははっきり言って破格ですよ」
アファカが興奮気味に喋っている。
「実際そうですね。銅貨で買えるポーションなんて、品質は低級ですからね。銀貨に満たない金額で買えるなんてあり得ないわ」
ヘンネも唸っている。
「それだったら、輸送賃を込めて銀貨1枚でどうだ。これなら銅貨20枚分は輸送員に充当できるぞ」
「そうね、関わる人への分配を大きくできるのはいいですね。銀貨1枚でも、この品質ならかなり安いですからね」
コネッホの提案をアファカは受け入れていた。アファカがこれでも安いと言っているのは、コネッホのポーションは1つ上のポーションの低級品質よりも効果が高いからなのである。
それだけの品質を持ちながらも価格が抑えられるのは、単純にコネッホが邪神だからというだけではない。圧倒的なアドバンテージを持つ知識量で、効率の良い作製方法を知っているからである。だから、同じ分量の材料を使ったとしても、一般的な錬金術師とコネッホとの間では恐ろしいまでの差が出てしまうといわけなのだった。
こうやって、コネッホの作ったポーションなどの販売価格が次々と決められていったのである。
コネッホがモスレに戻るために街を離れるまであと1週間。その間に街の形をある程度作ろうと、アファカたちは精力的に動くのだった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる