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第150話 邪神ちゃんとポーション
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一番懸念だった冒険者組合の依頼も、コネッホの提案でどうにかなりそうである。ポーションはどんな種類であろうと常に需要のある商品だ。となれば、その材料の収集というのは常設依頼という事になる。つまりは、依頼が無くなる事がないわけで、常に依頼があるというのは、とても重要な事なのである。
「まあ主だったものは、通常の治癒ポーションと魔力ポーション、それと解毒ポーションと解痺ポーションといったところかな。後は解呪ポーションも作りたいが、その材料はドラコに頼めばどうにかなるからな」
「かっかっかっ、解呪ポーションといえば、わしの角じゃのう。じゃが、角の生え変わりは遅いからそうほいほいと渡せるもんでもないし、角は一番わしの能力に影響があるからなぁ……。まあ、再会の贈り物として特別じゃぞ?」
そう言うと、ドラコはスパッと自分の左の角を切り落としていた。恐ろしく速い手刀、フェリスですら見逃すね。
「助かるわね。これがあれば100本は作れるから、いざって時に助かるわ」
「じゃが、あんまり使う機会がないがな」
「確かにそうだね」
ドラコとコネッホは笑い合う。これにはさすがにアファカはついていけなかった。
「生え変わりが遅いって、どのくらいかかるのですか?」
おどおどしながらも、アファカはドラコに確認をする。
「そうじゃのう。自然に待って10年というところじゃが、実はこれには治癒魔法や治癒ポーションが効くんじゃよ。わしも一応生物じゃからな。そうすれば、最も早い場合は1週間もせんうちに元通りになるぞ」
ドラコは悪びれもなく笑いながら答えている。なんとまぁ、角を切り落としても、それほど致命的にはならないらしい。ただ、最短1週間の場合でも、その間は能力の低下は避けられないそうだ。
「知らんじゃろうが、ドラゴンにとっての急所は心臓と角ぞ。2つを潰さねば首を刎ねようと生き残る奴は居るからな。当然、わしもじゃがな」
ドラコはけらっけらと笑っているが、あまりの衝撃的な事実に全員固まっていた。
「怖い事言わないでよね! てか、自分から弱点をさらさない!」
「フェリスはうるさいのう。教えたところでそれができる奴など、どのくらい居ろう?」
余裕綽々のドラコである。これが古龍の貫禄というものだろうか。
「それにじゃ、わしを殺す方が世界にとっては損失が大きい。わしはどちらかといえば中立勢じゃし、仲良くしておれば人間じゃろうが魔族じゃろうがちゃんと恩恵は与える。さすがのわしも死ぬのは嫌じゃから、襲ってくる奴らは遠慮なく消し炭じゃがな」
明るく話しているドラコだが、実際に戦った事のあるフェリスを含めて、もうそこには言葉がなかった。しかしまぁ、大昔の聖女マリアといい、フェリスといい、よくこのドラコ相手に無事だったものである。
どう見てもドレスを着た幼女であるドラコだが、彼女が本気のオーラを出せば並大抵の者なら立っている事も不可能なのだ。そのくらいに古龍というのは圧倒的な存在なのである。
「まぁそれはそれとして、コネッホならわしの角をちゃんと扱ってくれるからな。こ奴の実績からすれば、そのくらい信用できる」
「そこまで評してくれているなんて、嬉しいな」
ドラコが褒めると、コネッホは嬉しそうに微笑みながら、ドラコの角を魔法鞄にしまい込んだ。
「だったら、お返しにあたいのポーションのすごさを見せてあげる」
そう言って、コネッホは魔法鞄から赤みの濃いピンク色のポーションを取り出した。
「ほう、再生ポーションじゃな。澄んだ緑色の治癒ポーションと違って、外傷への治療に特化させたポーションじゃな。そんなのも持っておったか」
「さすがはドラコ。一発で見抜くなんてさすがだわ」
「だてに長くは生きておらぬぞ」
コネッホとドラコの話についていけない周り。すると、ドラコは頭にポーションを掛けられながら説明をしてくれた。
「再生ポーションというのは、体の組織を再生させる事に特化したポーションじゃ。その気になれば欠損部位を復活させる事もできる。治癒ポーションは病気にも効く分、それほどの高い再生能力は持ち合わせておらん。どちらかといえば体力優先じゃからな」
「そんな違いがあるのですね」
ドラコの説明に全員がぽかーんとした表情をしている。しかし、そんな事をしている間に、ドラコの角が少しだけ戻ってきていた。
「ふむ、さすがはコネッホの薬じゃのう。もう生えてきおったわ」
ドラコは自分の左の角の辺りを触りながら呟いていた。
「とはいえども、再生ポーションは材料が希少じゃからな。さすがに何度も使うには向いておらん。永久機関なんぞにはならんぞ」
これに愕然としたのはアファカとヘンネである。この商人たちは何を考えていたのやら……。
しかし、この反応を見るに、二人は再生ポーションの材料を知らないようである。だからこそ、ドラコはため息を吐いていた。
「第一、その材料の一つが今わしが切り落としたドラゴンの角ぞ。しかも調合成功率が非常に悪い。効果の大きい薬ほど、存在が希少だったり、扱いが繊細だったりする素材ばかりじゃからな」
ここまでドラコにはっきり言われてしまえば、アファカとヘンネはすっぱりと諦めがついた。
とりあえず、薬学知識が付いたところで、アファカは商業組合と冒険者組合の人間を集めて、早速掲示する依頼の取りまとめを始めるのだった。
「まあ主だったものは、通常の治癒ポーションと魔力ポーション、それと解毒ポーションと解痺ポーションといったところかな。後は解呪ポーションも作りたいが、その材料はドラコに頼めばどうにかなるからな」
「かっかっかっ、解呪ポーションといえば、わしの角じゃのう。じゃが、角の生え変わりは遅いからそうほいほいと渡せるもんでもないし、角は一番わしの能力に影響があるからなぁ……。まあ、再会の贈り物として特別じゃぞ?」
そう言うと、ドラコはスパッと自分の左の角を切り落としていた。恐ろしく速い手刀、フェリスですら見逃すね。
「助かるわね。これがあれば100本は作れるから、いざって時に助かるわ」
「じゃが、あんまり使う機会がないがな」
「確かにそうだね」
ドラコとコネッホは笑い合う。これにはさすがにアファカはついていけなかった。
「生え変わりが遅いって、どのくらいかかるのですか?」
おどおどしながらも、アファカはドラコに確認をする。
「そうじゃのう。自然に待って10年というところじゃが、実はこれには治癒魔法や治癒ポーションが効くんじゃよ。わしも一応生物じゃからな。そうすれば、最も早い場合は1週間もせんうちに元通りになるぞ」
ドラコは悪びれもなく笑いながら答えている。なんとまぁ、角を切り落としても、それほど致命的にはならないらしい。ただ、最短1週間の場合でも、その間は能力の低下は避けられないそうだ。
「知らんじゃろうが、ドラゴンにとっての急所は心臓と角ぞ。2つを潰さねば首を刎ねようと生き残る奴は居るからな。当然、わしもじゃがな」
ドラコはけらっけらと笑っているが、あまりの衝撃的な事実に全員固まっていた。
「怖い事言わないでよね! てか、自分から弱点をさらさない!」
「フェリスはうるさいのう。教えたところでそれができる奴など、どのくらい居ろう?」
余裕綽々のドラコである。これが古龍の貫禄というものだろうか。
「それにじゃ、わしを殺す方が世界にとっては損失が大きい。わしはどちらかといえば中立勢じゃし、仲良くしておれば人間じゃろうが魔族じゃろうがちゃんと恩恵は与える。さすがのわしも死ぬのは嫌じゃから、襲ってくる奴らは遠慮なく消し炭じゃがな」
明るく話しているドラコだが、実際に戦った事のあるフェリスを含めて、もうそこには言葉がなかった。しかしまぁ、大昔の聖女マリアといい、フェリスといい、よくこのドラコ相手に無事だったものである。
どう見てもドレスを着た幼女であるドラコだが、彼女が本気のオーラを出せば並大抵の者なら立っている事も不可能なのだ。そのくらいに古龍というのは圧倒的な存在なのである。
「まぁそれはそれとして、コネッホならわしの角をちゃんと扱ってくれるからな。こ奴の実績からすれば、そのくらい信用できる」
「そこまで評してくれているなんて、嬉しいな」
ドラコが褒めると、コネッホは嬉しそうに微笑みながら、ドラコの角を魔法鞄にしまい込んだ。
「だったら、お返しにあたいのポーションのすごさを見せてあげる」
そう言って、コネッホは魔法鞄から赤みの濃いピンク色のポーションを取り出した。
「ほう、再生ポーションじゃな。澄んだ緑色の治癒ポーションと違って、外傷への治療に特化させたポーションじゃな。そんなのも持っておったか」
「さすがはドラコ。一発で見抜くなんてさすがだわ」
「だてに長くは生きておらぬぞ」
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「再生ポーションというのは、体の組織を再生させる事に特化したポーションじゃ。その気になれば欠損部位を復活させる事もできる。治癒ポーションは病気にも効く分、それほどの高い再生能力は持ち合わせておらん。どちらかといえば体力優先じゃからな」
「そんな違いがあるのですね」
ドラコの説明に全員がぽかーんとした表情をしている。しかし、そんな事をしている間に、ドラコの角が少しだけ戻ってきていた。
「ふむ、さすがはコネッホの薬じゃのう。もう生えてきおったわ」
ドラコは自分の左の角の辺りを触りながら呟いていた。
「とはいえども、再生ポーションは材料が希少じゃからな。さすがに何度も使うには向いておらん。永久機関なんぞにはならんぞ」
これに愕然としたのはアファカとヘンネである。この商人たちは何を考えていたのやら……。
しかし、この反応を見るに、二人は再生ポーションの材料を知らないようである。だからこそ、ドラコはため息を吐いていた。
「第一、その材料の一つが今わしが切り落としたドラゴンの角ぞ。しかも調合成功率が非常に悪い。効果の大きい薬ほど、存在が希少だったり、扱いが繊細だったりする素材ばかりじゃからな」
ここまでドラコにはっきり言われてしまえば、アファカとヘンネはすっぱりと諦めがついた。
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