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第149話 邪神ちゃんとアピールポイント
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がっつりと水路を造って、フェリスは簡易キャンプに戻ってくる。そこではメルが食事を作って待ち構えていた。
「フェリス様、お疲れ様です。食事を作っておきましたので、召し上がって下さい」
「さすが、メル。気が利くわね、ありがとう」
「わわっ、フェリス様に褒められました」
フェリスに笑顔で褒められると、メルは頬を押さえて真っ赤になっていた。
本当にメルはフェリスが好きすぎてたまらないのである。あれだけいろんな姿を見せつけられているにもかかわらず、メルのフェリスに対する信頼と信仰はまったく下がる事はなかった。メルはフェリスにぞっこんなのである。あれだけ牛の毛艶が良くなったり、植物が急成長してしかも品質が良いなどの奇跡を見せつけられては、信者になるなというのも無理だろう。ましてやメルはまだそれほど大きくはない少女なのだ。フェリスに心酔するのも無理はなかった。
フェリスの眷属となった事で、メルもかなりいろいろな能力をフェリスから受け継いでいる。フェリスの持つコピー系の能力は劣化が著しいので大したものにはならないけれど、やはり知識はかなり武器になる。そこらの魔法使いや戦士たちに比べても、メルの方が強いくらいなのだ。
フェリスがメルの作った食事を食べていると、そこへアファカがやって来た。
「フェリスさん、お疲れ様です。水路を確認させて頂きました」
どうやら、街に巡らせた水路の話のようである。
フェリスが引いた水路は、商業組合が考えた基本的な4本の水路に加えて、その間を補うように細かく入り組んだ水路が特徴的である。
その構造はこうだ。4本の水路からは何度か小さな水路が枝分かれしている。それを途中で合流させて、そして再び2本に分かれて水路に戻るように設置している。つまり、水路が一本塞がったとしても、バイパス的な役割を果たしてくれるように設計されている。
どうやら、アファカはそれを確認してきたようなのだ。
「正直あれだけ入り組んだ水路は見た事ありませんね。でもまぁ、あれなら街のどこからでもあまり移動せずに水を確保できるのは大きいですが」
アファカは難色を示しているようである。
とはいっても、フェリスだって何も考えずに水路を引いたわけではない。いつも何も考えてないからと言われ続けていたので、今回は必死に頑張って水路を考えて引いたのだ。さすがにこれが評価されないようでは、フェリスも文句を言いたくなるというものである。
「確かに水路が増えれば、それだけ街が分断されてしまいますからね、外敵の侵入経路も増やしてしまいますし、そこは問題かもしれません。ですが、この街はあたしの加護下にあるんですから、そんな不自由はさせませんよ」
フェリスは食事のフォークを握ったままふんすと鼻息荒く釈明している。あまりに力強く説明してくるものだから、アファカもそれ以上は言う事はなかった。落下防止のための柵や蓋がついていたし、これだけ考えているのなら責めるのも野暮かと諦めたのである。アファカがこう思うのも、ひとえにフェリスのやらかした過去があるからこそだった。
「……お小言は住民の使用感を聞いてみてからにします。フェリスさんはもうしばらくこっちに滞在していて下さいね。あなたが基礎を作ったのですからね」
アファカから強く言われて、フェリスは仕方なくそれを了承した。フェリスからすれば人間なんて格下の存在だが、アファカは村の経営を一緒にする者だし、そもそもフェリスに人間を無下にする気持ちなんてこれっぽっちもなかったのだ。
「とりあえず、基本的なところは完成したんですから、次は住民の確保ですね」
話を聞いていたメルが話に割り込んでくる。そして、アファカに対して紅茶を出していた。
「ええ、そうね。各地の商業組合と冒険者組合からの情報では、そこそこの人数が興味を示していました。スパイダーヤーンの生産地であるフェリスメルから至近距離ですからね。おそらくそこが最大の宣伝となっているようです」
「でも、興味を示しても、居つくかどうかは別問題だわね」
「はい。ですので、自給自足を最優先として、農業と畜産はすでに環境を整えております。問題は冒険者たちの方ですね」
アファカは街のいいところと悪いところを挙げて説明してくる。そのおかげで非常に分かりやすくて助かる。
「だったら、この街にもあたいの依頼を出しておいてくれないかい?」
「コネッホ、居たの?」
「ああ、ポーション作りが落ち着いたんでね、食事を貰いに来たのさ。どこぞのポーションジャンキーみたいに不眠不休で作るような真似はしないさ」
コネッホはよく分からない事を言いながら席に着く。すると、メルがフェリスのために作った料理の余りを盛りつけて持ってきた。
「ああ、昔居たわね、そんな奴……」
フェリスにも心当たりがあるようで、呆れたように天井を見ている。
「まあ、さっきの話。あたいは錬金術師で、常にポーションとか薬の材料を欲しがっているからな。在庫はいくらあっても足りない。それに、この魔法鞄があれば、素材は無駄にはならないからな。定期的に使いを出して取りに来させよう」
そんなこんなで話がまとまっていく。
はてさて、新しい街にはどんな住民が居つくのだろうか。今から楽しみなのである。
「フェリス様、お疲れ様です。食事を作っておきましたので、召し上がって下さい」
「さすが、メル。気が利くわね、ありがとう」
「わわっ、フェリス様に褒められました」
フェリスに笑顔で褒められると、メルは頬を押さえて真っ赤になっていた。
本当にメルはフェリスが好きすぎてたまらないのである。あれだけいろんな姿を見せつけられているにもかかわらず、メルのフェリスに対する信頼と信仰はまったく下がる事はなかった。メルはフェリスにぞっこんなのである。あれだけ牛の毛艶が良くなったり、植物が急成長してしかも品質が良いなどの奇跡を見せつけられては、信者になるなというのも無理だろう。ましてやメルはまだそれほど大きくはない少女なのだ。フェリスに心酔するのも無理はなかった。
フェリスの眷属となった事で、メルもかなりいろいろな能力をフェリスから受け継いでいる。フェリスの持つコピー系の能力は劣化が著しいので大したものにはならないけれど、やはり知識はかなり武器になる。そこらの魔法使いや戦士たちに比べても、メルの方が強いくらいなのだ。
フェリスがメルの作った食事を食べていると、そこへアファカがやって来た。
「フェリスさん、お疲れ様です。水路を確認させて頂きました」
どうやら、街に巡らせた水路の話のようである。
フェリスが引いた水路は、商業組合が考えた基本的な4本の水路に加えて、その間を補うように細かく入り組んだ水路が特徴的である。
その構造はこうだ。4本の水路からは何度か小さな水路が枝分かれしている。それを途中で合流させて、そして再び2本に分かれて水路に戻るように設置している。つまり、水路が一本塞がったとしても、バイパス的な役割を果たしてくれるように設計されている。
どうやら、アファカはそれを確認してきたようなのだ。
「正直あれだけ入り組んだ水路は見た事ありませんね。でもまぁ、あれなら街のどこからでもあまり移動せずに水を確保できるのは大きいですが」
アファカは難色を示しているようである。
とはいっても、フェリスだって何も考えずに水路を引いたわけではない。いつも何も考えてないからと言われ続けていたので、今回は必死に頑張って水路を考えて引いたのだ。さすがにこれが評価されないようでは、フェリスも文句を言いたくなるというものである。
「確かに水路が増えれば、それだけ街が分断されてしまいますからね、外敵の侵入経路も増やしてしまいますし、そこは問題かもしれません。ですが、この街はあたしの加護下にあるんですから、そんな不自由はさせませんよ」
フェリスは食事のフォークを握ったままふんすと鼻息荒く釈明している。あまりに力強く説明してくるものだから、アファカもそれ以上は言う事はなかった。落下防止のための柵や蓋がついていたし、これだけ考えているのなら責めるのも野暮かと諦めたのである。アファカがこう思うのも、ひとえにフェリスのやらかした過去があるからこそだった。
「……お小言は住民の使用感を聞いてみてからにします。フェリスさんはもうしばらくこっちに滞在していて下さいね。あなたが基礎を作ったのですからね」
アファカから強く言われて、フェリスは仕方なくそれを了承した。フェリスからすれば人間なんて格下の存在だが、アファカは村の経営を一緒にする者だし、そもそもフェリスに人間を無下にする気持ちなんてこれっぽっちもなかったのだ。
「とりあえず、基本的なところは完成したんですから、次は住民の確保ですね」
話を聞いていたメルが話に割り込んでくる。そして、アファカに対して紅茶を出していた。
「ええ、そうね。各地の商業組合と冒険者組合からの情報では、そこそこの人数が興味を示していました。スパイダーヤーンの生産地であるフェリスメルから至近距離ですからね。おそらくそこが最大の宣伝となっているようです」
「でも、興味を示しても、居つくかどうかは別問題だわね」
「はい。ですので、自給自足を最優先として、農業と畜産はすでに環境を整えております。問題は冒険者たちの方ですね」
アファカは街のいいところと悪いところを挙げて説明してくる。そのおかげで非常に分かりやすくて助かる。
「だったら、この街にもあたいの依頼を出しておいてくれないかい?」
「コネッホ、居たの?」
「ああ、ポーション作りが落ち着いたんでね、食事を貰いに来たのさ。どこぞのポーションジャンキーみたいに不眠不休で作るような真似はしないさ」
コネッホはよく分からない事を言いながら席に着く。すると、メルがフェリスのために作った料理の余りを盛りつけて持ってきた。
「ああ、昔居たわね、そんな奴……」
フェリスにも心当たりがあるようで、呆れたように天井を見ている。
「まあ、さっきの話。あたいは錬金術師で、常にポーションとか薬の材料を欲しがっているからな。在庫はいくらあっても足りない。それに、この魔法鞄があれば、素材は無駄にはならないからな。定期的に使いを出して取りに来させよう」
そんなこんなで話がまとまっていく。
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