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第146話 邪神ちゃんと肉球仲間
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いよいよ落成式が行われ、新しい街が稼働する。そこではフェリスやメルがケーキだとかごちそうを作って、工事に関わったみんなで労いのお祭りが開かれていた。
「いやもう、ここまで早かったわね」
「そうですね。この規模でありながら、30日も掛かってないと思います」
料理を振る舞いながら、フェリスとメルは話をしている。そこへ、ヘンネがやって来た。
「いえ、ちょうど30日程度ってところよ。100棟以上の建物を建てたり、農場を造ったりという割には、本当に早かったですよ」
街の様子を見ながら、ヘンネはため息を吐いていた。
できたばかりの街だというのに、馬とクルークだけはすでに飼育が始まっていた。あとは牛も連れてくれば、畜産業は大まかに揃う事になる。
落成式と称された慰労会の真っただ中、街の外から猛ダッシュで近付いてくる何かが見える。その走りの凄まじさは、その後ろに立つ土煙の大きさでよく分かる。その勢いが凄いものだから、冒険者たちが数名、剣や杖を構えていた。
「いや、あれは大丈夫よ。この魔力は覚えがあるわ」
「ええ、そうですね。どうやら、私たちの知り合いのようです」
フェリスとヘンネが冒険者たちを止める。
「まったくじゃなあ。わしらの中では一番の研究者気質の奴じゃが、足の速さならトップクラスなのじゃよ」
ドラコもすくりと立ち上がっていた。
「フェーリースー!」
土埃から声が聞こえてくる。その声に、フェリスたちは間違いないと確信した。
「あたしたちの仲間のコネッホだわね」
「ええ、錬金術師の邪神コネッホですね」
「丸焼きにし損ねたウサギの魔族じゃな。懐かしいわい」
フェリスたちが懐かしそうに喋っているが、ドラコだけがなぜか物騒だった。
「ドーラーコー! あたいを焼こうとした事はよく覚えてるぞ!」
土埃からそんな声が聞こえてくる。ドラコの呟きが聞こえたらしい。さすが地獄耳だ。
街に入ると、落成式の集団の前でぴたりと止まるコネッホ。ローブのようなジャケットと左目のモノクル、頭には耳穴の開いた帽子をかぶっている。そして、二足歩行で立つウサギ、これこそがフェリスたちの邪神仲間であるウサギのコネッホなのだ。
「久しぶりだな、フェリス、ヘンネ、ドラコ。元気そうで何より」
「よくここが分かったわね」
「あたいの鼻をバカにしてもらっては困る。それこそ世界の果てからでもにおいを嗅ぎつけられるのだからね」
フェリスの言い分に、指を立てて左右に振るコネッホ。
「それだったら、いつでもあたしのところに来れたんじゃ?」
当然の疑問を口にするフェリスだが、コネッホは腰に手を当てて首を左右に振った。
「そうもいかない。戦いが終わった後とはいえども、その事後処理というのは多いんだ。特にあたいは錬金術という能力を持っている。人間にしろ魔族にしろ、治癒魔法や回復魔法が使えない連中は居るから、あたいみたいな錬金術師は重宝されたものさ。今もとある街でお抱えの錬金術師として過ごしているのさ」
「そっか、コネッホも大変だったのね」
コネッホの説明に、素直に感心して労いを口にするフェリス。そこへ、メルが料理をもってやって来た。
「よろしかったらこちらをどうぞ。長旅でお疲れでしょうから、召し上がって下さい」
コネッホはメルが差し出した料理を受け取る。
「おっ、これは気が利くな。魔力からすると、フェリスの眷属かい?」
「さすがに分かるかな。そう、あたしの眷属のメルよ」
「メルと申します。よろしくお願い致します」
フェリスが紹介すると、メルは頭を下げていた。
「おやおや、結構素直な娘だな。自分勝手なフェリスにはもったいないお嬢さんだ」
コネッホは大声で笑いながら、メルの頭を撫でている。人っぽい5本指の手をしているコネッホだが、フェリスと同じように肉球があるので、その撫でられ心地はなかなかにいいものがあった。ついついメルも気持ちよさそうな顔をしてしまう。
「ふふーん、可愛いね。なあフェリス、この子を貰って帰ってもいいかい?」
「ダメに決まってるでしょうが! メルはあたしの眷属よ。自分のを作りなさいっていうのよ」
コネッホの申し出を秒で却下するフェリス。さすがは眷属とはいえども実質フェリスの妹分のメルに対する扱いである。
「まったく、ものを扱うみたいに軽々に言うんじゃないわよ」
フェリスは機嫌が悪そうにコネッホを睨み付けた。
「はははっ、相当にこの子を気に入っているようだね。うん、悪かったよ、フェリス」
コネッホは謝っているが、表情を見る限り口だけのようである。こういうところはさすが邪神といったところだろうか。
「時に、ここが住民募集の出ていた新しい街かい?」
「ええ、そうよ。商業組合を通じて募集が出ているらしいわね」
「ああ、あたいの今住んでる街にも出ていたよ。それを見たからこうやってやって来たってわけさ」
コネッホはフェリスにこの場所に来た理由を正直に話している。
「てなわけだ。向こうには1か月くらいで戻るとは言ってあるし、しばらく厄介になるぞ、フェリス」
「はあ?!」
そんなわけで、新しい街にコネッホがしばらく居つく事になってしまったのだった。
「いやもう、ここまで早かったわね」
「そうですね。この規模でありながら、30日も掛かってないと思います」
料理を振る舞いながら、フェリスとメルは話をしている。そこへ、ヘンネがやって来た。
「いえ、ちょうど30日程度ってところよ。100棟以上の建物を建てたり、農場を造ったりという割には、本当に早かったですよ」
街の様子を見ながら、ヘンネはため息を吐いていた。
できたばかりの街だというのに、馬とクルークだけはすでに飼育が始まっていた。あとは牛も連れてくれば、畜産業は大まかに揃う事になる。
落成式と称された慰労会の真っただ中、街の外から猛ダッシュで近付いてくる何かが見える。その走りの凄まじさは、その後ろに立つ土煙の大きさでよく分かる。その勢いが凄いものだから、冒険者たちが数名、剣や杖を構えていた。
「いや、あれは大丈夫よ。この魔力は覚えがあるわ」
「ええ、そうですね。どうやら、私たちの知り合いのようです」
フェリスとヘンネが冒険者たちを止める。
「まったくじゃなあ。わしらの中では一番の研究者気質の奴じゃが、足の速さならトップクラスなのじゃよ」
ドラコもすくりと立ち上がっていた。
「フェーリースー!」
土埃から声が聞こえてくる。その声に、フェリスたちは間違いないと確信した。
「あたしたちの仲間のコネッホだわね」
「ええ、錬金術師の邪神コネッホですね」
「丸焼きにし損ねたウサギの魔族じゃな。懐かしいわい」
フェリスたちが懐かしそうに喋っているが、ドラコだけがなぜか物騒だった。
「ドーラーコー! あたいを焼こうとした事はよく覚えてるぞ!」
土埃からそんな声が聞こえてくる。ドラコの呟きが聞こえたらしい。さすが地獄耳だ。
街に入ると、落成式の集団の前でぴたりと止まるコネッホ。ローブのようなジャケットと左目のモノクル、頭には耳穴の開いた帽子をかぶっている。そして、二足歩行で立つウサギ、これこそがフェリスたちの邪神仲間であるウサギのコネッホなのだ。
「久しぶりだな、フェリス、ヘンネ、ドラコ。元気そうで何より」
「よくここが分かったわね」
「あたいの鼻をバカにしてもらっては困る。それこそ世界の果てからでもにおいを嗅ぎつけられるのだからね」
フェリスの言い分に、指を立てて左右に振るコネッホ。
「それだったら、いつでもあたしのところに来れたんじゃ?」
当然の疑問を口にするフェリスだが、コネッホは腰に手を当てて首を左右に振った。
「そうもいかない。戦いが終わった後とはいえども、その事後処理というのは多いんだ。特にあたいは錬金術という能力を持っている。人間にしろ魔族にしろ、治癒魔法や回復魔法が使えない連中は居るから、あたいみたいな錬金術師は重宝されたものさ。今もとある街でお抱えの錬金術師として過ごしているのさ」
「そっか、コネッホも大変だったのね」
コネッホの説明に、素直に感心して労いを口にするフェリス。そこへ、メルが料理をもってやって来た。
「よろしかったらこちらをどうぞ。長旅でお疲れでしょうから、召し上がって下さい」
コネッホはメルが差し出した料理を受け取る。
「おっ、これは気が利くな。魔力からすると、フェリスの眷属かい?」
「さすがに分かるかな。そう、あたしの眷属のメルよ」
「メルと申します。よろしくお願い致します」
フェリスが紹介すると、メルは頭を下げていた。
「おやおや、結構素直な娘だな。自分勝手なフェリスにはもったいないお嬢さんだ」
コネッホは大声で笑いながら、メルの頭を撫でている。人っぽい5本指の手をしているコネッホだが、フェリスと同じように肉球があるので、その撫でられ心地はなかなかにいいものがあった。ついついメルも気持ちよさそうな顔をしてしまう。
「ふふーん、可愛いね。なあフェリス、この子を貰って帰ってもいいかい?」
「ダメに決まってるでしょうが! メルはあたしの眷属よ。自分のを作りなさいっていうのよ」
コネッホの申し出を秒で却下するフェリス。さすがは眷属とはいえども実質フェリスの妹分のメルに対する扱いである。
「まったく、ものを扱うみたいに軽々に言うんじゃないわよ」
フェリスは機嫌が悪そうにコネッホを睨み付けた。
「はははっ、相当にこの子を気に入っているようだね。うん、悪かったよ、フェリス」
コネッホは謝っているが、表情を見る限り口だけのようである。こういうところはさすが邪神といったところだろうか。
「時に、ここが住民募集の出ていた新しい街かい?」
「ええ、そうよ。商業組合を通じて募集が出ているらしいわね」
「ああ、あたいの今住んでる街にも出ていたよ。それを見たからこうやってやって来たってわけさ」
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「てなわけだ。向こうには1か月くらいで戻るとは言ってあるし、しばらく厄介になるぞ、フェリス」
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