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第144話 邪神ちゃんと街の展望
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商業組合は住民募集、冒険者組合は土木作業と、2つの組合は役割を分担して、新しい街の建設を進めていく。この間、フェリスはずっと新しい街の予定地に留まって作業に当たっている人たちのサポートに回っていた。メルは落ち着いたように対応しているものの、フェリスはちょっと顔に不満が現れていた。
「ダメですよ、フェリス様。元々フェリス様がここに街を造ろうとして整地をしたのが原因なんですから」
「うう、そうなんだけどね……」
すっかり慣れてしまったメルにまで諭されるフェリス。フェリスは不満そうではあるものの、メルと二人で後方支援しているからこそ、建設は順調に進んでいるのだ。
街の予定地にはドラコとヘンネが時々やって来る。ぶっちゃけてしまえば、フェリスを制御できるのはこの二人だけだから仕方がないと言える。だが、二人がこの地にやって来るのには、他の理由もあった。
「これだけの資材を一度に運べるのはわしだけじゃからな。いい暇つぶしになるわい」
そう、ドラコは資材の運搬である。建築用の木材は当然だけれども、料理の材料なんかも運んでいる。これもアファカの作戦である。ドラコに食材を持って行かせて、フェリスを新しい街の建設に閉じ込めておくためである。
フェリスは物事の処理能力は高いものの、同時に余計な事を思いついて引っ掻き回すところがある。それをさせないために、先回りで潰しているのだ。おかげでフェリスは目論見通りに新しい街の建設地に閉じ込められてしまっていた。それが、フェリスの不満顔の理由の一つである。まあ、自業自得である。
ヘンネがやって来るのは、農業や畜産業のためである。特に馬とクルークはできる限り早く新しい街に移動させたいのだ。動物や魔物というのは、環境の影響を受けやすい。だから、こうやって時々見に来てタイミングを見計らっているのである。
「ねえ、ヘンネ」
「何でしょうか、フェリス」
そんな折、フェリスがヘンネに話しかける。
「馬以外の移動手段って確保できないのかしらね。背中に乗って走れる魔物なんてのは、それなりに居たと思うんだけど」
「それは確かに居ますね。レッサーワイバーンとかダッシュリザードとか、あとはフェザーバニーといったところですかね」
フェリスの質問に、具体的な名前を出していくヘンネ。しかし、その表情はあまりよろしくないといった感じだ。
「フェリスの考えている事は分かりましたが、はっきり無理とだけ言っておきましょう」
「なんでよ」
ヘンネの回答に、フェリスは怒っている。
「単純に魔物だからです。飼育技術が確立されていないのなら、人間たちにとっては危険でしかありません。騎乗した人物が迎撃されないとは限りませんからね」
「むぅ……、そっか」
ヘンネの挙げた理由に、フェリスは納得せざるを得なかった。しかし、フェリスは諦めきれないようだ。
「危険性が無くなれば、可能かしらね」
「それは分かりませんよ。人だけではなく、荷物の運搬もあります。魔物にそこまでの調教が課せられるか不明ですし、ちゃんと聞いてくれるかという問題もあります。そう簡単にはいかないのですよ」
「むむむむ……」
フェリスはヘンネに完全に説き伏せられてしまった。
「ですが、着眼点はいいと思いますよ。ワイバーンとかリザードとかは、ドラコ様の言う事を聞くでしょうからね。ドラゴンとトカゲは大違いですけれど、系統としては同じなんですよ」
ヘンネは片目を閉じて腕を組みながら話をしている。
「魔物となれば馬よりも力があります。ただ、体躯も大きいですから場所によって使い分ける事も必要でしょうね」
「ふむふむ」
ヘンネの説明を、フェリスはおとなしく聞いている。
「で・す・が、すぐに実行に移すのは無理です。まずは街を造って安定させなければなりません。挑戦をするならその後ですね」
「それってどれくらいよ」
「短くて半年といったところでしょう。人を集めて町長を決めて、生活基盤を安定させないと新しい事は始められませんから」
ヘンネに厳しい現実を突きつけられて、フェリスはその場で両手両膝をついて落ち込むのだった。
「そ、そんなに掛かるの……?」
「ええ、そうです。ですので、しばらくはおとなしくして頂けると助かります。本当に、フェリスのせいで村の経営がめちゃくちゃになり掛かってるんですから、反省と自重を覚えて下さい」
ヘンネから追い打ちのような言葉を掛けられると、フェリスはしばらくその場を動けなかった。なので、ヘンネはメルにフェリスの事を任せて、街の状況を確認してフェリスメルへと戻っていった。
フェリスが落ち込んでいる間もどんどんと街の建設は進んでいき、7日も経てば大まかな施設はほとんどができ上がってしまった。
「後は、住民の住む家くらいだな。野郎ども、一気に仕上げちまうぞ!」
「おうっ!」
冒険者たちはとても元気だった。フェリスメルからの正式な依頼であり、その給金もかなり高いから気合いの入り方が違うのである。そういった冒険者たちの現金な姿を見て、フェリスは落ち込みから立ち直っていったのである。
新しい街の完成も、もう目の前なのであった。
「ダメですよ、フェリス様。元々フェリス様がここに街を造ろうとして整地をしたのが原因なんですから」
「うう、そうなんだけどね……」
すっかり慣れてしまったメルにまで諭されるフェリス。フェリスは不満そうではあるものの、メルと二人で後方支援しているからこそ、建設は順調に進んでいるのだ。
街の予定地にはドラコとヘンネが時々やって来る。ぶっちゃけてしまえば、フェリスを制御できるのはこの二人だけだから仕方がないと言える。だが、二人がこの地にやって来るのには、他の理由もあった。
「これだけの資材を一度に運べるのはわしだけじゃからな。いい暇つぶしになるわい」
そう、ドラコは資材の運搬である。建築用の木材は当然だけれども、料理の材料なんかも運んでいる。これもアファカの作戦である。ドラコに食材を持って行かせて、フェリスを新しい街の建設に閉じ込めておくためである。
フェリスは物事の処理能力は高いものの、同時に余計な事を思いついて引っ掻き回すところがある。それをさせないために、先回りで潰しているのだ。おかげでフェリスは目論見通りに新しい街の建設地に閉じ込められてしまっていた。それが、フェリスの不満顔の理由の一つである。まあ、自業自得である。
ヘンネがやって来るのは、農業や畜産業のためである。特に馬とクルークはできる限り早く新しい街に移動させたいのだ。動物や魔物というのは、環境の影響を受けやすい。だから、こうやって時々見に来てタイミングを見計らっているのである。
「ねえ、ヘンネ」
「何でしょうか、フェリス」
そんな折、フェリスがヘンネに話しかける。
「馬以外の移動手段って確保できないのかしらね。背中に乗って走れる魔物なんてのは、それなりに居たと思うんだけど」
「それは確かに居ますね。レッサーワイバーンとかダッシュリザードとか、あとはフェザーバニーといったところですかね」
フェリスの質問に、具体的な名前を出していくヘンネ。しかし、その表情はあまりよろしくないといった感じだ。
「フェリスの考えている事は分かりましたが、はっきり無理とだけ言っておきましょう」
「なんでよ」
ヘンネの回答に、フェリスは怒っている。
「単純に魔物だからです。飼育技術が確立されていないのなら、人間たちにとっては危険でしかありません。騎乗した人物が迎撃されないとは限りませんからね」
「むぅ……、そっか」
ヘンネの挙げた理由に、フェリスは納得せざるを得なかった。しかし、フェリスは諦めきれないようだ。
「危険性が無くなれば、可能かしらね」
「それは分かりませんよ。人だけではなく、荷物の運搬もあります。魔物にそこまでの調教が課せられるか不明ですし、ちゃんと聞いてくれるかという問題もあります。そう簡単にはいかないのですよ」
「むむむむ……」
フェリスはヘンネに完全に説き伏せられてしまった。
「ですが、着眼点はいいと思いますよ。ワイバーンとかリザードとかは、ドラコ様の言う事を聞くでしょうからね。ドラゴンとトカゲは大違いですけれど、系統としては同じなんですよ」
ヘンネは片目を閉じて腕を組みながら話をしている。
「魔物となれば馬よりも力があります。ただ、体躯も大きいですから場所によって使い分ける事も必要でしょうね」
「ふむふむ」
ヘンネの説明を、フェリスはおとなしく聞いている。
「で・す・が、すぐに実行に移すのは無理です。まずは街を造って安定させなければなりません。挑戦をするならその後ですね」
「それってどれくらいよ」
「短くて半年といったところでしょう。人を集めて町長を決めて、生活基盤を安定させないと新しい事は始められませんから」
ヘンネに厳しい現実を突きつけられて、フェリスはその場で両手両膝をついて落ち込むのだった。
「そ、そんなに掛かるの……?」
「ええ、そうです。ですので、しばらくはおとなしくして頂けると助かります。本当に、フェリスのせいで村の経営がめちゃくちゃになり掛かってるんですから、反省と自重を覚えて下さい」
ヘンネから追い打ちのような言葉を掛けられると、フェリスはしばらくその場を動けなかった。なので、ヘンネはメルにフェリスの事を任せて、街の状況を確認してフェリスメルへと戻っていった。
フェリスが落ち込んでいる間もどんどんと街の建設は進んでいき、7日も経てば大まかな施設はほとんどができ上がってしまった。
「後は、住民の住む家くらいだな。野郎ども、一気に仕上げちまうぞ!」
「おうっ!」
冒険者たちはとても元気だった。フェリスメルからの正式な依頼であり、その給金もかなり高いから気合いの入り方が違うのである。そういった冒険者たちの現金な姿を見て、フェリスは落ち込みから立ち直っていったのである。
新しい街の完成も、もう目の前なのであった。
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