邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

文字の大きさ
上 下
140 / 290

第140話 邪神ちゃんのやらかしの後始末

しおりを挟む
 翌日、新しい村の候補地フェリスのやらかしを見に来たアファカとヘンネは、はっきり言って呆れていた。既に整地された土地と立派な石橋、これだけで既に頭を抱える案件だった。それでも、フェリスの突発的な思い付きの割には、割と考えられた土地の配置になっていたのでそこまでの頭痛の種にはならなかった。
 しかし、ここでも改めてアファカとヘンネに怒られているフェリスである。
「かっかっかっ、相変わらず面白い奴よのう、フェリスは!」
 どういうわけか勝手について来ていたドラコが大笑いしている。実に楽しそうである。
「しっかし、ずいぶんときれいにしたもんじゃのう。まぁ、村にするつもりならこれくらいは当たり前なのかも知れんな」
 どうやらよく分かっていないようである。さすがはドラゴンだった。
 ドラコが素っ頓狂な感想を喋っている間も、アファカとヘンネは二人で話し合っていた。建物を建てるつもりの場所は地面が固く、牧場や農地にする予定の場所の地面は柔らかく仕上がっているし、地面も一部は石畳が敷かれていた。フェリスにしては珍しく、区画の構想がしっかりしていたのである。アファカとヘンネはジト目をフェリスに向けていた。
「な、なによ!」
「いえ、これだけちゃんとした構想ができているので、本当にフェリスか疑いたくなっただけです。昔っから引きこもりで行き当たりばったりな事ばかりをしていましたからね。正気を疑いたくなるんですよ」
「し、失礼ねっ!」
 ヘンネの言い分に激おこのフェリスだが、実にその通りなだけに視線だけはまったく合わせようとしなかった。その様子を見ていたドラコがまた笑っている。
「まあ、やってしまったものは仕方ないですね。この整地状況を見て計画を立てましょう。フェリスメルへの移住希望者は増えていますし、これはちょうどよかったかもしれませんね」
 アファカがこう言うと、フェリスがドヤ顔を決めていた。ただし、すぐにヘンネが睨み付けたのですぐに視線を逸らしてごまかしていた。本当にこの猫の邪神ときたらお調子者である。
「冒険者協会の方にも見てもらって、私たち双方の意見を取りまとめて、建設を始めましょう。はぁ……、これは忙しくなりますね」
 アファカが頭を押さえていた。
 アファカがこうなるのも無理はない。フェリスの語った暴論は呆れるものなのだが、その一方で納得も行くものだったからだ。
 とりあえずは現場を見終えたフェリスたちは、フェリスメルへと戻っていった。

「まぁ、こんなもんじゃろう。これでいいかの、ヘンネ」
「ええ、さすがはドラコ様ですね。あの場所の地図が完璧に再現されています」
 商業組合に戻ると、ヘンネはドラコに頼んであの場所を再現してもらっていた。川に架かった石橋、整地された土地、敷き詰められた石畳、無造作に盛られていた丘。そのすべてがドラコの鱗と魔力によって、立体地図となって会議室のテーブルの上に置かれていた。
「おいおい、俺たちまで呼び出して一体何をしようってんだ?」
 そこへ、生傷の痛々しいむさくるしい男がやって来た。冒険者組合の組合長ボーゲンである。
「ボーゲン、よく来てくれましたね。正直話し合いができるか心配でしたが、安心しました」
「おいおい、そっちから誘ってきておいて言ってくれるな。体を動かす仕事ができるって聞いたから来てやったのによ」
 アファカがほっとしていると、言い分が不満なボーゲンは愚痴を吐いていた。
「仕方ありませんよ。あなたがそこまで話が分かると思われていないのですからね」
「何をぉ?」
 アファカがすましたように言うから、ボーゲンは半分キレている。
「まぁまぁ。アファカさんもいちいち煽らないで下さい。それだとできる話もできなくなっちゃいます」
「それもそうですね。失礼致しました」
 フェリスが窘めると、アファカも悪乗りをしたと一応謝罪していた。……フェリスに対して。
「とりあえず、そこの男にも言うておくが、フェリスの阿呆が近くに村を整備しようとし出してな。ここにある通りの場所を用意しおったのじゃ。そこで、手の空いておる冒険者に建設を手伝ってもらいたいというわけじゃ。もちろん報酬は弾むぞ」
 この状況なせいで、ドラコが代わって説明をしていた。アファカとボーゲンの仲が悪いせいである。それにしても、ちゃっかりドラコはフェリスのやらかしに呆れていたようである。何も考えてないのに行動力だけあるのは、本当に迷惑なのだ。
 ところが、ドラコの説明を聞いて、ボーゲンは真剣に悩んでいた。脳筋のようにしか見えないが、組合長をやるだけあってかこれでも考える頭はあるようだ。
 そして、ボーゲンの結論が出るまで、それほど時間は要さなかった。
「いいだろう。アファカの態度は気に食わねえが、仕事があるってんなら歓迎だ。それで、人数や予算とかはどうなんだ? 工事は急ぐのか?」
「まあ慌てなさんな。ヘンネ、詳しい事はお前さんから説明してくれ。それと、アファカは通常業務に戻ってくれ。どうにもこの男との相性が悪いようだからな」
 ボーゲンが食い気味に聞いてくるので、とりあえず会議の体裁を整えるドラコ。こうして、フェリスまでもが部屋を追い出され、ドラコとヘンネとボーゲンの三人で話し合いが持たれたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。

まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。 泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。 それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ! 【手直しての再掲載です】 いつも通り、ふんわり設定です。 いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*) Copyright©︎2022-まるねこ

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...