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第140話 邪神ちゃんのやらかしの後始末
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翌日、新しい村の候補地を見に来たアファカとヘンネは、はっきり言って呆れていた。既に整地された土地と立派な石橋、これだけで既に頭を抱える案件だった。それでも、フェリスの突発的な思い付きの割には、割と考えられた土地の配置になっていたのでそこまでの頭痛の種にはならなかった。
しかし、ここでも改めてアファカとヘンネに怒られているフェリスである。
「かっかっかっ、相変わらず面白い奴よのう、フェリスは!」
どういうわけか勝手について来ていたドラコが大笑いしている。実に楽しそうである。
「しっかし、ずいぶんときれいにしたもんじゃのう。まぁ、村にするつもりならこれくらいは当たり前なのかも知れんな」
どうやらよく分かっていないようである。さすがはドラゴンだった。
ドラコが素っ頓狂な感想を喋っている間も、アファカとヘンネは二人で話し合っていた。建物を建てるつもりの場所は地面が固く、牧場や農地にする予定の場所の地面は柔らかく仕上がっているし、地面も一部は石畳が敷かれていた。フェリスにしては珍しく、区画の構想がしっかりしていたのである。アファカとヘンネはジト目をフェリスに向けていた。
「な、なによ!」
「いえ、これだけちゃんとした構想ができているので、本当にフェリスか疑いたくなっただけです。昔っから引きこもりで行き当たりばったりな事ばかりをしていましたからね。正気を疑いたくなるんですよ」
「し、失礼ねっ!」
ヘンネの言い分に激おこのフェリスだが、実にその通りなだけに視線だけはまったく合わせようとしなかった。その様子を見ていたドラコがまた笑っている。
「まあ、やってしまったものは仕方ないですね。この整地状況を見て計画を立てましょう。フェリスメルへの移住希望者は増えていますし、これはちょうどよかったかもしれませんね」
アファカがこう言うと、フェリスがドヤ顔を決めていた。ただし、すぐにヘンネが睨み付けたのですぐに視線を逸らしてごまかしていた。本当にこの猫の邪神ときたらお調子者である。
「冒険者協会の方にも見てもらって、私たち双方の意見を取りまとめて、建設を始めましょう。はぁ……、これは忙しくなりますね」
アファカが頭を押さえていた。
アファカがこうなるのも無理はない。フェリスの語った暴論は呆れるものなのだが、その一方で納得も行くものだったからだ。
とりあえずは現場を見終えたフェリスたちは、フェリスメルへと戻っていった。
「まぁ、こんなもんじゃろう。これでいいかの、ヘンネ」
「ええ、さすがはドラコ様ですね。あの場所の地図が完璧に再現されています」
商業組合に戻ると、ヘンネはドラコに頼んであの場所を再現してもらっていた。川に架かった石橋、整地された土地、敷き詰められた石畳、無造作に盛られていた丘。そのすべてがドラコの鱗と魔力によって、立体地図となって会議室のテーブルの上に置かれていた。
「おいおい、俺たちまで呼び出して一体何をしようってんだ?」
そこへ、生傷の痛々しいむさくるしい男がやって来た。冒険者組合の組合長ボーゲンである。
「ボーゲン、よく来てくれましたね。正直話し合いができるか心配でしたが、安心しました」
「おいおい、そっちから誘ってきておいて言ってくれるな。体を動かす仕事ができるって聞いたから来てやったのによ」
アファカがほっとしていると、言い分が不満なボーゲンは愚痴を吐いていた。
「仕方ありませんよ。あなたがそこまで話が分かると思われていないのですからね」
「何をぉ?」
アファカがすましたように言うから、ボーゲンは半分キレている。
「まぁまぁ。アファカさんもいちいち煽らないで下さい。それだとできる話もできなくなっちゃいます」
「それもそうですね。失礼致しました」
フェリスが窘めると、アファカも悪乗りをしたと一応謝罪していた。……フェリスに対して。
「とりあえず、そこの男にも言うておくが、フェリスの阿呆が近くに村を整備しようとし出してな。ここにある通りの場所を用意しおったのじゃ。そこで、手の空いておる冒険者に建設を手伝ってもらいたいというわけじゃ。もちろん報酬は弾むぞ」
この状況なせいで、ドラコが代わって説明をしていた。アファカとボーゲンの仲が悪いせいである。それにしても、ちゃっかりドラコはフェリスのやらかしに呆れていたようである。何も考えてないのに行動力だけあるのは、本当に迷惑なのだ。
ところが、ドラコの説明を聞いて、ボーゲンは真剣に悩んでいた。脳筋のようにしか見えないが、組合長をやるだけあってかこれでも考える頭はあるようだ。
そして、ボーゲンの結論が出るまで、それほど時間は要さなかった。
「いいだろう。アファカの態度は気に食わねえが、仕事があるってんなら歓迎だ。それで、人数や予算とかはどうなんだ? 工事は急ぐのか?」
「まあ慌てなさんな。ヘンネ、詳しい事はお前さんから説明してくれ。それと、アファカは通常業務に戻ってくれ。どうにもこの男との相性が悪いようだからな」
ボーゲンが食い気味に聞いてくるので、とりあえず会議の体裁を整えるドラコ。こうして、フェリスまでもが部屋を追い出され、ドラコとヘンネとボーゲンの三人で話し合いが持たれたのだった。
しかし、ここでも改めてアファカとヘンネに怒られているフェリスである。
「かっかっかっ、相変わらず面白い奴よのう、フェリスは!」
どういうわけか勝手について来ていたドラコが大笑いしている。実に楽しそうである。
「しっかし、ずいぶんときれいにしたもんじゃのう。まぁ、村にするつもりならこれくらいは当たり前なのかも知れんな」
どうやらよく分かっていないようである。さすがはドラゴンだった。
ドラコが素っ頓狂な感想を喋っている間も、アファカとヘンネは二人で話し合っていた。建物を建てるつもりの場所は地面が固く、牧場や農地にする予定の場所の地面は柔らかく仕上がっているし、地面も一部は石畳が敷かれていた。フェリスにしては珍しく、区画の構想がしっかりしていたのである。アファカとヘンネはジト目をフェリスに向けていた。
「な、なによ!」
「いえ、これだけちゃんとした構想ができているので、本当にフェリスか疑いたくなっただけです。昔っから引きこもりで行き当たりばったりな事ばかりをしていましたからね。正気を疑いたくなるんですよ」
「し、失礼ねっ!」
ヘンネの言い分に激おこのフェリスだが、実にその通りなだけに視線だけはまったく合わせようとしなかった。その様子を見ていたドラコがまた笑っている。
「まあ、やってしまったものは仕方ないですね。この整地状況を見て計画を立てましょう。フェリスメルへの移住希望者は増えていますし、これはちょうどよかったかもしれませんね」
アファカがこう言うと、フェリスがドヤ顔を決めていた。ただし、すぐにヘンネが睨み付けたのですぐに視線を逸らしてごまかしていた。本当にこの猫の邪神ときたらお調子者である。
「冒険者協会の方にも見てもらって、私たち双方の意見を取りまとめて、建設を始めましょう。はぁ……、これは忙しくなりますね」
アファカが頭を押さえていた。
アファカがこうなるのも無理はない。フェリスの語った暴論は呆れるものなのだが、その一方で納得も行くものだったからだ。
とりあえずは現場を見終えたフェリスたちは、フェリスメルへと戻っていった。
「まぁ、こんなもんじゃろう。これでいいかの、ヘンネ」
「ええ、さすがはドラコ様ですね。あの場所の地図が完璧に再現されています」
商業組合に戻ると、ヘンネはドラコに頼んであの場所を再現してもらっていた。川に架かった石橋、整地された土地、敷き詰められた石畳、無造作に盛られていた丘。そのすべてがドラコの鱗と魔力によって、立体地図となって会議室のテーブルの上に置かれていた。
「おいおい、俺たちまで呼び出して一体何をしようってんだ?」
そこへ、生傷の痛々しいむさくるしい男がやって来た。冒険者組合の組合長ボーゲンである。
「ボーゲン、よく来てくれましたね。正直話し合いができるか心配でしたが、安心しました」
「おいおい、そっちから誘ってきておいて言ってくれるな。体を動かす仕事ができるって聞いたから来てやったのによ」
アファカがほっとしていると、言い分が不満なボーゲンは愚痴を吐いていた。
「仕方ありませんよ。あなたがそこまで話が分かると思われていないのですからね」
「何をぉ?」
アファカがすましたように言うから、ボーゲンは半分キレている。
「まぁまぁ。アファカさんもいちいち煽らないで下さい。それだとできる話もできなくなっちゃいます」
「それもそうですね。失礼致しました」
フェリスが窘めると、アファカも悪乗りをしたと一応謝罪していた。……フェリスに対して。
「とりあえず、そこの男にも言うておくが、フェリスの阿呆が近くに村を整備しようとし出してな。ここにある通りの場所を用意しおったのじゃ。そこで、手の空いておる冒険者に建設を手伝ってもらいたいというわけじゃ。もちろん報酬は弾むぞ」
この状況なせいで、ドラコが代わって説明をしていた。アファカとボーゲンの仲が悪いせいである。それにしても、ちゃっかりドラコはフェリスのやらかしに呆れていたようである。何も考えてないのに行動力だけあるのは、本当に迷惑なのだ。
ところが、ドラコの説明を聞いて、ボーゲンは真剣に悩んでいた。脳筋のようにしか見えないが、組合長をやるだけあってかこれでも考える頭はあるようだ。
そして、ボーゲンの結論が出るまで、それほど時間は要さなかった。
「いいだろう。アファカの態度は気に食わねえが、仕事があるってんなら歓迎だ。それで、人数や予算とかはどうなんだ? 工事は急ぐのか?」
「まあ慌てなさんな。ヘンネ、詳しい事はお前さんから説明してくれ。それと、アファカは通常業務に戻ってくれ。どうにもこの男との相性が悪いようだからな」
ボーゲンが食い気味に聞いてくるので、とりあえず会議の体裁を整えるドラコ。こうして、フェリスまでもが部屋を追い出され、ドラコとヘンネとボーゲンの三人で話し合いが持たれたのだった。
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