邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

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第139話 邪神ちゃんのないなら作ってしまえ作戦

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 そんなわけで、翌日から早速、ジャイアントスパイダーの餌の募集依頼が貼り出された。それを見つけたルディが、早速フェリスの元に駆け込んできた。
「おい、なんだあの餌募集って依頼は!」
 ルディはものすごく怒っているようだ。
「なにって、あんたの負担を減らす施策でしょうが。あれだけクモが増えちゃった以上、あんた一人でカバーできる範囲ってのはそろそろ限界を迎えてるはずだもの」
「あー、俺は別にお構わねえんだがなぁ……。まあクモが増え過ぎたのは頷くけどよ」
 理由を聞いてもルディは不機嫌そうだった。気を回そうとしても当の本人はこれである。正直頭が痛い。
「とりあえずさ、これ以上クモが増えるようだったら、飼育場を増設しなきゃいけないんだからね。そうなるとしばらく餌を取ってこれなくなるでしょう?」
「あー? そんなの関係ないなぁ。俺の楽しみを取ろうとすんじゃねえよ」
 ダメだ。何を言ってもルディには通じそうになかった。ここまで頭悪いのか。
「しょうがないわねぇ。今度クモの飼育場を移住者の居住区の方に作るから、そっちに回す餌を集める事にするわ。あとで泣き言言ってもあたしは知らないからね」
 フェリスはルディをまともに相手にする事を諦めた。人の話を聞きやしないのだから。これだから犬っころの相手は疲れるんだと、フェリスはそんな顔をしていた。
 ルディの説得を諦めたフェリスは、冒険者組合に出す依頼を選定するために、フェリスメルの周囲の状況を再確認に向かう。ボア以外の魔物が居ないかとか、使えそうな土地はないかとか、そういった事を確認するためである。
 とはいっても、フェリスにメルにはすでに八人も邪神が集まっている。これでは普通に考えれば普通の人間には出番が回る事など考えられなかった。体力も能力も(一部を除いて)知識もフェリスたちの方が上なのだから。
 それでも、人間たちと馴れ合うというのなら、相手に配慮した状況を作り上げる必要があるのである。フェリスはそのための調査に出掛けたのである。
 そこでフェリスが目を付けたのは、村の本体に近いところにできた小高い丘である。これもルディが川を掘った際に吐き捨てられた土砂の一つである。実は、川沿いにはこういった小高い丘がいくつもできているのだ。全部ルディのせいである。今回は、この土砂の丘を一つ利用しようというわけである。
 フェリスはハバリーの能力を使って、まずは丘の強度を上げる。今はただの堆積土砂なので、雨が降れば一気に崩れる可能性があるからだ。なので、まずは崩れにくいように土を押し固めるのである。
 それが終わると今度は丘のふもとを整地していく。居住地、牧場、農場などなど、用途に応じて地面の状態を変化させていく。最後にフェリスメルの方向に向けて橋を架ければ完成である。距離的に考えればフェリスメルの一部とも言えるような場所だけれども、村の本体から移住者居住区の間の距離より少し遠いので、別の村と言っても別に構わないだろう。
 まあなんでこんな事をするかというと、フェリスメルがお金を使うような機会がないのなら、フェリスメルにお金を使わせる場所を作ってしまえというわけである。冒険者に依頼を出すにしても限界があるのだ。となれば、フェリスメルで使うものを作らせて仕入れ、新しい村は他の場所から物を購入する。そういった事でお金を回そうというわけである。よくもまぁ、こんな事を思いつくものである。
「できれば、フェリスメルでは作っていないものを作らせたいわね。こういう時は、ゼニスさんやアファカに相談するのが一番でしょ」
 そんなこんなで新しい村の基礎を作ったフェリスは、意気揚々とフェリスメルへと戻っていた。
 が、そんなフェリスを待っていたのは、アファカとヘンネからの雷だった。
「何勝手な事をしているんですか!」
「フェリスはいつもそうです。みんなの事を何だと思ってるんですか!」
 アファカとヘンネからぐちぐちとお小言を食らい続けるフェリス。邪神軍団のリーダーとしての威厳など、そこにはまったく感じられなかった。
「まあ、作ってしまったからには見せて頂きますけれどね。それと、フェリスメルに無い食用の植物ですか。それはちょっと資料を出してこない事には何とも言えませんね。その場所で育つかどうかというのが分かりませんし」
 怒りながらも、アファカは前向きに検討してくれるらしい。さすがはフェリスメルの商業組合のリーダーである。
 そんなこんなで、いつものフェリスの思い付きによる無茶振りを食らってしまった面々だが、今の状況打破のためには活用するつもりである。しっかり考え込むよりもこういう破天荒な方が、案外問題をすんなり解決してくれる事だってあり得るのだ。
 結局準備でいろいろバタバタした事もあって、新しい村の候補地フェリスのやらかしを見に行くのは翌日となってしまったのだった。はてさて、一体どんな反応を見せて、一体どういう風になるのやら……。それはまだ誰にも分からなかった。
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