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第135話 邪神ちゃんと帰還の時
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生誕祭も無事に終わり、いよいよフェリスたちがフェリスメルに戻る日がやって来た。
フェリスたちが立ってマイオリーと向き合う中、ペコラは厨房の人たちに泣きつかれていた。よっぽど彼女が料理をする姿が嬉しかったらしい。ペコラはそんな料理人たちを一生懸命慰めていた。
「料理のレシピも残していくから、そんなに泣くななのだ。さすがにあーしは残るわけにはいかないのだ」
「分かっています。分かっていますけれど、やっぱりダメなんですよぉっ!」
料理人たちが必死に引き留めようとしている。本当にペコラは人気なようである。
「うっうっ、絶対また来て下せぇ、ペコラ……」
「わ、分かったのだ、分かったのだ! 少なくとも生誕祭の時には来るから、あーしから手を離すのだっ!」
ペコラはショートパンツを掴まれて、もの凄く怒っているようである。ペコラも女性なのだから当然である。ようやく手を放してもらえたペコラだったが、ショートパンツの裾が少し伸びてしまってへそを曲げていた。そして、料理人たちを睨みながら魔法で伸びてしまった裾を元に戻していた。本当に魔法は便利である。
「それにしても、ヴェノム司祭。あなたまでお見送りだなんて、どういう風の吹き回しなのでしょうか。あなたは魔族に対して否定的な立場だったはずですか?」
くるりと振り返ったマイオリーが、ヴェノムに対して問い掛ける。だが、ヴェノムはドラコの方を見たまま押し黙って固まっていた。
「ヴェノム司祭! 聖女様がお尋ねになっておられるのです。答えなさいっ!」
お付きの警備兵が怒鳴るのだが、ヴェノムはそれにすら反応しなかった。この間もヴェノムは、ただただドラコを睨み続けていた。
だが、その視線にドラコが気付かないわけもなく、ドラコが鋭い目力を返すとヴェノムはあっさりと怯んでしまっていた。何しに来ているのだろうか、このおっさん司祭は……。
「かっかっかっ……。わしにまだそれだけの歯向かいたそうな目をできる間は、まだまだ見込みがありそうな男よのう。じゃがな、魔族だけが敵だと思っておる間は、所詮は小物という事ぞ。真なる敵は人の内に潜んでおる事もあるからのう」
ドラコが意味が深そうな事を言っているが、多分このヴェノムには届いていないだろう。
「魔族とて、フェリスやペコラのようなものも居る。種族を一括りにして考えておるならば、おぬしはそのうち足元を近くの者に掬われかねんぞ? まあ、用心する事よな」
ドラコが吐き捨てるように忠告をしておくが、肝心のヴェノムにはまったくもって効果がなさそうだった。まあ、ここまで言って聞かないのであれば、もうこれ以上は放っておくのが得策なのである。本当に、頭の固い人間には何を言っても無駄だという事である。
「それでは、あたしたちはフェリスメルに戻りますね」
「はい、わざわざお越し頂けて、本当にありがとうございました」
フェリスがマイオリーに言うと、マイオリーの方は手を組んだ状態でお礼を言ってきた。マイオリーの表情を見る限り、本当は頭を下げてお礼を言いたそうな感じである。しかしながら、聖教会としての立場があるので、それを我慢しているようだった。聖女は聖教会の実質トップなのだから、軽々に行動できないのというわけなのである。
「ふっ、今回はわしも楽しめたぞ。余興はいくらあってもよかったがな」
しんみりしそうな雰囲気のところを、ドラコが前に出ておちゃらけた感じで喋っている。
「人と魔族の戦いが終わって早数100年。これだけ平和になると、新たな敵が見えぬところから湧いてくる。じゃが、マリアとわしの加護の付いたその腕輪がある限り、聖女と聖教会には危害は加えさせんて」
そして、続けざまにドラコは自分の髪の毛を一本ばかり引っこ抜いた。すると、その髪の毛は見る見るうちに形を変え、笛のようなものになってしまった。
「ついでじゃから、こいつも渡しておこう」
「これは?」
ドラコから渡された笛を見て、マイオリーはきょとんとした表情をしている。
「龍笛。そいつを吹けば対応したドラゴンがすぐに駆け付ける。そいつの場合はわしじゃな」
ドラコの発言に、周りが一様に騒めく。
「そういうわけじゃ。古龍が聖女についたという事はどういう事か、その意味をしっかりと噛みしめるんじゃな」
見た目幼女とは思えない迫力で睨むドラコに、聖教会の人間たちは少し後退った。ヴェノムも同様である。
「まあ心配するな。わしも平和を好むゆえに、そうそう血を流すような真似はせん。どうなるかはおぬしら次第じゃ」
ドラコはそう言いながら、足元に魔法陣を出して光に包まれていく。次の瞬間、ドラコの本来の姿である古龍の姿へと変身していた。
「さあ、フェリスたち。さっさとわしの背に乗るといい。1日もせんうちにフェリスメルに戻れるぞ」
お言葉に甘えてという事で、フェリスたちはさっさとドラコの背中に乗り込んだ。
「それじゃあね、聖女様。なかなか楽しかったわよ。また来年の生誕祭には参加させてもらうからね!」
「ええ、フェリス様こそ、またお会いできる事を楽しみにしています」
フェリスとマイオリーが言葉を交わすと、ドラコは翼を羽ばたかせてあっという間に空に舞い上がってしまった。
マイオリーは、その姿が見えなくなるまで、手を組んだまま見送り続けたのだった。
フェリスたちが立ってマイオリーと向き合う中、ペコラは厨房の人たちに泣きつかれていた。よっぽど彼女が料理をする姿が嬉しかったらしい。ペコラはそんな料理人たちを一生懸命慰めていた。
「料理のレシピも残していくから、そんなに泣くななのだ。さすがにあーしは残るわけにはいかないのだ」
「分かっています。分かっていますけれど、やっぱりダメなんですよぉっ!」
料理人たちが必死に引き留めようとしている。本当にペコラは人気なようである。
「うっうっ、絶対また来て下せぇ、ペコラ……」
「わ、分かったのだ、分かったのだ! 少なくとも生誕祭の時には来るから、あーしから手を離すのだっ!」
ペコラはショートパンツを掴まれて、もの凄く怒っているようである。ペコラも女性なのだから当然である。ようやく手を放してもらえたペコラだったが、ショートパンツの裾が少し伸びてしまってへそを曲げていた。そして、料理人たちを睨みながら魔法で伸びてしまった裾を元に戻していた。本当に魔法は便利である。
「それにしても、ヴェノム司祭。あなたまでお見送りだなんて、どういう風の吹き回しなのでしょうか。あなたは魔族に対して否定的な立場だったはずですか?」
くるりと振り返ったマイオリーが、ヴェノムに対して問い掛ける。だが、ヴェノムはドラコの方を見たまま押し黙って固まっていた。
「ヴェノム司祭! 聖女様がお尋ねになっておられるのです。答えなさいっ!」
お付きの警備兵が怒鳴るのだが、ヴェノムはそれにすら反応しなかった。この間もヴェノムは、ただただドラコを睨み続けていた。
だが、その視線にドラコが気付かないわけもなく、ドラコが鋭い目力を返すとヴェノムはあっさりと怯んでしまっていた。何しに来ているのだろうか、このおっさん司祭は……。
「かっかっかっ……。わしにまだそれだけの歯向かいたそうな目をできる間は、まだまだ見込みがありそうな男よのう。じゃがな、魔族だけが敵だと思っておる間は、所詮は小物という事ぞ。真なる敵は人の内に潜んでおる事もあるからのう」
ドラコが意味が深そうな事を言っているが、多分このヴェノムには届いていないだろう。
「魔族とて、フェリスやペコラのようなものも居る。種族を一括りにして考えておるならば、おぬしはそのうち足元を近くの者に掬われかねんぞ? まあ、用心する事よな」
ドラコが吐き捨てるように忠告をしておくが、肝心のヴェノムにはまったくもって効果がなさそうだった。まあ、ここまで言って聞かないのであれば、もうこれ以上は放っておくのが得策なのである。本当に、頭の固い人間には何を言っても無駄だという事である。
「それでは、あたしたちはフェリスメルに戻りますね」
「はい、わざわざお越し頂けて、本当にありがとうございました」
フェリスがマイオリーに言うと、マイオリーの方は手を組んだ状態でお礼を言ってきた。マイオリーの表情を見る限り、本当は頭を下げてお礼を言いたそうな感じである。しかしながら、聖教会としての立場があるので、それを我慢しているようだった。聖女は聖教会の実質トップなのだから、軽々に行動できないのというわけなのである。
「ふっ、今回はわしも楽しめたぞ。余興はいくらあってもよかったがな」
しんみりしそうな雰囲気のところを、ドラコが前に出ておちゃらけた感じで喋っている。
「人と魔族の戦いが終わって早数100年。これだけ平和になると、新たな敵が見えぬところから湧いてくる。じゃが、マリアとわしの加護の付いたその腕輪がある限り、聖女と聖教会には危害は加えさせんて」
そして、続けざまにドラコは自分の髪の毛を一本ばかり引っこ抜いた。すると、その髪の毛は見る見るうちに形を変え、笛のようなものになってしまった。
「ついでじゃから、こいつも渡しておこう」
「これは?」
ドラコから渡された笛を見て、マイオリーはきょとんとした表情をしている。
「龍笛。そいつを吹けば対応したドラゴンがすぐに駆け付ける。そいつの場合はわしじゃな」
ドラコの発言に、周りが一様に騒めく。
「そういうわけじゃ。古龍が聖女についたという事はどういう事か、その意味をしっかりと噛みしめるんじゃな」
見た目幼女とは思えない迫力で睨むドラコに、聖教会の人間たちは少し後退った。ヴェノムも同様である。
「まあ心配するな。わしも平和を好むゆえに、そうそう血を流すような真似はせん。どうなるかはおぬしら次第じゃ」
ドラコはそう言いながら、足元に魔法陣を出して光に包まれていく。次の瞬間、ドラコの本来の姿である古龍の姿へと変身していた。
「さあ、フェリスたち。さっさとわしの背に乗るといい。1日もせんうちにフェリスメルに戻れるぞ」
お言葉に甘えてという事で、フェリスたちはさっさとドラコの背中に乗り込んだ。
「それじゃあね、聖女様。なかなか楽しかったわよ。また来年の生誕祭には参加させてもらうからね!」
「ええ、フェリス様こそ、またお会いできる事を楽しみにしています」
フェリスとマイオリーが言葉を交わすと、ドラコは翼を羽ばたかせてあっという間に空に舞い上がってしまった。
マイオリーは、その姿が見えなくなるまで、手を組んだまま見送り続けたのだった。
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