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第128話 邪神ちゃんとグルメ散策
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聖教会の街を歩くフェリスたち。魔族という事でどういう反応をされるかと思ったが、マイオリーが居る事に加え、生誕祭での出来事もあってかかなり好意的に受け入れられているようである。
街を歩けば、串焼きとかを差し出される始末。マイオリーは聖女として歩き食いはしないのだが、ドラコは遠慮なく食べていた。まあ貪食なドラゴンだし、仕方がないだろう。ペコラは焼き具合に評価を下すなど、料理人としての血が騒いだようである。
「まったく、あたしたちが邪神だからどうなるかと思ったけれど、街の人たちは意外と寛容なのね」
「私もここまでとは、意外に思っていますよ。ドラコ様は昔の聖女様とお知り合いでしたから受け入れられるのは分かりますけれど……」
フェリスとマイオリーは驚いていた。
「かっかっかっ、ここの連中は思ったより寛容のようじゃのう。ペコラの奴も、邪神だと知られてもあの通りの振る舞いと周りの反応じゃからなぁ。まあ、普段通りが一番なのかもな」
ドラコは強者の余裕だった。
確かに、警戒しすぎてへんな態度を取るよりは、普段通りに振舞って自分を見てもらった方がいいのだろう。だからこそまったく飾らない感じのペコラが受け入れられているのかも知れない。なので、フェリスもフェリスメルで振る舞っているような感じで堂々と歩き始めた。
「うう、人が多いです……」
ただ、メルだけはやっぱりダメだった。しがない辺鄙な村の牧場の娘なのだ。フェリスメルの人口が増えてきたとはいっても、聖教会の街の人だかりには敵わなかった。
「メル、大丈夫?」
フェリスがメルを気遣う。
「は、はい。なんとか大丈夫です、フェリス様」
しかし、どう見ても大丈夫そうに見えないメルだ。
「ちょっとメルが人に酔っちゃったみたいなので、どこかで休みませんかね」
フェリスがそう言うと、マイオリーは、
「そうですね。聖教会グルメを味わって頂きたいですし、早いですけれど街の食堂へと向かいましょうか」
その申し出を快く受け入れていた。それにしても、マイオリーの言う聖教会グルメとは一体何なのだろうか。ペコラが一番わくわくしているのは必然だった。さすが料理人である。
マイオリーとメイベルの案内で、フェリスたちは聖教会の街で一番有名な食堂へと向かったのだった。
それにしても、なぜマイオリーは街の中を知っているのだろうか。ほとんど教会内に閉じこもっているので、甚だ疑問である。その答えは至極簡単なものだった。マイオリーの侍女であるメイベル由来の情報なのだ。侍女とはいっても常に一緒に居るわけではなく、時折暇を貰っては街に繰り出していたのだ。そういったメイベルの伝聞で、マイオリーは街の中に詳しいというわけである。
「いらっしゃいま……、せ、聖女様?!」
食堂に入るなり、給仕の女性が驚いて尻餅をついた。
「だ、大丈夫ですか?!」
フェリスが一番最初に駆け寄る。
「い、いや、すみませんね。あたたた……」
女性が痛みに顔を歪めている。あれだけ派手に転んだのだ。どこか怪我をしていてもおかしくないだろう。
「ちょっとすみません」
マイオリーがゆっくりと近付き、すっと手をかざす。マイオリーが集中すると、その手が白く光った。しばらくすると痛がっていた女性の表情が元に戻っていく。痛みが引いたようだった。
「あっ、痛みが消えた……。これが聖女様のお力……」
女性はマイオリーをじっくりと見ている。さすがに聖女の力を目の前で見せられては、呆然とするしかなかったのだ。それに対して、マイオリーはにっこりと微笑んでいた。
「さて、驚かせてすまなかったのだ。とにかく空いている席はどこなのだ?」
空気を読まないようにペコラが席を探している。時間としてはまだお昼より早いので、あちこちに空席が目立っている。だが、女性六人で座れる席となると、ちょっと見つかりそうになかった。
「くっつけないと六人で座れる席はなさそうね」
フェリスは状況を冷静に分析していた。
「私は侍女ですので、席に座るわけには参りません」
メイベルはそのように言って拒否をする。
「それにです。影に居るラータ殿の事も考えますと、ここで私まで食べて一人お預けというのも可哀想ではありませんか」
続けて顔を近付けてきたかと思えば、ラータの事を気遣っていた。そういえばラータはずっとメイベルの影に潜みっぱなしである。さすがはマイオリーの侍女である。気配りも完璧なのだ。
「そこまで言うのでしたら仕方ありませんね。では、お二人の分は別に包んで頂きましょう」
マイオリーは無理強いをしないで、お持ち帰りの選択をしたのだった。
さて、注文に移ろうとしたものの、この食堂にはメニューがなかった。給仕の人に確認しても、飲み物と日替わりしかないらしく、仕方なくフェリスたちは日替わりを注文するのだった。
そして、しばらくして運ばれてきた日替わりの料理を見て、ペコラが一番驚いていた。
「こ、これはっ! あーしが聖教会で作っていた料理?!」
食堂の中に、ペコラの声がこだまするのだった。
街を歩けば、串焼きとかを差し出される始末。マイオリーは聖女として歩き食いはしないのだが、ドラコは遠慮なく食べていた。まあ貪食なドラゴンだし、仕方がないだろう。ペコラは焼き具合に評価を下すなど、料理人としての血が騒いだようである。
「まったく、あたしたちが邪神だからどうなるかと思ったけれど、街の人たちは意外と寛容なのね」
「私もここまでとは、意外に思っていますよ。ドラコ様は昔の聖女様とお知り合いでしたから受け入れられるのは分かりますけれど……」
フェリスとマイオリーは驚いていた。
「かっかっかっ、ここの連中は思ったより寛容のようじゃのう。ペコラの奴も、邪神だと知られてもあの通りの振る舞いと周りの反応じゃからなぁ。まあ、普段通りが一番なのかもな」
ドラコは強者の余裕だった。
確かに、警戒しすぎてへんな態度を取るよりは、普段通りに振舞って自分を見てもらった方がいいのだろう。だからこそまったく飾らない感じのペコラが受け入れられているのかも知れない。なので、フェリスもフェリスメルで振る舞っているような感じで堂々と歩き始めた。
「うう、人が多いです……」
ただ、メルだけはやっぱりダメだった。しがない辺鄙な村の牧場の娘なのだ。フェリスメルの人口が増えてきたとはいっても、聖教会の街の人だかりには敵わなかった。
「メル、大丈夫?」
フェリスがメルを気遣う。
「は、はい。なんとか大丈夫です、フェリス様」
しかし、どう見ても大丈夫そうに見えないメルだ。
「ちょっとメルが人に酔っちゃったみたいなので、どこかで休みませんかね」
フェリスがそう言うと、マイオリーは、
「そうですね。聖教会グルメを味わって頂きたいですし、早いですけれど街の食堂へと向かいましょうか」
その申し出を快く受け入れていた。それにしても、マイオリーの言う聖教会グルメとは一体何なのだろうか。ペコラが一番わくわくしているのは必然だった。さすが料理人である。
マイオリーとメイベルの案内で、フェリスたちは聖教会の街で一番有名な食堂へと向かったのだった。
それにしても、なぜマイオリーは街の中を知っているのだろうか。ほとんど教会内に閉じこもっているので、甚だ疑問である。その答えは至極簡単なものだった。マイオリーの侍女であるメイベル由来の情報なのだ。侍女とはいっても常に一緒に居るわけではなく、時折暇を貰っては街に繰り出していたのだ。そういったメイベルの伝聞で、マイオリーは街の中に詳しいというわけである。
「いらっしゃいま……、せ、聖女様?!」
食堂に入るなり、給仕の女性が驚いて尻餅をついた。
「だ、大丈夫ですか?!」
フェリスが一番最初に駆け寄る。
「い、いや、すみませんね。あたたた……」
女性が痛みに顔を歪めている。あれだけ派手に転んだのだ。どこか怪我をしていてもおかしくないだろう。
「ちょっとすみません」
マイオリーがゆっくりと近付き、すっと手をかざす。マイオリーが集中すると、その手が白く光った。しばらくすると痛がっていた女性の表情が元に戻っていく。痛みが引いたようだった。
「あっ、痛みが消えた……。これが聖女様のお力……」
女性はマイオリーをじっくりと見ている。さすがに聖女の力を目の前で見せられては、呆然とするしかなかったのだ。それに対して、マイオリーはにっこりと微笑んでいた。
「さて、驚かせてすまなかったのだ。とにかく空いている席はどこなのだ?」
空気を読まないようにペコラが席を探している。時間としてはまだお昼より早いので、あちこちに空席が目立っている。だが、女性六人で座れる席となると、ちょっと見つかりそうになかった。
「くっつけないと六人で座れる席はなさそうね」
フェリスは状況を冷静に分析していた。
「私は侍女ですので、席に座るわけには参りません」
メイベルはそのように言って拒否をする。
「それにです。影に居るラータ殿の事も考えますと、ここで私まで食べて一人お預けというのも可哀想ではありませんか」
続けて顔を近付けてきたかと思えば、ラータの事を気遣っていた。そういえばラータはずっとメイベルの影に潜みっぱなしである。さすがはマイオリーの侍女である。気配りも完璧なのだ。
「そこまで言うのでしたら仕方ありませんね。では、お二人の分は別に包んで頂きましょう」
マイオリーは無理強いをしないで、お持ち帰りの選択をしたのだった。
さて、注文に移ろうとしたものの、この食堂にはメニューがなかった。給仕の人に確認しても、飲み物と日替わりしかないらしく、仕方なくフェリスたちは日替わりを注文するのだった。
そして、しばらくして運ばれてきた日替わりの料理を見て、ペコラが一番驚いていた。
「こ、これはっ! あーしが聖教会で作っていた料理?!」
食堂の中に、ペコラの声がこだまするのだった。
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