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第107話 邪神ちゃんと久しぶりの来訪
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「いやはや、古龍ドラコですか。名前は存じておりますとも」
そう話すのはゼニスである。さすがは一流商人、ドラコの名前をちゃんと知っていた。これにはドラコも機嫌をよくしている。つまりは顔見せである。
さて、なぜドラコが商会との商談の席に同席しているかというと、こういう商談ではフェリスやその仲間の邪神が関わっているからである。
「伝承によれば、火を吐いて辺り一帯を火の海に沈めたなどの記録が残っていますね。古すぎて信ぴょう性がないなどと言われていますが……」
「それは事実じゃな。実際に、わしに舐めた態度を取ってきた魔族を焼いた記憶がある。その時は辺りが火の海になっておったぞ」
ゼニスが言った事は事実のようである。ドラコのドラゴンとしての体躯はかなり大きい。それがゆえに一度火を吐けば、辺り一帯が火の海となり焦土と化すのである。さすがは古龍、やる事の規模が違うのだ。
「まあ今もじゃが、あんまり小競り合いとかは好かんかったからのう。魔族どもはわしを戦いの道具にしたかったようじゃが、わしにその程度の心理戦など通じぬのだよ。ドラゴンは縄張り意識は強いが、一度落ち着いてしまうと面倒くさがりじゃからな」
なるほどとフェリスは思った。だからこそ、勝手に足を踏み入れて餌を横取りした事にあれだけ怒ったというわけなのである。ドラゴンの性質というものを、今までよく理解していなかった事がよく分かる。
とはいえ、そんな性格のドラゴンがこうやってやって来たわけなのだ。ドラコにとってフェリスが特別な存在というわけなのだろう。フェリスはつい嬉しくなってしまった。
だがしかし、それよりも今はゼニスとの取引の話だ。フェリスたち邪神が増えた事で、フェリスメルの産業は多様化している一方、やはり邪神が集まっている事でかなり警戒をされているようなのである。一度取引をしてしまえばそんな懸念など吹き飛んでしまうものの、邪神が居るという事実だけで恐れをなす者は多いという事なのだ。こびりついたイメージというのは、本当に厄介なのである。
それでも、スパイダーヤーンの販路はどんどんと広がっているし、チーズも近隣の街を中心ともなるが、取引実績は十分ある。それだけ品物に関しては評価が高いという事だ。フェリスメルの主要産業にして、ゼニスの商会の主力商品である。格が違い過ぎた。
「本当はハバリーさんの作るインゴットも販路に乗せたいのですが、価値が高すぎて輸送にリスクを伴い過ぎますからね。実に残念ですね」
この点だけは、ゼニスは本当に悔しそうに話していた。
ハバリーの作る金属インゴットは純度が高い上に加工がしやすいのだ。もし盗賊にでも奪われようものなら、その後が大変なのである。だから、商会で扱う事が不可能だったのだ。
「まあ、それが無くても、十分稼がせて頂いてますけれどね。レシピの販売は実に順調ですよ」
アファカとヘンネに帳簿を見せながら、ゼニスは満足そうに話している。そこに偽りは確かになかった。
ゼニスにとってしてみれば、フェリスたちは邪神どころか女神である。自分たちの感情に素直という点では邪神の方が確かに表現は近いかも知れないが、害をなす存在とはとても思えない。なぜフェリスたちが邪神と呼ばれ続けて、しかも自称しているのか不思議に思えるくらいである。
フェリスたちは長く生きているがために、昔の知識も豊富である。ゼニスが仲良くするのも、そこに目を付けたからだ。フェリスたち邪神は貴重な過去の生き証人だ。そこからしか得られない希少価値があると、ゼニスは散々感じていた。レシピなんてものは、その最たるものである。人間と魔族との戦いによって失われたものは多すぎたのだ。
「本当に相当に儲かっていますね。過去に見た事がないくらいの利益が上がっています」
「私も見ましたが、相当にプラスが大きいですね。レシピの販売というものがかなり大きいようですね」
帳簿をチェックし終わったアファカとヘンネがそれぞれに感想を話している。やはり、フェリスメルとの取引を始めてから相当に儲かっているという事なのである。
「これだけの利益があれば、金属工房から既製品を仕入れて売り捌くという事も可能でしょうね。送り込んだ職人たちも腕を上げてくれているようで、嬉しい限りですよ」
ゼニスは涙を浮かべていた。
「それでしたら、すぐにでも工房に向かわれますか? 今ならお昼時で客の多くは食堂でしょうし、店は空いていると思いますよ」
そのゼニスの様子を見て、フェリスはそのように提案する。
「そうですね、そうさせて頂きましょう」
ゼニスはその提案に乗っかった。ヘンネたちも何も言わないので、どうやらこの提案には賛成のようだ。
こうして、ゼニスたちを連れて、フェリスたちは職人街へと移動を始めた。職人街までかなり距離があるので馬車を使っての移動だ。
はてさて、職人街で売られている加工品の中に、ゼニスの眼鏡に適うような逸品はあるのだろうか。実に楽しみなのであった。
そう話すのはゼニスである。さすがは一流商人、ドラコの名前をちゃんと知っていた。これにはドラコも機嫌をよくしている。つまりは顔見せである。
さて、なぜドラコが商会との商談の席に同席しているかというと、こういう商談ではフェリスやその仲間の邪神が関わっているからである。
「伝承によれば、火を吐いて辺り一帯を火の海に沈めたなどの記録が残っていますね。古すぎて信ぴょう性がないなどと言われていますが……」
「それは事実じゃな。実際に、わしに舐めた態度を取ってきた魔族を焼いた記憶がある。その時は辺りが火の海になっておったぞ」
ゼニスが言った事は事実のようである。ドラコのドラゴンとしての体躯はかなり大きい。それがゆえに一度火を吐けば、辺り一帯が火の海となり焦土と化すのである。さすがは古龍、やる事の規模が違うのだ。
「まあ今もじゃが、あんまり小競り合いとかは好かんかったからのう。魔族どもはわしを戦いの道具にしたかったようじゃが、わしにその程度の心理戦など通じぬのだよ。ドラゴンは縄張り意識は強いが、一度落ち着いてしまうと面倒くさがりじゃからな」
なるほどとフェリスは思った。だからこそ、勝手に足を踏み入れて餌を横取りした事にあれだけ怒ったというわけなのである。ドラゴンの性質というものを、今までよく理解していなかった事がよく分かる。
とはいえ、そんな性格のドラゴンがこうやってやって来たわけなのだ。ドラコにとってフェリスが特別な存在というわけなのだろう。フェリスはつい嬉しくなってしまった。
だがしかし、それよりも今はゼニスとの取引の話だ。フェリスたち邪神が増えた事で、フェリスメルの産業は多様化している一方、やはり邪神が集まっている事でかなり警戒をされているようなのである。一度取引をしてしまえばそんな懸念など吹き飛んでしまうものの、邪神が居るという事実だけで恐れをなす者は多いという事なのだ。こびりついたイメージというのは、本当に厄介なのである。
それでも、スパイダーヤーンの販路はどんどんと広がっているし、チーズも近隣の街を中心ともなるが、取引実績は十分ある。それだけ品物に関しては評価が高いという事だ。フェリスメルの主要産業にして、ゼニスの商会の主力商品である。格が違い過ぎた。
「本当はハバリーさんの作るインゴットも販路に乗せたいのですが、価値が高すぎて輸送にリスクを伴い過ぎますからね。実に残念ですね」
この点だけは、ゼニスは本当に悔しそうに話していた。
ハバリーの作る金属インゴットは純度が高い上に加工がしやすいのだ。もし盗賊にでも奪われようものなら、その後が大変なのである。だから、商会で扱う事が不可能だったのだ。
「まあ、それが無くても、十分稼がせて頂いてますけれどね。レシピの販売は実に順調ですよ」
アファカとヘンネに帳簿を見せながら、ゼニスは満足そうに話している。そこに偽りは確かになかった。
ゼニスにとってしてみれば、フェリスたちは邪神どころか女神である。自分たちの感情に素直という点では邪神の方が確かに表現は近いかも知れないが、害をなす存在とはとても思えない。なぜフェリスたちが邪神と呼ばれ続けて、しかも自称しているのか不思議に思えるくらいである。
フェリスたちは長く生きているがために、昔の知識も豊富である。ゼニスが仲良くするのも、そこに目を付けたからだ。フェリスたち邪神は貴重な過去の生き証人だ。そこからしか得られない希少価値があると、ゼニスは散々感じていた。レシピなんてものは、その最たるものである。人間と魔族との戦いによって失われたものは多すぎたのだ。
「本当に相当に儲かっていますね。過去に見た事がないくらいの利益が上がっています」
「私も見ましたが、相当にプラスが大きいですね。レシピの販売というものがかなり大きいようですね」
帳簿をチェックし終わったアファカとヘンネがそれぞれに感想を話している。やはり、フェリスメルとの取引を始めてから相当に儲かっているという事なのである。
「これだけの利益があれば、金属工房から既製品を仕入れて売り捌くという事も可能でしょうね。送り込んだ職人たちも腕を上げてくれているようで、嬉しい限りですよ」
ゼニスは涙を浮かべていた。
「それでしたら、すぐにでも工房に向かわれますか? 今ならお昼時で客の多くは食堂でしょうし、店は空いていると思いますよ」
そのゼニスの様子を見て、フェリスはそのように提案する。
「そうですね、そうさせて頂きましょう」
ゼニスはその提案に乗っかった。ヘンネたちも何も言わないので、どうやらこの提案には賛成のようだ。
こうして、ゼニスたちを連れて、フェリスたちは職人街へと移動を始めた。職人街までかなり距離があるので馬車を使っての移動だ。
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