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第93話 邪神ちゃんのジャムの売り込み作戦
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早速、改良したジャム壺を持って、一号店へ突撃するフェリス。
「あら、フェリス様、どうなされたのですか?」
「うん、二号店の商品のアイディアを、こっちでも考えようと思ってね」
テーブルに陣取ると、フェリスはシチューを頼んで席に着く。
「悪いわね、向こうからパンとジャムを持ち込ませてもらったわ」
「構いませんよ。今はお客様も落ち着いていますし、フェリス様ならお好きにして頂いて大丈夫です」
一号店の許可を得たところで、フェリスは持ってきた何の変哲もないパンをスライスしていく。そして、持ってきたジャムを取り出して、魔法で作成したヘラでジャムをすくってパンに塗りつけていた。
「へえ、それがジャムですか。村の特産の果物と砂糖を煮詰めたものですよね」
「そうそう。二号店でも売りに出していたんだけど、まったく売れなかったからどうしようかと思ってね」
そう言って、フェリスは改良前のジャム壺を取り出した。
「あら、これでは中身が分からないですから、それは売れないと思いますよ」
「あーやっぱりー……」
フェリスはジャム壺を持ったまま残念そうな顔をしていた。それでも、気を取り直して次の行動を取る。
「ヒッポスの言葉で改良したこっちだとどうかしらね」
フェリスは今使っていた、改良されたジャム壺を見せる。すると、一号店の店員は見ながらうーんと唸っている。
「蓋の部分だけが色違いで、矢印と共に開く、閉めるの文字ですか。そっちの素っ気ない方に比べればだいぶましになったと思います」
まだ手厳しい意見だった。
「まずはジャムの認知度ですよね。昨日は試食をされたみたいですけれど、その時には宣伝をされたのでしょうか。していなかったのなら、売れなくても仕方のない話です」
「フェリスは商売が下手なのだ。少しはあーしやヘンネに相談するべきだったのだ」
店員にダメ出しをされていると、店員の後ろから出てきたペコラにさらなる追い打ちを掛けられるフェリス。
「あー、ペコラって料理人で商人だったわね……」
「そうなのだ。忘れていたのか?」
思い出したかのように言うものだから、ペコラに言い返されて口ごもるフェリス。本当にこんなので大丈夫なのか。
「ジャムは認知度が低いのだ。売り込みをするにはその認知度を上げる努力が必要なのだ。なので、こっちでもただのパンにジャムを塗ったものを追加するのだ。まずは知ってもらう事が重要なのだ」
ペコラがフェリスの持ち込んだジャムを見ながら、フェリスに説明していた。さすがに商売に関してはペコラには敵わないフェリスは、黙ったままそれを聞いていた。本当にフェリスは思い付きだけで行動しているのがよく分かる。
「とりあえずはすぐに気が付いて行動できたのはいい傾向なのだ。フェリスはもうちょっと踏み込んだところまで考えて動いて欲しいのだ」
「うう、悪かったわよぉ……」
フェリスの耳とひげと尻尾がしょげしょげと垂れ下がっていった。
「フェリス、ジャムを渡すのだ。あーしの感性で売り込む方法を考えてみるのだ」
「うん、ペコラに任せてみるわ」
フェリスはペコラの提案を受け入れて、リンゴとオレンジのジャム壺を数個ずつペコラに渡しておいた。
二号店の方でも動きはある。初日の閉業を終えたものの、店を覗きに来る客は絶えなかった。やはり昼だけの営業というのは、食堂としては短すぎたのかも知れない。しかし、二号店はそもそも一号店の負担軽減を目的にしているので、現状では夜の営業は考えていないのである。
「それにしてもどうしましょうね。夜の営業は考えていないんですけれど」
「でも、これだけ見に来ているんだ。無視し続けるわけにもいくまい」
「そうですね。夕方の時間にパンだけでも売りませんかね。お持ち帰り専用で」
「それはいいかも知れませんね」
「となれば、任せてちょうだい」
メルたちが相談をして、独断で夕方もパンのみの販売を行う事にした。早速パンを焼き始めるメルたち。幸いながらに小麦はたくさんまたあるし、このチャンスを逃す手はなかったのだ。とにかくパンを焼いて店頭に並べる。そして、お持ち帰りカウンターのみをオープンさせた。
「お持ち帰り限定ですけれど、パンはいかがでしょうか!」
焼きの合間を見て、メルが表に立って呼び込みをする。すると、表で様子を窺っていた人たちが、こぞって二号店へと吸い込まれていく。
「な、なにこれ……」
一号店から戻って来たフェリスが、二号店の盛況ぶりに立ち尽くしていた。なにせ店の外まではみ出す行列に、大量のパンをかごに詰め込んで出てくる客の姿が目に入ったのだから。よく見ると、昼は売れていなかったジャムも手に持っている姿が見られる。
「ちょ、ちょっと、一体全体どういう事?!」
フェリスが混乱気味に店の中へと入っていく。
「あ、お帰りなさい、フェリス様。あまりに人がうろうろしてるので、夕方、日が暮れるまで限定でパンだけ販売を始めたんです。味気のないパンをメインにして、ジャムを売り込みながら販売したこの状態なんですよ」
「は、はぁ……」
フェリスは飲食スペースの椅子にがくりと座り込んだ。一号店まで行って苦悩してきた自分は何だったのかと、落ち込んでしまった。
結局この日は、フェリスはショックから立ち直れなかったのであった。
「あら、フェリス様、どうなされたのですか?」
「うん、二号店の商品のアイディアを、こっちでも考えようと思ってね」
テーブルに陣取ると、フェリスはシチューを頼んで席に着く。
「悪いわね、向こうからパンとジャムを持ち込ませてもらったわ」
「構いませんよ。今はお客様も落ち着いていますし、フェリス様ならお好きにして頂いて大丈夫です」
一号店の許可を得たところで、フェリスは持ってきた何の変哲もないパンをスライスしていく。そして、持ってきたジャムを取り出して、魔法で作成したヘラでジャムをすくってパンに塗りつけていた。
「へえ、それがジャムですか。村の特産の果物と砂糖を煮詰めたものですよね」
「そうそう。二号店でも売りに出していたんだけど、まったく売れなかったからどうしようかと思ってね」
そう言って、フェリスは改良前のジャム壺を取り出した。
「あら、これでは中身が分からないですから、それは売れないと思いますよ」
「あーやっぱりー……」
フェリスはジャム壺を持ったまま残念そうな顔をしていた。それでも、気を取り直して次の行動を取る。
「ヒッポスの言葉で改良したこっちだとどうかしらね」
フェリスは今使っていた、改良されたジャム壺を見せる。すると、一号店の店員は見ながらうーんと唸っている。
「蓋の部分だけが色違いで、矢印と共に開く、閉めるの文字ですか。そっちの素っ気ない方に比べればだいぶましになったと思います」
まだ手厳しい意見だった。
「まずはジャムの認知度ですよね。昨日は試食をされたみたいですけれど、その時には宣伝をされたのでしょうか。していなかったのなら、売れなくても仕方のない話です」
「フェリスは商売が下手なのだ。少しはあーしやヘンネに相談するべきだったのだ」
店員にダメ出しをされていると、店員の後ろから出てきたペコラにさらなる追い打ちを掛けられるフェリス。
「あー、ペコラって料理人で商人だったわね……」
「そうなのだ。忘れていたのか?」
思い出したかのように言うものだから、ペコラに言い返されて口ごもるフェリス。本当にこんなので大丈夫なのか。
「ジャムは認知度が低いのだ。売り込みをするにはその認知度を上げる努力が必要なのだ。なので、こっちでもただのパンにジャムを塗ったものを追加するのだ。まずは知ってもらう事が重要なのだ」
ペコラがフェリスの持ち込んだジャムを見ながら、フェリスに説明していた。さすがに商売に関してはペコラには敵わないフェリスは、黙ったままそれを聞いていた。本当にフェリスは思い付きだけで行動しているのがよく分かる。
「とりあえずはすぐに気が付いて行動できたのはいい傾向なのだ。フェリスはもうちょっと踏み込んだところまで考えて動いて欲しいのだ」
「うう、悪かったわよぉ……」
フェリスの耳とひげと尻尾がしょげしょげと垂れ下がっていった。
「フェリス、ジャムを渡すのだ。あーしの感性で売り込む方法を考えてみるのだ」
「うん、ペコラに任せてみるわ」
フェリスはペコラの提案を受け入れて、リンゴとオレンジのジャム壺を数個ずつペコラに渡しておいた。
二号店の方でも動きはある。初日の閉業を終えたものの、店を覗きに来る客は絶えなかった。やはり昼だけの営業というのは、食堂としては短すぎたのかも知れない。しかし、二号店はそもそも一号店の負担軽減を目的にしているので、現状では夜の営業は考えていないのである。
「それにしてもどうしましょうね。夜の営業は考えていないんですけれど」
「でも、これだけ見に来ているんだ。無視し続けるわけにもいくまい」
「そうですね。夕方の時間にパンだけでも売りませんかね。お持ち帰り専用で」
「それはいいかも知れませんね」
「となれば、任せてちょうだい」
メルたちが相談をして、独断で夕方もパンのみの販売を行う事にした。早速パンを焼き始めるメルたち。幸いながらに小麦はたくさんまたあるし、このチャンスを逃す手はなかったのだ。とにかくパンを焼いて店頭に並べる。そして、お持ち帰りカウンターのみをオープンさせた。
「お持ち帰り限定ですけれど、パンはいかがでしょうか!」
焼きの合間を見て、メルが表に立って呼び込みをする。すると、表で様子を窺っていた人たちが、こぞって二号店へと吸い込まれていく。
「な、なにこれ……」
一号店から戻って来たフェリスが、二号店の盛況ぶりに立ち尽くしていた。なにせ店の外まではみ出す行列に、大量のパンをかごに詰め込んで出てくる客の姿が目に入ったのだから。よく見ると、昼は売れていなかったジャムも手に持っている姿が見られる。
「ちょ、ちょっと、一体全体どういう事?!」
フェリスが混乱気味に店の中へと入っていく。
「あ、お帰りなさい、フェリス様。あまりに人がうろうろしてるので、夕方、日が暮れるまで限定でパンだけ販売を始めたんです。味気のないパンをメインにして、ジャムを売り込みながら販売したこの状態なんですよ」
「は、はぁ……」
フェリスは飲食スペースの椅子にがくりと座り込んだ。一号店まで行って苦悩してきた自分は何だったのかと、落ち込んでしまった。
結局この日は、フェリスはショックから立ち直れなかったのであった。
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