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第92話 邪神ちゃんとオープンの二号店
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そんなこんなで、無事にフェリスメル職人街の食堂二号店はオープンの日を迎えた。メインが軽食とあって、開店時間は昼ピークに合わせてある。警備兵の詰所を兼ねているとあって、人の姿はまばらだった。クルークの卵を使った料理は数量限定品で、ある意味目玉である。前日の試食の事もあって、昼が近付くにつれて人の数はあふれ始めていた。
「これはまずいわね」
フェリスは何かを感じたようで、急遽魔法で容器を作り始めた。
「サンドイッチをこの箱の中に詰めて、お持ち帰りに追加するわよ」
そう、いわゆるランチボックスである。あっという間に200ほどのランチボックスをこさえたフェリスは、上空を眺める。
(日が高い……。そろそろ開店時間かしらね)
この日も晴天だっただけに、日がよく見えるのだ。それがだいぶ高い位置に来ていたので、フェリスは食堂の中へと呼び掛けた。
「そろそろ店を開けるわよ。みんな準備して」
その声は外にも聞こえており、集まっていた客たちが一斉騒めき出した。めざといというか何と言うか、待ち構えている客たちは一斉に列を作り始めた。
お持ち帰り主体となる事から、入口はひとつながらも店内飲食用と持ち帰り用にスペースが分けられている。その入口の隣には出口用の扉が備えられており、店内用の扉の方には外側に取っ手が付いていない。お持ち帰りの方は引き戸が開放されて、そこには布が垂れ下げられていた。そこには”出口”と書かれている。飲食用スペースにはスパイダーヤーンを使った布が屋根代わりに張られていて、半分オープンテラスのようになっている。ちなみにスパイダーヤーンは撥水性があるので、雨でも結構大丈夫なのだ。
ちなみに食堂での食事は前料金制で、追加は会計のために並び直す必要がある。一号店とは違う形態なので、いろいろ不安なところもある。試行錯誤といった感じだが、ようやく開店となった。
店が開くと列を作った客たちが一気に流れ込んでくる。記念すべき第一の客はジャムパンをお持ち帰りしていた。ちなみにここ買った食事は宿にも持ち込みができるのである。
こうやって、どんどんと店の前にできた列が吸い込まれていくのだが、開店初日とあって、かなりの人数が押し寄せていた。この片田舎というか辺鄙な村にどうしてこんなに人が来ているのだろうか。一号店の盛況具合も考えると本当に理解に苦しむところだった。
店内飲食限定のプリンはあっという間に無くなってしまった。材料のせいで50食限定だったのは大きかった。一人1個制限でこれである。物珍しさが興味を引いたのだろう。
それ以外で売れているのは肉を使ったピザやサンドイッチだった。やはり肉、肉しか勝たん。
ボア肉自体はありふれたもので、特にフェリスメルでは以前からボアの襲撃が多かったのでありふれた食材だった。だが、よその地域ではむしろ珍しい肉の類で、冒険者が持ち込んだ物くらいしか食べられなかったようなのだ。それゆえの意外な人気メニューとなっていた。
「ハバリー様がいらっしゃるから、今まで以上に安定して手に入りますものね、このボア肉」
そう話すのは厨房の面々である。だが、これから先はクルークの数が増えてくると、クルークの肉もここに加わる事になるだろう。牛や羊も居るので、フェリスメルでは多彩な獣肉が食せそうである。
そんなわけで、肉厚なボア肉と肉厚な芋のスライスの乗ったピザと、同じ食材が挟まったサンドイッチが人気の双璧を成していた。
一方のパンは元々のフェリスメルの住民が中心となって買っていた。それ以外にも商人や冒険者も購入はしていたが、食事というよりは小腹が空いた時のおやつ代わりといった感じである。ちなみにジャムは初日には売れている気配はなかった。まだ認知度が低いようである。
そんな感じで、短い時間だったものの二号店の初日の営業は終了したのである。
「ふええ……、疲れたぁ……」
給仕を務めた女性は机に突っ伏していた。
「お会計も大変だしたよ。お持ち帰りが多いですからね」
「これでも一号店に比べれば短い方よ。この混雑がまだ続いてるのよ、あっちは」
「うええ……、本当ですか……」
会計を担当していたフェリスたちからこう言われると、給仕担当の女性はさらに突っ伏していた。
「それでも、あちらの一号店に比べれば、まだ楽でしたね」
メルがとどめを刺すように笑いながら感想を漏らしている。
「ど、どんだけなのよ、一号店……」
給仕担当の女性が完全にノックアウトである。
「それより、今日はジャムがまったく売れなかったのが気になるわ。やっぱり分かりにくかったかしらね、この容器」
そうやって手にしたジャムの容器は、中身のまったく見えない容器である。蓋は捻じるようにして開閉するタイプのものである。
「フェリス様、多分そのせいだと思いますよ。蓋の開け閉めの仕方も分からないでしょうし、それでは売れるものも売れないかと」
「やっぱりそうかしらね。一号店に持ち込んで、目の前で実演するのがいいかしらね。こっちは今日の営業終わっちゃったし」
フェリスはジャムの容器を持ち上げながらじっと眺めている。
「それだったら、蓋に中身と開閉方向を示す文字を入れたらいいんじゃないかな。それだけでもだいぶ違うと思うよ」
「ヒッポス、ナイス!」
というわけで、早速持っている容器に魔力で文字を書いていくフェリス。それと蓋の部分がよく分かるようにと胴体部分とは色を変えてみた。
「これで少しは分かるかしらね」
フェリスは満足げだった。
「まぁ、いいんじゃないかな」
ヒッポスはフェリスの満足げな気分を邪魔しないように無難な言葉を選んでおいた。
こうして、ジャムの売り込み大作戦が始まる事となったのである。
「これはまずいわね」
フェリスは何かを感じたようで、急遽魔法で容器を作り始めた。
「サンドイッチをこの箱の中に詰めて、お持ち帰りに追加するわよ」
そう、いわゆるランチボックスである。あっという間に200ほどのランチボックスをこさえたフェリスは、上空を眺める。
(日が高い……。そろそろ開店時間かしらね)
この日も晴天だっただけに、日がよく見えるのだ。それがだいぶ高い位置に来ていたので、フェリスは食堂の中へと呼び掛けた。
「そろそろ店を開けるわよ。みんな準備して」
その声は外にも聞こえており、集まっていた客たちが一斉騒めき出した。めざといというか何と言うか、待ち構えている客たちは一斉に列を作り始めた。
お持ち帰り主体となる事から、入口はひとつながらも店内飲食用と持ち帰り用にスペースが分けられている。その入口の隣には出口用の扉が備えられており、店内用の扉の方には外側に取っ手が付いていない。お持ち帰りの方は引き戸が開放されて、そこには布が垂れ下げられていた。そこには”出口”と書かれている。飲食用スペースにはスパイダーヤーンを使った布が屋根代わりに張られていて、半分オープンテラスのようになっている。ちなみにスパイダーヤーンは撥水性があるので、雨でも結構大丈夫なのだ。
ちなみに食堂での食事は前料金制で、追加は会計のために並び直す必要がある。一号店とは違う形態なので、いろいろ不安なところもある。試行錯誤といった感じだが、ようやく開店となった。
店が開くと列を作った客たちが一気に流れ込んでくる。記念すべき第一の客はジャムパンをお持ち帰りしていた。ちなみにここ買った食事は宿にも持ち込みができるのである。
こうやって、どんどんと店の前にできた列が吸い込まれていくのだが、開店初日とあって、かなりの人数が押し寄せていた。この片田舎というか辺鄙な村にどうしてこんなに人が来ているのだろうか。一号店の盛況具合も考えると本当に理解に苦しむところだった。
店内飲食限定のプリンはあっという間に無くなってしまった。材料のせいで50食限定だったのは大きかった。一人1個制限でこれである。物珍しさが興味を引いたのだろう。
それ以外で売れているのは肉を使ったピザやサンドイッチだった。やはり肉、肉しか勝たん。
ボア肉自体はありふれたもので、特にフェリスメルでは以前からボアの襲撃が多かったのでありふれた食材だった。だが、よその地域ではむしろ珍しい肉の類で、冒険者が持ち込んだ物くらいしか食べられなかったようなのだ。それゆえの意外な人気メニューとなっていた。
「ハバリー様がいらっしゃるから、今まで以上に安定して手に入りますものね、このボア肉」
そう話すのは厨房の面々である。だが、これから先はクルークの数が増えてくると、クルークの肉もここに加わる事になるだろう。牛や羊も居るので、フェリスメルでは多彩な獣肉が食せそうである。
そんなわけで、肉厚なボア肉と肉厚な芋のスライスの乗ったピザと、同じ食材が挟まったサンドイッチが人気の双璧を成していた。
一方のパンは元々のフェリスメルの住民が中心となって買っていた。それ以外にも商人や冒険者も購入はしていたが、食事というよりは小腹が空いた時のおやつ代わりといった感じである。ちなみにジャムは初日には売れている気配はなかった。まだ認知度が低いようである。
そんな感じで、短い時間だったものの二号店の初日の営業は終了したのである。
「ふええ……、疲れたぁ……」
給仕を務めた女性は机に突っ伏していた。
「お会計も大変だしたよ。お持ち帰りが多いですからね」
「これでも一号店に比べれば短い方よ。この混雑がまだ続いてるのよ、あっちは」
「うええ……、本当ですか……」
会計を担当していたフェリスたちからこう言われると、給仕担当の女性はさらに突っ伏していた。
「それでも、あちらの一号店に比べれば、まだ楽でしたね」
メルがとどめを刺すように笑いながら感想を漏らしている。
「ど、どんだけなのよ、一号店……」
給仕担当の女性が完全にノックアウトである。
「それより、今日はジャムがまったく売れなかったのが気になるわ。やっぱり分かりにくかったかしらね、この容器」
そうやって手にしたジャムの容器は、中身のまったく見えない容器である。蓋は捻じるようにして開閉するタイプのものである。
「フェリス様、多分そのせいだと思いますよ。蓋の開け閉めの仕方も分からないでしょうし、それでは売れるものも売れないかと」
「やっぱりそうかしらね。一号店に持ち込んで、目の前で実演するのがいいかしらね。こっちは今日の営業終わっちゃったし」
フェリスはジャムの容器を持ち上げながらじっと眺めている。
「それだったら、蓋に中身と開閉方向を示す文字を入れたらいいんじゃないかな。それだけでもだいぶ違うと思うよ」
「ヒッポス、ナイス!」
というわけで、早速持っている容器に魔力で文字を書いていくフェリス。それと蓋の部分がよく分かるようにと胴体部分とは色を変えてみた。
「これで少しは分かるかしらね」
フェリスは満足げだった。
「まぁ、いいんじゃないかな」
ヒッポスはフェリスの満足げな気分を邪魔しないように無難な言葉を選んでおいた。
こうして、ジャムの売り込み大作戦が始まる事となったのである。
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