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第91話 邪神ちゃんと二号店オープン前日
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入念な下準備を経て、ようやく職人街の食堂二号店の開店日を翌日に向かえる。二号店はしっかりとした食事の一号店とは違い、移動しながらでも食べようと思えば食べられる軽食やデザートがメインである。
ただ、卵だけはまだ生産量が少ないので数量限定発売となっている。砂糖の方はフェリスの反則的な魔法で大量生産しておいたので問題はない。育成促進だけではなくて、砂糖の成分を搾り出す事すらできたのだ。
そんなわけで、ジャムも作りたい放題というわけだ。ジャムを保存する容器もハバリーの土魔法の応用で楽に作れるので、お持ち帰り用販売もできる段階にまでなっていた。邪神たちの魔法は便利過ぎなのだ。
ルディの火の結界魔法も、クルークの飼育小屋でも大活躍である。跳躍力があるので、2mくらいの壁でも余裕で飛び越せてしまう事があるのだが、天井に火の結界を張る事で中はそこそこ通年過ごしやすい環境になる上に、近付くと熱いので脱走の防止になる。これはジャイアントスパイダーでも証明済みである。この事によって、クルークは快適な環境に閉じ込める事ができたのである。そのおかげか、卵の産む量が1羽あたり1個増えたのだが、それでも全然足りない事には変わりなかった。
フェリスメルにはフェリスをはじめ、ルディ、ペコラ、ハバリー、クー、ヒッポス、ヘンネという七人の邪神が住んでいる。それに加えて眷属であるメルも入れれば、反則的な能力な持ち主が八人も居るのだ。それで村が豊かにならない方がおかしいというわけである。ホント、なんでこんな化け物が集まってるのだろうか、この村……。
そんなこんなで開店前日となったこの日は、試食会が開かれている。メニューの商品のいくつかを小さく切り分けて、道行く人に食べてもらっている。その限りではまずまずの反応がもらえているようである。ちなみにではあるが、一号店と二号店の共通の料理が実はあったりする。それはなんとピザである。芋とチーズとソースはそれなりに確保できるので、結構数が用意できるようで、両方の店で出せるというわけだった。
「手応えは上々っと。これで明日からの営業は少しは期待できそうだわ」
フェリスは試食を終えて店内を見回している。一号店とは違い、お持ち帰りに比重を置いた店内は食事スペースはそこそこの広さに抑えている。その代わりに、お持ち帰りのためのショーケースは広めにとっており、芋の蔓で編み上げたお持ち帰り用の鞄も販売されている。サンドイッチの類は中身がこぼれる事から、デザートは保存が効かない上にスプーンが必要なので店内飲食だけとなっていて、お持ち帰り用はパンとピザとパイの三種類である。パンに使われているリンゴとオレンジのジャムもハバリーが作った容器に詰められて棚にずらりと並んでいる。改めて見ると圧巻である。
「いよいよですね、フェリス様」
「ええ、明日からしばらくは手伝うわよ、メル」
「はい」
フェリスとメルが気合いを入れている後ろで、二号店担当の村人たちも気合い十分だった。今回の二号店には移住者の人たちも混ざっている。一号店よりも移住者居住区からは遠いのだが、新しく料理を教えるにあたって、一号店と入れ替えるとそちらでも教えなければならず、手間になってしまうので二号店に来てもらっているのだ。今回のヒッポスとクーの二人にも参加してもらっている。焼き物が中心となるので、力のある二人に来てもらったというわけだ。
「まあ、任しておきなさい。ボクでも役に立つというのなら、フェリスの頼みなら聞くまでだよ」
「そうそう。なんだかんだいって、フェリスって放っておけないものね。普通だと魔族同士の馴れ合いって腹のうちの探り合いなんだけど、私たちはそういうのとは無縁だものね」
二人も乗り気のようである。
パンなどを焼くには敷板を置いて、その上にパンなど並べて焼くので、どうしても力が必要なのだ。料理となるとどうしても村の男性陣が嫌がる傾向にあるので、こうなってしまったのだ。ゼニスに言わせれば料理人は男性の方が多いらしいのだが、村ではそうはいかないのだった。
二号店のオープンは昼のピークタイムに合わせて行う予定だ。元々は一号店の忙しさを緩和する目的なので、その時間が選ばれた。店の前には『二号店、お昼前にオープン』と書かれた看板を出してある。これなら早くから並ばれる事もないだろう。とはいえども、オープン初日は多いめに用意する必要があるだろうと、この日ばかりはフェリスも夜遅くまでたくさんのお持ち帰り用の食器を作っておいた。両方合わせて1000もあればどうにかなるだろう。
「そういえばフェリス様」
「何かしら、メル」
「そのお皿が地面に落ちると自然と崩れるのって、どういう仕組みなんですかね」
「ああ、それは地面の魔力と反応しているからよ。地面からの魔力を感知すると崩れるように魔法をかけてあるの。だけど、中身がある時は魔法を発動しないように工夫してあるのよ」
「へえ、そうなんですね」
「魔法の基本はイメージだからね」
メルからの質問に、明朗快活に答えているフェリス。さすがは邪神、そういう細かい魔法の制御をやってのけているのだ。
「さあ、できるだけ準備して明日に備えるわよ」
「はい」
というわけで、フェリスとメルは二号店の開店準備を夜中まで続けて、そのまま二号店で寝泊まりしたのだった。
ただ、卵だけはまだ生産量が少ないので数量限定発売となっている。砂糖の方はフェリスの反則的な魔法で大量生産しておいたので問題はない。育成促進だけではなくて、砂糖の成分を搾り出す事すらできたのだ。
そんなわけで、ジャムも作りたい放題というわけだ。ジャムを保存する容器もハバリーの土魔法の応用で楽に作れるので、お持ち帰り用販売もできる段階にまでなっていた。邪神たちの魔法は便利過ぎなのだ。
ルディの火の結界魔法も、クルークの飼育小屋でも大活躍である。跳躍力があるので、2mくらいの壁でも余裕で飛び越せてしまう事があるのだが、天井に火の結界を張る事で中はそこそこ通年過ごしやすい環境になる上に、近付くと熱いので脱走の防止になる。これはジャイアントスパイダーでも証明済みである。この事によって、クルークは快適な環境に閉じ込める事ができたのである。そのおかげか、卵の産む量が1羽あたり1個増えたのだが、それでも全然足りない事には変わりなかった。
フェリスメルにはフェリスをはじめ、ルディ、ペコラ、ハバリー、クー、ヒッポス、ヘンネという七人の邪神が住んでいる。それに加えて眷属であるメルも入れれば、反則的な能力な持ち主が八人も居るのだ。それで村が豊かにならない方がおかしいというわけである。ホント、なんでこんな化け物が集まってるのだろうか、この村……。
そんなこんなで開店前日となったこの日は、試食会が開かれている。メニューの商品のいくつかを小さく切り分けて、道行く人に食べてもらっている。その限りではまずまずの反応がもらえているようである。ちなみにではあるが、一号店と二号店の共通の料理が実はあったりする。それはなんとピザである。芋とチーズとソースはそれなりに確保できるので、結構数が用意できるようで、両方の店で出せるというわけだった。
「手応えは上々っと。これで明日からの営業は少しは期待できそうだわ」
フェリスは試食を終えて店内を見回している。一号店とは違い、お持ち帰りに比重を置いた店内は食事スペースはそこそこの広さに抑えている。その代わりに、お持ち帰りのためのショーケースは広めにとっており、芋の蔓で編み上げたお持ち帰り用の鞄も販売されている。サンドイッチの類は中身がこぼれる事から、デザートは保存が効かない上にスプーンが必要なので店内飲食だけとなっていて、お持ち帰り用はパンとピザとパイの三種類である。パンに使われているリンゴとオレンジのジャムもハバリーが作った容器に詰められて棚にずらりと並んでいる。改めて見ると圧巻である。
「いよいよですね、フェリス様」
「ええ、明日からしばらくは手伝うわよ、メル」
「はい」
フェリスとメルが気合いを入れている後ろで、二号店担当の村人たちも気合い十分だった。今回の二号店には移住者の人たちも混ざっている。一号店よりも移住者居住区からは遠いのだが、新しく料理を教えるにあたって、一号店と入れ替えるとそちらでも教えなければならず、手間になってしまうので二号店に来てもらっているのだ。今回のヒッポスとクーの二人にも参加してもらっている。焼き物が中心となるので、力のある二人に来てもらったというわけだ。
「まあ、任しておきなさい。ボクでも役に立つというのなら、フェリスの頼みなら聞くまでだよ」
「そうそう。なんだかんだいって、フェリスって放っておけないものね。普通だと魔族同士の馴れ合いって腹のうちの探り合いなんだけど、私たちはそういうのとは無縁だものね」
二人も乗り気のようである。
パンなどを焼くには敷板を置いて、その上にパンなど並べて焼くので、どうしても力が必要なのだ。料理となるとどうしても村の男性陣が嫌がる傾向にあるので、こうなってしまったのだ。ゼニスに言わせれば料理人は男性の方が多いらしいのだが、村ではそうはいかないのだった。
二号店のオープンは昼のピークタイムに合わせて行う予定だ。元々は一号店の忙しさを緩和する目的なので、その時間が選ばれた。店の前には『二号店、お昼前にオープン』と書かれた看板を出してある。これなら早くから並ばれる事もないだろう。とはいえども、オープン初日は多いめに用意する必要があるだろうと、この日ばかりはフェリスも夜遅くまでたくさんのお持ち帰り用の食器を作っておいた。両方合わせて1000もあればどうにかなるだろう。
「そういえばフェリス様」
「何かしら、メル」
「そのお皿が地面に落ちると自然と崩れるのって、どういう仕組みなんですかね」
「ああ、それは地面の魔力と反応しているからよ。地面からの魔力を感知すると崩れるように魔法をかけてあるの。だけど、中身がある時は魔法を発動しないように工夫してあるのよ」
「へえ、そうなんですね」
「魔法の基本はイメージだからね」
メルからの質問に、明朗快活に答えているフェリス。さすがは邪神、そういう細かい魔法の制御をやってのけているのだ。
「さあ、できるだけ準備して明日に備えるわよ」
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