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第90話 邪神ちゃんと新メニュー
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ヘンネによるクルークの飼育法の講習が行われている頃、食堂ではペコラが二号店で出すメニューをいろいろと出していた。
主にはパンを使ったメニューとなるそうだ。ジャムをパンの中に入れて焼いたもの、パンに具材を挟んだもの、果物を乗せて焼いたお菓子、こういったものを次々と見本として調理していくペコラ。人間と魔族との戦いが激化する前には普通に作られていた料理である。
目の前にはおいしそうなものがたくさん並んでいく。それを見た食堂の従業員たちは目を輝かせていた。
ちなみに、この時間もお客はちらほらと来ているのだが、かなり客数が少ないので、こうやって会議のような事ができるのである。
「こっちからオレンジジャム、こっちがリンゴジャム、これはボア肉のサンドイッチで……」
ペコラが料理の説明をしていくのだが、とにかく種類と量が多かった。よくもまぁ、こんなに作れたものである。さすがは料理を得意とする邪神だ。
「こっちのリンゴパイもおすすめなのだ。食べてもらって感想を聞きたいのだ」
というわけで、フェリスを含めて手の空いている従業員で試食を行う。
「ん……っ!」
食べた側から従業員たちがうっとりしている。
「ああ、これが新しいお料理なのですね……」
「私たちをこんなにも虜にするなんて、さすが邪神の所業ですわ」
どうにも様子がおかしい。別に何も変な事はしていないというのに、従業員たちがもの凄くうっとりしている。
「ええ……」
フェリスがドン引きするレベルだった。
「懐かしいわね、この味。材料さえあればいつでも再現可能だったのね。あたしとした事がとんだミスだったわ」
もごもごと食べながら、フェリスも嬉しそうな顔をしていた。
「とはいっても、あの頃の材料の一部は失われているのだ。なので完全再現とはいかなかったのだ。あーしの能力があるからこそ、ここまで再現できたという感じなのだ」
ペコラが言うには、ちょっと材料の一部は代替品を使っているらしい。やはり数100年という月日の流れは、ばかにできたものではなかったようだ。
「ヘンネが今、卵を手に入れるために頑張っているみたいだから、卵が自由に使えたらもっと作れるものが増えるかも知れないわね」
「かもじゃないのだ。ケーキにプリン、カスタードクリームとかも作れるようになるのだ。卵は意外とばかにできない食材なのだ」
フェリスの言い分を真っ向から否定するペコラ。確実に増やせると断言している。
「わ、悪かったわね。そこまで怒らなくてもいいじゃないの」
「怒っていないのだ。忘れているフェリスを叱っているのだ」
「やっぱり怒ってるじゃないのよ!」
口げんかになるかと思えば、スンと収まるフェリスとペコラ。
「言い合ってても仕方ないのだ。みんなからの感想を聞いて、二号店のメニューを決めてしまうのだ」
「まあそうね。建物自体は完成しちゃったし、中身決めて早いうちに開けないとね」
邪神とは一体何なのか。全員がそう思わされた瞬間だった。
少なくとも目の前に居る邪神たちは、争いからとても遠い存在のようだった。なんで邪神と言われているのかすら疑問が湧いてくる。
今現在村に滞在している邪神は七人だが、誰もかれも村人に危害を加える様子はない。むしろ逆に積極的に仲良くしようとしてすらいる。一般的に言われている邪神像から本当にかけ離れ過ぎていたのだ。
で、結局メニューの方はというと、今回出した試食品の数々は全部採用となった。ただ、サンドイッチは挟む具材の種類が要検討となった。ボア肉だけでは弱かったようである。
その一方で、二号店の開店スケジュールもついに決まった。予定している開店日はその日の10日後だ。調理器具などの準備に思ったより時間が取られるようなのだ。こればかりは仕方がないかなと思うフェリスたちである。
試食を終えた後のフェリスは、ヘンネについていったメルと合流して、ペコラの作った試食品をメルにも食べさせてあげた。さすがフェリス、眷属をないがしろにしないのである。ペコラの作った試食品をそれはおいしそうに食べるメルを見て、フェリスもとても満足げにしていた。
10日間もあれば卵の生産もだいぶ落ち着いてきていた。1日につき20個程度なので、あまりは多くないようだ。自然への影響を考えて数は少なくしたらしいのだが、やはり少々数が足りないようだった。でもまぁ、その辺りはおいおい増やしていく事にした。というわけで、卵を使うメニューに関しては当面は数量限定という形になった。
調理班もペコラの指導の下で料理の腕をめきめきと上げていっている。これならペコラが居なくても調理には問題がなさそうである。ちなみにこの職人街の食堂は、気が付いたら『ペコラ食堂』と呼ばれているらしい。元々は給仕が言い始めたらしいのだが、知らぬ間にそれで広がっているようなのだ。ペコラは知らないらしい。
それはそれとして、そう順調とはいえないものの、二号店はオープンに向けて着実に準備が進められていったのだった。
主にはパンを使ったメニューとなるそうだ。ジャムをパンの中に入れて焼いたもの、パンに具材を挟んだもの、果物を乗せて焼いたお菓子、こういったものを次々と見本として調理していくペコラ。人間と魔族との戦いが激化する前には普通に作られていた料理である。
目の前にはおいしそうなものがたくさん並んでいく。それを見た食堂の従業員たちは目を輝かせていた。
ちなみに、この時間もお客はちらほらと来ているのだが、かなり客数が少ないので、こうやって会議のような事ができるのである。
「こっちからオレンジジャム、こっちがリンゴジャム、これはボア肉のサンドイッチで……」
ペコラが料理の説明をしていくのだが、とにかく種類と量が多かった。よくもまぁ、こんなに作れたものである。さすがは料理を得意とする邪神だ。
「こっちのリンゴパイもおすすめなのだ。食べてもらって感想を聞きたいのだ」
というわけで、フェリスを含めて手の空いている従業員で試食を行う。
「ん……っ!」
食べた側から従業員たちがうっとりしている。
「ああ、これが新しいお料理なのですね……」
「私たちをこんなにも虜にするなんて、さすが邪神の所業ですわ」
どうにも様子がおかしい。別に何も変な事はしていないというのに、従業員たちがもの凄くうっとりしている。
「ええ……」
フェリスがドン引きするレベルだった。
「懐かしいわね、この味。材料さえあればいつでも再現可能だったのね。あたしとした事がとんだミスだったわ」
もごもごと食べながら、フェリスも嬉しそうな顔をしていた。
「とはいっても、あの頃の材料の一部は失われているのだ。なので完全再現とはいかなかったのだ。あーしの能力があるからこそ、ここまで再現できたという感じなのだ」
ペコラが言うには、ちょっと材料の一部は代替品を使っているらしい。やはり数100年という月日の流れは、ばかにできたものではなかったようだ。
「ヘンネが今、卵を手に入れるために頑張っているみたいだから、卵が自由に使えたらもっと作れるものが増えるかも知れないわね」
「かもじゃないのだ。ケーキにプリン、カスタードクリームとかも作れるようになるのだ。卵は意外とばかにできない食材なのだ」
フェリスの言い分を真っ向から否定するペコラ。確実に増やせると断言している。
「わ、悪かったわね。そこまで怒らなくてもいいじゃないの」
「怒っていないのだ。忘れているフェリスを叱っているのだ」
「やっぱり怒ってるじゃないのよ!」
口げんかになるかと思えば、スンと収まるフェリスとペコラ。
「言い合ってても仕方ないのだ。みんなからの感想を聞いて、二号店のメニューを決めてしまうのだ」
「まあそうね。建物自体は完成しちゃったし、中身決めて早いうちに開けないとね」
邪神とは一体何なのか。全員がそう思わされた瞬間だった。
少なくとも目の前に居る邪神たちは、争いからとても遠い存在のようだった。なんで邪神と言われているのかすら疑問が湧いてくる。
今現在村に滞在している邪神は七人だが、誰もかれも村人に危害を加える様子はない。むしろ逆に積極的に仲良くしようとしてすらいる。一般的に言われている邪神像から本当にかけ離れ過ぎていたのだ。
で、結局メニューの方はというと、今回出した試食品の数々は全部採用となった。ただ、サンドイッチは挟む具材の種類が要検討となった。ボア肉だけでは弱かったようである。
その一方で、二号店の開店スケジュールもついに決まった。予定している開店日はその日の10日後だ。調理器具などの準備に思ったより時間が取られるようなのだ。こればかりは仕方がないかなと思うフェリスたちである。
試食を終えた後のフェリスは、ヘンネについていったメルと合流して、ペコラの作った試食品をメルにも食べさせてあげた。さすがフェリス、眷属をないがしろにしないのである。ペコラの作った試食品をそれはおいしそうに食べるメルを見て、フェリスもとても満足げにしていた。
10日間もあれば卵の生産もだいぶ落ち着いてきていた。1日につき20個程度なので、あまりは多くないようだ。自然への影響を考えて数は少なくしたらしいのだが、やはり少々数が足りないようだった。でもまぁ、その辺りはおいおい増やしていく事にした。というわけで、卵を使うメニューに関しては当面は数量限定という形になった。
調理班もペコラの指導の下で料理の腕をめきめきと上げていっている。これならペコラが居なくても調理には問題がなさそうである。ちなみにこの職人街の食堂は、気が付いたら『ペコラ食堂』と呼ばれているらしい。元々は給仕が言い始めたらしいのだが、知らぬ間にそれで広がっているようなのだ。ペコラは知らないらしい。
それはそれとして、そう順調とはいえないものの、二号店はオープンに向けて着実に準備が進められていったのだった。
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