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第71話 邪神ちゃんとお人好しな邪神たち
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フェリスメルに新たな邪神たちがやって来た。牛の邪神クーと馬の邪神ヒッポスの二人である。さすがに二人とも変わった姿をしているし図体も大きいので、最初の頃はみんなから怖がられたものだった。しかし、フェリスの友人である事に加えて、これまた邪神とはかけ離れた性格の持ち主であった事から、徐々に受け入れられていった。
「ボクらも最初は、普通の家畜だったからな。手当たり次第に自分の眷属にしたがる魔族が居たせいで、ボクらも気が付いたらこんな姿だったんだ。見た目のせいで怖がられて、勝手に邪神扱いにはされていたけど、ボクらは人間よりも魔族の方が敵だと思っているね」
ヒッポスは移住者の居住区で畑仕事をしながらそんな事を言っている。
クーは元々が牛なので、もの凄くのんびりしている。しかし、その巨体から繰り出される怪力は、狼形態となったルディよりも破壊力がある。なので、畑にする場所に残っている木の根っこを引っこ抜いたり、家を建てる際に丸太を組み合わせる作業をしたりと、大いに活躍していた。
一方のヒッポスの方は、脚がとにかく速い。なので、村の他の地域との連絡ではかなり活躍をしていた。だが、それも常にあるというわけではないので、このように暇な時間は畑仕事をしているというわけだ。
「おー、クーとヒッポスなのだ。今日は遊びに来たのだ」
「ペコラじゃないか。料理人の姿がすっかり板に付いちまってるな」
「本当にね。でも、ペコラの料理が食べられるなんて、職人街の人たちは羨ましいわね」
移住者の居住区にやってきたペコラ。半袖半ズボンの白い服を身にまとい、白い長靴下を履いている。首には白いスカーフと、元の体色もあって全身真っ白に身を包んでいた。確かにそれは、過去に見た事のある人間の料理人の姿だったのだ。
「そういうなら二人も食べに来るといいのだ」
「ああ、今度にでもお邪魔させてもらうとしよう」
「それにしても、今日は何の用なのかしら」
ペコラが両手を腰に当てて自慢げに提案すると、クーとヒッポスの二人は食べに行く約束をする。その一方で、なぜペコラがここに来たのか気になったようである。
「うむ、こちらで採れる食材の状況を確認しに来たのだ。あーしの料理のレシピはまだまだたくさんあるのだ。だから、目ざとく食材の確保のために下見に来たというわけなのだ」
ペコラの言い分に納得のいく二人である。
「そんな事言っても、ここで作るのは向こうとおんなじよ、ペコラ」
「そうなのか、フェリス」
後ろから突然現れたフェリス。当然ながらメルも一緒に居る。
「どう、クー、ヒッポス。村にはなじめそう?」
「あー、それなら心配ない。さすがに最初は怖がられたけどな。ボクらは基本的に人間とは友好的だから、自然と慣れていったよ」
「うんうん、心配要らないわよ、フェリス」
フェリスが質問すれば、二人は笑顔でそう答えていた。本当に楽しそうな感じである。
「人間と魔族との間の戦いが終わって以降は、そういがみ合う事もなくなったしな。ボクらも人間たちと堂々と混ざってたくらいさ」
「そうそう。普段はあまり関わらないんだけど、困ってたらつい助けちゃうのよね。誰のせいかしらね」
クーとヒッポスは揃ってフェリスを見る。驚いたような顔をするフェリスだったが、ペコラも見ているし、メルもつられるように見ている。基本的なお人好しはフェリス譲りという事らしい。
「はあ? あたしはほとんど人間と関わってなかったでしょうが。お人好しというよりは無関心よ、無関心」
否定に走るフェリスだったが、すかさず全員から否定されてしまうのだった。
「もー、私は邪神の中の邪神よーっ!」
フェリスの叫び声が虚しくこだました。
「でもまぁ、魔法の腕前なら、確かにそこらの魔族よりは上だよな」
「そうね、魔法の腕前だけならね」
「こらーっ! あたしが魔法以外に取り柄がないみたいな言い方するな!」
クーとヒッポスの言い分に激怒するフェリス。両手を上げて足をじたばたさせて怒る様は、まるで子どものようで笑えた。
「本当にフェリス様ってみんなから慕われてますね」
「そうなのだ。なんだかんだで面倒見はいいし、かと思えばこういう可愛い事もしてくれるのだ。姉のようであり妹のようでもある、そんなフェリスにみんなは惹かれたのだ。あーしらはフェリスの事が大好きなのだ」
暴れる様子を眺めているメルがそう言うと、ペコラが付け足すようにいろいろと話してくれた。なるほど、頼りがいのある姉のようであり、可愛がりたい妹のような存在だと、邪神仲間からはそう思われているそうだ。それを聞いたフェリスがまた暴れたのだが、結局微笑ましい光景はしばらく続けられており、それを遠目に見ていた住民たちが温かい目でそれを眺めてほっこりしていたらしい。これが見られると、嫌な事があっても吹き飛ぶくらいに癒されるとは住民の証言。
もはやこのフェリスを巡る光景も、すっかりフェリスメルの名物として定着しつつあったのだった。フェリスは不本意だろうけど、仕方ないのだ。
「ボクらも最初は、普通の家畜だったからな。手当たり次第に自分の眷属にしたがる魔族が居たせいで、ボクらも気が付いたらこんな姿だったんだ。見た目のせいで怖がられて、勝手に邪神扱いにはされていたけど、ボクらは人間よりも魔族の方が敵だと思っているね」
ヒッポスは移住者の居住区で畑仕事をしながらそんな事を言っている。
クーは元々が牛なので、もの凄くのんびりしている。しかし、その巨体から繰り出される怪力は、狼形態となったルディよりも破壊力がある。なので、畑にする場所に残っている木の根っこを引っこ抜いたり、家を建てる際に丸太を組み合わせる作業をしたりと、大いに活躍していた。
一方のヒッポスの方は、脚がとにかく速い。なので、村の他の地域との連絡ではかなり活躍をしていた。だが、それも常にあるというわけではないので、このように暇な時間は畑仕事をしているというわけだ。
「おー、クーとヒッポスなのだ。今日は遊びに来たのだ」
「ペコラじゃないか。料理人の姿がすっかり板に付いちまってるな」
「本当にね。でも、ペコラの料理が食べられるなんて、職人街の人たちは羨ましいわね」
移住者の居住区にやってきたペコラ。半袖半ズボンの白い服を身にまとい、白い長靴下を履いている。首には白いスカーフと、元の体色もあって全身真っ白に身を包んでいた。確かにそれは、過去に見た事のある人間の料理人の姿だったのだ。
「そういうなら二人も食べに来るといいのだ」
「ああ、今度にでもお邪魔させてもらうとしよう」
「それにしても、今日は何の用なのかしら」
ペコラが両手を腰に当てて自慢げに提案すると、クーとヒッポスの二人は食べに行く約束をする。その一方で、なぜペコラがここに来たのか気になったようである。
「うむ、こちらで採れる食材の状況を確認しに来たのだ。あーしの料理のレシピはまだまだたくさんあるのだ。だから、目ざとく食材の確保のために下見に来たというわけなのだ」
ペコラの言い分に納得のいく二人である。
「そんな事言っても、ここで作るのは向こうとおんなじよ、ペコラ」
「そうなのか、フェリス」
後ろから突然現れたフェリス。当然ながらメルも一緒に居る。
「どう、クー、ヒッポス。村にはなじめそう?」
「あー、それなら心配ない。さすがに最初は怖がられたけどな。ボクらは基本的に人間とは友好的だから、自然と慣れていったよ」
「うんうん、心配要らないわよ、フェリス」
フェリスが質問すれば、二人は笑顔でそう答えていた。本当に楽しそうな感じである。
「人間と魔族との間の戦いが終わって以降は、そういがみ合う事もなくなったしな。ボクらも人間たちと堂々と混ざってたくらいさ」
「そうそう。普段はあまり関わらないんだけど、困ってたらつい助けちゃうのよね。誰のせいかしらね」
クーとヒッポスは揃ってフェリスを見る。驚いたような顔をするフェリスだったが、ペコラも見ているし、メルもつられるように見ている。基本的なお人好しはフェリス譲りという事らしい。
「はあ? あたしはほとんど人間と関わってなかったでしょうが。お人好しというよりは無関心よ、無関心」
否定に走るフェリスだったが、すかさず全員から否定されてしまうのだった。
「もー、私は邪神の中の邪神よーっ!」
フェリスの叫び声が虚しくこだました。
「でもまぁ、魔法の腕前なら、確かにそこらの魔族よりは上だよな」
「そうね、魔法の腕前だけならね」
「こらーっ! あたしが魔法以外に取り柄がないみたいな言い方するな!」
クーとヒッポスの言い分に激怒するフェリス。両手を上げて足をじたばたさせて怒る様は、まるで子どものようで笑えた。
「本当にフェリス様ってみんなから慕われてますね」
「そうなのだ。なんだかんだで面倒見はいいし、かと思えばこういう可愛い事もしてくれるのだ。姉のようであり妹のようでもある、そんなフェリスにみんなは惹かれたのだ。あーしらはフェリスの事が大好きなのだ」
暴れる様子を眺めているメルがそう言うと、ペコラが付け足すようにいろいろと話してくれた。なるほど、頼りがいのある姉のようであり、可愛がりたい妹のような存在だと、邪神仲間からはそう思われているそうだ。それを聞いたフェリスがまた暴れたのだが、結局微笑ましい光景はしばらく続けられており、それを遠目に見ていた住民たちが温かい目でそれを眺めてほっこりしていたらしい。これが見られると、嫌な事があっても吹き飛ぶくらいに癒されるとは住民の証言。
もはやこのフェリスを巡る光景も、すっかりフェリスメルの名物として定着しつつあったのだった。フェリスは不本意だろうけど、仕方ないのだ。
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