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第51話 邪神ちゃんとあの時からの話
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「んじゃまあ、まずは俺だな」
先陣を切ったのはルディだった。
ルディは群れの所に帰ってそこでのんびりと暮らしていたらしい。これといってまったく面白みのない話だったし、あまりに予想通りの話すぎた。思わず全員がため息を吐いてしまうほどである。
「な、なんだよっ! みんなしてそんな反応するなよなっ!?」
さすがにルディはご立腹のようである。だが、フェリスたちからしたら予想通りだし、何の感動とかもなかったのだからしょうがない話なのだ。
というわけで、喚くルディを放っておいて、次へと移る。
「次はあーしの番なのだ」
手を上げたのはペコラだ。確かにペコラなら話が富んでいそうである。
「あーしは人間たちの中に紛れて過ごしていたのだ。商人や料理人の真似事ができたから、それで過ごしてきたのだ」
まぁこれもフェリスたちからしたら予想の範疇の話である。初めて聞く事になったハバリーが驚いていたのだが、ハバリーはそういう暮らしをしていなかったのだろうか。
「料理人をするにしても、戦いの前の材料が揃えられなくて、泣く泣く粗悪な料理を作るしかなかったのだ。正直言って辛かったのだ。それでもみんなが喜んでくれるならと頑張ったのだ」
あかん、泣かせる話だった。これだけでルディとメルが涙ぐんでいる。
「あちこち放浪したのだが、本当にあの戦いの凄まじさがよく分かるのだ。場所によっては大穴が開いたりして地形がすっかり変わってしまっていたのだ。あの光景を見たあーしは決意したのだ。人間だろうと魔族だろうと、頑張って立ち上がる者は応援すると決めたのだ」
「なるほど、今ある商会の立ち上げにも関わってたりする?」
「もしかしたら関係あるかもなのだ。ある程度の形になるまでは手伝ったのだが、その後の事はまったく知らないのだ」
手伝うだけ手伝ったら後はぽいっといった感じだ。ペコラは一生懸命になりやすい一方で、地味に飽きっぽいところもある。結局ペコラの話だけでは、ゼニスが所属する商会の立ち上げに関わっていたのかどうかははっきりしなかった。
「それにしても、まさか聖教会で料理人までしてたなんてね」
「そうなのだ。あーしは料理人の募集に飛びついただけなのだ。それが聖教会だったとは知らなかったのだ」
しかし、何が起こるか分からないものである。邪神とバレずに5年間働き通してしまったのだから。しかも、その時の事が原因で先日も実に聖女の来訪も穏便にやり過ごす事ができたのだ。胃袋を掴んでおくのはとても重要な事のようだった。ただ、聖女には邪神バレしていたようだが、おいしい料理はそれに勝ったのである。聖女がすっかり餌付けされてしまっていた事は、その時の様子からも十分に察せられるのである。
「というわけであーしは、今の世界に一番貢献しているといってもいいと思うのだ。異論は認めるのだ」
ペコラはそう胸を張って締めくくった。一応異論は認めるので、謙虚といえば謙虚なようである。
「となれば、次は私か」
そう静かに呟いたのはハバリーだった。分厚い前髪で目がまったく見えないので、何を考えているのかよく分からないボアの邪神である。
「私も見た目がこんな感じだから、人の中で暮らそうとしたけど……」
「したけど?」
ごくりと息を飲む一同。
「やっぱりダメでルディの事を笑えないような事をしてた」
全員でガタッとこける始末だった。
「ま、まあ、ハバリーは意外と人見知りだから、知った人が居ないと基本的に話し掛けられないものね……」
フェリスが頭を抱えながら解説をしている。
「え、でも、初顔合わせの私が居るんですけれど、普通に話してますよ?」
「あたしたちが居るからよ。そうなると人見知りの効果が薄れて、普通に会話ができるようになるの。ハバリーが目を隠しているのは、人見知りで目が泳ぐのを見られないようにするためなのよ」
メルの疑問に答えるフェリス。
「俺らの時はフェリスが強引に仲を取り持ったっけか」
「フェリスは逆に人見知りをしないのだ。だからこそ、そういった強引な手段を取れるのだ」
「強引強引って、フォローになってないわよ!」
ルディとペコラに怒るフェリス。
「事実なのだ」
ペコラがこう言い切ると、メルやハバリーも笑っていた。怒るフェリスの顔は髪の毛並みに真っ赤になっていた。
「そういうフェリス様はどうされていたんです?」
気分を変えさせようと、メルがフェリスに話を振った。
「あたし? あたしはずっとあの祠に引きこもっていたわよ。まあ、時々人が迷い込んでくるから、適当に遊んで家の近くまで送ってあげてたけどね」
「なんだ、あの祠に行けばいつでもフェリスに会えたわけなのだ」
フェリスの答えに、ペコラが驚いて言葉を漏らしていた。
「そうね。あそこで引きこもってた間、あたしに会いに来たのはそこの犬ころだけよ」
フェリスはルディを見る。
「いい加減にその犬ころって呼ぶのやめてくれよ」
「いーやーよー。おんなじ事繰り返して進歩がないんだから。狼っていうならもう少し賢くなりなさい!」
「ひっ!」
ルディの反論にフェリスが凄めば、ルディは体をびくっとさせておとなしくなってしまった。やっぱりこのメンバーのリーダーはフェリスなのである。
こうして、騒がしいうちにこの日の食事は終わりを迎えたのであった。
先陣を切ったのはルディだった。
ルディは群れの所に帰ってそこでのんびりと暮らしていたらしい。これといってまったく面白みのない話だったし、あまりに予想通りの話すぎた。思わず全員がため息を吐いてしまうほどである。
「な、なんだよっ! みんなしてそんな反応するなよなっ!?」
さすがにルディはご立腹のようである。だが、フェリスたちからしたら予想通りだし、何の感動とかもなかったのだからしょうがない話なのだ。
というわけで、喚くルディを放っておいて、次へと移る。
「次はあーしの番なのだ」
手を上げたのはペコラだ。確かにペコラなら話が富んでいそうである。
「あーしは人間たちの中に紛れて過ごしていたのだ。商人や料理人の真似事ができたから、それで過ごしてきたのだ」
まぁこれもフェリスたちからしたら予想の範疇の話である。初めて聞く事になったハバリーが驚いていたのだが、ハバリーはそういう暮らしをしていなかったのだろうか。
「料理人をするにしても、戦いの前の材料が揃えられなくて、泣く泣く粗悪な料理を作るしかなかったのだ。正直言って辛かったのだ。それでもみんなが喜んでくれるならと頑張ったのだ」
あかん、泣かせる話だった。これだけでルディとメルが涙ぐんでいる。
「あちこち放浪したのだが、本当にあの戦いの凄まじさがよく分かるのだ。場所によっては大穴が開いたりして地形がすっかり変わってしまっていたのだ。あの光景を見たあーしは決意したのだ。人間だろうと魔族だろうと、頑張って立ち上がる者は応援すると決めたのだ」
「なるほど、今ある商会の立ち上げにも関わってたりする?」
「もしかしたら関係あるかもなのだ。ある程度の形になるまでは手伝ったのだが、その後の事はまったく知らないのだ」
手伝うだけ手伝ったら後はぽいっといった感じだ。ペコラは一生懸命になりやすい一方で、地味に飽きっぽいところもある。結局ペコラの話だけでは、ゼニスが所属する商会の立ち上げに関わっていたのかどうかははっきりしなかった。
「それにしても、まさか聖教会で料理人までしてたなんてね」
「そうなのだ。あーしは料理人の募集に飛びついただけなのだ。それが聖教会だったとは知らなかったのだ」
しかし、何が起こるか分からないものである。邪神とバレずに5年間働き通してしまったのだから。しかも、その時の事が原因で先日も実に聖女の来訪も穏便にやり過ごす事ができたのだ。胃袋を掴んでおくのはとても重要な事のようだった。ただ、聖女には邪神バレしていたようだが、おいしい料理はそれに勝ったのである。聖女がすっかり餌付けされてしまっていた事は、その時の様子からも十分に察せられるのである。
「というわけであーしは、今の世界に一番貢献しているといってもいいと思うのだ。異論は認めるのだ」
ペコラはそう胸を張って締めくくった。一応異論は認めるので、謙虚といえば謙虚なようである。
「となれば、次は私か」
そう静かに呟いたのはハバリーだった。分厚い前髪で目がまったく見えないので、何を考えているのかよく分からないボアの邪神である。
「私も見た目がこんな感じだから、人の中で暮らそうとしたけど……」
「したけど?」
ごくりと息を飲む一同。
「やっぱりダメでルディの事を笑えないような事をしてた」
全員でガタッとこける始末だった。
「ま、まあ、ハバリーは意外と人見知りだから、知った人が居ないと基本的に話し掛けられないものね……」
フェリスが頭を抱えながら解説をしている。
「え、でも、初顔合わせの私が居るんですけれど、普通に話してますよ?」
「あたしたちが居るからよ。そうなると人見知りの効果が薄れて、普通に会話ができるようになるの。ハバリーが目を隠しているのは、人見知りで目が泳ぐのを見られないようにするためなのよ」
メルの疑問に答えるフェリス。
「俺らの時はフェリスが強引に仲を取り持ったっけか」
「フェリスは逆に人見知りをしないのだ。だからこそ、そういった強引な手段を取れるのだ」
「強引強引って、フォローになってないわよ!」
ルディとペコラに怒るフェリス。
「事実なのだ」
ペコラがこう言い切ると、メルやハバリーも笑っていた。怒るフェリスの顔は髪の毛並みに真っ赤になっていた。
「そういうフェリス様はどうされていたんです?」
気分を変えさせようと、メルがフェリスに話を振った。
「あたし? あたしはずっとあの祠に引きこもっていたわよ。まあ、時々人が迷い込んでくるから、適当に遊んで家の近くまで送ってあげてたけどね」
「なんだ、あの祠に行けばいつでもフェリスに会えたわけなのだ」
フェリスの答えに、ペコラが驚いて言葉を漏らしていた。
「そうね。あそこで引きこもってた間、あたしに会いに来たのはそこの犬ころだけよ」
フェリスはルディを見る。
「いい加減にその犬ころって呼ぶのやめてくれよ」
「いーやーよー。おんなじ事繰り返して進歩がないんだから。狼っていうならもう少し賢くなりなさい!」
「ひっ!」
ルディの反論にフェリスが凄めば、ルディは体をびくっとさせておとなしくなってしまった。やっぱりこのメンバーのリーダーはフェリスなのである。
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