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第49話 邪神ちゃんと羊の群れ
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ペコラは右手を高く掲げる。
「さあみんな、あーしの元に集まるのだっ!」
ペコラがこう叫ぶと、しばらくしてからどこからともなく地鳴りのような足音が聞こえてくる。そしてやって来たのは、なんと羊の群れだった。
「この子たちに乗せて村まで帰るのだ」
なんともにこにことした顔でペコラは話している。
これが同族に好かれるという邪神たちの力だろうか。フェリスには無い能力だけに、ペコラの呼び掛けに集まった羊たちの数には驚きを隠せなかった。
「うう、あたしなんて猫に好かれないのに、何なのよぉっ!!」
フェリスの絶叫が響き渡るが、羊の鳴き声に結構かき消されてしまっていた。
こうして、羊の背中に眠りこけたルディとハバリーを乗せて、フェリスたちはフェリスメルへと戻ってきた。ボアたちの群れが消えた事もあってか、気になっていた村人たちに迎えられた。
「いやー、ボアの事なら解決したのだ。もう心配要らないのだ」
どういうわけか、ペコラが笑顔で答えている。こういう時はリーダーたるフェリスが言うものではないのだろうか。と思ったら、フェリスは頬を膨らませていじけていた。自分は同族である猫に群がられる事なんてないし、呼んでもなぜかそっぽを向かれるのである。そりゃあいじけても仕方がないというものだった。
「あのー、天使様はなぜ不機嫌なのでしょうか……」
村人がおそるおそる尋ねてくるが、
「気にしなくていいのだ。とにかく心配しなくていいのだ。それよりも羊たちを牧場に返すのだ」
ペコラが笑顔で村人たちに圧を掛けていく。その圧にさすがに耐え切れなかった村人たちは、ささっとフェリスたちに道を開けたのだった。
「さぁ、目指すは羊の牧場なのだ!」
メェメェと羊が鳴きながら、フェリスたちは羊を飼っている牧場へと向かっていった。
その羊の牧場では、飼い主である牧場主が呆然と立ち尽くしていた。なにせ突然羊が柵を壊して脱走したのだから、当然そうなるに決まっているのである。ちなみに牧場主の家族が一生懸命に柵を直していた。
「主人、羊たちを借りて悪かったのだ」
ペコラが声を掛けると、羊の牧場主がくるっと振り向いた。
「あーしの呼び掛けに応えてくれたのだ。この子たちは悪くないのだ」
「そうね、悪いのはそこで寝てる二人だわね」
ペコラが説明する横で、フェリスとメルが羊の上で眠りこけるルディとハバリーをじっと見ている。あれから結構時間が経つというのに、まだ眠っているのだ。どれだけ強力な魔法を掛けたのやら。とりあえず、ペコラを怒らせると怖い事がよく分かったのでよしとしよう。
それにしても、ルディは単純で直情的なせいか、不要な騒動をたまに起こしてくれる。もうちょっときついお仕置きでもしなければいけないかも、フェリスは地味に考えた。
「ルディ様ってば、基本的に自由ですからね……」
メルも呆れるくらいだ。
ただ、このルディは今までも何回もお仕置きを食らってきている。それでもまったく改善しないのだから、本当に頭の痛い話だ。
「とりあえず牧場主さん、今回この二人が迷惑を掛けたみたいですし、しばらくこの二人をお貸ししますよ。牧場でも手伝わせてやって下さい」
「いやいやいや、さすがに天使様のご友人方の力をお借りするには……」
フェリスがこう言えば、牧場主は驚いて、手だけを左右に振りながら少し後退った。それは恐れ多いという意思表示だろう。
「うーん、そこまで遠慮されると凹むけど、要求を押し付けるのもよくないわね。分かりました、今回はやめておきますけれど、必要であるならいつでも言って下さいね。喜んでお貸ししますので」
フェリスはにっこりと笑っていた。その笑顔に、ルディとハバリーの体がびくっと反応したような気がした。
「とりあえず、羊の面倒は見ますので、柵を直しちゃいましょうか。メル、ペコラ、羊をお願いできる?」
「はい、もちろんです、フェリス様」
「任せるのだ、あーしの得意分野なのだ」
というわけで、フェリスは牧場主に連れられて、壊された柵を見に行った。
「これはまた、派手にぶっ壊してくれたわね……」
フェリスが驚いているのも無理はない。柱に渡してある横板が破られているのなら普通なのだが、柱も何本か派手に折れていた。ペコラの同族寄せにここまでの威力があるのかと思うと、思わず身を震わせてしまう。
「あっちゃー、これはまた派手にやってしまったのだ。すまないのだ、主人」
「ペコラ、こっちに来ちゃったの?」
謝るペコラを見て、フェリスは驚いていた。
「当然なのだ。それに、あーしが居れば羊たちはとてもおとなしいのだ。何も問題ないのだ」
「あーまー、確かにそうね」
後ろにはメルを乗せた羊も居るが、実におとなしい。ちなみに羊の牧場の家族に確認してもらったところ、羊は一匹の欠けもなかったそうだ。さすが羊の邪神ペコラ。
「羊って思ったよりすごいんですね。ルディ様を乗せても平気に走ってましたし」
「あーしが呼んだからなのだ。あーしの呼び掛けに反応すれば、一時的ではあるけれど眷属化するのだ」
なるほどと合点のいく話だった。メルが眷属化したのも、実は同じような理屈なのである。
「さて、迷惑を掛けたんだから、あたしがちゃちゃっと直しちゃいましょうかね」
フェリスはそう言うと、両手を上げて魔法を使う。すると、次々と壊れた柵の破片が持ち上がり、そのすべてがくっ付いていく。強度を上げるために、牧場主の家族が打ち付け直していた板や杭も使う。そして、あっという間に壊れた柵は元通りになったのだった。
「いやー、本当にあたしの友人がご迷惑を掛けてしまってすみません」
「いえいえ、天使様。本当にありがとうございました」
その後は、なぜかお互いに頭の下げ合いとなってしまったのだった。
ちなみにこの間、ルディとハバリーはその辺の地面に寝転がされていたのだった。仕方ないね。
「さあみんな、あーしの元に集まるのだっ!」
ペコラがこう叫ぶと、しばらくしてからどこからともなく地鳴りのような足音が聞こえてくる。そしてやって来たのは、なんと羊の群れだった。
「この子たちに乗せて村まで帰るのだ」
なんともにこにことした顔でペコラは話している。
これが同族に好かれるという邪神たちの力だろうか。フェリスには無い能力だけに、ペコラの呼び掛けに集まった羊たちの数には驚きを隠せなかった。
「うう、あたしなんて猫に好かれないのに、何なのよぉっ!!」
フェリスの絶叫が響き渡るが、羊の鳴き声に結構かき消されてしまっていた。
こうして、羊の背中に眠りこけたルディとハバリーを乗せて、フェリスたちはフェリスメルへと戻ってきた。ボアたちの群れが消えた事もあってか、気になっていた村人たちに迎えられた。
「いやー、ボアの事なら解決したのだ。もう心配要らないのだ」
どういうわけか、ペコラが笑顔で答えている。こういう時はリーダーたるフェリスが言うものではないのだろうか。と思ったら、フェリスは頬を膨らませていじけていた。自分は同族である猫に群がられる事なんてないし、呼んでもなぜかそっぽを向かれるのである。そりゃあいじけても仕方がないというものだった。
「あのー、天使様はなぜ不機嫌なのでしょうか……」
村人がおそるおそる尋ねてくるが、
「気にしなくていいのだ。とにかく心配しなくていいのだ。それよりも羊たちを牧場に返すのだ」
ペコラが笑顔で村人たちに圧を掛けていく。その圧にさすがに耐え切れなかった村人たちは、ささっとフェリスたちに道を開けたのだった。
「さぁ、目指すは羊の牧場なのだ!」
メェメェと羊が鳴きながら、フェリスたちは羊を飼っている牧場へと向かっていった。
その羊の牧場では、飼い主である牧場主が呆然と立ち尽くしていた。なにせ突然羊が柵を壊して脱走したのだから、当然そうなるに決まっているのである。ちなみに牧場主の家族が一生懸命に柵を直していた。
「主人、羊たちを借りて悪かったのだ」
ペコラが声を掛けると、羊の牧場主がくるっと振り向いた。
「あーしの呼び掛けに応えてくれたのだ。この子たちは悪くないのだ」
「そうね、悪いのはそこで寝てる二人だわね」
ペコラが説明する横で、フェリスとメルが羊の上で眠りこけるルディとハバリーをじっと見ている。あれから結構時間が経つというのに、まだ眠っているのだ。どれだけ強力な魔法を掛けたのやら。とりあえず、ペコラを怒らせると怖い事がよく分かったのでよしとしよう。
それにしても、ルディは単純で直情的なせいか、不要な騒動をたまに起こしてくれる。もうちょっときついお仕置きでもしなければいけないかも、フェリスは地味に考えた。
「ルディ様ってば、基本的に自由ですからね……」
メルも呆れるくらいだ。
ただ、このルディは今までも何回もお仕置きを食らってきている。それでもまったく改善しないのだから、本当に頭の痛い話だ。
「とりあえず牧場主さん、今回この二人が迷惑を掛けたみたいですし、しばらくこの二人をお貸ししますよ。牧場でも手伝わせてやって下さい」
「いやいやいや、さすがに天使様のご友人方の力をお借りするには……」
フェリスがこう言えば、牧場主は驚いて、手だけを左右に振りながら少し後退った。それは恐れ多いという意思表示だろう。
「うーん、そこまで遠慮されると凹むけど、要求を押し付けるのもよくないわね。分かりました、今回はやめておきますけれど、必要であるならいつでも言って下さいね。喜んでお貸ししますので」
フェリスはにっこりと笑っていた。その笑顔に、ルディとハバリーの体がびくっと反応したような気がした。
「とりあえず、羊の面倒は見ますので、柵を直しちゃいましょうか。メル、ペコラ、羊をお願いできる?」
「はい、もちろんです、フェリス様」
「任せるのだ、あーしの得意分野なのだ」
というわけで、フェリスは牧場主に連れられて、壊された柵を見に行った。
「これはまた、派手にぶっ壊してくれたわね……」
フェリスが驚いているのも無理はない。柱に渡してある横板が破られているのなら普通なのだが、柱も何本か派手に折れていた。ペコラの同族寄せにここまでの威力があるのかと思うと、思わず身を震わせてしまう。
「あっちゃー、これはまた派手にやってしまったのだ。すまないのだ、主人」
「ペコラ、こっちに来ちゃったの?」
謝るペコラを見て、フェリスは驚いていた。
「当然なのだ。それに、あーしが居れば羊たちはとてもおとなしいのだ。何も問題ないのだ」
「あーまー、確かにそうね」
後ろにはメルを乗せた羊も居るが、実におとなしい。ちなみに羊の牧場の家族に確認してもらったところ、羊は一匹の欠けもなかったそうだ。さすが羊の邪神ペコラ。
「羊って思ったよりすごいんですね。ルディ様を乗せても平気に走ってましたし」
「あーしが呼んだからなのだ。あーしの呼び掛けに反応すれば、一時的ではあるけれど眷属化するのだ」
なるほどと合点のいく話だった。メルが眷属化したのも、実は同じような理屈なのである。
「さて、迷惑を掛けたんだから、あたしがちゃちゃっと直しちゃいましょうかね」
フェリスはそう言うと、両手を上げて魔法を使う。すると、次々と壊れた柵の破片が持ち上がり、そのすべてがくっ付いていく。強度を上げるために、牧場主の家族が打ち付け直していた板や杭も使う。そして、あっという間に壊れた柵は元通りになったのだった。
「いやー、本当にあたしの友人がご迷惑を掛けてしまってすみません」
「いえいえ、天使様。本当にありがとうございました」
その後は、なぜかお互いに頭の下げ合いとなってしまったのだった。
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