47 / 290
第47話 邪神ちゃんと新たな来訪者
しおりを挟む
聖女マイオリーの視察は、思いの外あっさり終わった。フェリス、ルディ、ペコラの三人の邪神は居たが問題なしとされたのである。実際、この三人には村人に危害を加える気はないし、支配しようという気もない。村人に一方的に崇められているだけなのである。
ただ、フェリスには気になる点はあった。
「他の友人たちの行方よねぇ。全員邪神に分類されるけど、面倒な事起こしてなきゃいいんだけどなぁ……」
そう、かつての友人たちの行方である。まだ行方の知れない友人が十人は居るのである。それに加えて、マイオリーの言葉がどうしても気になっているのだ。
『邪神の動きが活発になっている』
この言葉がどうしても引っ掛かるフェリス。自分に関しても、どうしてあの祠を出ようと考えたのか、いまだに分からないのだ。
(あの祠の中、意外と住み心地よかったからなぁ……)
何と言っても数100年引きこもっていた場所である。その場所を離れて移動しようと考えた事が不可解過ぎた。だが、今はこうやって出てきて正解だったと思うようになっている。
「フェリス様、今日のお昼ご飯ができましたよ」
メルの存在だった。自分の眷属となったのははっきり言ってなりゆきだったものの、その見せてくる行動の一つ一つが可愛く思えて仕方ないのだ。しかもメルはとても懐いているし、そこそこ阿吽の呼吸が通じる相手である。今ではフェリスにとって一番の相棒と言っても過言ではなかった。
フェリスの友人としてやって来たルディとペコラも、メルの事はしっかり認めているようだ。フェリスの眷属ではあるが、ルディとペコラにもしっかり仕えているのである。本当にすごい少女だ。
「フェリス様のご友人って、ルディ様やペコラ様以外はどんな方がいらっしゃるのですか?」
食事をしながらメルが尋ねてきた。
「あーしが仲がいいのは馬の奴なのだ。名前なってったっけかなのだ」
「おい、本当に仲がいいのかよ。名前覚えてねーとかありえねえぞ!」
ペコラとルディが騒いでいる。だが、フェリスはとりあえずそれは無視しておく。
「前にも話したけど、まずは牛のクーと蛇の奴ね。蛇の方はペコラと同じで人間たちになじんで生活しているのよ。クーは牛の邪神なんだけど、魔物のミノタウロスっていう牛頭亜人が居てね、それが進化したタイプなのよね」
「そうなんですね。邪神とはひと口に言っても、いろんな方がいらっしゃるんですね」
フェリスの説明に、メルはとても聞き入っていた。
「あたしと一番仲が悪いのは、ネズミの邪神ね。あいつ、なんでか知らないけど、あたしを見るとすぐにケンカ売ってくるのよ。まっ、ルディと同じように返り討ちにして終わるんだけどね」
フェリスはこう言いながら、眉間にしわを寄せていた。美人には似合わない顔である。しかし、そのフェリスの言葉とは裏腹に、メルたちは何か悟ったような表情をしていた。
「あーしと仲が悪いといったら、鳥の邪神なのだ。あいつすごくうるさいから、あーしは苦手なのだ」
続けてペコラが愚痴っている。なるほど、かなりうるさいというのなら、確かに眠りの邪神と言われるペコラとは相性が悪そうである。
「っと、そういう愚痴を言ってる場合じゃなさそうだな」
ルディが何かを感じたようである。
「本当、そうみたいね」
フェリスやペコラも感じ取ったようだ。状況が分からないメルだけは、フェリスたちを見ておどおどとしている。
「まあ、まだ少し遠い。飯だけは食っちまっとこうぜ」
ルディがこう言うものだから、少し急ぎ気味ではあるがお昼ご飯を終わらせるフェリスたちだった。
村の入口までやってきたフェリスたちは、外の方を見る。するとその視線の先にはボアの群れがやって来ていた。
「あれはボアですね。また村を荒らしに来たのでしょうか」
メルが心配そうにフェリスにくっ付きながら呟いている。
「うーん、この村に来た時とは、なんか様子が違うわね」
フェリスがボアの群れを眺めながら、首を傾げている。どう見ても突進してくる様子がないのである。
「危険性はなさそうだけど、このままじゃ村人が不安に思ってしまうわね。ルディ、ペコラ、近付いてみましょうか」
「はいなのだ」
「おうよ!」
フェリスの言葉に、ルディとペコラは元気よく返事をする。
「あの、私も行きます」
メルも勇気を振り絞って申し出る。
「……しょうがないわね。眷属とはいえ連れて行くのは本当は嫌なんだけどね」
フェリスは頭を掻きながら、メルの同行を認めた。
「ルディ」
「あいよっ!」
フェリスの声に、ルディは狼形態に変身する。
「メル、ルディの背中に乗っていなさい。そこならとりあえず安全だから」
「はいっ!」
ルディがしゃがんでメルが乗りやすいようにすると、メルはささっとルディの背中に乗った。そして、すぐさまボアの群れへと突進していく。
フェリスたちが近付いていくと、ボアの何体かがそれに対して怯んでいる。だが、
「お前ら、逃げるんじゃない」
ボアの群れに女性の声が響き渡った。
「あの声はっ!」
その声にフェリスは心当たりがあるようだった。
フェリスたちがボアの群れの前に着いた時、その前に一人の女性が現れた。
「よう、久しぶりだね、フェリス」
「ハバリーじゃないの、本当に久しぶりね」
どうやら、ボアの群れを率いていたのは、フェリスの友人の一人だったようだ。
ただ、フェリスには気になる点はあった。
「他の友人たちの行方よねぇ。全員邪神に分類されるけど、面倒な事起こしてなきゃいいんだけどなぁ……」
そう、かつての友人たちの行方である。まだ行方の知れない友人が十人は居るのである。それに加えて、マイオリーの言葉がどうしても気になっているのだ。
『邪神の動きが活発になっている』
この言葉がどうしても引っ掛かるフェリス。自分に関しても、どうしてあの祠を出ようと考えたのか、いまだに分からないのだ。
(あの祠の中、意外と住み心地よかったからなぁ……)
何と言っても数100年引きこもっていた場所である。その場所を離れて移動しようと考えた事が不可解過ぎた。だが、今はこうやって出てきて正解だったと思うようになっている。
「フェリス様、今日のお昼ご飯ができましたよ」
メルの存在だった。自分の眷属となったのははっきり言ってなりゆきだったものの、その見せてくる行動の一つ一つが可愛く思えて仕方ないのだ。しかもメルはとても懐いているし、そこそこ阿吽の呼吸が通じる相手である。今ではフェリスにとって一番の相棒と言っても過言ではなかった。
フェリスの友人としてやって来たルディとペコラも、メルの事はしっかり認めているようだ。フェリスの眷属ではあるが、ルディとペコラにもしっかり仕えているのである。本当にすごい少女だ。
「フェリス様のご友人って、ルディ様やペコラ様以外はどんな方がいらっしゃるのですか?」
食事をしながらメルが尋ねてきた。
「あーしが仲がいいのは馬の奴なのだ。名前なってったっけかなのだ」
「おい、本当に仲がいいのかよ。名前覚えてねーとかありえねえぞ!」
ペコラとルディが騒いでいる。だが、フェリスはとりあえずそれは無視しておく。
「前にも話したけど、まずは牛のクーと蛇の奴ね。蛇の方はペコラと同じで人間たちになじんで生活しているのよ。クーは牛の邪神なんだけど、魔物のミノタウロスっていう牛頭亜人が居てね、それが進化したタイプなのよね」
「そうなんですね。邪神とはひと口に言っても、いろんな方がいらっしゃるんですね」
フェリスの説明に、メルはとても聞き入っていた。
「あたしと一番仲が悪いのは、ネズミの邪神ね。あいつ、なんでか知らないけど、あたしを見るとすぐにケンカ売ってくるのよ。まっ、ルディと同じように返り討ちにして終わるんだけどね」
フェリスはこう言いながら、眉間にしわを寄せていた。美人には似合わない顔である。しかし、そのフェリスの言葉とは裏腹に、メルたちは何か悟ったような表情をしていた。
「あーしと仲が悪いといったら、鳥の邪神なのだ。あいつすごくうるさいから、あーしは苦手なのだ」
続けてペコラが愚痴っている。なるほど、かなりうるさいというのなら、確かに眠りの邪神と言われるペコラとは相性が悪そうである。
「っと、そういう愚痴を言ってる場合じゃなさそうだな」
ルディが何かを感じたようである。
「本当、そうみたいね」
フェリスやペコラも感じ取ったようだ。状況が分からないメルだけは、フェリスたちを見ておどおどとしている。
「まあ、まだ少し遠い。飯だけは食っちまっとこうぜ」
ルディがこう言うものだから、少し急ぎ気味ではあるがお昼ご飯を終わらせるフェリスたちだった。
村の入口までやってきたフェリスたちは、外の方を見る。するとその視線の先にはボアの群れがやって来ていた。
「あれはボアですね。また村を荒らしに来たのでしょうか」
メルが心配そうにフェリスにくっ付きながら呟いている。
「うーん、この村に来た時とは、なんか様子が違うわね」
フェリスがボアの群れを眺めながら、首を傾げている。どう見ても突進してくる様子がないのである。
「危険性はなさそうだけど、このままじゃ村人が不安に思ってしまうわね。ルディ、ペコラ、近付いてみましょうか」
「はいなのだ」
「おうよ!」
フェリスの言葉に、ルディとペコラは元気よく返事をする。
「あの、私も行きます」
メルも勇気を振り絞って申し出る。
「……しょうがないわね。眷属とはいえ連れて行くのは本当は嫌なんだけどね」
フェリスは頭を掻きながら、メルの同行を認めた。
「ルディ」
「あいよっ!」
フェリスの声に、ルディは狼形態に変身する。
「メル、ルディの背中に乗っていなさい。そこならとりあえず安全だから」
「はいっ!」
ルディがしゃがんでメルが乗りやすいようにすると、メルはささっとルディの背中に乗った。そして、すぐさまボアの群れへと突進していく。
フェリスたちが近付いていくと、ボアの何体かがそれに対して怯んでいる。だが、
「お前ら、逃げるんじゃない」
ボアの群れに女性の声が響き渡った。
「あの声はっ!」
その声にフェリスは心当たりがあるようだった。
フェリスたちがボアの群れの前に着いた時、その前に一人の女性が現れた。
「よう、久しぶりだね、フェリス」
「ハバリーじゃないの、本当に久しぶりね」
どうやら、ボアの群れを率いていたのは、フェリスの友人の一人だったようだ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説

ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる