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第47話 邪神ちゃんと新たな来訪者
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聖女マイオリーの視察は、思いの外あっさり終わった。フェリス、ルディ、ペコラの三人の邪神は居たが問題なしとされたのである。実際、この三人には村人に危害を加える気はないし、支配しようという気もない。村人に一方的に崇められているだけなのである。
ただ、フェリスには気になる点はあった。
「他の友人たちの行方よねぇ。全員邪神に分類されるけど、面倒な事起こしてなきゃいいんだけどなぁ……」
そう、かつての友人たちの行方である。まだ行方の知れない友人が十人は居るのである。それに加えて、マイオリーの言葉がどうしても気になっているのだ。
『邪神の動きが活発になっている』
この言葉がどうしても引っ掛かるフェリス。自分に関しても、どうしてあの祠を出ようと考えたのか、いまだに分からないのだ。
(あの祠の中、意外と住み心地よかったからなぁ……)
何と言っても数100年引きこもっていた場所である。その場所を離れて移動しようと考えた事が不可解過ぎた。だが、今はこうやって出てきて正解だったと思うようになっている。
「フェリス様、今日のお昼ご飯ができましたよ」
メルの存在だった。自分の眷属となったのははっきり言ってなりゆきだったものの、その見せてくる行動の一つ一つが可愛く思えて仕方ないのだ。しかもメルはとても懐いているし、そこそこ阿吽の呼吸が通じる相手である。今ではフェリスにとって一番の相棒と言っても過言ではなかった。
フェリスの友人としてやって来たルディとペコラも、メルの事はしっかり認めているようだ。フェリスの眷属ではあるが、ルディとペコラにもしっかり仕えているのである。本当にすごい少女だ。
「フェリス様のご友人って、ルディ様やペコラ様以外はどんな方がいらっしゃるのですか?」
食事をしながらメルが尋ねてきた。
「あーしが仲がいいのは馬の奴なのだ。名前なってったっけかなのだ」
「おい、本当に仲がいいのかよ。名前覚えてねーとかありえねえぞ!」
ペコラとルディが騒いでいる。だが、フェリスはとりあえずそれは無視しておく。
「前にも話したけど、まずは牛のクーと蛇の奴ね。蛇の方はペコラと同じで人間たちになじんで生活しているのよ。クーは牛の邪神なんだけど、魔物のミノタウロスっていう牛頭亜人が居てね、それが進化したタイプなのよね」
「そうなんですね。邪神とはひと口に言っても、いろんな方がいらっしゃるんですね」
フェリスの説明に、メルはとても聞き入っていた。
「あたしと一番仲が悪いのは、ネズミの邪神ね。あいつ、なんでか知らないけど、あたしを見るとすぐにケンカ売ってくるのよ。まっ、ルディと同じように返り討ちにして終わるんだけどね」
フェリスはこう言いながら、眉間にしわを寄せていた。美人には似合わない顔である。しかし、そのフェリスの言葉とは裏腹に、メルたちは何か悟ったような表情をしていた。
「あーしと仲が悪いといったら、鳥の邪神なのだ。あいつすごくうるさいから、あーしは苦手なのだ」
続けてペコラが愚痴っている。なるほど、かなりうるさいというのなら、確かに眠りの邪神と言われるペコラとは相性が悪そうである。
「っと、そういう愚痴を言ってる場合じゃなさそうだな」
ルディが何かを感じたようである。
「本当、そうみたいね」
フェリスやペコラも感じ取ったようだ。状況が分からないメルだけは、フェリスたちを見ておどおどとしている。
「まあ、まだ少し遠い。飯だけは食っちまっとこうぜ」
ルディがこう言うものだから、少し急ぎ気味ではあるがお昼ご飯を終わらせるフェリスたちだった。
村の入口までやってきたフェリスたちは、外の方を見る。するとその視線の先にはボアの群れがやって来ていた。
「あれはボアですね。また村を荒らしに来たのでしょうか」
メルが心配そうにフェリスにくっ付きながら呟いている。
「うーん、この村に来た時とは、なんか様子が違うわね」
フェリスがボアの群れを眺めながら、首を傾げている。どう見ても突進してくる様子がないのである。
「危険性はなさそうだけど、このままじゃ村人が不安に思ってしまうわね。ルディ、ペコラ、近付いてみましょうか」
「はいなのだ」
「おうよ!」
フェリスの言葉に、ルディとペコラは元気よく返事をする。
「あの、私も行きます」
メルも勇気を振り絞って申し出る。
「……しょうがないわね。眷属とはいえ連れて行くのは本当は嫌なんだけどね」
フェリスは頭を掻きながら、メルの同行を認めた。
「ルディ」
「あいよっ!」
フェリスの声に、ルディは狼形態に変身する。
「メル、ルディの背中に乗っていなさい。そこならとりあえず安全だから」
「はいっ!」
ルディがしゃがんでメルが乗りやすいようにすると、メルはささっとルディの背中に乗った。そして、すぐさまボアの群れへと突進していく。
フェリスたちが近付いていくと、ボアの何体かがそれに対して怯んでいる。だが、
「お前ら、逃げるんじゃない」
ボアの群れに女性の声が響き渡った。
「あの声はっ!」
その声にフェリスは心当たりがあるようだった。
フェリスたちがボアの群れの前に着いた時、その前に一人の女性が現れた。
「よう、久しぶりだね、フェリス」
「ハバリーじゃないの、本当に久しぶりね」
どうやら、ボアの群れを率いていたのは、フェリスの友人の一人だったようだ。
ただ、フェリスには気になる点はあった。
「他の友人たちの行方よねぇ。全員邪神に分類されるけど、面倒な事起こしてなきゃいいんだけどなぁ……」
そう、かつての友人たちの行方である。まだ行方の知れない友人が十人は居るのである。それに加えて、マイオリーの言葉がどうしても気になっているのだ。
『邪神の動きが活発になっている』
この言葉がどうしても引っ掛かるフェリス。自分に関しても、どうしてあの祠を出ようと考えたのか、いまだに分からないのだ。
(あの祠の中、意外と住み心地よかったからなぁ……)
何と言っても数100年引きこもっていた場所である。その場所を離れて移動しようと考えた事が不可解過ぎた。だが、今はこうやって出てきて正解だったと思うようになっている。
「フェリス様、今日のお昼ご飯ができましたよ」
メルの存在だった。自分の眷属となったのははっきり言ってなりゆきだったものの、その見せてくる行動の一つ一つが可愛く思えて仕方ないのだ。しかもメルはとても懐いているし、そこそこ阿吽の呼吸が通じる相手である。今ではフェリスにとって一番の相棒と言っても過言ではなかった。
フェリスの友人としてやって来たルディとペコラも、メルの事はしっかり認めているようだ。フェリスの眷属ではあるが、ルディとペコラにもしっかり仕えているのである。本当にすごい少女だ。
「フェリス様のご友人って、ルディ様やペコラ様以外はどんな方がいらっしゃるのですか?」
食事をしながらメルが尋ねてきた。
「あーしが仲がいいのは馬の奴なのだ。名前なってったっけかなのだ」
「おい、本当に仲がいいのかよ。名前覚えてねーとかありえねえぞ!」
ペコラとルディが騒いでいる。だが、フェリスはとりあえずそれは無視しておく。
「前にも話したけど、まずは牛のクーと蛇の奴ね。蛇の方はペコラと同じで人間たちになじんで生活しているのよ。クーは牛の邪神なんだけど、魔物のミノタウロスっていう牛頭亜人が居てね、それが進化したタイプなのよね」
「そうなんですね。邪神とはひと口に言っても、いろんな方がいらっしゃるんですね」
フェリスの説明に、メルはとても聞き入っていた。
「あたしと一番仲が悪いのは、ネズミの邪神ね。あいつ、なんでか知らないけど、あたしを見るとすぐにケンカ売ってくるのよ。まっ、ルディと同じように返り討ちにして終わるんだけどね」
フェリスはこう言いながら、眉間にしわを寄せていた。美人には似合わない顔である。しかし、そのフェリスの言葉とは裏腹に、メルたちは何か悟ったような表情をしていた。
「あーしと仲が悪いといったら、鳥の邪神なのだ。あいつすごくうるさいから、あーしは苦手なのだ」
続けてペコラが愚痴っている。なるほど、かなりうるさいというのなら、確かに眠りの邪神と言われるペコラとは相性が悪そうである。
「っと、そういう愚痴を言ってる場合じゃなさそうだな」
ルディが何かを感じたようである。
「本当、そうみたいね」
フェリスやペコラも感じ取ったようだ。状況が分からないメルだけは、フェリスたちを見ておどおどとしている。
「まあ、まだ少し遠い。飯だけは食っちまっとこうぜ」
ルディがこう言うものだから、少し急ぎ気味ではあるがお昼ご飯を終わらせるフェリスたちだった。
村の入口までやってきたフェリスたちは、外の方を見る。するとその視線の先にはボアの群れがやって来ていた。
「あれはボアですね。また村を荒らしに来たのでしょうか」
メルが心配そうにフェリスにくっ付きながら呟いている。
「うーん、この村に来た時とは、なんか様子が違うわね」
フェリスがボアの群れを眺めながら、首を傾げている。どう見ても突進してくる様子がないのである。
「危険性はなさそうだけど、このままじゃ村人が不安に思ってしまうわね。ルディ、ペコラ、近付いてみましょうか」
「はいなのだ」
「おうよ!」
フェリスの言葉に、ルディとペコラは元気よく返事をする。
「あの、私も行きます」
メルも勇気を振り絞って申し出る。
「……しょうがないわね。眷属とはいえ連れて行くのは本当は嫌なんだけどね」
フェリスは頭を掻きながら、メルの同行を認めた。
「ルディ」
「あいよっ!」
フェリスの声に、ルディは狼形態に変身する。
「メル、ルディの背中に乗っていなさい。そこならとりあえず安全だから」
「はいっ!」
ルディがしゃがんでメルが乗りやすいようにすると、メルはささっとルディの背中に乗った。そして、すぐさまボアの群れへと突進していく。
フェリスたちが近付いていくと、ボアの何体かがそれに対して怯んでいる。だが、
「お前ら、逃げるんじゃない」
ボアの群れに女性の声が響き渡った。
「あの声はっ!」
その声にフェリスは心当たりがあるようだった。
フェリスたちがボアの群れの前に着いた時、その前に一人の女性が現れた。
「よう、久しぶりだね、フェリス」
「ハバリーじゃないの、本当に久しぶりね」
どうやら、ボアの群れを率いていたのは、フェリスの友人の一人だったようだ。
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