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第45話 邪神ちゃんと聖女のお話
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フェリスの家で食べた食事に、マイオリーはとても満足したようだった。
「実においしかったです。私よりも幼いのに大した腕前ですね」
マイオリーはメルの事をとても褒めていた。その事に対して、メルは涙を流すほどに喜んでいた。大げさな気もするが、聖女に褒められるというのは至極光栄な事らしいので、フェリスはメルの頭を撫でておいた。
「食べ終わったところで恐縮ですが、フェリスさんたちにお話があります」
マイオリーは、神妙な面持ちでフェリスに話し掛けてきた。
「何でしょうか」
フェリスもただならぬ雰囲気を感じ取って真顔になる。ただ、メルを撫でる手は止めなかった。
「最近、各地で邪神の動きが活発化する気配を感じます。神殿に居ても、魔族とは違った魔力の波動を感じましたので、間違いないかと」
「うーむ。邪神かあ……、それあたしも入るのかしら」
「はい、一応は」
「そっかー……」
やっぱりなという顔をするフェリス。現状は”自称”という状態が続いていたので、聖女であるマイオリーに邪神認定されたのは嬉しいのだが、なんかどうにも素直に喜べなかった。
「それはそれとして、その波動はどういう風な感じだったのかしら。やっぱり嫌な感じのものでした?」
マイオリーに確認を取るフェリス。邪神という事は自分のかつての友人たちが含まれる事を示すからだ。フェリスの心情をくみ取ったマイオリーは、少し間を置いてから口を開く。
「そうですね。一部にはそういったものを感じました。フェリスさんのように無害そうな魔力もありましたけれどね」
「あっ、一応無害判定してもらえたんだ」
予想外の判定にきょとんとするフェリスだった。
「そこのペコラさんから時々聞かされてましたからね」
マイオリーがこう言うと、フェリスはキッとペコラを見た。するとペコラは笑ってごまかしていた。その様子を見て、マイオリーとメルがくすくすと笑っていた。
「それにしても、邪神の動きが活発化というのは気になりますね。あたしはもうのんびり暮らせればそれでいいですけれど、そう思っていない者も居るって事ですよね」
咳払いひとつして姿勢を正したフェリスは、マイオリーに問い掛ける。
「そういう事になりますね。ただ場所までは分からなかったので、はっきりと情報が手に入ったこちらに伺ったという次第なんですよ」
「あっ、なるほどね。最近商人の人が出入りしてたから、あたしだけはしっかり特定されてるんだっけか」
フェリスは改めて驚いていた。自分が何をやってたのかまったくもってあまり自覚していないようである。まあ、基本的に邪神とか魔族とかはそれくらいにいい加減である。思い付きで行動するような者はかなり多いのだ。ルディとか。
「でも、フェリスさんが話の通じる邪神で助かりました。聖女だなんて名乗ったら、普通は命を狙われますからね」
「あはは、確かにそうですね」
マイオリーは笑いながら話しているが、まったくもって笑える話じゃない。フェリスは笑いながら返していたが、どう見てもその顔は引きつっていた。
「とりあえず、この村で邪神を三人見かけましたが、無害そうで安心しました。ですが、近くにもう一つ反応がありますね」
マイオリーはその方向へと顔を向ける。その方向でフェリスはすぐにピンときた。
「あー、そっちだったら多分マイムですね。水の精霊なんですけれど、なぜか邪神扱いされてる子なんですよ」
「まあそうなんですね。なぜでしょうか」
「多分あたしと関わりがあるからでしょうね」
驚くマイオリーに、苦笑いをしながら答えるフェリス。
「どうです、時間に余裕があるようでしたら会っていかれますか? あたしが案内しますよ」
「それは助かりますね。それで、どの様に向かわれるのですか?」
フェリスの申し出を即刻受けるマイオリー。さすがにこれには護衛騎士は慌てていた。だが、マイオリーはそんな事は気にしなかった。
「瞬間移動です。あたしを使い魔にした当時のご主人様が得意だったんですよ」
「瞬間移動……、どんな魔法なんですかね」
「思い描いた場所へ一瞬で移動できる魔法です。ただ、距離などによって消費する魔力量が変わってきますので、あまりの遠距離だと魔力を消費し過ぎて、死ぬとまではいかなくてもしばらく動けなくなりますね」
食いついたマイオリーだったが、護衛騎士たちが首を横に振っている姿を見てしまい、ちょっと思い直したように悩み始めた。
「えっと、護衛騎士たちに相談してからに決めますね」
というわけで、瞬間移動魔法についてはちょっと保留となった。
「まぁ、そんな事をしなくても、ちょっと時間は掛かりますが、村の側の川をさかのぼっていけばたどり着けますので、瞬間移動魔法は無理にはお勧めしませんよ」
とフェリスは笑顔で言っておいた。
というわけで、食事が終わった後はフェリスの家に保管してあるスパイダーヤーンを確認していた。美しい光沢と柔らかでさらさらとした肌触りに、マイオリーも護衛騎士も驚きを隠せなかった。そこで、マイオリーたちに服を作って渡すと、それは護衛騎士たちが大げさに泣き始めた。
フェリスとマイオリーの会食は、そこそこ平穏に終われたようである。
「実においしかったです。私よりも幼いのに大した腕前ですね」
マイオリーはメルの事をとても褒めていた。その事に対して、メルは涙を流すほどに喜んでいた。大げさな気もするが、聖女に褒められるというのは至極光栄な事らしいので、フェリスはメルの頭を撫でておいた。
「食べ終わったところで恐縮ですが、フェリスさんたちにお話があります」
マイオリーは、神妙な面持ちでフェリスに話し掛けてきた。
「何でしょうか」
フェリスもただならぬ雰囲気を感じ取って真顔になる。ただ、メルを撫でる手は止めなかった。
「最近、各地で邪神の動きが活発化する気配を感じます。神殿に居ても、魔族とは違った魔力の波動を感じましたので、間違いないかと」
「うーむ。邪神かあ……、それあたしも入るのかしら」
「はい、一応は」
「そっかー……」
やっぱりなという顔をするフェリス。現状は”自称”という状態が続いていたので、聖女であるマイオリーに邪神認定されたのは嬉しいのだが、なんかどうにも素直に喜べなかった。
「それはそれとして、その波動はどういう風な感じだったのかしら。やっぱり嫌な感じのものでした?」
マイオリーに確認を取るフェリス。邪神という事は自分のかつての友人たちが含まれる事を示すからだ。フェリスの心情をくみ取ったマイオリーは、少し間を置いてから口を開く。
「そうですね。一部にはそういったものを感じました。フェリスさんのように無害そうな魔力もありましたけれどね」
「あっ、一応無害判定してもらえたんだ」
予想外の判定にきょとんとするフェリスだった。
「そこのペコラさんから時々聞かされてましたからね」
マイオリーがこう言うと、フェリスはキッとペコラを見た。するとペコラは笑ってごまかしていた。その様子を見て、マイオリーとメルがくすくすと笑っていた。
「それにしても、邪神の動きが活発化というのは気になりますね。あたしはもうのんびり暮らせればそれでいいですけれど、そう思っていない者も居るって事ですよね」
咳払いひとつして姿勢を正したフェリスは、マイオリーに問い掛ける。
「そういう事になりますね。ただ場所までは分からなかったので、はっきりと情報が手に入ったこちらに伺ったという次第なんですよ」
「あっ、なるほどね。最近商人の人が出入りしてたから、あたしだけはしっかり特定されてるんだっけか」
フェリスは改めて驚いていた。自分が何をやってたのかまったくもってあまり自覚していないようである。まあ、基本的に邪神とか魔族とかはそれくらいにいい加減である。思い付きで行動するような者はかなり多いのだ。ルディとか。
「でも、フェリスさんが話の通じる邪神で助かりました。聖女だなんて名乗ったら、普通は命を狙われますからね」
「あはは、確かにそうですね」
マイオリーは笑いながら話しているが、まったくもって笑える話じゃない。フェリスは笑いながら返していたが、どう見てもその顔は引きつっていた。
「とりあえず、この村で邪神を三人見かけましたが、無害そうで安心しました。ですが、近くにもう一つ反応がありますね」
マイオリーはその方向へと顔を向ける。その方向でフェリスはすぐにピンときた。
「あー、そっちだったら多分マイムですね。水の精霊なんですけれど、なぜか邪神扱いされてる子なんですよ」
「まあそうなんですね。なぜでしょうか」
「多分あたしと関わりがあるからでしょうね」
驚くマイオリーに、苦笑いをしながら答えるフェリス。
「どうです、時間に余裕があるようでしたら会っていかれますか? あたしが案内しますよ」
「それは助かりますね。それで、どの様に向かわれるのですか?」
フェリスの申し出を即刻受けるマイオリー。さすがにこれには護衛騎士は慌てていた。だが、マイオリーはそんな事は気にしなかった。
「瞬間移動です。あたしを使い魔にした当時のご主人様が得意だったんですよ」
「瞬間移動……、どんな魔法なんですかね」
「思い描いた場所へ一瞬で移動できる魔法です。ただ、距離などによって消費する魔力量が変わってきますので、あまりの遠距離だと魔力を消費し過ぎて、死ぬとまではいかなくてもしばらく動けなくなりますね」
食いついたマイオリーだったが、護衛騎士たちが首を横に振っている姿を見てしまい、ちょっと思い直したように悩み始めた。
「えっと、護衛騎士たちに相談してからに決めますね」
というわけで、瞬間移動魔法についてはちょっと保留となった。
「まぁ、そんな事をしなくても、ちょっと時間は掛かりますが、村の側の川をさかのぼっていけばたどり着けますので、瞬間移動魔法は無理にはお勧めしませんよ」
とフェリスは笑顔で言っておいた。
というわけで、食事が終わった後はフェリスの家に保管してあるスパイダーヤーンを確認していた。美しい光沢と柔らかでさらさらとした肌触りに、マイオリーも護衛騎士も驚きを隠せなかった。そこで、マイオリーたちに服を作って渡すと、それは護衛騎士たちが大げさに泣き始めた。
フェリスとマイオリーの会食は、そこそこ平穏に終われたようである。
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