45 / 290
第45話 邪神ちゃんと聖女のお話
しおりを挟む
フェリスの家で食べた食事に、マイオリーはとても満足したようだった。
「実においしかったです。私よりも幼いのに大した腕前ですね」
マイオリーはメルの事をとても褒めていた。その事に対して、メルは涙を流すほどに喜んでいた。大げさな気もするが、聖女に褒められるというのは至極光栄な事らしいので、フェリスはメルの頭を撫でておいた。
「食べ終わったところで恐縮ですが、フェリスさんたちにお話があります」
マイオリーは、神妙な面持ちでフェリスに話し掛けてきた。
「何でしょうか」
フェリスもただならぬ雰囲気を感じ取って真顔になる。ただ、メルを撫でる手は止めなかった。
「最近、各地で邪神の動きが活発化する気配を感じます。神殿に居ても、魔族とは違った魔力の波動を感じましたので、間違いないかと」
「うーむ。邪神かあ……、それあたしも入るのかしら」
「はい、一応は」
「そっかー……」
やっぱりなという顔をするフェリス。現状は”自称”という状態が続いていたので、聖女であるマイオリーに邪神認定されたのは嬉しいのだが、なんかどうにも素直に喜べなかった。
「それはそれとして、その波動はどういう風な感じだったのかしら。やっぱり嫌な感じのものでした?」
マイオリーに確認を取るフェリス。邪神という事は自分のかつての友人たちが含まれる事を示すからだ。フェリスの心情をくみ取ったマイオリーは、少し間を置いてから口を開く。
「そうですね。一部にはそういったものを感じました。フェリスさんのように無害そうな魔力もありましたけれどね」
「あっ、一応無害判定してもらえたんだ」
予想外の判定にきょとんとするフェリスだった。
「そこのペコラさんから時々聞かされてましたからね」
マイオリーがこう言うと、フェリスはキッとペコラを見た。するとペコラは笑ってごまかしていた。その様子を見て、マイオリーとメルがくすくすと笑っていた。
「それにしても、邪神の動きが活発化というのは気になりますね。あたしはもうのんびり暮らせればそれでいいですけれど、そう思っていない者も居るって事ですよね」
咳払いひとつして姿勢を正したフェリスは、マイオリーに問い掛ける。
「そういう事になりますね。ただ場所までは分からなかったので、はっきりと情報が手に入ったこちらに伺ったという次第なんですよ」
「あっ、なるほどね。最近商人の人が出入りしてたから、あたしだけはしっかり特定されてるんだっけか」
フェリスは改めて驚いていた。自分が何をやってたのかまったくもってあまり自覚していないようである。まあ、基本的に邪神とか魔族とかはそれくらいにいい加減である。思い付きで行動するような者はかなり多いのだ。ルディとか。
「でも、フェリスさんが話の通じる邪神で助かりました。聖女だなんて名乗ったら、普通は命を狙われますからね」
「あはは、確かにそうですね」
マイオリーは笑いながら話しているが、まったくもって笑える話じゃない。フェリスは笑いながら返していたが、どう見てもその顔は引きつっていた。
「とりあえず、この村で邪神を三人見かけましたが、無害そうで安心しました。ですが、近くにもう一つ反応がありますね」
マイオリーはその方向へと顔を向ける。その方向でフェリスはすぐにピンときた。
「あー、そっちだったら多分マイムですね。水の精霊なんですけれど、なぜか邪神扱いされてる子なんですよ」
「まあそうなんですね。なぜでしょうか」
「多分あたしと関わりがあるからでしょうね」
驚くマイオリーに、苦笑いをしながら答えるフェリス。
「どうです、時間に余裕があるようでしたら会っていかれますか? あたしが案内しますよ」
「それは助かりますね。それで、どの様に向かわれるのですか?」
フェリスの申し出を即刻受けるマイオリー。さすがにこれには護衛騎士は慌てていた。だが、マイオリーはそんな事は気にしなかった。
「瞬間移動です。あたしを使い魔にした当時のご主人様が得意だったんですよ」
「瞬間移動……、どんな魔法なんですかね」
「思い描いた場所へ一瞬で移動できる魔法です。ただ、距離などによって消費する魔力量が変わってきますので、あまりの遠距離だと魔力を消費し過ぎて、死ぬとまではいかなくてもしばらく動けなくなりますね」
食いついたマイオリーだったが、護衛騎士たちが首を横に振っている姿を見てしまい、ちょっと思い直したように悩み始めた。
「えっと、護衛騎士たちに相談してからに決めますね」
というわけで、瞬間移動魔法についてはちょっと保留となった。
「まぁ、そんな事をしなくても、ちょっと時間は掛かりますが、村の側の川をさかのぼっていけばたどり着けますので、瞬間移動魔法は無理にはお勧めしませんよ」
とフェリスは笑顔で言っておいた。
というわけで、食事が終わった後はフェリスの家に保管してあるスパイダーヤーンを確認していた。美しい光沢と柔らかでさらさらとした肌触りに、マイオリーも護衛騎士も驚きを隠せなかった。そこで、マイオリーたちに服を作って渡すと、それは護衛騎士たちが大げさに泣き始めた。
フェリスとマイオリーの会食は、そこそこ平穏に終われたようである。
「実においしかったです。私よりも幼いのに大した腕前ですね」
マイオリーはメルの事をとても褒めていた。その事に対して、メルは涙を流すほどに喜んでいた。大げさな気もするが、聖女に褒められるというのは至極光栄な事らしいので、フェリスはメルの頭を撫でておいた。
「食べ終わったところで恐縮ですが、フェリスさんたちにお話があります」
マイオリーは、神妙な面持ちでフェリスに話し掛けてきた。
「何でしょうか」
フェリスもただならぬ雰囲気を感じ取って真顔になる。ただ、メルを撫でる手は止めなかった。
「最近、各地で邪神の動きが活発化する気配を感じます。神殿に居ても、魔族とは違った魔力の波動を感じましたので、間違いないかと」
「うーむ。邪神かあ……、それあたしも入るのかしら」
「はい、一応は」
「そっかー……」
やっぱりなという顔をするフェリス。現状は”自称”という状態が続いていたので、聖女であるマイオリーに邪神認定されたのは嬉しいのだが、なんかどうにも素直に喜べなかった。
「それはそれとして、その波動はどういう風な感じだったのかしら。やっぱり嫌な感じのものでした?」
マイオリーに確認を取るフェリス。邪神という事は自分のかつての友人たちが含まれる事を示すからだ。フェリスの心情をくみ取ったマイオリーは、少し間を置いてから口を開く。
「そうですね。一部にはそういったものを感じました。フェリスさんのように無害そうな魔力もありましたけれどね」
「あっ、一応無害判定してもらえたんだ」
予想外の判定にきょとんとするフェリスだった。
「そこのペコラさんから時々聞かされてましたからね」
マイオリーがこう言うと、フェリスはキッとペコラを見た。するとペコラは笑ってごまかしていた。その様子を見て、マイオリーとメルがくすくすと笑っていた。
「それにしても、邪神の動きが活発化というのは気になりますね。あたしはもうのんびり暮らせればそれでいいですけれど、そう思っていない者も居るって事ですよね」
咳払いひとつして姿勢を正したフェリスは、マイオリーに問い掛ける。
「そういう事になりますね。ただ場所までは分からなかったので、はっきりと情報が手に入ったこちらに伺ったという次第なんですよ」
「あっ、なるほどね。最近商人の人が出入りしてたから、あたしだけはしっかり特定されてるんだっけか」
フェリスは改めて驚いていた。自分が何をやってたのかまったくもってあまり自覚していないようである。まあ、基本的に邪神とか魔族とかはそれくらいにいい加減である。思い付きで行動するような者はかなり多いのだ。ルディとか。
「でも、フェリスさんが話の通じる邪神で助かりました。聖女だなんて名乗ったら、普通は命を狙われますからね」
「あはは、確かにそうですね」
マイオリーは笑いながら話しているが、まったくもって笑える話じゃない。フェリスは笑いながら返していたが、どう見てもその顔は引きつっていた。
「とりあえず、この村で邪神を三人見かけましたが、無害そうで安心しました。ですが、近くにもう一つ反応がありますね」
マイオリーはその方向へと顔を向ける。その方向でフェリスはすぐにピンときた。
「あー、そっちだったら多分マイムですね。水の精霊なんですけれど、なぜか邪神扱いされてる子なんですよ」
「まあそうなんですね。なぜでしょうか」
「多分あたしと関わりがあるからでしょうね」
驚くマイオリーに、苦笑いをしながら答えるフェリス。
「どうです、時間に余裕があるようでしたら会っていかれますか? あたしが案内しますよ」
「それは助かりますね。それで、どの様に向かわれるのですか?」
フェリスの申し出を即刻受けるマイオリー。さすがにこれには護衛騎士は慌てていた。だが、マイオリーはそんな事は気にしなかった。
「瞬間移動です。あたしを使い魔にした当時のご主人様が得意だったんですよ」
「瞬間移動……、どんな魔法なんですかね」
「思い描いた場所へ一瞬で移動できる魔法です。ただ、距離などによって消費する魔力量が変わってきますので、あまりの遠距離だと魔力を消費し過ぎて、死ぬとまではいかなくてもしばらく動けなくなりますね」
食いついたマイオリーだったが、護衛騎士たちが首を横に振っている姿を見てしまい、ちょっと思い直したように悩み始めた。
「えっと、護衛騎士たちに相談してからに決めますね」
というわけで、瞬間移動魔法についてはちょっと保留となった。
「まぁ、そんな事をしなくても、ちょっと時間は掛かりますが、村の側の川をさかのぼっていけばたどり着けますので、瞬間移動魔法は無理にはお勧めしませんよ」
とフェリスは笑顔で言っておいた。
というわけで、食事が終わった後はフェリスの家に保管してあるスパイダーヤーンを確認していた。美しい光沢と柔らかでさらさらとした肌触りに、マイオリーも護衛騎士も驚きを隠せなかった。そこで、マイオリーたちに服を作って渡すと、それは護衛騎士たちが大げさに泣き始めた。
フェリスとマイオリーの会食は、そこそこ平穏に終われたようである。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
俺がいなくても世界は回るそうなので、ここから出ていくことにしました。ちょっと異世界にでも行ってみます。ウワサの重来者(甘口)
おいなり新九郎
ファンタジー
ハラスメント、なぜだかしたりされちゃったりする仕事場を何とか抜け出して家に帰りついた俺。帰ってきたのはいいけれど・・・。ずっと閉じ込められて開く異世界へのドア。ずっと見せられてたのは、俺がいなくても回るという世界の現実。あーここに居るのがいけないのね。座り込むのも飽きたし、分かった。俺、出ていくよ。その異世界って、また俺の代わりはいくらでもいる世界かな? 転生先の世界でもケガで職を追われ、じいちゃんの店に転がり込む俺・・・だけど。

ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる