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第41話 邪神ちゃんと昔の料理
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「ここはのどかで気に入ったのだ」
家に戻るとペコラはそう言ってベッドにダイブしようとしていた。
「こらっ、ベッドが汚れるからやめなさい」
それをとっさに捕まえるフェリス。するとペコラは服を掴まれたまま暴れていた。
「やーめーろー、離すのだーっ! 眠りは、眠りこそあーしの領分なのだーっ!」
「眠らせる以外に何の取り柄もないくせに、偉そうに言うなっ!」
ギャーギャーとけんかする二人に、メルが呆気に取られている。ルディは過去見た事のある光景に、顔を押さえていた。
「すまんな、メル。あの二人はずーっとこんな感じだったんだ。フェリスってああ見えても自由奔放というよりは律儀な奴でな、ペコラの方が自由なんだ。だから反りが合わないって言うかなんて言うか、俺らもずっと手を焼いてたんだ」
ルディの言葉が少々言いよどんでいる。おそらく黒歴史のようなものなのだろう。メルはなんとなく悟った。
「分かりました。詳しく聞かないでおきます」
「メルは理解が早くて助かるぜ」
メルの言葉に、ルディはほっとしていた。
「では、私はお夕飯の支度をしますね」
メルはそう言うと、台所へとパタパタと走っていった。
ちなみにこの間もフェリスとペコラはずっと睨み合っていた。しゃーねえなという感じで、ルディは再び二人の尻に火をつけて黙らせたのだった。
どうにかこうにか騒動が収まって、二人はお風呂に入って食堂へやって来る。そこにはメルの作った料理が並べられていた。
「あっ、フェリス様、ペコラ様、お待ちしておりました」
メルが声を掛けてくる。
「メル、また腕を上げたわね」
「はい、フェリス様に喜んで頂こうと頑張っていますから」
褒められれば照れながら笑うメル。相変わらず可愛い子である。
だが、この雰囲気をぶっ壊す人物が居た。
「うおぉぉぉぉっ! この料理は懐かしいのだ!」
言わずと知れたペコラである。昔の料理を知る数少ない存在であるので、今食卓に並ぶメルの手料理にもしっかり見覚えがあるようなのである。
「すごいのだ。この料理を再び食べられる日が来るなんて思ってもみなかったのだ」
「まあ、似たような料理なら食べられるけれどね。昔の製法でしっかり作られたものとなると、それは貴重よね」
「そうですね。このように組み合わせる事は無いですからね。大体はそのまま別々に食べちゃいますね」
メルがここで作った料理は……、なんとピザだった。村にはそれらを作るための素材が揃っていたのである。薄く伸ばしたパン生地の上にチーズと肉と野菜を乗せて焼き上げたものである。
「これは人間の街、特に国王が住んでいるような王都でしか食べられなかった一品なのだ。偉くなった気がするのだ」
ペコラが目に涙を浮かべるほどに喜んでいた。
「わわっ、どうして泣いているのですか、ペコラ様」
「メル、しょうがないじゃないの。ペコラはあたしの友人の中でも特に人間たちの文化に慣れ親しんでた邪神なんだから。懐かし過ぎて泣きたくなったのよ。心配は要らないわ」
「わわっ、そうなのですね。少し安心しました」
慌てるメルにフェリスが説明を入れると、メルは胸に手を当ててほっとしていた。
「あたしも懐かしいわね。ペコラと蛇の奴が作ったのを食べ比べたりとかもしたわ」
フェリスもまじまじとピザを見ている。
「おい、いつになったら食うんだよ。冷めちまうだろうが!」
いつまでも懐かしさに浸るフェリスとペコラに、ルディがキレて叫んだ。わんこに待ては耐えられないようだ。
「悪いわね、ルディ。ちょっと話し込んじゃったわ」
ルディが怒っているものだから、フェリスは簡単に謝っておく。そして、メルも席に着かせた。
「まったく今日もバタバタと慌ただしかったわね。それじゃ食べましょう」
「はぁ、ようやく食べられるぜ」
フェリスの言葉に、ようやく安心したルディ。相当に食いたがっていたのがよく分かる。
この面々の中、メルだけは食事前の祈りは欠かさなかった。フェリスの眷属になったとはいえ、この習慣は直さなくてもいい言われたのでそのままなのだ。
「正直、ペコラと牛たちとの相性はいい感じだったわね」
「そうですね。フェリス様の時もでしたけれど、ペコラ様にもよく懐いていましたね。あのジャイアントスパイダーたちもですけれど」
「そうね。ルディは嫌われているけど」
にやりと笑いながらルディを見るフェリス。なんて意地の悪い顔をしているのだろうか。
「お前なぁ。逃げないように結界を張れって言ったのは誰だよ!」
「ああ、それはあたしだったわね。でも、実際に嫌われているのはルディだけよ」
「うぎぎぎぎ……」
「はははっ、ルディ、ウケるのだ」
フェリスの物言いにルディは歯を食いしばり、ペコラは大笑いしていた。その楽しそうな光景にメルも笑っていた。
何にしても、ペコラが来た事でフェリスメルの日常は更に賑やかになりそうである。
だが、フェリスの知らないところで、この状況に憂いを感じる者が居た。
「最近、邪神の動きが活発化しているようですね」
「はっ、何でも複数集まっているのが確認されたようです。いかが致しましょうか」
男性の声に、しばらく無言で足音が響き渡る。
「……気になります。直に乗り込んで確認を致しましょう」
女性は男性に向き直って告げる。
「はっ、それでは早速準備を致します」
バタバタと出ていく男性。何やら空気が不穏である。
「邪神が動き出すとは、一体何を考えているのでしょうね」
くるりと女性は巨大な像を見上げると、こう呟いた。
「今代の聖女と言われる私が、見極めてあげましょう」
家に戻るとペコラはそう言ってベッドにダイブしようとしていた。
「こらっ、ベッドが汚れるからやめなさい」
それをとっさに捕まえるフェリス。するとペコラは服を掴まれたまま暴れていた。
「やーめーろー、離すのだーっ! 眠りは、眠りこそあーしの領分なのだーっ!」
「眠らせる以外に何の取り柄もないくせに、偉そうに言うなっ!」
ギャーギャーとけんかする二人に、メルが呆気に取られている。ルディは過去見た事のある光景に、顔を押さえていた。
「すまんな、メル。あの二人はずーっとこんな感じだったんだ。フェリスってああ見えても自由奔放というよりは律儀な奴でな、ペコラの方が自由なんだ。だから反りが合わないって言うかなんて言うか、俺らもずっと手を焼いてたんだ」
ルディの言葉が少々言いよどんでいる。おそらく黒歴史のようなものなのだろう。メルはなんとなく悟った。
「分かりました。詳しく聞かないでおきます」
「メルは理解が早くて助かるぜ」
メルの言葉に、ルディはほっとしていた。
「では、私はお夕飯の支度をしますね」
メルはそう言うと、台所へとパタパタと走っていった。
ちなみにこの間もフェリスとペコラはずっと睨み合っていた。しゃーねえなという感じで、ルディは再び二人の尻に火をつけて黙らせたのだった。
どうにかこうにか騒動が収まって、二人はお風呂に入って食堂へやって来る。そこにはメルの作った料理が並べられていた。
「あっ、フェリス様、ペコラ様、お待ちしておりました」
メルが声を掛けてくる。
「メル、また腕を上げたわね」
「はい、フェリス様に喜んで頂こうと頑張っていますから」
褒められれば照れながら笑うメル。相変わらず可愛い子である。
だが、この雰囲気をぶっ壊す人物が居た。
「うおぉぉぉぉっ! この料理は懐かしいのだ!」
言わずと知れたペコラである。昔の料理を知る数少ない存在であるので、今食卓に並ぶメルの手料理にもしっかり見覚えがあるようなのである。
「すごいのだ。この料理を再び食べられる日が来るなんて思ってもみなかったのだ」
「まあ、似たような料理なら食べられるけれどね。昔の製法でしっかり作られたものとなると、それは貴重よね」
「そうですね。このように組み合わせる事は無いですからね。大体はそのまま別々に食べちゃいますね」
メルがここで作った料理は……、なんとピザだった。村にはそれらを作るための素材が揃っていたのである。薄く伸ばしたパン生地の上にチーズと肉と野菜を乗せて焼き上げたものである。
「これは人間の街、特に国王が住んでいるような王都でしか食べられなかった一品なのだ。偉くなった気がするのだ」
ペコラが目に涙を浮かべるほどに喜んでいた。
「わわっ、どうして泣いているのですか、ペコラ様」
「メル、しょうがないじゃないの。ペコラはあたしの友人の中でも特に人間たちの文化に慣れ親しんでた邪神なんだから。懐かし過ぎて泣きたくなったのよ。心配は要らないわ」
「わわっ、そうなのですね。少し安心しました」
慌てるメルにフェリスが説明を入れると、メルは胸に手を当ててほっとしていた。
「あたしも懐かしいわね。ペコラと蛇の奴が作ったのを食べ比べたりとかもしたわ」
フェリスもまじまじとピザを見ている。
「おい、いつになったら食うんだよ。冷めちまうだろうが!」
いつまでも懐かしさに浸るフェリスとペコラに、ルディがキレて叫んだ。わんこに待ては耐えられないようだ。
「悪いわね、ルディ。ちょっと話し込んじゃったわ」
ルディが怒っているものだから、フェリスは簡単に謝っておく。そして、メルも席に着かせた。
「まったく今日もバタバタと慌ただしかったわね。それじゃ食べましょう」
「はぁ、ようやく食べられるぜ」
フェリスの言葉に、ようやく安心したルディ。相当に食いたがっていたのがよく分かる。
この面々の中、メルだけは食事前の祈りは欠かさなかった。フェリスの眷属になったとはいえ、この習慣は直さなくてもいい言われたのでそのままなのだ。
「正直、ペコラと牛たちとの相性はいい感じだったわね」
「そうですね。フェリス様の時もでしたけれど、ペコラ様にもよく懐いていましたね。あのジャイアントスパイダーたちもですけれど」
「そうね。ルディは嫌われているけど」
にやりと笑いながらルディを見るフェリス。なんて意地の悪い顔をしているのだろうか。
「お前なぁ。逃げないように結界を張れって言ったのは誰だよ!」
「ああ、それはあたしだったわね。でも、実際に嫌われているのはルディだけよ」
「うぎぎぎぎ……」
「はははっ、ルディ、ウケるのだ」
フェリスの物言いにルディは歯を食いしばり、ペコラは大笑いしていた。その楽しそうな光景にメルも笑っていた。
何にしても、ペコラが来た事でフェリスメルの日常は更に賑やかになりそうである。
だが、フェリスの知らないところで、この状況に憂いを感じる者が居た。
「最近、邪神の動きが活発化しているようですね」
「はっ、何でも複数集まっているのが確認されたようです。いかが致しましょうか」
男性の声に、しばらく無言で足音が響き渡る。
「……気になります。直に乗り込んで確認を致しましょう」
女性は男性に向き直って告げる。
「はっ、それでは早速準備を致します」
バタバタと出ていく男性。何やら空気が不穏である。
「邪神が動き出すとは、一体何を考えているのでしょうね」
くるりと女性は巨大な像を見上げると、こう呟いた。
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