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第38話 邪神ちゃんと昔の仲間
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フェリスの家の中に招かれた邪神ペコラ。彼女は全身とはいかず髪の毛だけが天然パーマのようなくるくるの癖毛で、羊の耳と角を持った邪神である。フェリスとは比べものにならないくらいの邪神である。
「はい、お待たせしました。こちらは村特産のミルクとお菓子のリンゴとオレンジのクッキーです。お口に合うかは分かりませんが、お召し上がり下さい」
メルはペコラにそう言ってお菓子を出した。
「おー、懐かしいのだ。あーしはよく人間の街に食べに行ってたのだ」
ペコラがそう言うと、
「もしかして、フェリス様にレシピを伝えたのは、ペコラ様なんですか?」
「いやー、あーしじゃないのだ。あーしはこういう細かい事は苦手なのだ」
メルが確認を取ると、ペコラはすぐさま否定してきた。人間の街に行っていたのだからそうかと思ったら違っていた。
「確かに、覚える事と細かい作業をする事に関しては、ルディとペコラは同じレベルで苦手だったわね。ちなみにあたしにこれのレシピを伝えてきたのは、邪神としてのイメージが強い蛇の奴よ。ちょっとすぐには名前は思い出せないけど、あいつは食べる事に関しては貪欲だったし、気に入ったのは仲間内に振舞うのが癖だったからね」
「うむ、そうなのだ」
「あー、蛇かー。俺も思い出せないなぁ、顔を見ればすぐにでも思い出すと思うだがな」
フェリスが思い出した事を話していると、ペコラとルディも続けて肯定はすれど、名前と姿に関してはほとんど情報が出てこなかった。蛇モチーフの邪神という事だけは分かったが、それ以上はどうあがいても思い出せなかった。
「まっ、あいつも生きてればそのうち会いに来るでしょうね。あいつは人間に化けるのがうまくて、よく平然と人間と一緒に生活とかしてたみたいだしね。意外と人間社会に溶け込んでいたりして」
「あーしみたいな中途半端な姿の半獣じゃなくて、変化で完全に人間に化けていたのだ。すごかったのだ」
どこまでいっても能力までしか出てこなかった。異常なまでに名前と容姿だけは出てこない。メルは何か違和感のようなものを感じていた。
「メル、何を考えてるのかよく分かるわよ。あたしたちが名前と姿を思い出せない事でしょう?」
「えっ。あっ、はい」
フェリスの指摘に、メルは体を跳ねつかせて驚いている。
「多分、あいつの魔法だろうなぁ。戦いが終わって散り散りになる時に、記憶の封印でも掛けてったんだろ。俺の鼻すら騙せるくらいに狡猾だったしなぁ、あいつ」
「まぁ、用意周到って言うか警戒心が強いって言うか、あたしより強い邪神の一人だったからね、あいつは」
フェリスとルディが口々に言っている。フェリスより強い邪神。その単語にメルは妙に惹かれた気がした。
「それにしても、メルもすっかり料理の腕を上げたわね。あたしの眷属化による影響があるとはいえ、ここまで上達するのは驚きだわ」
「わぁ、ありがとうございます。フェリス様にお褒め頂けるなんて光栄です」
フェリスが褒めると、メルは満面の笑みを浮かべて頬を赤く染めていた。本当に嬉しいようだ。
「本当なのだ。あーしは初めて食べたけど、昔を思い出すのだ。あの頃はこういう料理にあふれていたのだ」
ペコラも一心不乱というくらいにばくばくと食べていた。
「あたしは引きこもってたから外がどうなってるのか分からないんだけど、ペコラの言葉を聞く限り、食事事情はかなり衰退してるのかしら」
フェリスはペコラを見ながら、尋ねてみる。すると、ペコラは食べる手を止めずに答える。
「そう、なのだ。もぐもぐ、あの戦いで、すっかり、もぐもぐ、それまでにあった料理は、ごくごく、滅んでしまったのだ」
「食べたり飲んだりしながら話さないの。まぁ大体聞き取れたけどさ」
ペコラが口に物を入れながら喋るが、どうにかまともな発音をしていたのでフェリスは聞き取れたようである。
「こないだ来た商人たちが驚いていたのがよく分かるわ。やっぱり、以前のレシピって大幅に失われてたのね」
フェリスはすごく残念そうな表情をしている。フェリスもそういった料理を多く堪能してきたので、すぐに食べられないと分かって悔しいのだ。だが、レシピにあった材料を商人たちに手配しているので、その内再現した料理を食べられるはずである。フェリスはとにかく我慢する事にした。
「へぇ、その蛇の方ってすごい能力の持ち主なんですね」
「ああ、そうだぜ。で、あとどんなのが居たっけかな、フェリス」
メルが感心していると、ルディが笑いながらフェリスに話を振った。
「覚えときなさいよ、この犬ころ!」
だが、フェリスは第一声で怒った。
「あーしの記憶だと、あーしたちみたいな女性型の魔族ばかり居たと思うのだ。フェリスはこの見た目なのに男運が無かったのだ」
「ペーコーラー?」
けらっけらと話すペコラを、フェリスが怒りを剥き出しにして睨み付ける。するとペコラは「知らないのだー」と言ってそっぽを向いた。
「おほん……。基本的にはあたしには12体の仲間が居たわね。ああ、マイムは別枠よ、別枠」
フェリスはペコラに鋭い視線を送りながら、話を始める。
「基本的には以前メルに話した事やゼニスさんが話してた言い伝え通りなんだけど、あたしにはそういった友人たちが居たからあの頃は本当に楽しかったわね」
とこんな感じで、寝て過ごすはずが、昔話に話を咲かせて一日を終えるフェリスなのであった。
「はい、お待たせしました。こちらは村特産のミルクとお菓子のリンゴとオレンジのクッキーです。お口に合うかは分かりませんが、お召し上がり下さい」
メルはペコラにそう言ってお菓子を出した。
「おー、懐かしいのだ。あーしはよく人間の街に食べに行ってたのだ」
ペコラがそう言うと、
「もしかして、フェリス様にレシピを伝えたのは、ペコラ様なんですか?」
「いやー、あーしじゃないのだ。あーしはこういう細かい事は苦手なのだ」
メルが確認を取ると、ペコラはすぐさま否定してきた。人間の街に行っていたのだからそうかと思ったら違っていた。
「確かに、覚える事と細かい作業をする事に関しては、ルディとペコラは同じレベルで苦手だったわね。ちなみにあたしにこれのレシピを伝えてきたのは、邪神としてのイメージが強い蛇の奴よ。ちょっとすぐには名前は思い出せないけど、あいつは食べる事に関しては貪欲だったし、気に入ったのは仲間内に振舞うのが癖だったからね」
「うむ、そうなのだ」
「あー、蛇かー。俺も思い出せないなぁ、顔を見ればすぐにでも思い出すと思うだがな」
フェリスが思い出した事を話していると、ペコラとルディも続けて肯定はすれど、名前と姿に関してはほとんど情報が出てこなかった。蛇モチーフの邪神という事だけは分かったが、それ以上はどうあがいても思い出せなかった。
「まっ、あいつも生きてればそのうち会いに来るでしょうね。あいつは人間に化けるのがうまくて、よく平然と人間と一緒に生活とかしてたみたいだしね。意外と人間社会に溶け込んでいたりして」
「あーしみたいな中途半端な姿の半獣じゃなくて、変化で完全に人間に化けていたのだ。すごかったのだ」
どこまでいっても能力までしか出てこなかった。異常なまでに名前と容姿だけは出てこない。メルは何か違和感のようなものを感じていた。
「メル、何を考えてるのかよく分かるわよ。あたしたちが名前と姿を思い出せない事でしょう?」
「えっ。あっ、はい」
フェリスの指摘に、メルは体を跳ねつかせて驚いている。
「多分、あいつの魔法だろうなぁ。戦いが終わって散り散りになる時に、記憶の封印でも掛けてったんだろ。俺の鼻すら騙せるくらいに狡猾だったしなぁ、あいつ」
「まぁ、用意周到って言うか警戒心が強いって言うか、あたしより強い邪神の一人だったからね、あいつは」
フェリスとルディが口々に言っている。フェリスより強い邪神。その単語にメルは妙に惹かれた気がした。
「それにしても、メルもすっかり料理の腕を上げたわね。あたしの眷属化による影響があるとはいえ、ここまで上達するのは驚きだわ」
「わぁ、ありがとうございます。フェリス様にお褒め頂けるなんて光栄です」
フェリスが褒めると、メルは満面の笑みを浮かべて頬を赤く染めていた。本当に嬉しいようだ。
「本当なのだ。あーしは初めて食べたけど、昔を思い出すのだ。あの頃はこういう料理にあふれていたのだ」
ペコラも一心不乱というくらいにばくばくと食べていた。
「あたしは引きこもってたから外がどうなってるのか分からないんだけど、ペコラの言葉を聞く限り、食事事情はかなり衰退してるのかしら」
フェリスはペコラを見ながら、尋ねてみる。すると、ペコラは食べる手を止めずに答える。
「そう、なのだ。もぐもぐ、あの戦いで、すっかり、もぐもぐ、それまでにあった料理は、ごくごく、滅んでしまったのだ」
「食べたり飲んだりしながら話さないの。まぁ大体聞き取れたけどさ」
ペコラが口に物を入れながら喋るが、どうにかまともな発音をしていたのでフェリスは聞き取れたようである。
「こないだ来た商人たちが驚いていたのがよく分かるわ。やっぱり、以前のレシピって大幅に失われてたのね」
フェリスはすごく残念そうな表情をしている。フェリスもそういった料理を多く堪能してきたので、すぐに食べられないと分かって悔しいのだ。だが、レシピにあった材料を商人たちに手配しているので、その内再現した料理を食べられるはずである。フェリスはとにかく我慢する事にした。
「へぇ、その蛇の方ってすごい能力の持ち主なんですね」
「ああ、そうだぜ。で、あとどんなのが居たっけかな、フェリス」
メルが感心していると、ルディが笑いながらフェリスに話を振った。
「覚えときなさいよ、この犬ころ!」
だが、フェリスは第一声で怒った。
「あーしの記憶だと、あーしたちみたいな女性型の魔族ばかり居たと思うのだ。フェリスはこの見た目なのに男運が無かったのだ」
「ペーコーラー?」
けらっけらと話すペコラを、フェリスが怒りを剥き出しにして睨み付ける。するとペコラは「知らないのだー」と言ってそっぽを向いた。
「おほん……。基本的にはあたしには12体の仲間が居たわね。ああ、マイムは別枠よ、別枠」
フェリスはペコラに鋭い視線を送りながら、話を始める。
「基本的には以前メルに話した事やゼニスさんが話してた言い伝え通りなんだけど、あたしにはそういった友人たちが居たからあの頃は本当に楽しかったわね」
とこんな感じで、寝て過ごすはずが、昔話に話を咲かせて一日を終えるフェリスなのであった。
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