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第26話 邪神ちゃんの恵みと行商人
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フェリスとルディという二人の邪神、それに10匹のジャイアントスパイダーがやって来て、村もすっかり賑やかになっていた。のどかでのんびりした村だったのだが、一気に活気づいたようである。なにせ、近くには川が流れるようになったし、でかいため池だってある。大きく様変わりをしてしまっていた。
そうしたある日の事、村に行商がやって来た。村の産物の買い付けである。それと同時に村に必要なものも売りに来ているので、大半は物々交換のようなものだ。
この村の売り物はチーズと小麦と芋が大半。リンゴやオレンジは腐りやすいので行商人たちの食事になる事が多かった。
しかし、この日やって来た行商人は驚いた。
「な、な、な、なんですかな、これは?!」
そう、ジャイアントスパイダーである。
ルディの結界のおかげで外には出てこれないが、十分な広さがあるので、今日もご機嫌に糸をたくさん吐いていた。外に出られないのはストレスかと思ったが、糸に毒性がないくらいにはリラックスしているようである。
「ジャイアントスパイダーでございます。ちょっとした偶然がありまして、うちの村に居ついてしまいまして、餌を与える代わりにこうやって糸を出してもらっているのですよ」
村長はこう説明している。
このように説明するのには理由があった。フェリスが自分たちの名前を出すなときつく言ってきたからである。村では天使様と崇められているものの、よそでは邪神として名が通っている可能性があるので、村が危険視されかねないというのがフェリスの言い分である。村長は渋々それを受け入れたのである。
ちなみに村長にはメルが同行している。このメルの服装についても、村人たちと変わらない服装をするように命じてある。一人だけ異質な服を着ていたら、それは当然突っ込まれる事になるから仕方のない対処だ。これもメルは渋々受け入れていた。フェリスの言い分が分かるからだった。
というわけで、フェリスとルディの二人の邪神の気配を極力消しつつ、村長とメルは村を案内して回っている。ただ、二人して熱心なフェリス信者なので、いつボロを出すのか心配なフェリスは隠れて見守っていた。
「まー、実際心配だよな。この村は俺らの事を全然知らねえようだけど、他の地域に行ったら知ってるかも知れないからな。邪神を信奉しているとされたら、それこそこの村は焼き討ちに遭う可能性があるもんな」
「ええ、まったくね。数100年前までは、確実にあたしたちは邪神のひと柱に数えられていたんだから、そういう教えが残っている地域だってあるはずよ」
こそこそと警戒しながら見守るフェリスとルディ。何だろうという感じで二人を見ている村人たちも居るが、その視線の先を見てなんとなく察してスルーしている。何とできた村人たちなのだろうか。
その後も尾行を続けたフェリスとルディだったが、村長とメルはボロを出すような事はなかった。
そして、最後に交渉の場へと入る。
「いやはや、知らない間に村の様相が変わっていて、正直場所を間違えたのではないかと驚きましたよ」
「はははっ、わしどもの方も驚いておりますとも」
笑い合う村長と行商人。
「それはそうと、ずっとつけてきている者が居りましたな。出てきてもらってもよろしいですかな?」
行商人がフェリスたちの隠れている建物の入口の方へ視線を送ってくる。どうやらバレているらしい。フェリスとルディはお互いの顔を見ると、ため息を吐いて諦めて出ていった。
「よく気が付かれましたね」
「可愛い尻尾がちらちらと見えていましたからね。なるほど、二人は魔族ですか」
行商人はじろじろとフェリスとルディを見ている。商人らしく、まるで品定めをするかのようである。
「正確には違うけれど、似たようなものかしらね。でも、魔族だとしても驚かないですね」
フェリスは商人に感心したように声を掛ける。すると商人はそれを笑い飛ばしていた。
「はっはっはっ、我々商人はたとえ相手がどのような者であろうとも、商機があれば伺いに行くのです。人間だとか魔族だとか、そんなものは些細な事ですよ」
「なるほど、儲かるならそれ以外は問題なしって事ですね」
フェリスは近付いて行って空いている椅子に腰掛けた。
「村の物の品質が格段に上がっていましたが、それはあなたのせいですね」
いきなり切り込んでくる行商人。だが、フェリスはまったく動じていない。邪神たるもの、交渉において落ち着きを無くしていてはいけないのだ。
だが、フェリスは甘言で相手を油断させるような邪神とは違うのだ。ここからが毒気の抜けたフェリスの本領発揮というものである。
「ええ、はっきり言ってその通りです。ただ、その原理や理由についてはあたしもまったく分かりません。あたしの魔力が作用したのは間違いないでしょうが、そういった魔法を使ったつもりはありませんから」
ただの馬鹿正直である。
「分かりました。えっと……」
「あたしはフェリス。そちらの商人さんは?」
「おっと、これは失礼しました。私はこの村に通う行商人の一人でゼニスと申します」
フェリスの名乗りに反応した茶髪碧眼のイケおじは、そう名乗ったのであった。
そうしたある日の事、村に行商がやって来た。村の産物の買い付けである。それと同時に村に必要なものも売りに来ているので、大半は物々交換のようなものだ。
この村の売り物はチーズと小麦と芋が大半。リンゴやオレンジは腐りやすいので行商人たちの食事になる事が多かった。
しかし、この日やって来た行商人は驚いた。
「な、な、な、なんですかな、これは?!」
そう、ジャイアントスパイダーである。
ルディの結界のおかげで外には出てこれないが、十分な広さがあるので、今日もご機嫌に糸をたくさん吐いていた。外に出られないのはストレスかと思ったが、糸に毒性がないくらいにはリラックスしているようである。
「ジャイアントスパイダーでございます。ちょっとした偶然がありまして、うちの村に居ついてしまいまして、餌を与える代わりにこうやって糸を出してもらっているのですよ」
村長はこう説明している。
このように説明するのには理由があった。フェリスが自分たちの名前を出すなときつく言ってきたからである。村では天使様と崇められているものの、よそでは邪神として名が通っている可能性があるので、村が危険視されかねないというのがフェリスの言い分である。村長は渋々それを受け入れたのである。
ちなみに村長にはメルが同行している。このメルの服装についても、村人たちと変わらない服装をするように命じてある。一人だけ異質な服を着ていたら、それは当然突っ込まれる事になるから仕方のない対処だ。これもメルは渋々受け入れていた。フェリスの言い分が分かるからだった。
というわけで、フェリスとルディの二人の邪神の気配を極力消しつつ、村長とメルは村を案内して回っている。ただ、二人して熱心なフェリス信者なので、いつボロを出すのか心配なフェリスは隠れて見守っていた。
「まー、実際心配だよな。この村は俺らの事を全然知らねえようだけど、他の地域に行ったら知ってるかも知れないからな。邪神を信奉しているとされたら、それこそこの村は焼き討ちに遭う可能性があるもんな」
「ええ、まったくね。数100年前までは、確実にあたしたちは邪神のひと柱に数えられていたんだから、そういう教えが残っている地域だってあるはずよ」
こそこそと警戒しながら見守るフェリスとルディ。何だろうという感じで二人を見ている村人たちも居るが、その視線の先を見てなんとなく察してスルーしている。何とできた村人たちなのだろうか。
その後も尾行を続けたフェリスとルディだったが、村長とメルはボロを出すような事はなかった。
そして、最後に交渉の場へと入る。
「いやはや、知らない間に村の様相が変わっていて、正直場所を間違えたのではないかと驚きましたよ」
「はははっ、わしどもの方も驚いておりますとも」
笑い合う村長と行商人。
「それはそうと、ずっとつけてきている者が居りましたな。出てきてもらってもよろしいですかな?」
行商人がフェリスたちの隠れている建物の入口の方へ視線を送ってくる。どうやらバレているらしい。フェリスとルディはお互いの顔を見ると、ため息を吐いて諦めて出ていった。
「よく気が付かれましたね」
「可愛い尻尾がちらちらと見えていましたからね。なるほど、二人は魔族ですか」
行商人はじろじろとフェリスとルディを見ている。商人らしく、まるで品定めをするかのようである。
「正確には違うけれど、似たようなものかしらね。でも、魔族だとしても驚かないですね」
フェリスは商人に感心したように声を掛ける。すると商人はそれを笑い飛ばしていた。
「はっはっはっ、我々商人はたとえ相手がどのような者であろうとも、商機があれば伺いに行くのです。人間だとか魔族だとか、そんなものは些細な事ですよ」
「なるほど、儲かるならそれ以外は問題なしって事ですね」
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「村の物の品質が格段に上がっていましたが、それはあなたのせいですね」
いきなり切り込んでくる行商人。だが、フェリスはまったく動じていない。邪神たるもの、交渉において落ち着きを無くしていてはいけないのだ。
だが、フェリスは甘言で相手を油断させるような邪神とは違うのだ。ここからが毒気の抜けたフェリスの本領発揮というものである。
「ええ、はっきり言ってその通りです。ただ、その原理や理由についてはあたしもまったく分かりません。あたしの魔力が作用したのは間違いないでしょうが、そういった魔法を使ったつもりはありませんから」
ただの馬鹿正直である。
「分かりました。えっと……」
「あたしはフェリス。そちらの商人さんは?」
「おっと、これは失礼しました。私はこの村に通う行商人の一人でゼニスと申します」
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