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第25話 邪神ちゃんはけた違い
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フェリスはただただ驚いていた。メルの魔法の習得速度についてだ。
「本当に魔法って便利ですね」
きゃっきゃと騒ぐメル。フェリスが使える魔法は、メルも使う事ができたのだ。仕える主と同じ魔法が使えたとなると、それはとても嬉しいものだろう。
ただ、フェリスよりは当然威力は劣る。人間と魔族という違いがあるので、そもそもの魔力の絶対量が違うのだ。メルはフェリスの影響で潜在能力が引き出されたようなものだし、人間の魔力なんて勇者とか聖女とかそういった類でなければ魔族とはリンゴと小麦粒ほどの差があるのだ。
「うわ~、ふらふらする~……」
メルが目を回し始めた。魔力切れの初期症状である。最悪死ぬ事すらある症状なので、存外ばかにできない状態なのだ。
「もう、調子に乗って魔法の使い過ぎ。いくらあたしの影響で強くなってるからといっても、死ぬ可能性もあるんだからね。とりあえず、今日使った以上に魔法を使うのは禁止ね」
フェリスはメルを叱る。死ぬとか聞かされたメルは素直に謝って反省していた。だが、魔力切れをわざと起こさせるのは、当人の限界を知る上では重要な事である。フェリスもわざとこの状態になるまで魔法を使わせたのである。さすが邪神。
「初めて魔法が使えるようになると、どうしても調子に乗る人が居るからね、メルみたいに。自分の限界を知らずにどんどん使って人知れず死ぬのよ。本当に気を付けなさいね」
「わ、分かりました、フェリス様」
フェリスにきつく言われて、メルは大きく肩で息をしながら返事をした。フェリスがホイホイと魔法を使っているのを見て調子に乗った自分に反省している。その姿を見て、メルはいずれ大きく伸びるのを確信するフェリスだった。
とりあえず、メルを抱えてジャイアントスパイダーの飼育場の様子を見に戻ってきたフェリス。その空間となる四隅には杭が打たれており、その中には適度に木が生えている。ただ、その数は少々心もとないくらいに少なかった。
「うーんもう少し多い方がいいわね」
そう思ったフェリスはルディにメルの事を任せると、その飼育場の空間に向けて魔法を放つ。
すると何という事でしょう。あっという間に木が数倍くらいに増えてしまったではありませんか。あれだけ殺風景だった飼育場が、木々の生い茂る空間へと変貌してしまったのです。
「相変らずとんでもない魔力量だな。一瞬でこれだけ木を生やすなんて、並大抵の魔族でもできないぞ」
ルディはメルを背負いながら、感心しているのか呆れているのか、なんとも言い難い反応を示していた。
「だてに邪神は名乗ってないわよ。まっ、さすがにこの規模ともなると少々魔力持ってかれちゃうけどね」
フェリスが言うように、多少呼吸が乱れているようにも思える。
「魔族とはいっても、元々はただの白猫だから、魔力使い切っても瀕死になってすぐ死ぬわけじゃないけどね。それでも気を付けなきゃ、あたしでも危ないわね」
さすがに今回は以前とは違い、何も無い状態から木を何本も生やしたので、相当に魔力を消費したようである。それくらいには規模の大きな魔法だった。
「はははっ、これじゃメルをこれ以上叱れないわね」
「まったくだぞ。それでもやっちまうフェリスはさすがだと思うがな」
フェリスとルディが言葉を交わしている。その横ではあまりの奇跡的な出来事に村人は騒ぎ出し、ジャイアントスパイダーたちは糸を使って木々の間を飛び移って歓喜を表していた。
「おお、まごう事なき天使様の御業じゃあ……」
村長も居たらしくて、背負われるメルとともにルディに寄り掛かっていたフェリスを崇めていた。だが、今のフェリスにはそれを嫌がる余裕は無いらしい。
「じゃ、最後の仕上げをやりますかっと。実のところを言うと、フェリスたちが戻って来るのを待ってたんだからな」
ルディが視線をやると、村人たちがどこからともなく椅子を持ってきて、フェリスとメルを座らせる。身軽になったルディは、片手を拳にして両手を打ち合わせて気合いを一発入れる。
「下手に展開すると中は高熱になっちまうからな。繊細な作業だから話し掛けんじゃねーぞ。俺は細かいのは苦手なんだ」
大きな声で言い放ったルディは魔力を解き放つ。すると、杭に刻まれたルディの魔法陣が反応を起こして赤く光る。すると、4つの杭をつなぐように赤い魔力の筋が走り、それを少しずつ空へと上昇させていく。
「フェリス、どのくらいまで上げればいい?」
「一番高い木の人ひとり分くらい上までかしらね」
「よく分からんが、とにかく生えてる気を全部覆えばいいんだな」
ルディはそう理解して結界を張り終える。脳筋のルディにしては、まともな結界が成功したようである。
「はあ、もう二度とやんねえぞっ!」
繊細な作業なので、それほどの魔力量を消耗していないのに、ルディの息は荒くなっていた。
「とりあえず、これで結界にクモどもが近付けば、焼けるように熱く感じるようにしたからな。逃げ出す事はないだろうな」
「でも、ルディの結界だから穴は多そうだけどね」
ルディが汗を拭いながら話していると、フェリスが無粋にツッコミを入れた。
「そりゃあるだろうよ。とりあえず、中に出入りする人間には反応しないようにはしておいたからな」
ルディがそう言うので、何人か試してみる事になった。メルや村長はもちろんだが、そのほかにも数人出入りしてもらったが、言う通りに人間は普通に出入りができた。
「おお、実にありがたい。問題はこの糸をどうするかですな」
「行商が来るんでしょ? その人たちに見せればいいわ。糸に関する知識はそういった人の方が持ってるからね」
「なるほど。では、そうさせて頂きます」
糸の取り扱いについても方針が決まった事で、ようやくジャイアントスパイダーの一件は片が付いたようであった。
「本当に魔法って便利ですね」
きゃっきゃと騒ぐメル。フェリスが使える魔法は、メルも使う事ができたのだ。仕える主と同じ魔法が使えたとなると、それはとても嬉しいものだろう。
ただ、フェリスよりは当然威力は劣る。人間と魔族という違いがあるので、そもそもの魔力の絶対量が違うのだ。メルはフェリスの影響で潜在能力が引き出されたようなものだし、人間の魔力なんて勇者とか聖女とかそういった類でなければ魔族とはリンゴと小麦粒ほどの差があるのだ。
「うわ~、ふらふらする~……」
メルが目を回し始めた。魔力切れの初期症状である。最悪死ぬ事すらある症状なので、存外ばかにできない状態なのだ。
「もう、調子に乗って魔法の使い過ぎ。いくらあたしの影響で強くなってるからといっても、死ぬ可能性もあるんだからね。とりあえず、今日使った以上に魔法を使うのは禁止ね」
フェリスはメルを叱る。死ぬとか聞かされたメルは素直に謝って反省していた。だが、魔力切れをわざと起こさせるのは、当人の限界を知る上では重要な事である。フェリスもわざとこの状態になるまで魔法を使わせたのである。さすが邪神。
「初めて魔法が使えるようになると、どうしても調子に乗る人が居るからね、メルみたいに。自分の限界を知らずにどんどん使って人知れず死ぬのよ。本当に気を付けなさいね」
「わ、分かりました、フェリス様」
フェリスにきつく言われて、メルは大きく肩で息をしながら返事をした。フェリスがホイホイと魔法を使っているのを見て調子に乗った自分に反省している。その姿を見て、メルはいずれ大きく伸びるのを確信するフェリスだった。
とりあえず、メルを抱えてジャイアントスパイダーの飼育場の様子を見に戻ってきたフェリス。その空間となる四隅には杭が打たれており、その中には適度に木が生えている。ただ、その数は少々心もとないくらいに少なかった。
「うーんもう少し多い方がいいわね」
そう思ったフェリスはルディにメルの事を任せると、その飼育場の空間に向けて魔法を放つ。
すると何という事でしょう。あっという間に木が数倍くらいに増えてしまったではありませんか。あれだけ殺風景だった飼育場が、木々の生い茂る空間へと変貌してしまったのです。
「相変らずとんでもない魔力量だな。一瞬でこれだけ木を生やすなんて、並大抵の魔族でもできないぞ」
ルディはメルを背負いながら、感心しているのか呆れているのか、なんとも言い難い反応を示していた。
「だてに邪神は名乗ってないわよ。まっ、さすがにこの規模ともなると少々魔力持ってかれちゃうけどね」
フェリスが言うように、多少呼吸が乱れているようにも思える。
「魔族とはいっても、元々はただの白猫だから、魔力使い切っても瀕死になってすぐ死ぬわけじゃないけどね。それでも気を付けなきゃ、あたしでも危ないわね」
さすがに今回は以前とは違い、何も無い状態から木を何本も生やしたので、相当に魔力を消費したようである。それくらいには規模の大きな魔法だった。
「はははっ、これじゃメルをこれ以上叱れないわね」
「まったくだぞ。それでもやっちまうフェリスはさすがだと思うがな」
フェリスとルディが言葉を交わしている。その横ではあまりの奇跡的な出来事に村人は騒ぎ出し、ジャイアントスパイダーたちは糸を使って木々の間を飛び移って歓喜を表していた。
「おお、まごう事なき天使様の御業じゃあ……」
村長も居たらしくて、背負われるメルとともにルディに寄り掛かっていたフェリスを崇めていた。だが、今のフェリスにはそれを嫌がる余裕は無いらしい。
「じゃ、最後の仕上げをやりますかっと。実のところを言うと、フェリスたちが戻って来るのを待ってたんだからな」
ルディが視線をやると、村人たちがどこからともなく椅子を持ってきて、フェリスとメルを座らせる。身軽になったルディは、片手を拳にして両手を打ち合わせて気合いを一発入れる。
「下手に展開すると中は高熱になっちまうからな。繊細な作業だから話し掛けんじゃねーぞ。俺は細かいのは苦手なんだ」
大きな声で言い放ったルディは魔力を解き放つ。すると、杭に刻まれたルディの魔法陣が反応を起こして赤く光る。すると、4つの杭をつなぐように赤い魔力の筋が走り、それを少しずつ空へと上昇させていく。
「フェリス、どのくらいまで上げればいい?」
「一番高い木の人ひとり分くらい上までかしらね」
「よく分からんが、とにかく生えてる気を全部覆えばいいんだな」
ルディはそう理解して結界を張り終える。脳筋のルディにしては、まともな結界が成功したようである。
「はあ、もう二度とやんねえぞっ!」
繊細な作業なので、それほどの魔力量を消耗していないのに、ルディの息は荒くなっていた。
「とりあえず、これで結界にクモどもが近付けば、焼けるように熱く感じるようにしたからな。逃げ出す事はないだろうな」
「でも、ルディの結界だから穴は多そうだけどね」
ルディが汗を拭いながら話していると、フェリスが無粋にツッコミを入れた。
「そりゃあるだろうよ。とりあえず、中に出入りする人間には反応しないようにはしておいたからな」
ルディがそう言うので、何人か試してみる事になった。メルや村長はもちろんだが、そのほかにも数人出入りしてもらったが、言う通りに人間は普通に出入りができた。
「おお、実にありがたい。問題はこの糸をどうするかですな」
「行商が来るんでしょ? その人たちに見せればいいわ。糸に関する知識はそういった人の方が持ってるからね」
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