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第24話 邪神ちゃんの魔法講座
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新しい服に関してではあるが、タイツと手袋については実はフェリスは身に着けていなかった。その事にメルはちょっと残念がっていたが、フェリス曰く「あたしの白い毛並みが隠れるのは却下」との事らしい。それでなくてももこもこしてしまうので見た目にはダメだったようだ。仕方がない。
とりあえずこの日は、ジャイアントスパイダーの飼育場が完成したという事で、見せてもらう事にした。なにせ牛の牧場くらいには広大な土地が必要なのである。整備するのも大変だっただろう。だが、ジャイアントスパイダーを飼うなどというのは多分誰もした事ないので、本当に大変なのはこれからだろう。糸を安全に回収するのも命懸けなはずである。
ルディも言っていた通り、野生のジャイアントスパイダーは魔物の中ではおとなしい方だ。それでも大きさと見た目の事もあり、村人たちはだいぶ警戒していた。瞳がつぶらだったのでメルには受け入れられたようだが、それは稀有な方である。
……かと思ったら、子どもたちが思ったよりジャイアントスパイダーに寄っていく。これでも微弱な毒を持つ魔物だが、それは糸だけの話。体を触るぐらいなら気持ちよさそうにころころと鳴く。クモって鳴くんだ。
それによって別の事も判明した。ジャイアントスパイダーの吐く糸は、必ずしも毒性のある物だけとは限らない事だ。子どもたちに撫でられて安心したクモたちが吐いた糸は、なんと毒性を持っていなかった。粘性も弱くて、そのまま撚って縫製に使えそうな品質の糸が手に入ったのである。どうやら、ストレスを感じていると糸に毒性を持つようになるらしい。これは新しい発見だった。
というわけで、ジャイアントスパイダーの世話をするのは子どもたちに決まった。ストレスを与えなければ毒性は持たないし、もし毒性があったとしても子どもが死ぬほどの毒性はないので大丈夫と判断された。
「もし変に思ったら、すぐにあたしに言ってね。解毒するから」
フェリスがこう言えば、子どもたちは元気よく返事をしていた。
「毒があった時に、わざわざフェリス様をお呼びしなければならないのは大変ですね。必ずしもフェリス様がいらっしゃるとは限りませんし」
ジャイアントスパイダーとじゃれ合う子どもたちを見ながら、メルは懸念を漏らす。確かにその通りなのである。今でこそフェリスは完全に村に居ついているが、何かあれば村を不在にする事だってあり得るのだ。
「うーん、魔法が使えそうな人居るかしらね」
解毒はそう難しい魔法ではないので、治癒か浄化の適正さえあればすぐにでも使えるようになるはずである。そう、適正さえあれば。
というわけで、フェリスは適性がありそうな人物を探す。すると、一人はすぐ目の前に居た。
「メル、あなた浄化系の魔法が使えるみたいね」
「えっ、私がですか?」
フェリスが驚きながら話し掛けると、メルはとても驚いていた。
「あたしは邪神だとはいっても浄化系の魔法は得意だから、眷属であるメルにも発現したのかも知れないわね。一度身に付けちゃえば、眷属を解除しても使えるからね」
「そうなんですね。やっぱりフェリス様は天使様じゃないですか」
「いや、浄化が使えるから神だとか天使だとか聖職者だとかそういうわけじゃないわよ。あたしはこの白い毛並みが自慢だから、これを保つために覚えただけなんだから、そんな大げさな事じゃないわ」
メルが目をキラキラとさせて見てくるので、フェリスは言い訳がましく近付いてくるメルを牽制する。だが、今のメルにそんな言い訳が通じるわけもなかった。
「……分かったから、そんなに突っ掛からないで。今から教えるから落ち着きなさい」
フェリスはメルの頭を撫でて落ち着かせる。
「ルディ、ジャイアントスパイダーの事は頼むわ。あんたの方が詳しそうだし、あたしはメルをどうにかして宥めないといけないから」
「分かったぜ。どのみち仕上げに俺の力が必要なんだ、任せておけっ!」
フェリスに頼られたのが嬉しかったのか、ルディはいつになく気合いが入っている。でもまあ、いざって時は頼もしいのがルディなのである。
「おらぁっ、野郎ども! ちゃっちゃとクモどもの住処の最終仕上げをやるぞっ!」
ルディが声を上げれば、村人たちもつられて声を上げる。士気が高まっているようで何よりだ。しかし、クモの糸の扱いは、ここから先の方が大変なのだが、その事を知る者はフェリスとメル以外には誰も居なかった。
フェリスがメルに解毒魔法を教えていると、これが何と簡単に身に付けてしまった。浄化系魔法はそう難しくないと思っていたフェリスが驚くくらいにだ。
難しくないとはいったが、魔力の扱いに慣れていたとしても覚えるのには最低でも二桁日は掛かるものなのだが、あまりにも早すぎて驚いた。これも眷属化の影響だろうか、実に呆気なかった。
「フェリス様、いかがでしょうか」
「うん、早すぎ。いくら眷属化の影響あったとしても、メル自体に適性があったみたいね。これなら他の魔法もどんどん覚えちゃいそう」
「魔法が使えたら楽しそうですね」
自分が苦労しただけに、フェリスは愕然としていた。
「だったら縫製魔法も覚えてみる? 自分で服が作れるようになるし、ジャイアントスパイダーの糸以外にも応用が利くわよ」
「それは楽しそうですね。ぜひお願いします!」
メルは両手を胸の前で握って満面の笑みを浮かべていた。あまりに嬉しそうなメルに、フェリスはやれやれといった感じで魔法を教えていったのだった。
とりあえずこの日は、ジャイアントスパイダーの飼育場が完成したという事で、見せてもらう事にした。なにせ牛の牧場くらいには広大な土地が必要なのである。整備するのも大変だっただろう。だが、ジャイアントスパイダーを飼うなどというのは多分誰もした事ないので、本当に大変なのはこれからだろう。糸を安全に回収するのも命懸けなはずである。
ルディも言っていた通り、野生のジャイアントスパイダーは魔物の中ではおとなしい方だ。それでも大きさと見た目の事もあり、村人たちはだいぶ警戒していた。瞳がつぶらだったのでメルには受け入れられたようだが、それは稀有な方である。
……かと思ったら、子どもたちが思ったよりジャイアントスパイダーに寄っていく。これでも微弱な毒を持つ魔物だが、それは糸だけの話。体を触るぐらいなら気持ちよさそうにころころと鳴く。クモって鳴くんだ。
それによって別の事も判明した。ジャイアントスパイダーの吐く糸は、必ずしも毒性のある物だけとは限らない事だ。子どもたちに撫でられて安心したクモたちが吐いた糸は、なんと毒性を持っていなかった。粘性も弱くて、そのまま撚って縫製に使えそうな品質の糸が手に入ったのである。どうやら、ストレスを感じていると糸に毒性を持つようになるらしい。これは新しい発見だった。
というわけで、ジャイアントスパイダーの世話をするのは子どもたちに決まった。ストレスを与えなければ毒性は持たないし、もし毒性があったとしても子どもが死ぬほどの毒性はないので大丈夫と判断された。
「もし変に思ったら、すぐにあたしに言ってね。解毒するから」
フェリスがこう言えば、子どもたちは元気よく返事をしていた。
「毒があった時に、わざわざフェリス様をお呼びしなければならないのは大変ですね。必ずしもフェリス様がいらっしゃるとは限りませんし」
ジャイアントスパイダーとじゃれ合う子どもたちを見ながら、メルは懸念を漏らす。確かにその通りなのである。今でこそフェリスは完全に村に居ついているが、何かあれば村を不在にする事だってあり得るのだ。
「うーん、魔法が使えそうな人居るかしらね」
解毒はそう難しい魔法ではないので、治癒か浄化の適正さえあればすぐにでも使えるようになるはずである。そう、適正さえあれば。
というわけで、フェリスは適性がありそうな人物を探す。すると、一人はすぐ目の前に居た。
「メル、あなた浄化系の魔法が使えるみたいね」
「えっ、私がですか?」
フェリスが驚きながら話し掛けると、メルはとても驚いていた。
「あたしは邪神だとはいっても浄化系の魔法は得意だから、眷属であるメルにも発現したのかも知れないわね。一度身に付けちゃえば、眷属を解除しても使えるからね」
「そうなんですね。やっぱりフェリス様は天使様じゃないですか」
「いや、浄化が使えるから神だとか天使だとか聖職者だとかそういうわけじゃないわよ。あたしはこの白い毛並みが自慢だから、これを保つために覚えただけなんだから、そんな大げさな事じゃないわ」
メルが目をキラキラとさせて見てくるので、フェリスは言い訳がましく近付いてくるメルを牽制する。だが、今のメルにそんな言い訳が通じるわけもなかった。
「……分かったから、そんなに突っ掛からないで。今から教えるから落ち着きなさい」
フェリスはメルの頭を撫でて落ち着かせる。
「ルディ、ジャイアントスパイダーの事は頼むわ。あんたの方が詳しそうだし、あたしはメルをどうにかして宥めないといけないから」
「分かったぜ。どのみち仕上げに俺の力が必要なんだ、任せておけっ!」
フェリスに頼られたのが嬉しかったのか、ルディはいつになく気合いが入っている。でもまあ、いざって時は頼もしいのがルディなのである。
「おらぁっ、野郎ども! ちゃっちゃとクモどもの住処の最終仕上げをやるぞっ!」
ルディが声を上げれば、村人たちもつられて声を上げる。士気が高まっているようで何よりだ。しかし、クモの糸の扱いは、ここから先の方が大変なのだが、その事を知る者はフェリスとメル以外には誰も居なかった。
フェリスがメルに解毒魔法を教えていると、これが何と簡単に身に付けてしまった。浄化系魔法はそう難しくないと思っていたフェリスが驚くくらいにだ。
難しくないとはいったが、魔力の扱いに慣れていたとしても覚えるのには最低でも二桁日は掛かるものなのだが、あまりにも早すぎて驚いた。これも眷属化の影響だろうか、実に呆気なかった。
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「それは楽しそうですね。ぜひお願いします!」
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