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第23話 邪神ちゃんの完成した服
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靴は作れたものの、肝心の服の方は糸が足りずに持ち越しとなってしまった。
また、ジャイアントスパイダー10匹にひと部屋は狭すぎたので、暫定的に5匹ずつに部屋を分割した。それでも人間の子ども並みの大きさのクモだから狭い狭い。とりあえずクモたちには共食いはしないようにしっかりい聞かせておいた。餌は十分与えておいたし、心配は無いはずである。
「それにしても、フェリス様はすごいです」
クモを部屋に押し込んだところで、メルがフェリスに声を掛ける。
「うん? どうしたのよ」
「いえ。あのクモさんたちが出した糸を、あっという間に無害な糸に変えてしまったんですもの。フェリス様の魔法は本当に素晴らしいです」
どうやら、さっき服を作るために使った魔法の事を言っているようだ。確かにジャイアントスパイダーの糸は、そのままだと粘度があってねばねばするし、微弱ながら毒性も含んでいる。口に含まない限りは毒性に侵される事はないが、服に使うとなれば危険性は十分にあるのだ。そのために、無毒化の魔法は必須なのである。
ちなみに魔法が使えない場合は、10分ほどの煮沸消毒で大丈夫らしい。マイムの説明書にはそう書いてあった。
「なるほど、面倒ってそういう事なのね。でも、もっと大変かと思ったわよ」
マイムの説明書を再確認したフェリスは呟く。
「クモの糸ってべたべたしますものね。それをお湯に放り込むだけでも大変だと思います」
メルも同感のようである。
「とりあえず、今日のところは様子見て、明日の朝に確認してみましょう」
「はい、そうですね」
というわけで、ジャイアントスパイダーの糸集めは、翌日に持ち越しとなった。
翌朝、目が覚めたフェリスはジャイアントスパイダーの様子を確認しに行く。
「うっわ、想像以上に酷い光景だわね」
フェリスは思わず声を漏らしてしまう。なにせ部屋の中は見事なまでにクモの糸まみれ。5匹のジャイアントスパイダーは適当な間隔を置いて部屋の中に陣取っていた。ちなみにもうひと部屋も同じである。
「おはようございます、フェリス様」
「あら、おはよう、メル。起こしちゃったかしら」
メルが目を擦りながら起きてきた。
「いえ、私もちょうど起きたところでしたので、これから朝食の支度を始めます」
「そっか、ルディだったら放っておけばいいわ。ご飯の香りがしたら勝手に起きてくるから」
「分かりました。では、作り始めますね」
メルはそう言って、台所へと向かっていった。その姿を見送ったフェリスは、部屋の中に入ってジャイアントスパイダーの機嫌を窺いながら糸を回収していく。時々クモたちが視線を向けてくるものの、フェリスの強さを感じるとすぐに視線を逸らしていた。
「大丈夫よ、そっちが攻撃してこなきゃ、あたしは攻撃するつもりはないから。服を作るのに糸を分けてもらうわね」
フェリスはせっせと回収する分だけ、糸の浄化を行って回収していく。浄化っていうと邪神っぽくないかも知れないが、邪神でも使えるのである。
「これだけあれば多分足りるでしょ。後はメルが考えた図案を元に服を作るだけね」
クモたちの生活に困らないだけの糸を残して、フェリスはそれぞれのクモに餌を与えておいた。昨夜の餌はすっかり無くなっていたので、相当に食欲旺盛のようである。
「これだけ食べるとなると、餌代だけでもとんでもない事になりそうね。ルディにでも頼んで、定期的に魔物を狩ってきてもらわないとダメかも知れないわね」
フェリスはクモたちの様子を確認し終えると、メルの準備する朝食を楽しみに待つために食堂へと移動していった。
朝食を終えると、フェリスは回収したクモの糸を片付けたテーブルの上に置く。さすがに体の大きなクモだけあって、その量は圧巻である。
「うわあ、これだけあればかなり作れそうですね」
「うん、思ったより頑張ってくれたみたい。餌が無くなるくらいだったからね」
フェリスとメルは顔を見合わせている。
「そっか、俺が連れてきたかいがあるというものだな」
「はいはい、ルディ偉い、お疲れさん」
「おい、もっと心を込めて褒めろっ!」
ルディが調子に乗りそうだったので、フェリスは棒読みで褒めておいた。ルディがぎゃんぎゃんうるさいが気にしない。
「さて、それじゃ服を作っていくわよ。まずは糸を撚っていくわ」
フェリスが魔法を使うと、クモの糸を3本くらいずつを撚り合わせて1本の糸に変えていく。そして、それをさらに2本撚り合わせて、これでまずは糸が完成である。そもそものクモの糸が太めなので、6本撚り合わせた糸は思ったよりも太くなった。
「うーん、これなら2本と2本で撚った方がよかったかしら。まあ、丈夫な方がいいし、これでいいわよね」
糸ができたところでメルに近付いていくフェリス。
「さて、あたしの服をイメージしてちょうだい。この糸から服を作っていくわよ」
「はい、お任せ下さい」
フェリスがメルの頭に手を置いて、魔法を使う。するともう一方の手からも魔法が放たれ、メルの頭の中のイメージから、撚り合わせた糸がその形へと織られていく。やがて魔法の光が消えると、そこにはフェリスの新しい服が完成していたのだった。
完成したのは背中が大きく開いた袖なしの黒いワンピースと白いタイツとそれと同色のドロワーズ、後は黒い指ぬきの長手袋だった。
「ちょっとメル。あなた、自分と同じような服装にしたわね?」
「だって、フェリス様とお揃いがいいんですもの」
指先をちょんちょんと合わせて恥ずかしがるメル。その態度にフェリスはぽかんと口を開け、ルディはげらげらと笑っていた。
「はあ、作っちゃったのは仕方ないわね。早速着替えますか」
また糸を用意するには少し時間が掛かるので、仕方なくフェリスは諦めた。
こうして、お揃いコーデに身を包んだフェリスとメルはますます村中から注目を集めたのである。
また、ジャイアントスパイダー10匹にひと部屋は狭すぎたので、暫定的に5匹ずつに部屋を分割した。それでも人間の子ども並みの大きさのクモだから狭い狭い。とりあえずクモたちには共食いはしないようにしっかりい聞かせておいた。餌は十分与えておいたし、心配は無いはずである。
「それにしても、フェリス様はすごいです」
クモを部屋に押し込んだところで、メルがフェリスに声を掛ける。
「うん? どうしたのよ」
「いえ。あのクモさんたちが出した糸を、あっという間に無害な糸に変えてしまったんですもの。フェリス様の魔法は本当に素晴らしいです」
どうやら、さっき服を作るために使った魔法の事を言っているようだ。確かにジャイアントスパイダーの糸は、そのままだと粘度があってねばねばするし、微弱ながら毒性も含んでいる。口に含まない限りは毒性に侵される事はないが、服に使うとなれば危険性は十分にあるのだ。そのために、無毒化の魔法は必須なのである。
ちなみに魔法が使えない場合は、10分ほどの煮沸消毒で大丈夫らしい。マイムの説明書にはそう書いてあった。
「なるほど、面倒ってそういう事なのね。でも、もっと大変かと思ったわよ」
マイムの説明書を再確認したフェリスは呟く。
「クモの糸ってべたべたしますものね。それをお湯に放り込むだけでも大変だと思います」
メルも同感のようである。
「とりあえず、今日のところは様子見て、明日の朝に確認してみましょう」
「はい、そうですね」
というわけで、ジャイアントスパイダーの糸集めは、翌日に持ち越しとなった。
翌朝、目が覚めたフェリスはジャイアントスパイダーの様子を確認しに行く。
「うっわ、想像以上に酷い光景だわね」
フェリスは思わず声を漏らしてしまう。なにせ部屋の中は見事なまでにクモの糸まみれ。5匹のジャイアントスパイダーは適当な間隔を置いて部屋の中に陣取っていた。ちなみにもうひと部屋も同じである。
「おはようございます、フェリス様」
「あら、おはよう、メル。起こしちゃったかしら」
メルが目を擦りながら起きてきた。
「いえ、私もちょうど起きたところでしたので、これから朝食の支度を始めます」
「そっか、ルディだったら放っておけばいいわ。ご飯の香りがしたら勝手に起きてくるから」
「分かりました。では、作り始めますね」
メルはそう言って、台所へと向かっていった。その姿を見送ったフェリスは、部屋の中に入ってジャイアントスパイダーの機嫌を窺いながら糸を回収していく。時々クモたちが視線を向けてくるものの、フェリスの強さを感じるとすぐに視線を逸らしていた。
「大丈夫よ、そっちが攻撃してこなきゃ、あたしは攻撃するつもりはないから。服を作るのに糸を分けてもらうわね」
フェリスはせっせと回収する分だけ、糸の浄化を行って回収していく。浄化っていうと邪神っぽくないかも知れないが、邪神でも使えるのである。
「これだけあれば多分足りるでしょ。後はメルが考えた図案を元に服を作るだけね」
クモたちの生活に困らないだけの糸を残して、フェリスはそれぞれのクモに餌を与えておいた。昨夜の餌はすっかり無くなっていたので、相当に食欲旺盛のようである。
「これだけ食べるとなると、餌代だけでもとんでもない事になりそうね。ルディにでも頼んで、定期的に魔物を狩ってきてもらわないとダメかも知れないわね」
フェリスはクモたちの様子を確認し終えると、メルの準備する朝食を楽しみに待つために食堂へと移動していった。
朝食を終えると、フェリスは回収したクモの糸を片付けたテーブルの上に置く。さすがに体の大きなクモだけあって、その量は圧巻である。
「うわあ、これだけあればかなり作れそうですね」
「うん、思ったより頑張ってくれたみたい。餌が無くなるくらいだったからね」
フェリスとメルは顔を見合わせている。
「そっか、俺が連れてきたかいがあるというものだな」
「はいはい、ルディ偉い、お疲れさん」
「おい、もっと心を込めて褒めろっ!」
ルディが調子に乗りそうだったので、フェリスは棒読みで褒めておいた。ルディがぎゃんぎゃんうるさいが気にしない。
「さて、それじゃ服を作っていくわよ。まずは糸を撚っていくわ」
フェリスが魔法を使うと、クモの糸を3本くらいずつを撚り合わせて1本の糸に変えていく。そして、それをさらに2本撚り合わせて、これでまずは糸が完成である。そもそものクモの糸が太めなので、6本撚り合わせた糸は思ったよりも太くなった。
「うーん、これなら2本と2本で撚った方がよかったかしら。まあ、丈夫な方がいいし、これでいいわよね」
糸ができたところでメルに近付いていくフェリス。
「さて、あたしの服をイメージしてちょうだい。この糸から服を作っていくわよ」
「はい、お任せ下さい」
フェリスがメルの頭に手を置いて、魔法を使う。するともう一方の手からも魔法が放たれ、メルの頭の中のイメージから、撚り合わせた糸がその形へと織られていく。やがて魔法の光が消えると、そこにはフェリスの新しい服が完成していたのだった。
完成したのは背中が大きく開いた袖なしの黒いワンピースと白いタイツとそれと同色のドロワーズ、後は黒い指ぬきの長手袋だった。
「ちょっとメル。あなた、自分と同じような服装にしたわね?」
「だって、フェリス様とお揃いがいいんですもの」
指先をちょんちょんと合わせて恥ずかしがるメル。その態度にフェリスはぽかんと口を開け、ルディはげらげらと笑っていた。
「はあ、作っちゃったのは仕方ないわね。早速着替えますか」
また糸を用意するには少し時間が掛かるので、仕方なくフェリスは諦めた。
こうして、お揃いコーデに身を包んだフェリスとメルはますます村中から注目を集めたのである。
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