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第21話 邪神ちゃんの気になる服装
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「ふと思ったんです、フェリス様」
水を引いてきた翌日の事、起きたところをいきなりメルに話し掛けられるフェリス。一体何がどうしたのか、フェリスの寝起きの頭は混乱している。
「フェリス様って、それ以外に服は持たれていないのですか?」
メルからの質問は、服装についてだった。そういえば確かに、フェリスの服装は首で紐留めした袖なしのワンピースに編み上げのサンダルである。一応ドロワーズを穿いてるとはいえ、ずいぶんと野性的な格好であった。猫の獣人型の邪神ならばこれでもいいのだろうが、ここから先が重要である。
「私はフェリス様の巫女です。なんで巫女の方が使える主よりも立派な服を着ているのかが分からないんです。そりゃ、最初は立派な服を貰えて浮かれまくってましたけれど、段々と慣れて冷静になってきたら、なんだかおかしくないかと思うようになってきたんです」
メルが少し大きな声で早口にまくし立ててくる。一介の村の娘だったメルなのに、どうしてここまでの思考を持つようになったのだろうか。
(あっ、これも眷属化の影響だわ……)
メルのお小言を聞きながら、フェリスはそれに気付いたのである。どうやら知らず知らずのうちに、メルにフェリスの持つ一部の知識が共有されてしまったようである。これは予想外だった。なにせ、メルが知らないうちに知識汚染が起きていたようなので、正直フェリスも訳が分からなかったのだ。
(うーん、正直にぶにぶほわほわな少女だと思ってたんだけどなー。あたしの知識が流れ込んで、聡い子になっちゃったなぁ……)
「どうされたんですか、フェリス様」
「いや、別に。ずいぶんと賢くなっちゃったなって思っただけよ」
不思議そうな顔をしているメルに、フェリスは正直に言い放つ。すると、メルは褒められて嬉しいらしく、頬を染めてしまった。しかも、それが分からないように両手で押さえながら視線を斜め下に落として体をくねらせている。まったくもって可愛い子である。
(あー、今日もメルが可愛いわぁ)
フェリスはその姿にご満悦であった。
しかし、あまりににやけるフェリスに気が付いたメルは、ぷくーっと頬を膨らませてしまう。うん、逆効果です。
「もうフェリス様ったらっ! とにかく、フェリス様には天使としてふさわしい服装を着て頂きたいのです。この村の人たちなら遠慮しますけれど、よそから来た人だとどうなるか分かりません。すぐに新しい服を作りましょう!」
怒ったメルが強引に話を進めてしまう。そこへ、大あくびをしながらルディが起きてきた。
「ふわぁ~、フェリスの新しい服か。俺も興味あるな。よかったら手伝うぞ、メル」
「本当ですか、ルディ様。でしたら、まずは服に使う生地からですね。あと靴も編み上げはおしゃれですが、サンダルなので村に来る行商人と顔を合わせた時にどう思われるか気になります。やっぱりブーツくらいにしないといけないと思います」
メルがやる気になっていて、すごく早口で何かを言っている。フェリスは興味ない感じなので聞き流しているが、ルディの方もやる気になってしまっていて、すごく聞き入っていた。あのスピードの話を聞き取れるのだからルディは有能だとは思うが、理解しているかどうかは別の話である。
「服を作るって言うんなら獣の皮もいいけど、俺はクモ型の魔物の糸がいいと思うぞ。あれって思ったより手触りがいいしな。ただ、下処理がちょっと面倒だったと思うぞ」
「ふむふむ、クモの出す糸を撚って作った生地ですか。それは面白そうですね」
メルとルディの話が盛り上がっている。フェリスはもう勝手にさせておけばいいやと、諦めてミルクを飲んでいる。目覚めの一杯を飲んだフェリスは、服の話で盛り上がる二人を尻目に朝食の準備を始めたのだった。
「ここらで手ごろなクモは、やっぱりあの湖の近くの森に住むジャイアントスパイダーだろうな。メルくらいの大きさがあるが、気性はおとなしいし、餌は適当な肉を与えておけば人を襲う事はないぞ」
「うええ、私くらいの大きさですか……。なんだか気持ち悪そう」
メルが嫌そうな顔をすると、ルディは大笑いをする。どうやら、メルはもっと小さなものを想像していたのだろう。
「はっはっはっはっ、そういうところは相応に見えるぞ、メル」
「笑うなんてひどいです、ルディ様」
「いやいや、悪かった。あいつらは見てくれこそ気持ち悪いからな。虫が苦手なら完全にダメだろうし」
ルディはメルの頭を撫でて慰める。そこへ、フェリスが朝食を作って戻ってきた。
「まぁ、あのジャイアントスパイダーなら本当におとなしいわよ。あたしとルディが居れば、歯向かう事なんてまずないだろうしね。飼育場所をルディの能力で覆ってやれば、周りが寒くなったとしても死ぬ事はないわよ」
「そうなんですね。って、フェリス様。申し訳ございません、私ったら食事の準備を忘れてしまうなんて、巫女として失格です!」
くるりと振り返ったメルは、フェリスが食事を作ってきた事に気が付いてまさかの土下座による謝罪である。どこで覚えたのだろうか。
「まぁまぁ、メルは巫女だと思ってるだろうけど、あたしからしたら眷属なんだからね。眷属をきちんと養うのも、主たる者の務めよ」
フェリスはウィンクをしながら、左手人差し指を左右に振る。気にするなという事らしい。
「よし、そうと決まれば、俺がスパイダーどもを連れてくる。マイムに話し通せば大丈夫か?」
「多分大丈夫よ。マイムはあくまでも水を操る精霊みたいなものだけど、あの辺り一帯を支配下に置いてるからね」
「よし分かったぞ。食べたらさっさと行ってくる」
ルディが珍しく、気合いを入れて自主的に目的を持って動こうとしている。これは嵐でも来る前触れだろうか。複雑な気持ちになりながらも、フェリスは放っておく事にしておいた。ルディを止めてもメルがまだ居るのだ。メルは聡いだけに下手な説得は通じない。だからこそ好きにやらせるのである。
こうして、フェリスに新しい服を着せよう大作戦は決行に移されたのである。
水を引いてきた翌日の事、起きたところをいきなりメルに話し掛けられるフェリス。一体何がどうしたのか、フェリスの寝起きの頭は混乱している。
「フェリス様って、それ以外に服は持たれていないのですか?」
メルからの質問は、服装についてだった。そういえば確かに、フェリスの服装は首で紐留めした袖なしのワンピースに編み上げのサンダルである。一応ドロワーズを穿いてるとはいえ、ずいぶんと野性的な格好であった。猫の獣人型の邪神ならばこれでもいいのだろうが、ここから先が重要である。
「私はフェリス様の巫女です。なんで巫女の方が使える主よりも立派な服を着ているのかが分からないんです。そりゃ、最初は立派な服を貰えて浮かれまくってましたけれど、段々と慣れて冷静になってきたら、なんだかおかしくないかと思うようになってきたんです」
メルが少し大きな声で早口にまくし立ててくる。一介の村の娘だったメルなのに、どうしてここまでの思考を持つようになったのだろうか。
(あっ、これも眷属化の影響だわ……)
メルのお小言を聞きながら、フェリスはそれに気付いたのである。どうやら知らず知らずのうちに、メルにフェリスの持つ一部の知識が共有されてしまったようである。これは予想外だった。なにせ、メルが知らないうちに知識汚染が起きていたようなので、正直フェリスも訳が分からなかったのだ。
(うーん、正直にぶにぶほわほわな少女だと思ってたんだけどなー。あたしの知識が流れ込んで、聡い子になっちゃったなぁ……)
「どうされたんですか、フェリス様」
「いや、別に。ずいぶんと賢くなっちゃったなって思っただけよ」
不思議そうな顔をしているメルに、フェリスは正直に言い放つ。すると、メルは褒められて嬉しいらしく、頬を染めてしまった。しかも、それが分からないように両手で押さえながら視線を斜め下に落として体をくねらせている。まったくもって可愛い子である。
(あー、今日もメルが可愛いわぁ)
フェリスはその姿にご満悦であった。
しかし、あまりににやけるフェリスに気が付いたメルは、ぷくーっと頬を膨らませてしまう。うん、逆効果です。
「もうフェリス様ったらっ! とにかく、フェリス様には天使としてふさわしい服装を着て頂きたいのです。この村の人たちなら遠慮しますけれど、よそから来た人だとどうなるか分かりません。すぐに新しい服を作りましょう!」
怒ったメルが強引に話を進めてしまう。そこへ、大あくびをしながらルディが起きてきた。
「ふわぁ~、フェリスの新しい服か。俺も興味あるな。よかったら手伝うぞ、メル」
「本当ですか、ルディ様。でしたら、まずは服に使う生地からですね。あと靴も編み上げはおしゃれですが、サンダルなので村に来る行商人と顔を合わせた時にどう思われるか気になります。やっぱりブーツくらいにしないといけないと思います」
メルがやる気になっていて、すごく早口で何かを言っている。フェリスは興味ない感じなので聞き流しているが、ルディの方もやる気になってしまっていて、すごく聞き入っていた。あのスピードの話を聞き取れるのだからルディは有能だとは思うが、理解しているかどうかは別の話である。
「服を作るって言うんなら獣の皮もいいけど、俺はクモ型の魔物の糸がいいと思うぞ。あれって思ったより手触りがいいしな。ただ、下処理がちょっと面倒だったと思うぞ」
「ふむふむ、クモの出す糸を撚って作った生地ですか。それは面白そうですね」
メルとルディの話が盛り上がっている。フェリスはもう勝手にさせておけばいいやと、諦めてミルクを飲んでいる。目覚めの一杯を飲んだフェリスは、服の話で盛り上がる二人を尻目に朝食の準備を始めたのだった。
「ここらで手ごろなクモは、やっぱりあの湖の近くの森に住むジャイアントスパイダーだろうな。メルくらいの大きさがあるが、気性はおとなしいし、餌は適当な肉を与えておけば人を襲う事はないぞ」
「うええ、私くらいの大きさですか……。なんだか気持ち悪そう」
メルが嫌そうな顔をすると、ルディは大笑いをする。どうやら、メルはもっと小さなものを想像していたのだろう。
「はっはっはっはっ、そういうところは相応に見えるぞ、メル」
「笑うなんてひどいです、ルディ様」
「いやいや、悪かった。あいつらは見てくれこそ気持ち悪いからな。虫が苦手なら完全にダメだろうし」
ルディはメルの頭を撫でて慰める。そこへ、フェリスが朝食を作って戻ってきた。
「まぁ、あのジャイアントスパイダーなら本当におとなしいわよ。あたしとルディが居れば、歯向かう事なんてまずないだろうしね。飼育場所をルディの能力で覆ってやれば、周りが寒くなったとしても死ぬ事はないわよ」
「そうなんですね。って、フェリス様。申し訳ございません、私ったら食事の準備を忘れてしまうなんて、巫女として失格です!」
くるりと振り返ったメルは、フェリスが食事を作ってきた事に気が付いてまさかの土下座による謝罪である。どこで覚えたのだろうか。
「まぁまぁ、メルは巫女だと思ってるだろうけど、あたしからしたら眷属なんだからね。眷属をきちんと養うのも、主たる者の務めよ」
フェリスはウィンクをしながら、左手人差し指を左右に振る。気にするなという事らしい。
「よし、そうと決まれば、俺がスパイダーどもを連れてくる。マイムに話し通せば大丈夫か?」
「多分大丈夫よ。マイムはあくまでも水を操る精霊みたいなものだけど、あの辺り一帯を支配下に置いてるからね」
「よし分かったぞ。食べたらさっさと行ってくる」
ルディが珍しく、気合いを入れて自主的に目的を持って動こうとしている。これは嵐でも来る前触れだろうか。複雑な気持ちになりながらも、フェリスは放っておく事にしておいた。ルディを止めてもメルがまだ居るのだ。メルは聡いだけに下手な説得は通じない。だからこそ好きにやらせるのである。
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