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第二部 王太子妃ゼリア
第69話 知らぬは本人ばかり
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2日後、無事に魔王とカレンの結婚式が開催される。会場となる魔王城には魔族領のあちこちから魔族の貴族が詰めかけており、そのお祝いムードはビボーナの時とはケタ違いである。
ただ、魔王の相手が人間である事から、一部の貴族が反発するような声を上げているが、実際にカレンにぶっ飛ばされた事のある魔族たちから、必死に説得される様子があちこちに見受けられた。
カレンと会った事のある魔族が震え上がるのも無理はない。魔法も攻撃も素手で防がれ、腹に一撃貰ってノックダウン。飛んで高所に逃げても跳躍だけで撃墜されたのだから、それはもうトラウマになるというものである。グミという協力者が居たからとはいえ、それはもう人間の範疇を超えていた。
グミの証言では、麻痺毒を食らっても平気で動いていたとの事。解毒が遅れた事もあったというが、なんで生きてるんですかね、この姫様は……。
ちなみにゼリアもグミも解除系と回復系は全部網羅している。そもそも種族耐性で受け付けないが、念には念をというのが2体の信念だったのだ。さすがエリートのアサシンスライム、考え方が違う。
結婚式に参列する魔族たちが、魔王の配下たちと挨拶を交わしている。よく見ればグミの眷属も呼び出されているようだ。足元でぶよぶよ動くミミックスライムが見える。ちなみにグミの眷属も普通に喋るので、知らない魔族は驚いていた。
さて、いよいよ結婚式が始まる。魔族の結婚式はやはり形式が異なるようだ。
参列者の間を通るように新郎新婦が入場する事はない。なにせ人間界より格段に野心家揃いの魔族領である。そんな事をしようものなら挟撃に遭う可能性だってあるので、最奥の祭壇の脇から護衛付きで新郎新婦が登場する。魔王には腹心が付き添い、カレンにはグミが付き添って両脇から登場していた。
参列者に人間が居る事を不思議に思っていた魔族は多いのだが、新婦の姿を見て納得していた。なるほど、身内かと。だが、それと同時に、あの新婦の身内という事に戦慄した。カレンが魔族を凌駕した強さだから仕方ないね。
それにしても、魔王の姿はさすが魔王様という凛々しい姿だし、カレンも本当にあの脳筋姫かと思われるくらいに美しい姿だった。
さてさて、結婚式自体はあっさり終わってしまった。終わると魔族たちはあっさりしたもので、ぞろぞろと席を立って会場を後にし始めた。
アレスも移動しようとしていると、横に座るゼリアが感動して涙を流していて、起こしかけた腰を再び落ち着けた。
それにしても、声を掛けてくる魔族が居るかと思ったが、そういうものは皆無だったので、魔族というのは意外とあっさりしているのだなという印象である。面倒事が少ない事は歓迎だが、ここまでくるとどっちか言えば残念な気もした。
陽もまだ高いという事もあって、アレスとゼリアは魔王主催の昼食会に呼ばれた。何気に、アレスとカレンの兄妹、ゼリアとグミの姉妹が揃うのも久しぶりである。ついでに、グミの眷属であるミミックスライム2体も同席している。
「プリンとヨーグルね、久しぶり」
「ゼリア様、久しぶり」
「お久しぶり」
ゼリアが声を掛けると、2体ともが返事をする。さすがにどちらも片言である。キャンディやガムよりも更に片言である。環境の差があるので、ここまで違ってしまうようだ。
「2体とも、ちゃんと挨拶できて偉いわね」
グミが褒めると、2体とも嬉しそうにプルプル震えていた。
「魔王殿、本日はご成婚、誠におめでとうございます。我が妹に手を焼く事にはなるでしょうが、あれでも王族の者、うまくやってくれると思います」
「うむ、言葉はありがたいが、うんまあその、なんだ。妻に迎えたからには大事にはするよ」
アレスが祝辞を述べると、魔王はしどろもどろに答えていた。気持ちは分かる。横ではカレンが満面の笑みである。ご馳走が並ぶ様子にご満悦といったところだろう。両者の温度差に、ゼリアとグミは何とも言えない顔をしていた。
会食中は魔王とアレス、ゼリアとカレンという組み合わせで話をしていた。夫同士、妻同士が隣に座り、それぞれ対面で座っている。本当なら夫婦同士で隣になりたいところだが、もろもろの理由でこういう配置になった。
ちなみに、魔王とアレスが話していたのはカレンについてである。ともかく乱暴で自由気ままなカレンをうまく制御するにはどうしたらいいのかとか、とにかく胃の痛くなるような事ばかり話をしていた。
ゼリアの方も結婚後の話をしていたが、ほとんどはカレンの武勇譚に埋め尽くされてしまった。ゼリアはおろかルチアにまで同情されるグミである。
しかしまぁ、どうしてカレン絡みとなるとこういう展開になるのだろうか。気にしていないのはカレンだけ。周りはその対処に頭や胃を痛めている惨状。本日は結婚式でおめでたいはずなのだが、どうしてこうもため息があふれているのだろうか。不思議そうに首を傾げているカレンだったが、周りはその姿を見てまたため息を吐いていた。
だが、これが魔族領に伝説として語られる魔王妃の誕生となる事を、誰も知る由はなかったのである。
ただ、魔王の相手が人間である事から、一部の貴族が反発するような声を上げているが、実際にカレンにぶっ飛ばされた事のある魔族たちから、必死に説得される様子があちこちに見受けられた。
カレンと会った事のある魔族が震え上がるのも無理はない。魔法も攻撃も素手で防がれ、腹に一撃貰ってノックダウン。飛んで高所に逃げても跳躍だけで撃墜されたのだから、それはもうトラウマになるというものである。グミという協力者が居たからとはいえ、それはもう人間の範疇を超えていた。
グミの証言では、麻痺毒を食らっても平気で動いていたとの事。解毒が遅れた事もあったというが、なんで生きてるんですかね、この姫様は……。
ちなみにゼリアもグミも解除系と回復系は全部網羅している。そもそも種族耐性で受け付けないが、念には念をというのが2体の信念だったのだ。さすがエリートのアサシンスライム、考え方が違う。
結婚式に参列する魔族たちが、魔王の配下たちと挨拶を交わしている。よく見ればグミの眷属も呼び出されているようだ。足元でぶよぶよ動くミミックスライムが見える。ちなみにグミの眷属も普通に喋るので、知らない魔族は驚いていた。
さて、いよいよ結婚式が始まる。魔族の結婚式はやはり形式が異なるようだ。
参列者の間を通るように新郎新婦が入場する事はない。なにせ人間界より格段に野心家揃いの魔族領である。そんな事をしようものなら挟撃に遭う可能性だってあるので、最奥の祭壇の脇から護衛付きで新郎新婦が登場する。魔王には腹心が付き添い、カレンにはグミが付き添って両脇から登場していた。
参列者に人間が居る事を不思議に思っていた魔族は多いのだが、新婦の姿を見て納得していた。なるほど、身内かと。だが、それと同時に、あの新婦の身内という事に戦慄した。カレンが魔族を凌駕した強さだから仕方ないね。
それにしても、魔王の姿はさすが魔王様という凛々しい姿だし、カレンも本当にあの脳筋姫かと思われるくらいに美しい姿だった。
さてさて、結婚式自体はあっさり終わってしまった。終わると魔族たちはあっさりしたもので、ぞろぞろと席を立って会場を後にし始めた。
アレスも移動しようとしていると、横に座るゼリアが感動して涙を流していて、起こしかけた腰を再び落ち着けた。
それにしても、声を掛けてくる魔族が居るかと思ったが、そういうものは皆無だったので、魔族というのは意外とあっさりしているのだなという印象である。面倒事が少ない事は歓迎だが、ここまでくるとどっちか言えば残念な気もした。
陽もまだ高いという事もあって、アレスとゼリアは魔王主催の昼食会に呼ばれた。何気に、アレスとカレンの兄妹、ゼリアとグミの姉妹が揃うのも久しぶりである。ついでに、グミの眷属であるミミックスライム2体も同席している。
「プリンとヨーグルね、久しぶり」
「ゼリア様、久しぶり」
「お久しぶり」
ゼリアが声を掛けると、2体ともが返事をする。さすがにどちらも片言である。キャンディやガムよりも更に片言である。環境の差があるので、ここまで違ってしまうようだ。
「2体とも、ちゃんと挨拶できて偉いわね」
グミが褒めると、2体とも嬉しそうにプルプル震えていた。
「魔王殿、本日はご成婚、誠におめでとうございます。我が妹に手を焼く事にはなるでしょうが、あれでも王族の者、うまくやってくれると思います」
「うむ、言葉はありがたいが、うんまあその、なんだ。妻に迎えたからには大事にはするよ」
アレスが祝辞を述べると、魔王はしどろもどろに答えていた。気持ちは分かる。横ではカレンが満面の笑みである。ご馳走が並ぶ様子にご満悦といったところだろう。両者の温度差に、ゼリアとグミは何とも言えない顔をしていた。
会食中は魔王とアレス、ゼリアとカレンという組み合わせで話をしていた。夫同士、妻同士が隣に座り、それぞれ対面で座っている。本当なら夫婦同士で隣になりたいところだが、もろもろの理由でこういう配置になった。
ちなみに、魔王とアレスが話していたのはカレンについてである。ともかく乱暴で自由気ままなカレンをうまく制御するにはどうしたらいいのかとか、とにかく胃の痛くなるような事ばかり話をしていた。
ゼリアの方も結婚後の話をしていたが、ほとんどはカレンの武勇譚に埋め尽くされてしまった。ゼリアはおろかルチアにまで同情されるグミである。
しかしまぁ、どうしてカレン絡みとなるとこういう展開になるのだろうか。気にしていないのはカレンだけ。周りはその対処に頭や胃を痛めている惨状。本日は結婚式でおめでたいはずなのだが、どうしてこうもため息があふれているのだろうか。不思議そうに首を傾げているカレンだったが、周りはその姿を見てまたため息を吐いていた。
だが、これが魔族領に伝説として語られる魔王妃の誕生となる事を、誰も知る由はなかったのである。
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