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第一部 スライム姉妹、登場
第39話 誕生日プレゼント
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国王の誕生日は、王妃と茶の席を嗜んだ日から10日後の事らしい。王妃とお茶をした日はまだ慌ただしい様子はなかったが、大臣たちはショークア王国の使節団を見送った後から密かに準備に動いていたそうだ。ゼリアはその事にまったく気付けなかった。自分の眷属への対応で精一杯だったのだから仕方がない。しかし、10日もあればちょっとしたプレゼントはできるかも知れないと、ゼリアは何かないかと考えた。
ゼリアは自分のコピーしたカレンの記憶を見てみる。ところが、カレンの記憶を引っぺがしても、近くの森に突撃しては魔物を殴り倒して持って帰ってきた記憶しか出てこなかった。どれだけ脳筋なんですかね、この王女……。
……うん、参考になりませんでした。
そこでやむなく、ゼリアはルチアに尋ねてみる事にした。
「ねえ、ルチア」
「何でしょうか、ゼリア様」
部屋でのんびりする時間を使ってルチアに質問攻めを試みる。
「国王が欲しがっていそうなものって何かな?」
どストレートだった。
「陛下が欲しがっているものでございますか? ……そういえば、そろそろ誕生祭でしたね。なるほどそういうわけですか」
なるほどと言われてしまった。
「そうですね。今までのカレン様は魔物を丸々一体抱えてこられてましたからね。いきなりそれがなくなると、周りの方の方が驚かれるのではないでしょうか」
「……私にも魔物を狩れと?」
ゼリアがルチアの言葉に愕然としている。カレンの姿だと、脳筋からは逃げられないのかも知れない。
「そうは言ってはおりません」
だが、ルチアはすぐに否定した。
「あくまでも周りが驚くだけでございます。カレン様としてお渡しするのであれば、陛下はよっぽどのものでない限り喜ばれると思いますよ」
ルチアはそう言って、最後にゼリアに微笑みかけた。
「そっかあ。でも、具体的に欲しいものは分からないのね」
「そうですね。私は陛下ではありませんし、お聞きするとするなら王妃様か大臣がよろしいかと存じます」
ルチアには結局分からないようで、相談相手を紹介されてしまった。
「うーーん。まぁ何か用意する事にするわ。ありがとう、ルチア」
「いえいえ、お悩みであるなら、相談に乗るのも侍女の仕事でございます」
ゼリアがお礼を言うと、ルチアは当然ですからとすました顔だった。
さて、結局何も分からなかったゼリア。
しかし、なりゆきでこの国の王女のフリをする事になったゼリアに、何の義理があるというのだろうか。本当ならこんな事をする必要はないはずだが、ゼリアは異様に義理堅い性格をしていた。魔物だというのに珍しいものである。
というわけで、ゼリアは王妃のところに向かう事にした。隣に居るはずのマシュロに念話を送って、王妃に会いに行く事を伝えておいた。
ゼリアが部屋に着くと、パラサが出迎えてくれた。
「あら、カレン。どうしたのかしら」
事前にマシュロを通じて伝えていたものの、何も知らないパラサが居たので白々しく尋ねてくる王妃である。
「ええ、お父様への誕生日プレゼントをどうしようかと思いまして、相談に参りました」
とりあえずは普通に聞いてみるゼリア。
「あら、いつもの通り魔物を狩ってくればいいのではないの?」
すかさず王妃から返ってきたのはこれだった。
「さすがにこの年になってもそれだと、逆に心配されないかと思いまして。それで相談に来たのです」
年相応の女の子っぽい事を言ってみるゼリアだったが、
「……8歳の頃に魔物を狩って来た時は心配しましたよ?」
「……」
王妃にこう言われてしまっては、もう何も言えないゼリアである。カレンってどれだけ脳筋なのよ。
「ふふっ、冗談よ」
そう言って微笑む王妃。
「正直あなたも年頃だから、そろそろ嫁ぎ先を見つけてほしいところかしらね。まぁアレスのお相手の方がもっと急がなきゃいけないんだけど」
ゼリアはそっかと思った。アレスは確かカレンの2つ上である。それは確かに王太子妃が居てもおかしくない年齢である。
「あら、カレン。顔が赤くなってない?」
「えっ?!」
無意識だった。どういうわけか、ゼリアはアレスの横に自分が立っている姿を想像してしまったのだ。いやいや、今の自分はアレスの妹のカレンなのだ。そんなわけがないと、ゼリアはぶんぶんと首を横に振った。
「カレン、大丈夫?」
「あ、はい、お母様。大丈夫です」
ゼリアはにっこりと微笑んで、なんでもないアピールをしておいた。
「ありがとうございました、お母様。十分参考になりました」
「そう? 無茶はしないでね」
「はい。では、失礼しました」
ゼリアはそそくさと王妃の部屋を後にしたのだった。
この後のゼリアは、この時のもやもやを吹き飛ばすかのように、近くの森へ赴いて魔物をぶっ飛ばしていた。
結局のところ、何もカレンと変わらない事をしてしまったのだが、気分はすっきりしたのでゼリアは大満足だった。
魔物を担いで帰ってきて満面の笑みのゼリアに、城の兵士たちがどよめいたのは言うまでもない。
こうして、なんだかんだとあったものの、今年も無事に国王誕生祭の日を迎えたのである。
ゼリアは自分のコピーしたカレンの記憶を見てみる。ところが、カレンの記憶を引っぺがしても、近くの森に突撃しては魔物を殴り倒して持って帰ってきた記憶しか出てこなかった。どれだけ脳筋なんですかね、この王女……。
……うん、参考になりませんでした。
そこでやむなく、ゼリアはルチアに尋ねてみる事にした。
「ねえ、ルチア」
「何でしょうか、ゼリア様」
部屋でのんびりする時間を使ってルチアに質問攻めを試みる。
「国王が欲しがっていそうなものって何かな?」
どストレートだった。
「陛下が欲しがっているものでございますか? ……そういえば、そろそろ誕生祭でしたね。なるほどそういうわけですか」
なるほどと言われてしまった。
「そうですね。今までのカレン様は魔物を丸々一体抱えてこられてましたからね。いきなりそれがなくなると、周りの方の方が驚かれるのではないでしょうか」
「……私にも魔物を狩れと?」
ゼリアがルチアの言葉に愕然としている。カレンの姿だと、脳筋からは逃げられないのかも知れない。
「そうは言ってはおりません」
だが、ルチアはすぐに否定した。
「あくまでも周りが驚くだけでございます。カレン様としてお渡しするのであれば、陛下はよっぽどのものでない限り喜ばれると思いますよ」
ルチアはそう言って、最後にゼリアに微笑みかけた。
「そっかあ。でも、具体的に欲しいものは分からないのね」
「そうですね。私は陛下ではありませんし、お聞きするとするなら王妃様か大臣がよろしいかと存じます」
ルチアには結局分からないようで、相談相手を紹介されてしまった。
「うーーん。まぁ何か用意する事にするわ。ありがとう、ルチア」
「いえいえ、お悩みであるなら、相談に乗るのも侍女の仕事でございます」
ゼリアがお礼を言うと、ルチアは当然ですからとすました顔だった。
さて、結局何も分からなかったゼリア。
しかし、なりゆきでこの国の王女のフリをする事になったゼリアに、何の義理があるというのだろうか。本当ならこんな事をする必要はないはずだが、ゼリアは異様に義理堅い性格をしていた。魔物だというのに珍しいものである。
というわけで、ゼリアは王妃のところに向かう事にした。隣に居るはずのマシュロに念話を送って、王妃に会いに行く事を伝えておいた。
ゼリアが部屋に着くと、パラサが出迎えてくれた。
「あら、カレン。どうしたのかしら」
事前にマシュロを通じて伝えていたものの、何も知らないパラサが居たので白々しく尋ねてくる王妃である。
「ええ、お父様への誕生日プレゼントをどうしようかと思いまして、相談に参りました」
とりあえずは普通に聞いてみるゼリア。
「あら、いつもの通り魔物を狩ってくればいいのではないの?」
すかさず王妃から返ってきたのはこれだった。
「さすがにこの年になってもそれだと、逆に心配されないかと思いまして。それで相談に来たのです」
年相応の女の子っぽい事を言ってみるゼリアだったが、
「……8歳の頃に魔物を狩って来た時は心配しましたよ?」
「……」
王妃にこう言われてしまっては、もう何も言えないゼリアである。カレンってどれだけ脳筋なのよ。
「ふふっ、冗談よ」
そう言って微笑む王妃。
「正直あなたも年頃だから、そろそろ嫁ぎ先を見つけてほしいところかしらね。まぁアレスのお相手の方がもっと急がなきゃいけないんだけど」
ゼリアはそっかと思った。アレスは確かカレンの2つ上である。それは確かに王太子妃が居てもおかしくない年齢である。
「あら、カレン。顔が赤くなってない?」
「えっ?!」
無意識だった。どういうわけか、ゼリアはアレスの横に自分が立っている姿を想像してしまったのだ。いやいや、今の自分はアレスの妹のカレンなのだ。そんなわけがないと、ゼリアはぶんぶんと首を横に振った。
「カレン、大丈夫?」
「あ、はい、お母様。大丈夫です」
ゼリアはにっこりと微笑んで、なんでもないアピールをしておいた。
「ありがとうございました、お母様。十分参考になりました」
「そう? 無茶はしないでね」
「はい。では、失礼しました」
ゼリアはそそくさと王妃の部屋を後にしたのだった。
この後のゼリアは、この時のもやもやを吹き飛ばすかのように、近くの森へ赴いて魔物をぶっ飛ばしていた。
結局のところ、何もカレンと変わらない事をしてしまったのだが、気分はすっきりしたのでゼリアは大満足だった。
魔物を担いで帰ってきて満面の笑みのゼリアに、城の兵士たちがどよめいたのは言うまでもない。
こうして、なんだかんだとあったものの、今年も無事に国王誕生祭の日を迎えたのである。
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