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第一部 スライム姉妹、登場
第33話 眷属のミミックスライム
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「ゼリア様から、招集掛かった」
「ビボーナ王国王城、ずいぶん遠くだね」
「暗殺失敗、それからずっと留まってる」
「怖いけど、招集。行くしかない」
暗闇でうぞうぞと動くスライムたち。ゼリアの呼びかけに応じて、眷属のミミックスライム三体はビボーナ王国へと移動を開始した。
ゼリアが眷属に招集を掛けてから一週間が経った。そろそろ使節団が国境に着く頃だろうか。リョブクという男一人のせいで少々不安があるが、とりあえずちゃんと交渉はできたので、貿易くらいはちゃんと行いたいものである。
国王たちとそういったやり取りをした夜。
「ゼリア様、言いつけ通り、夜中に馳せ参じました」
カレンの部屋に声が響き渡る。
「うん、来たのね」
「はい。我々はゼリア様の眷属。命とあらば、どこにでも駆けつけます」
床にべちょんとぶよぶよした物体が3つうごめいている。これがゼリアの眷属であるミミックスライムだ。彼らもまたゼリアやグミと同じように風魔法を使った発声を身に付けているレベルの高い個体である。ちなみにグミにも同じような眷属が居る。多分(カレンのせいで)忘れているだろうけど。
「明日、国王陛下やカレン様の侍女に紹介するから、今夜はベッドの下とかで待機してて」
「御意に」
とりあえず夜中に無事に到着したので、人に見つからないように待機させる事にした。相変わらず聞き分けのいい子たちだと、ゼリアは誇らしく思った。
翌日、ゼリアはルチアにも内緒でミミックスライム三体を自分の服に仕込んだ。そして、王族の朝食に赴く。ゼリアが食堂に着いた時には、王妃が既に座って待っていた。
「おはよう、カレン。今日は雰囲気が違うわね」
食堂に入るなり、王妃からいきなり声を掛けられる。雰囲気が違うと指摘されて、ゼリアはドキッとした。
(王妃様、鋭いなぁ……)
ないはずの心臓が口から飛び出そうだった。ゼリアの場合は飛び出すのは魔石である。バクバクする鼓動を落ち着けながら、ゼリアは席に着いた。
国王とアレスも現れて、これで王族四人が一堂に会した。そして、ゼリアは食事の前に言葉を発する。
「お父様、お母様、お兄様」
それぞれ呼び掛けるゼリア。
「どうしたんだ、カレン」
声を掛けるのは国王。その時のゼリアの表情を見て、
「ルチア以外は下がれ」
察したようで、カレン付きの侍女であるルチア以外を食堂から退室させた。
「人払いはしたぞ。申せ」
国王の言葉に、ゼリアはこくりと頷く。
「出てきて」
ゼリアがこう独り言を言うと、ゼリアの服に重なるように化けていた三体のミミックスライムが人型になって現れた。ちなみにちゃんとそれぞれ服は着用した状態である。
「自己紹介なさい」
真顔で落ち着いたままのゼリアは、ミミックスライムたちに命じる。
「ゼリア様の眷属が一、青色のキャンディでございます」
「同じく、白色のマシュロでございます」
「同じく、緑色のガムでございます」
緑色だけが男性形態、残りは女性形態だった。この三体こそが、ゼリアが言っていた眷属のミミックスライムなのである。
「まぁ、その子たちは子どもなの?」
王妃がずれた質問をしている。
「いえ、私よりも力が弱いので、子どものサイズでしか擬人化できないのです。これでもアサシンスライムよりは弱いですが、そこそこの兵士並みの戦力がございます」
それにも真面目に答えるゼリア。本当に真面目か。
「ふむ。確かに魔物ではあるが、ちゃんと名乗りができるあたり能力の高さが窺えるな」
ミミックスライムたちは国王から評価されている。呼んだかいがあるというものだ。
「で、こいつらをショークアに送り込むというわけか」
「そういう事になるな」
国王とアレスが顔を見合わせる。
「任務とあれば、後ほどお伺い致します」
「自己紹介があるゆえ、このタイミングでお邪魔致しましたが、冷めぬうちにお食事を取られてはいかがでしょうか」
「私どもは、壁の方でそちらの侍女様とお話しさせて頂きます」
ミミックスライム三体は流暢に話すと、ルチアと顔を合わせて食事の席から少し離れた。有能すぎるスライムたちである。
スライムの状態だと省エネのために片言気味になるが、さすがに人型だと人間っぽい喋り方をするようだ。
「ねえ、カレン」
「何でしょうか、お母様」
「あの子、一人私にくれない?」
「魔物ですけれど物ではございません。自分付きの使用人にすればよろしいのでは?」
駄々をこねるような王妃に、さらっと冷たくあしらうゼリア。しかし、使用人にするという言葉を聞いて、真剣に考え始めたようである。
(うわぁ、王妃様、本当に使用人にしようと考えてる……)
王妃の表情を見たゼリアはドン引きしていた。そして、意識を逸らすようにルチアの方を見るゼリアだったが、その視線の先にはなぜか談笑をしているルチアたちが目に入った。どうして楽しそうにしているのか理解できない。ゼリアはどこか諦めたような気持ちのまま、食事を平らげた。
食事が終わると、国王が口元をナプキンで拭いて顔を引き締める。
「王命を言い渡す」
この言葉だけで、空気がピリッとする。ミミックスライムでもこれは分かるようで、ピシッと直立していた。
「キャンディとガムは、ショークア王国へ潜入して、リョブクという男の財閥に潜り込んでくれ」
「はっ!」
「マシュロは、王妃付きの侍女見習いだ。話し相手になってくれ」
「申し付かりました」
食事の間に決めて独断で言い渡す国王。ゼリアは目を丸くして驚いた。自分の眷属なのにこんな簡単に了承するのかと。
「ちょっと、三人ともいいの?!」
ゼリアが立ち上がって声を張り上げる。
「ゼリア様のためになるのでしたら、喜んでお受けします」
こう言われてしまっては、ゼリアは黙ってしまう。眷属だからこその発想、これは怖い。
ゼリアは反対する気も起きなくなったので、この決定で話が進められる事となった。
「ビボーナ王国王城、ずいぶん遠くだね」
「暗殺失敗、それからずっと留まってる」
「怖いけど、招集。行くしかない」
暗闇でうぞうぞと動くスライムたち。ゼリアの呼びかけに応じて、眷属のミミックスライム三体はビボーナ王国へと移動を開始した。
ゼリアが眷属に招集を掛けてから一週間が経った。そろそろ使節団が国境に着く頃だろうか。リョブクという男一人のせいで少々不安があるが、とりあえずちゃんと交渉はできたので、貿易くらいはちゃんと行いたいものである。
国王たちとそういったやり取りをした夜。
「ゼリア様、言いつけ通り、夜中に馳せ参じました」
カレンの部屋に声が響き渡る。
「うん、来たのね」
「はい。我々はゼリア様の眷属。命とあらば、どこにでも駆けつけます」
床にべちょんとぶよぶよした物体が3つうごめいている。これがゼリアの眷属であるミミックスライムだ。彼らもまたゼリアやグミと同じように風魔法を使った発声を身に付けているレベルの高い個体である。ちなみにグミにも同じような眷属が居る。多分(カレンのせいで)忘れているだろうけど。
「明日、国王陛下やカレン様の侍女に紹介するから、今夜はベッドの下とかで待機してて」
「御意に」
とりあえず夜中に無事に到着したので、人に見つからないように待機させる事にした。相変わらず聞き分けのいい子たちだと、ゼリアは誇らしく思った。
翌日、ゼリアはルチアにも内緒でミミックスライム三体を自分の服に仕込んだ。そして、王族の朝食に赴く。ゼリアが食堂に着いた時には、王妃が既に座って待っていた。
「おはよう、カレン。今日は雰囲気が違うわね」
食堂に入るなり、王妃からいきなり声を掛けられる。雰囲気が違うと指摘されて、ゼリアはドキッとした。
(王妃様、鋭いなぁ……)
ないはずの心臓が口から飛び出そうだった。ゼリアの場合は飛び出すのは魔石である。バクバクする鼓動を落ち着けながら、ゼリアは席に着いた。
国王とアレスも現れて、これで王族四人が一堂に会した。そして、ゼリアは食事の前に言葉を発する。
「お父様、お母様、お兄様」
それぞれ呼び掛けるゼリア。
「どうしたんだ、カレン」
声を掛けるのは国王。その時のゼリアの表情を見て、
「ルチア以外は下がれ」
察したようで、カレン付きの侍女であるルチア以外を食堂から退室させた。
「人払いはしたぞ。申せ」
国王の言葉に、ゼリアはこくりと頷く。
「出てきて」
ゼリアがこう独り言を言うと、ゼリアの服に重なるように化けていた三体のミミックスライムが人型になって現れた。ちなみにちゃんとそれぞれ服は着用した状態である。
「自己紹介なさい」
真顔で落ち着いたままのゼリアは、ミミックスライムたちに命じる。
「ゼリア様の眷属が一、青色のキャンディでございます」
「同じく、白色のマシュロでございます」
「同じく、緑色のガムでございます」
緑色だけが男性形態、残りは女性形態だった。この三体こそが、ゼリアが言っていた眷属のミミックスライムなのである。
「まぁ、その子たちは子どもなの?」
王妃がずれた質問をしている。
「いえ、私よりも力が弱いので、子どものサイズでしか擬人化できないのです。これでもアサシンスライムよりは弱いですが、そこそこの兵士並みの戦力がございます」
それにも真面目に答えるゼリア。本当に真面目か。
「ふむ。確かに魔物ではあるが、ちゃんと名乗りができるあたり能力の高さが窺えるな」
ミミックスライムたちは国王から評価されている。呼んだかいがあるというものだ。
「で、こいつらをショークアに送り込むというわけか」
「そういう事になるな」
国王とアレスが顔を見合わせる。
「任務とあれば、後ほどお伺い致します」
「自己紹介があるゆえ、このタイミングでお邪魔致しましたが、冷めぬうちにお食事を取られてはいかがでしょうか」
「私どもは、壁の方でそちらの侍女様とお話しさせて頂きます」
ミミックスライム三体は流暢に話すと、ルチアと顔を合わせて食事の席から少し離れた。有能すぎるスライムたちである。
スライムの状態だと省エネのために片言気味になるが、さすがに人型だと人間っぽい喋り方をするようだ。
「ねえ、カレン」
「何でしょうか、お母様」
「あの子、一人私にくれない?」
「魔物ですけれど物ではございません。自分付きの使用人にすればよろしいのでは?」
駄々をこねるような王妃に、さらっと冷たくあしらうゼリア。しかし、使用人にするという言葉を聞いて、真剣に考え始めたようである。
(うわぁ、王妃様、本当に使用人にしようと考えてる……)
王妃の表情を見たゼリアはドン引きしていた。そして、意識を逸らすようにルチアの方を見るゼリアだったが、その視線の先にはなぜか談笑をしているルチアたちが目に入った。どうして楽しそうにしているのか理解できない。ゼリアはどこか諦めたような気持ちのまま、食事を平らげた。
食事が終わると、国王が口元をナプキンで拭いて顔を引き締める。
「王命を言い渡す」
この言葉だけで、空気がピリッとする。ミミックスライムでもこれは分かるようで、ピシッと直立していた。
「キャンディとガムは、ショークア王国へ潜入して、リョブクという男の財閥に潜り込んでくれ」
「はっ!」
「マシュロは、王妃付きの侍女見習いだ。話し相手になってくれ」
「申し付かりました」
食事の間に決めて独断で言い渡す国王。ゼリアは目を丸くして驚いた。自分の眷属なのにこんな簡単に了承するのかと。
「ちょっと、三人ともいいの?!」
ゼリアが立ち上がって声を張り上げる。
「ゼリア様のためになるのでしたら、喜んでお受けします」
こう言われてしまっては、ゼリアは黙ってしまう。眷属だからこその発想、これは怖い。
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