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第五章『思いはひとつ!』
エピローグ2
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――イプセルタ
ディランの反乱の舞台となったイプセルタは、今回の影響が最も懸念された場所だ。
それというのも、魔族が大挙して押し寄せ、街の中で暴れたのだから。
街に溶け込んでいた力ない魔族たちが、再び居場所を失うのではないかという懸念があった。
街で暮らしていた魔族たちは、ディランの息のかかった魔族たちの攻撃から街の住民を守ったり、騒動後の街の再建に積極的に手を貸したりしたことで騒動前とは変わらない関係を維持できていたようだ。
それでも一部の住民からはやはり危険視されるようにはなっていたが、騒動後に出された王命もあって、表立ったトラブルは避けられていたようだった。
魔王、人間、精霊、はてはドラゴンまでもが共同戦線を張った様子を直に見せられたというのも大きいだろう。
イプセルタはこれからも、魔界との緩衝地帯かつ歴史的な和解の現場として、重要な役目を果たしていく事だろう。
――ベティス
イプセルタの騒動で大活躍だったアルファガドの本拠地がある事で、そもそも交通の要衝として名高かったベティスは、その知名度を一気に上げていた。
ただ、魔王であるルナル、その両腕であるアカーシャとソルトがギルドに所属していたために、人々の心中はなかなかに複雑なようだった。
しかし、三人のそれまでの活躍に加え、すっかり看板娘として定着した猫人のミーアの天真爛漫さに、そんな事は些細な問題と気にする人は段々と減っていった。
また、ルナルたちが捕まえたペンタホーンは知らない間に数が増えており、扱いが難しいものの、重要な移動手段として欠かせない存在となっていた。
商業都市としてのベティスの地位は、ますます揺らぎのないものとなったのであった。
――魔王城
ディランの手から取り戻された魔王城は、以前のような落ち着きを取り戻していた。
ルナルは相変わらず城を空けている事が多いのだが、魔王城の執務は魔王軍団長アカーシャ、参謀ソルト、メイド長ミントの三人でつつがなくこなされている。
ディランの反乱で封印されていた魔族たちも戻り、以前のように和気あいあいとした声が城の中に響き渡っている。
そんな中、魔王の執務室ではアカーシャとソルトの二人がいつものように執務にあたっている。
「まったく、いつもの事とはいえ、ルナル様にも困ったものだな」
「でも、初動の際には陣頭指揮を取っていたのですから、いいじゃないですか。今はもう私たちだけでも大丈夫との判断なのでしょう」
書類を抱えながら愚痴をこぼすアカーシャではあるものの、窘めてくるソルトの言葉に笑う余裕があった。
「私たち魔族と人間たちとが共存し合う世界ですものね、ルナル様の理想は」
「ええ。だから、自らが打って出た方が説得力が強いというものでしょうね」
ソルトもアカーシャも一転してほんわかした雰囲気になっている。
「今もどこかで人助けをしているんでしょうね、ルナル様は」
「ええ。本当に王らしからぬ方ですよ、あの人は」
窓の外を見ながらくすくすと笑う二人。
「私たちは、ルナル様がいつ戻られてもいいように、その場をきれいに整えておきましょうか」
「そうだな」
今日もアカーシャとソルトは、ルナルの代わりに魔界の様々な問題を処理して回るのだった。ハンターとして世界をめぐるルナルが、いつ魔王として戻ってきてもいいように。
50年来の信頼があるからこそ成り立つ、この三人の関係なのだった。
ちなみにこの魔王城がシッタの麓にあるということは、結局明かされる事はなかったのだった。
――辺境の村
「うわあっ、魔物だ。魔物が出たぞ!」
魔族の問題が片付いたとはいえ、魔物は普通に存在している。
そのため、繁殖した魔物が今日もあちこちで被害をもたらしていた。
「ひい、誰か……誰かお助けを!」
村人たちが逃げ惑う。
「シャドウスピア!」
突如として響き渡る声。その瞬間、魔物の足元の影から何本もの槍が飛び出して、魔物を串刺しにしている。
「おらぁ、斬破!」
動けなくなった魔物に、衝撃波が襲い掛かる。それはあっという間に魔物を真っ二つにしてしまっていた。
突然のことに驚いて動きを止める村人たち。その視線の先には、3つの人影が立っていた。
「おお、ハンターだ。ハンターが助けに来て下さったぞ」
村人たちが歓喜の声を上げる。
「さあ、私たちが来たからにはもう安心ですよ。セインくん、ルルちゃん、やっちゃいましょう」
「おう!」
「はい、ルナル様!」
その声とともに、セインは魔物に斬りかかり、ルルは魔法を放つ。
息の合った二人のコンビネーションを見ながら、ルナルはゆっくりと歩み出ていく。
「さて、とっとと片付けてギルドに戻りましょうか。あまり留守にしますとミーアが泣きついてきますからね」
ルナルは思い出したかのようにくすくすと笑いながらそう呟くと、愛用の槍であるフラムベルクを取り出す。そして、魔物たちに向かって高らかに叫ぶ。
「神槍のルナル、いざ参る!」
みんなが笑い合って暮らせる世界を目指すため、今日もルナルはその槍を振るうのだった。
― 完 ―
ディランの反乱の舞台となったイプセルタは、今回の影響が最も懸念された場所だ。
それというのも、魔族が大挙して押し寄せ、街の中で暴れたのだから。
街に溶け込んでいた力ない魔族たちが、再び居場所を失うのではないかという懸念があった。
街で暮らしていた魔族たちは、ディランの息のかかった魔族たちの攻撃から街の住民を守ったり、騒動後の街の再建に積極的に手を貸したりしたことで騒動前とは変わらない関係を維持できていたようだ。
それでも一部の住民からはやはり危険視されるようにはなっていたが、騒動後に出された王命もあって、表立ったトラブルは避けられていたようだった。
魔王、人間、精霊、はてはドラゴンまでもが共同戦線を張った様子を直に見せられたというのも大きいだろう。
イプセルタはこれからも、魔界との緩衝地帯かつ歴史的な和解の現場として、重要な役目を果たしていく事だろう。
――ベティス
イプセルタの騒動で大活躍だったアルファガドの本拠地がある事で、そもそも交通の要衝として名高かったベティスは、その知名度を一気に上げていた。
ただ、魔王であるルナル、その両腕であるアカーシャとソルトがギルドに所属していたために、人々の心中はなかなかに複雑なようだった。
しかし、三人のそれまでの活躍に加え、すっかり看板娘として定着した猫人のミーアの天真爛漫さに、そんな事は些細な問題と気にする人は段々と減っていった。
また、ルナルたちが捕まえたペンタホーンは知らない間に数が増えており、扱いが難しいものの、重要な移動手段として欠かせない存在となっていた。
商業都市としてのベティスの地位は、ますます揺らぎのないものとなったのであった。
――魔王城
ディランの手から取り戻された魔王城は、以前のような落ち着きを取り戻していた。
ルナルは相変わらず城を空けている事が多いのだが、魔王城の執務は魔王軍団長アカーシャ、参謀ソルト、メイド長ミントの三人でつつがなくこなされている。
ディランの反乱で封印されていた魔族たちも戻り、以前のように和気あいあいとした声が城の中に響き渡っている。
そんな中、魔王の執務室ではアカーシャとソルトの二人がいつものように執務にあたっている。
「まったく、いつもの事とはいえ、ルナル様にも困ったものだな」
「でも、初動の際には陣頭指揮を取っていたのですから、いいじゃないですか。今はもう私たちだけでも大丈夫との判断なのでしょう」
書類を抱えながら愚痴をこぼすアカーシャではあるものの、窘めてくるソルトの言葉に笑う余裕があった。
「私たち魔族と人間たちとが共存し合う世界ですものね、ルナル様の理想は」
「ええ。だから、自らが打って出た方が説得力が強いというものでしょうね」
ソルトもアカーシャも一転してほんわかした雰囲気になっている。
「今もどこかで人助けをしているんでしょうね、ルナル様は」
「ええ。本当に王らしからぬ方ですよ、あの人は」
窓の外を見ながらくすくすと笑う二人。
「私たちは、ルナル様がいつ戻られてもいいように、その場をきれいに整えておきましょうか」
「そうだな」
今日もアカーシャとソルトは、ルナルの代わりに魔界の様々な問題を処理して回るのだった。ハンターとして世界をめぐるルナルが、いつ魔王として戻ってきてもいいように。
50年来の信頼があるからこそ成り立つ、この三人の関係なのだった。
ちなみにこの魔王城がシッタの麓にあるということは、結局明かされる事はなかったのだった。
――辺境の村
「うわあっ、魔物だ。魔物が出たぞ!」
魔族の問題が片付いたとはいえ、魔物は普通に存在している。
そのため、繁殖した魔物が今日もあちこちで被害をもたらしていた。
「ひい、誰か……誰かお助けを!」
村人たちが逃げ惑う。
「シャドウスピア!」
突如として響き渡る声。その瞬間、魔物の足元の影から何本もの槍が飛び出して、魔物を串刺しにしている。
「おらぁ、斬破!」
動けなくなった魔物に、衝撃波が襲い掛かる。それはあっという間に魔物を真っ二つにしてしまっていた。
突然のことに驚いて動きを止める村人たち。その視線の先には、3つの人影が立っていた。
「おお、ハンターだ。ハンターが助けに来て下さったぞ」
村人たちが歓喜の声を上げる。
「さあ、私たちが来たからにはもう安心ですよ。セインくん、ルルちゃん、やっちゃいましょう」
「おう!」
「はい、ルナル様!」
その声とともに、セインは魔物に斬りかかり、ルルは魔法を放つ。
息の合った二人のコンビネーションを見ながら、ルナルはゆっくりと歩み出ていく。
「さて、とっとと片付けてギルドに戻りましょうか。あまり留守にしますとミーアが泣きついてきますからね」
ルナルは思い出したかのようにくすくすと笑いながらそう呟くと、愛用の槍であるフラムベルクを取り出す。そして、魔物たちに向かって高らかに叫ぶ。
「神槍のルナル、いざ参る!」
みんなが笑い合って暮らせる世界を目指すため、今日もルナルはその槍を振るうのだった。
― 完 ―
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