神槍のルナル

未羊

文字の大きさ
上 下
133 / 139
第五章『思いはひとつ!』

シグムス王家の墓

しおりを挟む
 智将の提案で、呪いを解く事をシグムスの国王とも相談する。その結果、ルナルたちは国王の直々の案内でシグムス王家の墓場を訪れることになった。
「この墓場は王族と近しい者しか知らない場所でな、よそ者を入れた事はこれが初めてなのだ」
 国王は、表情も声も実に重苦しそうな感じだった。そのくらいに王族の墓というものは国家にとって神聖なものなのだろう。
 今回許可を出したのは、シグムス王家の未来の事を考えての事だ。自分が思い悩んだ経験があるし、ディランという過去の過ちの結果をも目の当たりにした。そういった苦い経験があるからこそというわけである。
 シグムス王家の墓場は、王都シグメラから離れた場所にあった。
「ここは?」
 思わず尋ねてしまうルナル。
 それもそうだろう。そこにあったのはみすぼらしい小屋が一つなのだから。
「意外と思うだろうが、ここが王家の墓だ」
 国王はそうとだけ告げる。
「ここは、初代国王デュークと王妃シグメラが過ごした思い出の小屋なんだ。お二方の遺言によって、二人はここに埋葬されたんだ」
「そして、以降は王族は亡くなるとここに葬られるようになったのだよ」
「そう、だったのですね……」
 国王と智将の説明を聞いて、言葉に詰まるルナル。
「でもよ、初代国王って不死者になってたんだろ。どうして埋葬されているだ?」
 湿っぽくなっていたところに、セインの無神経な質問が飛ぶ。
「あっ、確かにそうですよね。となると、もしかして今も……?」
 セインの質問に反応しいたルルだったが、喋りながら顔を青ざめさせていく。
「いや、眠られているのは間違いない。王家に伝わる話では、初代王妃シグメラ様が亡くなられた翌日、デューク様は自分の剣で胸を一突きして眠りに就かれたそうなのだ」
「愛する者とともに。お二方はそのくらいに深い絆で結ばれていたのだろうね」
「そうなのですね……」
 国王と智将から告げられた言い伝えに、再び言葉を失う。
 深い愛情があるからこその、悲しい話なのである。
「そうした言い伝えがありながらも、年月が経った事で忘れ去られていたのだろうな……。ディラン王子の件は、本当に痛ましい話だ」
 国王は悔しそうに言葉を漏らした。
 ルナルたちが小屋の中に入ると、そこには地下へと続く階段があった。
 地下に降りて墓場を確認する一行。しばらくの沈黙ののち、サキが口を開く。
「それはそれとして、シグムス王家の呪いをいかにして解かれるというのですか、ルナル」
 そう、ルナルが大口を叩いた呪いを解く件についてだった。墓場に来る前にも簡単に話はしたものの、改めての確認というわけである。
「それなのですが、セインくんの持つ破邪の剣でどうにかできると思うんですよ。確証は持てませんけれどもね」
「ルナル、いい加減な事を言わないで下さい……」
 策なしのルナルに、頭が痛いサキである。
 ところが、その時だった。
「な、なんだ?!」
 セインの持つ破邪の剣が、突如として光り始めたのだ。
「セインさん、剣を抜いて下さい」
 ルルが叫ぶ。
「がきんちょ?!」
「いいから早く抜いて下さい」
 戸惑うセインを叱りつけるルルである。小さな子どもであるルルの勢いに押されて、仕方なく剣を鞘から抜くセイン。すると、先程から放たれる光がさらに強まっていく。
 そして、小屋の地下の墓場が眩い光に包まれる。
 しばらくして光が晴れると、そこには鎧に身を包んだ男の姿が現れた。
『久しいな、ここは』
 辺りを見回した男が口を開く。
 その姿をよく見ると、どことなくセインに似た雰囲気を持っていた。
『おい、いつまで寝ているんだ、デューク』
 男が呼び掛けるように声を発すると、墓の中のひとつが突如として盛り上がっていく。
「まったく、もっとまともな起こし方はないのか、ザイン」
 胸に剣を突き立てた男が現れた。先程の話と照らし合わせれば、この男こそシグムス初代国王デュークなのだろう。
『悪いな、ここに到着するまでに時間がかかっちまったからな。それにしても酷い姿だな』
「仕方がないだろう。愛する妻と一緒に眠りたかったのだからな。それにしても、君もちゃんと子孫がいたんだな」
 デュークがちらりとセインを見る。
『ああ。だが、家は知らない間に没落して、俺はその身を錆びだらけにされたがな。まさか俺を修復したのが魔王とは、何の因縁なんだろうな』
 デュークの言葉に反応しながら、ザインはルナルの方へと視線を向ける。これにはルナルもつい驚いてしまう。
「……剣でありながら、すべて見てらしたんですね」
『ああ、俺の意識はその剣の中にあるからな。これも全部、親友であるデュークを救うためなんだからよ』
「まったく、呪われた私のために、君は禁忌に手を出したというのか。嬉しいけれど呆れてしまうな」
『そういうな。お前が救えるのなら、俺に後悔はない』
 何とも話が見えてこない。ルナルたちはそのやり取りをただ黙って見つめるだけである。
 ただ一人、ルルだけが違った反応をしていた。
「そんな……。その方法を取る人間がいただなんて」
「ルルちゃん?」
 酷く驚くルルを心配するルナルだが、ルルの表情はますます青くなっていく。
 一体、ザインがデュークを救うために取った方法とは何なのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

解放

かひけつ
ファンタジー
ある少年は、抗った。 謎の施設。謎の検査。謎の生活。 頭が狂いそうになりながらも施設から出る方法を模索する。 使えるものを活かした反抗計画とその結末は……。 ある科学者は悩んだ。 時折、無力感や後悔の念が身を焦がす。 利口が故に、自己嫌悪に陥ってしまう。 悩みぬいた末に出した結論は……。 ある貴族は覚悟を決めた。 貴ばれる血族であるが故のプライド、 それ相応とは言い難い重しをつけさせられる。 一家を背負い込む覚悟を、世界を調和させることを……。 あるモノは、嘆いた。 自由にはなれない……。 そう思わせる程、管理されてしまった世界。 ここには情すら……ないのかもしれない……。 諦めかけていた、でも、希望が見えた気がした……。 その希望は現状を打開し、解放してくれるのだろうか?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

眠っていた魔力紙を折紙みたいに折ったら、新しい魔法の使い方が出来たので、役立てます。

ゆう
ファンタジー
目が覚めたら森の中。 森をさ迷い、助けられ、森の奥の魔素の多い『森の聖域』の隣村『クルーラ』で暮らすことになるオルガ。 『クルーラ』で暮らしながら、いろんな魔道具に驚き、文字の書き方を教えてもらいながら、少しづつ村に馴染んでいく。 そんな『クルーラ』の収入源は、『森の聖域』の果実や薬草などで作られた魔法薬。『森の聖域』周辺で採取された木で作られた、魔法の原書や魔方陣の本、契約書の用紙として使われている、魔力を含んだ紙『魔力紙(マリョクシ)』。 オルガは勉強するため毎日通っていた村長ヒナキの店で、不要な『魔力紙』が入った収納箱を見つける。 記憶は無いのに、なんとなく手が覚えていて、その『魔力紙』を折り始め、魔力を込めることによって、新たな活用法を見いだしていく。 そして皆の役立つものに…。 手軽に日常生活に使えて、普及するために…。 『クルーラ』と『聖域』で、いろんな魔道具や魔法に出会い、のんびりスローライフをしながら、『魔紙(マシ)』を折って、役立てます。 オルガの『折り魔紙(オリマシ)』の話。 ◇森の聖域◇ 三年後、『クルーラ』に慣れてきたオルガが、魔法を練習したり、『森の聖域』に入り、お手伝いする話。 ◇熊族の町ベイエル◇ オルガが、ベイエルに行って、アレクの家族と買い物したり、勉強したり、果樹園の手伝いをする話。 ***** 『神の宿り木』(こっちはBL )と同じ世界の、数年後の『森の聖域』の隣村クラークからの話です。 なので、ちょいちょい『神の宿り木』のメンバーが出てきます。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

処理中です...