120 / 139
第五章『思いはひとつ!』
混沌とする戦い
しおりを挟む
上空から一つの影が降ってくる。
その姿を見たルルたちは、歓喜に打ち震えた。なにせ、その人がやってくる事を待っていたのだから。その姿こそ、みんなの希望なのだ。
「ルナル様!」
ルルは叫ぶ。
「お待たせしました、みなさん」
ちらりとルルたちの方へと視線を向けたルナル。そして、すぐさまディランたちへと鋭い視線を向ける。そこに先んじて現れたミーアたち三姉妹が、ルナルを守るように周りに立って身構えている。
「くっ、どうやってあの魔眼石の支配から逃れたというのだ……」
三姉妹の攻撃を食らって少し怯んだディランは、目の前の状況が信じられないようだった。
「ルナル様たちの思いが、私を救って下さったのです。他人を駒としか思えないあなたには、到底理解できないでしょうね」
ミントがディランへと吐き捨てる。
「ほざけ、この裏切者が!」
「どちらが裏切者なのでしょうね」
感情に任せて発言するディラン。それに対して冷めきっているミントである。
「おのれ……、どいつもこいつもこけにしおってからに……」
ディランは怒りに打ち震えている。そして、一度伏せていた顔を上げると大声で叫ぶ。
「ええい、この魔族の風上にも置けぬ連中を皆殺しにするのだ。いくぞっ!」
ディランの号令に、行動を渋る魔族たち。それもそうだろう、魔王軍のトップの三人が目の前に立ちはだかっているのだ。勝ち目がないと動けないのだろう。
「まったく、どうしたのですかね。私たちを皆殺しにするのではなかったのですか?」
挑発的に話すルナル。さすがにこの状況にはディランもしびれを切らす。
「ふん、腰抜けどもが。ならば、この俺だけでもやってくれる。いでよ、我が下僕どもよ!」
ディランが叫ぶと、地面が盛り上がって何かが飛び出してくる。さらには空中には何かが集まり始める。
「俺はデュラハンだ。その力、甘く見てくれるなよ?」
「うわあっ!」
ディランが顔をニヤつかせると同時に、イプセルタ兵が叫ぶ事が響き渡る。
それは無理もない。倒したはずの魔族が起き上がるし、空中にはどす黒い物体が浮かんでいるし、墓場からは死体が起き上がってきているのだ。
「ひっ、気持ち悪い……」
「こやつ、死霊使いか。面倒な力を手に入れておるな」
ルルとフォルがそれぞれに反応している。
「さあ、たっぷりと遊んでやれ」
「ガアアッ……!」
ディランが命じると、死体や怨霊たちがルナルたち目がけて襲い掛かる。
「ミント、ミレル、ミーア。ルルちゃんの隣に居る子を守って下さい」
「畏まりました」
「仰せの通りに」
「分かりましたにゃー」
ルナルが命じると、猫人の三人はすぐさまルルのところへと向かっていく。
アンデッドが出現して混乱する様子を見て、ようやく行動を渋っていた魔族たちも行動を開始する。
「うおおおっ、裏切者を殺せ、人間どもを根絶やしにするのだ!」
「おおおっ!」
さっきまで行動を渋っていたとは思えないくらい積極的に打って出ている。
「さて、俺も動くとしようか。なあ、ルナル」
「ディラン……」
ちょうど取り巻きが離れてお互いに一人になったルナルとディラン。ここでいよいよ顔を合わせる事になる。
「ちょうどいいですね。城でやり合った時の借りを返させて頂きますよ」
「ふん、人間どもの中で鈍った槍で、俺に勝てるとでも思っているのか?」
お互いに挑発し合う二人。
ルナルはフラムベルクを取り出して構える。一方のディランは剣を顔の前で一度構えると、そのままルナルへと突きつける。ディランのこの行動は王子であり、騎士でもあった時からの名残だろう。
「さあ、し合おうではないか」
「そうですね。どちらが魔族の頂点に立つにふさわしいか、はっきりさせましょう!」
力を込めて互いに笑みを浮かべる二人であった。
その周りでは人間サイドと魔族サイドの戦いが繰り広げられている。
「まったく、死体を操るなどさすがは魔道に堕ちた者のする事じゃな」
「お姉ちゃん、これは何なんですか。シグムスの地下のスライムよりも気持ち悪いですよ」
あまりにも非道な事に顔をしかめるフォル。気持ち悪がって怖がるルル。姉妹で対照的な反応をしている。
「ネクロマンス、死体を操って使役する禁断の魔法じゃよ。さすが人に紛れた妹は知らん事じゃったか」
「まったく、気持ち悪い事をしやがるな」
精霊二人の側で剣で戦うセイン。
アンデッドの軍勢が加わった事で、一気に形勢が不利になってしまった。アンデッドたちは少し引いていたセインたちが引き受けている。
「その通りじゃが、おぬしの剣があればこやつらとて脅威ではない。聞いておるじゃろう、おぬしの剣が破邪の剣だと」
「ああ、ルナルがそんな事を言っていたな。それがどうしたんだ?」
「破邪の剣は名の通り邪を払う。アンデッドにとっては脅威なのじゃよ」
「……なるほどな」
一から十まで説明してようやく理解するセインである。相変わらず理解力に乏しいようである。
混戦を極めるイプセルタ城。はたして勝負の行方はどうなるのであろうか。そして、どちらが勝利を収めるというのだろうか。状況は全く不透明だった。
その姿を見たルルたちは、歓喜に打ち震えた。なにせ、その人がやってくる事を待っていたのだから。その姿こそ、みんなの希望なのだ。
「ルナル様!」
ルルは叫ぶ。
「お待たせしました、みなさん」
ちらりとルルたちの方へと視線を向けたルナル。そして、すぐさまディランたちへと鋭い視線を向ける。そこに先んじて現れたミーアたち三姉妹が、ルナルを守るように周りに立って身構えている。
「くっ、どうやってあの魔眼石の支配から逃れたというのだ……」
三姉妹の攻撃を食らって少し怯んだディランは、目の前の状況が信じられないようだった。
「ルナル様たちの思いが、私を救って下さったのです。他人を駒としか思えないあなたには、到底理解できないでしょうね」
ミントがディランへと吐き捨てる。
「ほざけ、この裏切者が!」
「どちらが裏切者なのでしょうね」
感情に任せて発言するディラン。それに対して冷めきっているミントである。
「おのれ……、どいつもこいつもこけにしおってからに……」
ディランは怒りに打ち震えている。そして、一度伏せていた顔を上げると大声で叫ぶ。
「ええい、この魔族の風上にも置けぬ連中を皆殺しにするのだ。いくぞっ!」
ディランの号令に、行動を渋る魔族たち。それもそうだろう、魔王軍のトップの三人が目の前に立ちはだかっているのだ。勝ち目がないと動けないのだろう。
「まったく、どうしたのですかね。私たちを皆殺しにするのではなかったのですか?」
挑発的に話すルナル。さすがにこの状況にはディランもしびれを切らす。
「ふん、腰抜けどもが。ならば、この俺だけでもやってくれる。いでよ、我が下僕どもよ!」
ディランが叫ぶと、地面が盛り上がって何かが飛び出してくる。さらには空中には何かが集まり始める。
「俺はデュラハンだ。その力、甘く見てくれるなよ?」
「うわあっ!」
ディランが顔をニヤつかせると同時に、イプセルタ兵が叫ぶ事が響き渡る。
それは無理もない。倒したはずの魔族が起き上がるし、空中にはどす黒い物体が浮かんでいるし、墓場からは死体が起き上がってきているのだ。
「ひっ、気持ち悪い……」
「こやつ、死霊使いか。面倒な力を手に入れておるな」
ルルとフォルがそれぞれに反応している。
「さあ、たっぷりと遊んでやれ」
「ガアアッ……!」
ディランが命じると、死体や怨霊たちがルナルたち目がけて襲い掛かる。
「ミント、ミレル、ミーア。ルルちゃんの隣に居る子を守って下さい」
「畏まりました」
「仰せの通りに」
「分かりましたにゃー」
ルナルが命じると、猫人の三人はすぐさまルルのところへと向かっていく。
アンデッドが出現して混乱する様子を見て、ようやく行動を渋っていた魔族たちも行動を開始する。
「うおおおっ、裏切者を殺せ、人間どもを根絶やしにするのだ!」
「おおおっ!」
さっきまで行動を渋っていたとは思えないくらい積極的に打って出ている。
「さて、俺も動くとしようか。なあ、ルナル」
「ディラン……」
ちょうど取り巻きが離れてお互いに一人になったルナルとディラン。ここでいよいよ顔を合わせる事になる。
「ちょうどいいですね。城でやり合った時の借りを返させて頂きますよ」
「ふん、人間どもの中で鈍った槍で、俺に勝てるとでも思っているのか?」
お互いに挑発し合う二人。
ルナルはフラムベルクを取り出して構える。一方のディランは剣を顔の前で一度構えると、そのままルナルへと突きつける。ディランのこの行動は王子であり、騎士でもあった時からの名残だろう。
「さあ、し合おうではないか」
「そうですね。どちらが魔族の頂点に立つにふさわしいか、はっきりさせましょう!」
力を込めて互いに笑みを浮かべる二人であった。
その周りでは人間サイドと魔族サイドの戦いが繰り広げられている。
「まったく、死体を操るなどさすがは魔道に堕ちた者のする事じゃな」
「お姉ちゃん、これは何なんですか。シグムスの地下のスライムよりも気持ち悪いですよ」
あまりにも非道な事に顔をしかめるフォル。気持ち悪がって怖がるルル。姉妹で対照的な反応をしている。
「ネクロマンス、死体を操って使役する禁断の魔法じゃよ。さすが人に紛れた妹は知らん事じゃったか」
「まったく、気持ち悪い事をしやがるな」
精霊二人の側で剣で戦うセイン。
アンデッドの軍勢が加わった事で、一気に形勢が不利になってしまった。アンデッドたちは少し引いていたセインたちが引き受けている。
「その通りじゃが、おぬしの剣があればこやつらとて脅威ではない。聞いておるじゃろう、おぬしの剣が破邪の剣だと」
「ああ、ルナルがそんな事を言っていたな。それがどうしたんだ?」
「破邪の剣は名の通り邪を払う。アンデッドにとっては脅威なのじゃよ」
「……なるほどな」
一から十まで説明してようやく理解するセインである。相変わらず理解力に乏しいようである。
混戦を極めるイプセルタ城。はたして勝負の行方はどうなるのであろうか。そして、どちらが勝利を収めるというのだろうか。状況は全く不透明だった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。


ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる