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第四章『運命のいたずら』
折れかけた心
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危機を脱したルナルは、アイオロスに抱えられたまま空を移動している。
「マスター様から万が一の時にはシッタに連れて帰るように言われている。しばらくはそのまま抱えられていてくれ」
「分かりました。……まったく、マスターってばこうなる事を予見していたのですね」
「それがマスター様だからな。あの方は、俺たちの考えの遠く及ばないとこに居られるんだ」
ルナルがぶつぶつと文句を言っていると、アイオロスも基本的には同じ考えのようで、すごく嫌そうな顔をしながらマスターの事を褒めていた。これははたして褒めているのだろうか?
「それにしても、現在の魔王である私を助けるとは、少々予想外でしたね」
「マスター様はずいぶんとお前の事を買っているみたいだからな。それに、俺も勝ち逃げされるのは嫌なんで、こうやって命令に従って助けたってわけだ」
「そういえばそんな事をさっきも言っていましたね。今回の事は恩に着ます」
「ふん、感謝するならマスター様にするんだな!」
アイオロスは前を向いたままそんな風に言っている。ちなみにアイオロスは魔王城に乱入した時からずっと人間形態である。風の力を暴発させて、魔王城に大穴を開けたのだ。
もう少しいえば、人間形態で突撃するように指示をしたのはマスターである。ドラゴン形態だと大きくて目立つからだ。
それに、人間形態なら小さいので小回りも利く。すべては計算され尽くされていたのだ。さすがマスターである。
「とりあえずもう少し我慢しろよ。俺はできればこういう事はやりたくないんだ」
「あのですね……。それが女性に対して言う言葉ですか。エウロパにも言いましょうか?」
「やめろ。頼むからエウロパだけはやめてくれ」
アイオロスの言い分にカチンときたルナル。エウロパの名前を出すと、アイオロスは完全にうろたえていた。なにせマスターにも堂々と意見する水智龍である。アイオロスも怖いのだった。
この後は目的地に着くまでの間、アイオロスはすっかり黙ったまま空を飛んでいたのだった。
霊峰シッタに到着したルナルとアイオロス。地面に降りると、そこにはエウロパが待ち構えていた。
「ルナル殿、ご無事でなによりです」
ルナルに対して頭を下げて言葉を掛けるエウロパである。
「やめて下さい。私は魔王ですし、立場的には五色龍の方が上です。軽々に頭を下げるべきではないと思います」
思わぬ態度を示されて、ルナルは慌てている。
「いえ、あのマスター様が対等と認められた方なのですから、私たちが敬意を示すのは当然の事でございます」
エウロパの方も頑として譲らなかった。五色龍からすれば、価値観の絶対はマスタードラゴンが基準なのだから。
その頑固さには、ルナルも諦めるくらいのものだった。
「それにしても、ルナル殿がここに居るという事は、マスター様が仰られた通りの事態に陥ったというわけですか」
エウロパはアイオロスに対して確認している。
「ああ、あのディランとかいう不死者、やる事にまったく躊躇がなかったぜ。あの様子なら、近いうちに次の行動も起こしてくれるだろうな」
アイオロスは淡々とエウロパと話をしている。この様子を見て、ルナルはつい慌ててしまう。
「ちょっと待って下さい。マスターはこの事態が起きる事を予見していたというわけですか?」
「その通りですよ。ですが、私たちは基本的には不干渉です。今回あなたを助けたような事は、本来は避けるべき事態なんですよ」
突っ掛かろうとするルナルに対して、エウロパは淡々と五色龍としての立場を述べていた。
「私たち五色龍のやるべき事は世界の均衡を保ち続ける事。ルナル殿を失う事は世界にとって大きな損失と見たからこそ、マスター様の指示の下、こうやって行動を起こしたのです」
「そう、なのですね……」
エウロパの言葉に、ルナルは五色龍たちの立場を理解して言葉をつぐんだ。
正直言えば、部下をたくさん失う前にディランの行動を潰してほしかった。しかし、五色龍というものは力を持つがゆえに、その力を振るう事は限定的にならざるを得ないのだった。過ぎたる力は、世界の構図を一変させてしまうのだ。
「分かりました。今回は助けて頂いたわけですし、これ以上の事は申しません。……私自らの手で取り戻してみせます」
ルナルはその拳をぎゅっと握りしめたのだった。
「その心意気ですね。次にあなたが取るべき行動は、すでにディランがその答えを示しております」
「……それは一体どういう事ですか?」
エウロパの言葉がよく分からないために、ルナルはつい質問を投げかけてしまう。だが、エウロパがそれに対して答える事はなかった。不干渉が基本的な姿勢がために、エウロパは答える事ができないのである。
「まぁ、あれこれ考えなくていいと思うぜ。単純にお前が信じる道を突き進めばいいんだよ」
それとは対照的に、アイオロスは楽観的に身構えていた。
「……その答えが出るには少し時間が必要でしょう。しばらくはここでゆっくりするといいですよ」
「分かりました。……そうさせて頂きます」
エウロパはアイオロスの態度に呆れながらも、ルナルに優しく声を掛けていた。
思いの外、ルナルの心は乱れていた。なので、気持ちの整理をするためにも、ルナルはエウロパの提案を受け入れたのだった。
「マスター様から万が一の時にはシッタに連れて帰るように言われている。しばらくはそのまま抱えられていてくれ」
「分かりました。……まったく、マスターってばこうなる事を予見していたのですね」
「それがマスター様だからな。あの方は、俺たちの考えの遠く及ばないとこに居られるんだ」
ルナルがぶつぶつと文句を言っていると、アイオロスも基本的には同じ考えのようで、すごく嫌そうな顔をしながらマスターの事を褒めていた。これははたして褒めているのだろうか?
「それにしても、現在の魔王である私を助けるとは、少々予想外でしたね」
「マスター様はずいぶんとお前の事を買っているみたいだからな。それに、俺も勝ち逃げされるのは嫌なんで、こうやって命令に従って助けたってわけだ」
「そういえばそんな事をさっきも言っていましたね。今回の事は恩に着ます」
「ふん、感謝するならマスター様にするんだな!」
アイオロスは前を向いたままそんな風に言っている。ちなみにアイオロスは魔王城に乱入した時からずっと人間形態である。風の力を暴発させて、魔王城に大穴を開けたのだ。
もう少しいえば、人間形態で突撃するように指示をしたのはマスターである。ドラゴン形態だと大きくて目立つからだ。
それに、人間形態なら小さいので小回りも利く。すべては計算され尽くされていたのだ。さすがマスターである。
「とりあえずもう少し我慢しろよ。俺はできればこういう事はやりたくないんだ」
「あのですね……。それが女性に対して言う言葉ですか。エウロパにも言いましょうか?」
「やめろ。頼むからエウロパだけはやめてくれ」
アイオロスの言い分にカチンときたルナル。エウロパの名前を出すと、アイオロスは完全にうろたえていた。なにせマスターにも堂々と意見する水智龍である。アイオロスも怖いのだった。
この後は目的地に着くまでの間、アイオロスはすっかり黙ったまま空を飛んでいたのだった。
霊峰シッタに到着したルナルとアイオロス。地面に降りると、そこにはエウロパが待ち構えていた。
「ルナル殿、ご無事でなによりです」
ルナルに対して頭を下げて言葉を掛けるエウロパである。
「やめて下さい。私は魔王ですし、立場的には五色龍の方が上です。軽々に頭を下げるべきではないと思います」
思わぬ態度を示されて、ルナルは慌てている。
「いえ、あのマスター様が対等と認められた方なのですから、私たちが敬意を示すのは当然の事でございます」
エウロパの方も頑として譲らなかった。五色龍からすれば、価値観の絶対はマスタードラゴンが基準なのだから。
その頑固さには、ルナルも諦めるくらいのものだった。
「それにしても、ルナル殿がここに居るという事は、マスター様が仰られた通りの事態に陥ったというわけですか」
エウロパはアイオロスに対して確認している。
「ああ、あのディランとかいう不死者、やる事にまったく躊躇がなかったぜ。あの様子なら、近いうちに次の行動も起こしてくれるだろうな」
アイオロスは淡々とエウロパと話をしている。この様子を見て、ルナルはつい慌ててしまう。
「ちょっと待って下さい。マスターはこの事態が起きる事を予見していたというわけですか?」
「その通りですよ。ですが、私たちは基本的には不干渉です。今回あなたを助けたような事は、本来は避けるべき事態なんですよ」
突っ掛かろうとするルナルに対して、エウロパは淡々と五色龍としての立場を述べていた。
「私たち五色龍のやるべき事は世界の均衡を保ち続ける事。ルナル殿を失う事は世界にとって大きな損失と見たからこそ、マスター様の指示の下、こうやって行動を起こしたのです」
「そう、なのですね……」
エウロパの言葉に、ルナルは五色龍たちの立場を理解して言葉をつぐんだ。
正直言えば、部下をたくさん失う前にディランの行動を潰してほしかった。しかし、五色龍というものは力を持つがゆえに、その力を振るう事は限定的にならざるを得ないのだった。過ぎたる力は、世界の構図を一変させてしまうのだ。
「分かりました。今回は助けて頂いたわけですし、これ以上の事は申しません。……私自らの手で取り戻してみせます」
ルナルはその拳をぎゅっと握りしめたのだった。
「その心意気ですね。次にあなたが取るべき行動は、すでにディランがその答えを示しております」
「……それは一体どういう事ですか?」
エウロパの言葉がよく分からないために、ルナルはつい質問を投げかけてしまう。だが、エウロパがそれに対して答える事はなかった。不干渉が基本的な姿勢がために、エウロパは答える事ができないのである。
「まぁ、あれこれ考えなくていいと思うぜ。単純にお前が信じる道を突き進めばいいんだよ」
それとは対照的に、アイオロスは楽観的に身構えていた。
「……その答えが出るには少し時間が必要でしょう。しばらくはここでゆっくりするといいですよ」
「分かりました。……そうさせて頂きます」
エウロパはアイオロスの態度に呆れながらも、ルナルに優しく声を掛けていた。
思いの外、ルナルの心は乱れていた。なので、気持ちの整理をするためにも、ルナルはエウロパの提案を受け入れたのだった。
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