101 / 139
第四章『運命のいたずら』
裏切り、そして
しおりを挟む
玉座を中心として床が光り出す。よく見ると魔法陣が浮かんでいた。
「これは、封魔の陣!? ディラン、あなたはこの魔法を使えたのですか?」
魔法に関してそこそこ精通しているルナルは、すぐさまそれが何か分かったのだ。これにはディランは感心した表情を浮かべている。
「ほう、この魔法陣を知っているのか。この魔法陣は、俺の先祖であるデュークが所属していた騎士団で使われていたものだ。まあ、騎士が使うものゆえに簡易的なものだがな」
ディランは静かに語り出す。
「俺は長年の努力の末に、魔法使いどもが使うレベルの魔法陣を動作させる事に成功したのだよ」
ディランの語りを、ルナルは槍を杖代わりにしながらどうにか持ちこたえた状態で聞いている。
「ここまで言えば分かるだろうが、俺に逆らった連中はみんなこの魔法陣で消えてもらった。だが、安心しろ。魔族となった俺の魔力ではそう長くは封印できない。そのうち魔法が解けて戻ってくるさ」
一歩、また一歩とディランがルナルへと近付いてくる。
「だがな、俺の野望のためにはルナル、お前が邪魔なんだよ」
だが、ディランはルナルを警戒して半分ほど距離を詰めたところで立ち止まり、そう叫びながら剣を再びルナルへと向ける。それに対し、ルナルは魔法陣の魔力に抵抗しながら、ディランを睨み付けている。
「はっ! さすがは魔王というところか。いくら俺の魔法陣が未熟とはいえ、封じられる事なく抵抗を続けられるとはな!」
ディランは必死の抵抗を続けるルナルを鼻で笑っていた。
「魔界のあちこちで騒ぎを起こしておいて正解だったな。アカーシャとソルトの二人は居ては、この計画は実行できなかったのだからな」
「くっ、あの騒ぎはあなたが起こしたというわけなのですか……」
ルナルの反応を見て満足げに笑うディランである。ルナルたちを出し抜けた事を心から喜んでいるようだ。
「ああ、そうだ。魔界の重役であり、なおかつハンターをしているお前たちなら、必ず動くと考えたからな。……案の定、城を離れてくれたからな、おかげで事はやりやすかったよ」
ディランは笑いが止まらないのか、さっきからずっと顔を、剣を持っていない手で覆っていた。
「さて、おしゃべりも終わりだ。いい加減にお前にも消えてもらわないとな。古き者が去り、新たな魔王が誕生するのだ!」
「そうは、いくものですか!」
ディランの高笑いにいよいよ我慢できなくなったか、ルナルは必死に立ち上がろうとする。
だが、そこへ突如として激痛が襲い掛かった。
「なっ!?」
痛みに反応して視線を向けた先に、ルナルは信じられない姿を見てしまった。
「ミン……ト?」
しゅたっとディランの隣に立ったのは、ルナルに仕える猫人三姉妹の長女ミントだった。今の一撃はミントが入れたものなのである。
ルナルは攻撃によるダメージと精神的なダメージでその場に膝をついてしまう。
「ミント、あなたが私を、裏切ったと、いうのですか?」
ルナルの問い掛けに、ミントは一切答えない。ただ、つらそうな表情をしながら視線を逸らしているのだけが分かった。
「くくくっ、ミントは俺の下に寝返ったのだ。残念だったな、無能な魔王よ」
ディランはさらに大声で笑っている。
「さあ、ミントよ。この無能な魔王にとどめの一撃を食らわせてやれ!」
「……畏まりました」
ミントがディランの隣からすっと姿を消す。そして、ルナルへと打撃を加えていった。
「……申し訳、ございません。ルナル様……」
攻撃の際に、ミントの謝罪の声が小さく聞こえてきた。
この声にルナルは悟った。おそらくミントは他の魔族たちが魔法陣に消えていくのを目撃したのだろう。そして、妹たちが心配のあまり、やむなくディランへと寝返ったのだと。
ルナルは、ぐっと歯を食いしばった。
「よし、そのくらいでいいだろう。戻れ、ミント!」
その声に、ミントはルナルから離れ、ディランの元へと戻った。
「さあ、おとなしく消え去れ、最も愚かな魔王よ!」
ディランが魔法陣にさらに魔力を込めようとしたその時だった。
激しい音を立てて、魔王城の壁に大穴が開いたのだ。
「な、何事だ?!」
あまりに突然の出来事に、ディランは動揺して大声を出している。
「ふん、こいつに勝ち逃げされるわけにはいかねえんだよ! マスター様の命令で見張っていて正解だったぜ!」
魔王城へ乱入してきた何者かは、何かを大声で喚いていた。
「誰かと思えば……、アイオロスですか」
「おうよ! 俺様が来たからには安心しな!」
アイオロスはルナルを掴むと、そのまま開けた大穴へ向けて飛び去ろうとする。
「こいつが五色龍か。たかがトカゲごときに、この俺の計画を邪魔されてなるものか!」
ディランはすぐさまアイオロスに向けて剣を向けた。
「聖破斬!」
神聖属性をまとった斬破を放つディラン。だが、素早さ自慢のアイオロスに当たるわけもなかったのである。聖破斬の衝撃波は、アイオロスの遥か後方に置き去りにされてしまったのだ。
ディランが次の攻撃を放とうとした時には、アイオロスはルナルを連れてすでに大穴から飛び去った後だった。
「くそっ、逃がしたか!?」
ディランは悔しがって床を思い切り踏みつける。
「ルナルを逃がしてしまったのは誤算だが、この俺の計画に変更はない。すぐに次の行動に移る、ついて来い」
「……畏まりました」
ディランはミントを連れて謁見の間を後にした。
アイオロスの乱入で最大の危機を逃れたルナルだが、ディランの計画は着実に進行していた。
はたして、ディランの野望を阻止する事はできるのだろうか。
「これは、封魔の陣!? ディラン、あなたはこの魔法を使えたのですか?」
魔法に関してそこそこ精通しているルナルは、すぐさまそれが何か分かったのだ。これにはディランは感心した表情を浮かべている。
「ほう、この魔法陣を知っているのか。この魔法陣は、俺の先祖であるデュークが所属していた騎士団で使われていたものだ。まあ、騎士が使うものゆえに簡易的なものだがな」
ディランは静かに語り出す。
「俺は長年の努力の末に、魔法使いどもが使うレベルの魔法陣を動作させる事に成功したのだよ」
ディランの語りを、ルナルは槍を杖代わりにしながらどうにか持ちこたえた状態で聞いている。
「ここまで言えば分かるだろうが、俺に逆らった連中はみんなこの魔法陣で消えてもらった。だが、安心しろ。魔族となった俺の魔力ではそう長くは封印できない。そのうち魔法が解けて戻ってくるさ」
一歩、また一歩とディランがルナルへと近付いてくる。
「だがな、俺の野望のためにはルナル、お前が邪魔なんだよ」
だが、ディランはルナルを警戒して半分ほど距離を詰めたところで立ち止まり、そう叫びながら剣を再びルナルへと向ける。それに対し、ルナルは魔法陣の魔力に抵抗しながら、ディランを睨み付けている。
「はっ! さすがは魔王というところか。いくら俺の魔法陣が未熟とはいえ、封じられる事なく抵抗を続けられるとはな!」
ディランは必死の抵抗を続けるルナルを鼻で笑っていた。
「魔界のあちこちで騒ぎを起こしておいて正解だったな。アカーシャとソルトの二人は居ては、この計画は実行できなかったのだからな」
「くっ、あの騒ぎはあなたが起こしたというわけなのですか……」
ルナルの反応を見て満足げに笑うディランである。ルナルたちを出し抜けた事を心から喜んでいるようだ。
「ああ、そうだ。魔界の重役であり、なおかつハンターをしているお前たちなら、必ず動くと考えたからな。……案の定、城を離れてくれたからな、おかげで事はやりやすかったよ」
ディランは笑いが止まらないのか、さっきからずっと顔を、剣を持っていない手で覆っていた。
「さて、おしゃべりも終わりだ。いい加減にお前にも消えてもらわないとな。古き者が去り、新たな魔王が誕生するのだ!」
「そうは、いくものですか!」
ディランの高笑いにいよいよ我慢できなくなったか、ルナルは必死に立ち上がろうとする。
だが、そこへ突如として激痛が襲い掛かった。
「なっ!?」
痛みに反応して視線を向けた先に、ルナルは信じられない姿を見てしまった。
「ミン……ト?」
しゅたっとディランの隣に立ったのは、ルナルに仕える猫人三姉妹の長女ミントだった。今の一撃はミントが入れたものなのである。
ルナルは攻撃によるダメージと精神的なダメージでその場に膝をついてしまう。
「ミント、あなたが私を、裏切ったと、いうのですか?」
ルナルの問い掛けに、ミントは一切答えない。ただ、つらそうな表情をしながら視線を逸らしているのだけが分かった。
「くくくっ、ミントは俺の下に寝返ったのだ。残念だったな、無能な魔王よ」
ディランはさらに大声で笑っている。
「さあ、ミントよ。この無能な魔王にとどめの一撃を食らわせてやれ!」
「……畏まりました」
ミントがディランの隣からすっと姿を消す。そして、ルナルへと打撃を加えていった。
「……申し訳、ございません。ルナル様……」
攻撃の際に、ミントの謝罪の声が小さく聞こえてきた。
この声にルナルは悟った。おそらくミントは他の魔族たちが魔法陣に消えていくのを目撃したのだろう。そして、妹たちが心配のあまり、やむなくディランへと寝返ったのだと。
ルナルは、ぐっと歯を食いしばった。
「よし、そのくらいでいいだろう。戻れ、ミント!」
その声に、ミントはルナルから離れ、ディランの元へと戻った。
「さあ、おとなしく消え去れ、最も愚かな魔王よ!」
ディランが魔法陣にさらに魔力を込めようとしたその時だった。
激しい音を立てて、魔王城の壁に大穴が開いたのだ。
「な、何事だ?!」
あまりに突然の出来事に、ディランは動揺して大声を出している。
「ふん、こいつに勝ち逃げされるわけにはいかねえんだよ! マスター様の命令で見張っていて正解だったぜ!」
魔王城へ乱入してきた何者かは、何かを大声で喚いていた。
「誰かと思えば……、アイオロスですか」
「おうよ! 俺様が来たからには安心しな!」
アイオロスはルナルを掴むと、そのまま開けた大穴へ向けて飛び去ろうとする。
「こいつが五色龍か。たかがトカゲごときに、この俺の計画を邪魔されてなるものか!」
ディランはすぐさまアイオロスに向けて剣を向けた。
「聖破斬!」
神聖属性をまとった斬破を放つディラン。だが、素早さ自慢のアイオロスに当たるわけもなかったのである。聖破斬の衝撃波は、アイオロスの遥か後方に置き去りにされてしまったのだ。
ディランが次の攻撃を放とうとした時には、アイオロスはルナルを連れてすでに大穴から飛び去った後だった。
「くそっ、逃がしたか!?」
ディランは悔しがって床を思い切り踏みつける。
「ルナルを逃がしてしまったのは誤算だが、この俺の計画に変更はない。すぐに次の行動に移る、ついて来い」
「……畏まりました」
ディランはミントを連れて謁見の間を後にした。
アイオロスの乱入で最大の危機を逃れたルナルだが、ディランの計画は着実に進行していた。
はたして、ディランの野望を阻止する事はできるのだろうか。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ
みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】
---------------------------------------------
その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。
いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。
それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。
「ここは異世界だ!!」
退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。
「冒険者なんて職業は存在しない!?」
「俺には魔力が無い!?」
これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・
---------------------------------------------------------------------------
「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。
また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・
★次章執筆大幅に遅れています。
★なんやかんやありまして...
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる