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第四章『運命のいたずら』
ミムニアの進軍
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ソルトとアカーシャと会話してから、急ぎ足でルナルたちはアルファガドに到着する。
マスターはすぐさま馬車を降りると、ギルド内に居たハンターたちに声を掛け、すぐに打って出られるように準備を始めた。
「智将様、私もちょっと用事を済ませてきます」
ルナルは智将に告げると馬車を降りてギルドの中へと入っていった。
「うにゃー……、ルナル様。またどこかに行くかにゃ?」
ギルドに入ってきたルナルに、ミーアが寂しそうにしながら近寄ってきた。
「ミーア、ごめんなさいね。ちょっと大変な事が起きているようなので、私たちはそれに対処しなければいけないの。ですから、私たちが不在の間、ミーアはアルファガドの事を頼みますよ」
ルナルの言葉に、難しそうな顔をするミーアだったが、
「うー……、ルナル様がそう仰るんでしたら、ミーアは頑張りますにゃ!」
頼られていると理解すると、拳を握って気合いを入れていた。
「ルナル、挨拶は済んだか?」
ミーアと話をしていると。マスターが声を掛けてくる。
「ええ、ミーアの事が心配だったので、そのための挨拶を今終えたところですよ」
ミーアの頭を撫でながら、ルナルは質問に答える。
「だったら、すぐに智将殿をシグムスまで送り届けてくれ。そしたら、すぐにセインたちを連れて合流だ」
「分かりました。二人の話では魔物の数が多いようですから、いくらあなたとはいえ気を付けて下さいよ」
「がっはっはっはっ! 俺はまあ大丈夫だろうが、守る連中が居るからな」
ルナルの心配を笑い飛ばすマスターだったが、ギルドのハンターたちを見ながら柔らかい笑みを見せていた。
話を終えた事で、ルナルはすぐさま外へ出て馬車に乗り込み、一路シグムスへ向けて出発した。
その道中にも、ルナルはソルトとアカーシャと転声石でやり取りをする。だが、報告を聞く限り、その状況は以前よりも悪化の一途をたどっているようだった。
「はぁ……、自分の言葉を軽く考えすぎていましたかね。さすがにここまでやりたい放題だとは思いませんでしたよ」
「そうだね。君はもう少し自分の立場というものを理解した方がいい」
「……大いに反省しております」
ルナルはため息を吐きながら頭を抱え込んでいた。そして、智将と今後の対策を話し合いながら、シグムスへと馬車を急がせたのだった。
その頃、魔界との境界付近では……。
「ガアアアッ!!」
「来たぞ! 魔砲隊、撃てーっ!」
魔物と交戦をする一団が見られる。その一団は大きな砲台から魔物に向けて砲撃を行っている。
「グギュルアァ!」
砲撃は見事に魔物に命中し、食らった魔物はそのまま沈黙していた。
「よし、このまま確実に仕留めていけ!」
「はっ!」
ここで魔物と交戦しているのはミムニア国軍だった。きっちりと重装の鎧兜に身を包み、魔物に対して遠距離攻撃と近接攻撃をを織り交ぜながら戦いを挑んでいた。
対魔物兵器で攻勢に出ているミムニア国軍だったが、突如として魔物襲撃が一時的に途切れる。
魔物がいきなり後退し始めたのだ。
「よし、追撃を仕掛けろ」
歩兵隊が魔物を追いかける。
「……おかしい。こちらに勢いがあるにしても、この退き方は変だぞ」
指揮官が考え込む。そして、ある事に気が付いて声を張り上げる。
「待て! 引き返せ、罠だ!」
「えっ?!」
その瞬間だった。突如として追撃していた歩兵隊に炎が襲い掛かったのだ。
「うわあぁっ!!」
あまりに突然の事に、歩兵隊の一部が炎に巻かれ炭と化した。
「くっ、これが魔物だというのか? 戦略的撤退で誘い込み、迎撃するとは。この動き、まるで軍隊のようだ」
まさかの組織だった動きに、指揮官はぎりっと歯を食いしばった。
だが、そう焦ってもいられない。炎が消えてそこに現れたのは複数体の大きなトカゲだった。そのあまりの巨体に、兵士たちは怖気づいてしまっている。魔物との交戦経験が少ないのがために、ここまで大きな魔物を見た事がないからだ。
「クレセントウィング!」
怯える兵士たちの後方から風魔法が放たれ、目の前のトカゲたちはあっという間に細切れになってしまった。
「何を怖気づいておる。ここは戦場だ。それでもミムニア国の兵か、決して攻撃の手を緩めるな!」
その声に兵士たちが一斉に振り向く。そこに立っていたのは、イプセルタ会議を出席し終えて駆けつけたミムニア国の将軍サイキスだった。
「サイキス様!」
兵士たちが湧きたつその間も、サイキスは魔法を使って近付いていくる魔物を次々と倒している。その姿を見たミムニアの兵士たちは、一気に士気を取り戻していく。
「我らには風の精霊の加護がある。行け、敵を翻弄し殲滅してみせるのだ!」
「はっ!」
サイキスの声に指揮官は返事をする。そして、前方へと向き、兵士たちに号令を掛ける。
「魔砲隊、総力魔力充填開始! 歩兵隊は地上の魔物を、弓兵隊は空中の魔物を牽制しろ! 魔砲隊に決して近付けさせるな!」
大トカゲのブレスで崩れかかっていた陣形は、サイキスの登場によってあっという間に整っていった。
「魔術隊はワシと一緒に各隊の援護をしろ! 魔界まではまだ遠い。まだ引き返すには早いぞ!」
「はっ!!」
剣や槍、それと弓で近付いてくる魔物を迎え撃ち、そこから抜けてくる魔物を魔法で撃退していく。魔砲隊が準備できたところで砲撃により魔物を一掃する。サイキスの指揮で、戦況は瞬く間にミムニア国軍の優勢へと転じていった。
だが、その様子を遠方の魔界にある高台から覗く影があった。
「ミムニア……。南方にあって魔族とろくに戦った事もないひよっこ軍隊だと思っていたが、なかなかにやってくれるな。あのサイキスという男、思ったよりも頭が切れるようだ」
腕を組んで、戦いの様子をじっくりと観察しているようである。
「しかし、奴らが居る場所は人間界だ。魔界に到達しても、その勢いを果たして保ち続けられるかな?」
腕組みを解いて右手を顎に当てたかと思うと、影はにやついた表情を浮かべている。
「ふっ、もし魔界に無事にたどり着けたのなら、その時には精一杯のおもてなしをさせてもらおうではないか。ふは、ふははははははっ!!」
魔界の高台から、不気味な笑い声がこだまするのであった。
マスターはすぐさま馬車を降りると、ギルド内に居たハンターたちに声を掛け、すぐに打って出られるように準備を始めた。
「智将様、私もちょっと用事を済ませてきます」
ルナルは智将に告げると馬車を降りてギルドの中へと入っていった。
「うにゃー……、ルナル様。またどこかに行くかにゃ?」
ギルドに入ってきたルナルに、ミーアが寂しそうにしながら近寄ってきた。
「ミーア、ごめんなさいね。ちょっと大変な事が起きているようなので、私たちはそれに対処しなければいけないの。ですから、私たちが不在の間、ミーアはアルファガドの事を頼みますよ」
ルナルの言葉に、難しそうな顔をするミーアだったが、
「うー……、ルナル様がそう仰るんでしたら、ミーアは頑張りますにゃ!」
頼られていると理解すると、拳を握って気合いを入れていた。
「ルナル、挨拶は済んだか?」
ミーアと話をしていると。マスターが声を掛けてくる。
「ええ、ミーアの事が心配だったので、そのための挨拶を今終えたところですよ」
ミーアの頭を撫でながら、ルナルは質問に答える。
「だったら、すぐに智将殿をシグムスまで送り届けてくれ。そしたら、すぐにセインたちを連れて合流だ」
「分かりました。二人の話では魔物の数が多いようですから、いくらあなたとはいえ気を付けて下さいよ」
「がっはっはっはっ! 俺はまあ大丈夫だろうが、守る連中が居るからな」
ルナルの心配を笑い飛ばすマスターだったが、ギルドのハンターたちを見ながら柔らかい笑みを見せていた。
話を終えた事で、ルナルはすぐさま外へ出て馬車に乗り込み、一路シグムスへ向けて出発した。
その道中にも、ルナルはソルトとアカーシャと転声石でやり取りをする。だが、報告を聞く限り、その状況は以前よりも悪化の一途をたどっているようだった。
「はぁ……、自分の言葉を軽く考えすぎていましたかね。さすがにここまでやりたい放題だとは思いませんでしたよ」
「そうだね。君はもう少し自分の立場というものを理解した方がいい」
「……大いに反省しております」
ルナルはため息を吐きながら頭を抱え込んでいた。そして、智将と今後の対策を話し合いながら、シグムスへと馬車を急がせたのだった。
その頃、魔界との境界付近では……。
「ガアアアッ!!」
「来たぞ! 魔砲隊、撃てーっ!」
魔物と交戦をする一団が見られる。その一団は大きな砲台から魔物に向けて砲撃を行っている。
「グギュルアァ!」
砲撃は見事に魔物に命中し、食らった魔物はそのまま沈黙していた。
「よし、このまま確実に仕留めていけ!」
「はっ!」
ここで魔物と交戦しているのはミムニア国軍だった。きっちりと重装の鎧兜に身を包み、魔物に対して遠距離攻撃と近接攻撃をを織り交ぜながら戦いを挑んでいた。
対魔物兵器で攻勢に出ているミムニア国軍だったが、突如として魔物襲撃が一時的に途切れる。
魔物がいきなり後退し始めたのだ。
「よし、追撃を仕掛けろ」
歩兵隊が魔物を追いかける。
「……おかしい。こちらに勢いがあるにしても、この退き方は変だぞ」
指揮官が考え込む。そして、ある事に気が付いて声を張り上げる。
「待て! 引き返せ、罠だ!」
「えっ?!」
その瞬間だった。突如として追撃していた歩兵隊に炎が襲い掛かったのだ。
「うわあぁっ!!」
あまりに突然の事に、歩兵隊の一部が炎に巻かれ炭と化した。
「くっ、これが魔物だというのか? 戦略的撤退で誘い込み、迎撃するとは。この動き、まるで軍隊のようだ」
まさかの組織だった動きに、指揮官はぎりっと歯を食いしばった。
だが、そう焦ってもいられない。炎が消えてそこに現れたのは複数体の大きなトカゲだった。そのあまりの巨体に、兵士たちは怖気づいてしまっている。魔物との交戦経験が少ないのがために、ここまで大きな魔物を見た事がないからだ。
「クレセントウィング!」
怯える兵士たちの後方から風魔法が放たれ、目の前のトカゲたちはあっという間に細切れになってしまった。
「何を怖気づいておる。ここは戦場だ。それでもミムニア国の兵か、決して攻撃の手を緩めるな!」
その声に兵士たちが一斉に振り向く。そこに立っていたのは、イプセルタ会議を出席し終えて駆けつけたミムニア国の将軍サイキスだった。
「サイキス様!」
兵士たちが湧きたつその間も、サイキスは魔法を使って近付いていくる魔物を次々と倒している。その姿を見たミムニアの兵士たちは、一気に士気を取り戻していく。
「我らには風の精霊の加護がある。行け、敵を翻弄し殲滅してみせるのだ!」
「はっ!」
サイキスの声に指揮官は返事をする。そして、前方へと向き、兵士たちに号令を掛ける。
「魔砲隊、総力魔力充填開始! 歩兵隊は地上の魔物を、弓兵隊は空中の魔物を牽制しろ! 魔砲隊に決して近付けさせるな!」
大トカゲのブレスで崩れかかっていた陣形は、サイキスの登場によってあっという間に整っていった。
「魔術隊はワシと一緒に各隊の援護をしろ! 魔界まではまだ遠い。まだ引き返すには早いぞ!」
「はっ!!」
剣や槍、それと弓で近付いてくる魔物を迎え撃ち、そこから抜けてくる魔物を魔法で撃退していく。魔砲隊が準備できたところで砲撃により魔物を一掃する。サイキスの指揮で、戦況は瞬く間にミムニア国軍の優勢へと転じていった。
だが、その様子を遠方の魔界にある高台から覗く影があった。
「ミムニア……。南方にあって魔族とろくに戦った事もないひよっこ軍隊だと思っていたが、なかなかにやってくれるな。あのサイキスという男、思ったよりも頭が切れるようだ」
腕を組んで、戦いの様子をじっくりと観察しているようである。
「しかし、奴らが居る場所は人間界だ。魔界に到達しても、その勢いを果たして保ち続けられるかな?」
腕組みを解いて右手を顎に当てたかと思うと、影はにやついた表情を浮かべている。
「ふっ、もし魔界に無事にたどり着けたのなら、その時には精一杯のおもてなしをさせてもらおうではないか。ふは、ふははははははっ!!」
魔界の高台から、不気味な笑い声がこだまするのであった。
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