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第二章『西の都へ』
智将の狙い
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サキが下を向いてしまい、さらには様子がおかしい。不思議に思ったルナルは話題を変える事にする。
「智将様。私はともかくとして、セインまで呼んだのはどういう事なのですか?」
ルナルは疑問に感じていた事を智将にぶつけてみる。
「ルルちゃんの事も最初から把握していたようですし、いい加減に種明かしもして頂けませんかね」
ちょっと怒ったようにルナルは智将を問い詰める。
ここまで言うのも無理はない。サキの事だけが目的なら、呼ぶのはルナルだけで十分なはずである。セインまで呼び出す必要はない。
それにだ。ルルはおろかセインとも智将は会った事がない。ルルにいたっては移動も含めて7日も経っていないくらいである。村以外ではアルファガドの面々しか面識がないのだ。なぜそこまで知っているのかという疑問は、当然浮かんでくるのである。
ところが、智将からは驚くべき言葉が出てきた。
「それは全部、君たちの知るマスターくんからの情報だよ。よく自ら食料を買い付けに来るからね。その際にたまには話もしたりもする。先日もやって来てはセイン君の事を話していたよ」
なんともまあ、すべてはマスターの仕業だった。
「それと、マスター殿はこういったものも持っていますからね」
サキは机の上に置かれていた、球体の物質を持ってきた。それを見たルナルは驚く。
「転声石……。遠くの者とも会話ができる魔法石ですか」
2個で1セットとなっている声を伝え合える魔法石だったのだ。そんな希少なものまで使っているとは驚きである。
「ええ。マスター殿はこれを使ってルナルがやって来る事を伝えて下さいました。ですから、おおよその到着時刻が割り出せましたので、わざわざ智将様自らがお出迎えに行かれたのです」
なるほど、とりあえずは智将がルナルたちを門で出迎えられた理由は分かった。それとセインやルルの事を知っている事も分かった。あと、マスターの口が軽い事も分かった。……分からないのはマスターの素性くらいだろう。
ひと通り話を終えると、智将が次の話題へと切り替える。
「それで、セインくんを呼んだ理由だが……。サキ、あれを持って来てくれないか?」
「畏まりました」
サキは再び立ち上がって、さっきの執務机とは別の机に置かれていた木箱を持ってくる。そして、その箱はルナルたちの前の机に置くと、ゆっくりと木箱の蓋を開ける。
中に入っていたのは、古びた籠手だった。
「これは?」
「見ての通りの籠手だよ。早速ですまないが、セインくん。これに触れてみてくれないか?」
急に話を振られて驚いたセインだったが、言われた通りにそっと籠手に手を触れる。すると……。
ぱああっ……。
セインが触れた籠手が急に光を放ったのである。
「まさか、これって……」
「ふふっ、さすがに分かりますかな、ルナル殿」
驚いて智将の顔を見るルナルに、智将は確信めいた視線を送る。それに対してルナルは静かに頷き、再び籠手を見た。
「この籠手は、先々代の魔王を討った勇者が身に着けていたと言われる籠手ですね。討伐の後あちこちに分散して保管されたとは聞いていましたが、破邪の剣以外も本当に現存していたのですね」
「見ての通りですよ」
ルナルの言葉を、サキは肯定する。その間も、セインとルルは籠手が放つ光に釘付けになっていた。
「それで、この籠手は一体どこにあったのですか?」
「シグムス建国の時より国宝とされていて、地下の宝物庫に安置されていた。だが、2か月ほど前から突然淡くではあるものの光り出すようになったそうだ」
「宝物庫には毎日ように兵士が張り付いていたから、すぐに異変に気が付いたんです。異変に気が付いた時点で私の元に預けられました。ですが、調べてみたところで原因は分かりませんでした」
智将とサキの表情は、実に硬かった。
「2か月ほど前ですか……。私とセインが初めて会った頃と重なりますね」
ルナルは顎を抱え込むようにして考え込む。自分とセインが出会った時と一致するためだ。
「城の中では勇者の再来ではないかと大騒ぎになったさ。そんな折にマスターくんと話する事があってね。その際に破邪の剣を持ったセインくんの事を聞いたというわけだよ。さすがの私も興味を持ったので、今回指名してまで招いたというわけだ」
「あー……、なるほどね」
ルナルが呆れた表情を浮かべながら、視線を逸らしていく。
こういう反応にも無理はない。いくら智将が信用できる人物だとしても、そんなほいほいと簡単にギルドメンバーの情報を漏らすとか、一体何を考えているんだと言いたくなるのだ。なにせセインですら呆れるくらいだ。これは一度ガツンと言ってやる必要がありそうである。
「はははっ、その表情は、相当マスターくんに振り回されているようだね」
「ええ、まあ……」
額を手で押さえて首を左右に振るルナルの姿に、智将とサキは笑うしかなかった。セインは呆れ続け、ルルは反応に困ってずっとおろおろとしていた。
「っと、すまなかったね。実はセインくんを呼んだ理由はそれだけじゃないんだ」
笑いを止めた智将が、一転真剣な表情になる。その険しい表情に、セインは思わず息を飲んだ。
「そういえば、ルルくんも不思議な杖を持っているね」
智将がルルの方に視線を向けると、あまりの威圧感にルルは体を震わせていた。
「破邪の剣を持つと聞いてね、その実力がどんなものか興味を覚えたんだ。……こっちもちょうど剣士と魔法使いだ。どうだろう、セインくん、ルルくん。私たちと手合わせをしてみる気はないかな?」
手を組んだ智将の目がきらりと光る。
「……それは、戦えって事だよな?」
「その通りだよ。むしろそれ以外の意味があるのかい?」
智将が凄むと、セインは再び息を飲む。
その様子を見た智将は椅子から立ち上がると、剣に手を掛けて言い放つ。
「さあ、君たちの力を見させてもらおうか!」
「智将様。私はともかくとして、セインまで呼んだのはどういう事なのですか?」
ルナルは疑問に感じていた事を智将にぶつけてみる。
「ルルちゃんの事も最初から把握していたようですし、いい加減に種明かしもして頂けませんかね」
ちょっと怒ったようにルナルは智将を問い詰める。
ここまで言うのも無理はない。サキの事だけが目的なら、呼ぶのはルナルだけで十分なはずである。セインまで呼び出す必要はない。
それにだ。ルルはおろかセインとも智将は会った事がない。ルルにいたっては移動も含めて7日も経っていないくらいである。村以外ではアルファガドの面々しか面識がないのだ。なぜそこまで知っているのかという疑問は、当然浮かんでくるのである。
ところが、智将からは驚くべき言葉が出てきた。
「それは全部、君たちの知るマスターくんからの情報だよ。よく自ら食料を買い付けに来るからね。その際にたまには話もしたりもする。先日もやって来てはセイン君の事を話していたよ」
なんともまあ、すべてはマスターの仕業だった。
「それと、マスター殿はこういったものも持っていますからね」
サキは机の上に置かれていた、球体の物質を持ってきた。それを見たルナルは驚く。
「転声石……。遠くの者とも会話ができる魔法石ですか」
2個で1セットとなっている声を伝え合える魔法石だったのだ。そんな希少なものまで使っているとは驚きである。
「ええ。マスター殿はこれを使ってルナルがやって来る事を伝えて下さいました。ですから、おおよその到着時刻が割り出せましたので、わざわざ智将様自らがお出迎えに行かれたのです」
なるほど、とりあえずは智将がルナルたちを門で出迎えられた理由は分かった。それとセインやルルの事を知っている事も分かった。あと、マスターの口が軽い事も分かった。……分からないのはマスターの素性くらいだろう。
ひと通り話を終えると、智将が次の話題へと切り替える。
「それで、セインくんを呼んだ理由だが……。サキ、あれを持って来てくれないか?」
「畏まりました」
サキは再び立ち上がって、さっきの執務机とは別の机に置かれていた木箱を持ってくる。そして、その箱はルナルたちの前の机に置くと、ゆっくりと木箱の蓋を開ける。
中に入っていたのは、古びた籠手だった。
「これは?」
「見ての通りの籠手だよ。早速ですまないが、セインくん。これに触れてみてくれないか?」
急に話を振られて驚いたセインだったが、言われた通りにそっと籠手に手を触れる。すると……。
ぱああっ……。
セインが触れた籠手が急に光を放ったのである。
「まさか、これって……」
「ふふっ、さすがに分かりますかな、ルナル殿」
驚いて智将の顔を見るルナルに、智将は確信めいた視線を送る。それに対してルナルは静かに頷き、再び籠手を見た。
「この籠手は、先々代の魔王を討った勇者が身に着けていたと言われる籠手ですね。討伐の後あちこちに分散して保管されたとは聞いていましたが、破邪の剣以外も本当に現存していたのですね」
「見ての通りですよ」
ルナルの言葉を、サキは肯定する。その間も、セインとルルは籠手が放つ光に釘付けになっていた。
「それで、この籠手は一体どこにあったのですか?」
「シグムス建国の時より国宝とされていて、地下の宝物庫に安置されていた。だが、2か月ほど前から突然淡くではあるものの光り出すようになったそうだ」
「宝物庫には毎日ように兵士が張り付いていたから、すぐに異変に気が付いたんです。異変に気が付いた時点で私の元に預けられました。ですが、調べてみたところで原因は分かりませんでした」
智将とサキの表情は、実に硬かった。
「2か月ほど前ですか……。私とセインが初めて会った頃と重なりますね」
ルナルは顎を抱え込むようにして考え込む。自分とセインが出会った時と一致するためだ。
「城の中では勇者の再来ではないかと大騒ぎになったさ。そんな折にマスターくんと話する事があってね。その際に破邪の剣を持ったセインくんの事を聞いたというわけだよ。さすがの私も興味を持ったので、今回指名してまで招いたというわけだ」
「あー……、なるほどね」
ルナルが呆れた表情を浮かべながら、視線を逸らしていく。
こういう反応にも無理はない。いくら智将が信用できる人物だとしても、そんなほいほいと簡単にギルドメンバーの情報を漏らすとか、一体何を考えているんだと言いたくなるのだ。なにせセインですら呆れるくらいだ。これは一度ガツンと言ってやる必要がありそうである。
「はははっ、その表情は、相当マスターくんに振り回されているようだね」
「ええ、まあ……」
額を手で押さえて首を左右に振るルナルの姿に、智将とサキは笑うしかなかった。セインは呆れ続け、ルルは反応に困ってずっとおろおろとしていた。
「っと、すまなかったね。実はセインくんを呼んだ理由はそれだけじゃないんだ」
笑いを止めた智将が、一転真剣な表情になる。その険しい表情に、セインは思わず息を飲んだ。
「そういえば、ルルくんも不思議な杖を持っているね」
智将がルルの方に視線を向けると、あまりの威圧感にルルは体を震わせていた。
「破邪の剣を持つと聞いてね、その実力がどんなものか興味を覚えたんだ。……こっちもちょうど剣士と魔法使いだ。どうだろう、セインくん、ルルくん。私たちと手合わせをしてみる気はないかな?」
手を組んだ智将の目がきらりと光る。
「……それは、戦えって事だよな?」
「その通りだよ。むしろそれ以外の意味があるのかい?」
智将が凄むと、セインは再び息を飲む。
その様子を見た智将は椅子から立ち上がると、剣に手を掛けて言い放つ。
「さあ、君たちの力を見させてもらおうか!」
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