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第二章『西の都へ』
ヘルマーシャル
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「ルナル殿、君が魔王だという事だよ」
この智将の言葉に、場は沈黙に包まれる。だが、この沈黙を破ったのはルナルだった。
「はっ、智将様。私が魔王とかまた何の冗談ですか?」
ルナルはとぼけて見せる。だが、その心の内は明らかに動揺していた。
「ほう、否定してみせるか」
ところが、智将の方は完全に落ち着いているどころか、根拠を持ち合わせているようである。
「だが、先程、サキを見た際の反応はどう説明するつもりかね。表に出ないように気を付けていたのはさすがだとは思うが、それを見逃さない私だと思ったかね?」
智将の指摘に、ルナルの眉がわずかに動く。
「その反応は図星のようだね。明らかに思わぬところで知り合いに出くわしたような反応だったからね。違うかい?」
智将からの追及が飛んでくるが、ルナルはぐっと押し黙っている。だが、さすがのルナルもさすがに観念したようだ。ため息を一つ吐いて、頭を左右に小さく振った。
「さすが智将様ですね。わずかな動きも見逃さないとは……」
「ふふっ、認めるという事だね?」
「はい。私が今代の魔王で間違いありません」
ルナルは自分が魔王である事を認めた。その顔は観念したすっきりとした表情をしていた。
そして、自らを魔王だと認めたルナルは、ルルの方へと顔を向ける。ルルだけは自分が魔王だという事を知らないのだから。そのルルはじっとルナルの事を見ていた。
「驚かせてしまいましたね。ですが、ルルちゃんは大事な仲間ですから、安心して下さいね」
「は、はい」
ルナルがルルの頭を撫でていると、ルルはとても安心したように笑顔を見せていた。
ルルが落ち着くと、ルナルは先の方へと向き直る。
「久しぶりですね、サキ。まさかこんなところで会う事になるとは思いませんでした」
「そうですね。かれこれ十年ぶりくらいですかね」
ルナルとサキが笑い合っていると、
「ルナルと知り合いって事は、やっぱりその人は魔族なのか?」
セインが疑問をぶつけてくる。
「ええ、私は魔族です。ちょっとした理由があって、今現在はこのシグムスで智将様の副官を務めています」
「まあその通りだ。私の副官が魔族である事は、箝口令を敷いて対外的に漏れないようにしてある。だから、国外ではまったく話題にもなっていないはずだ」
サキの回答に合わせるように、智将は事情を付け加えている。
「確かに、聞いた事はありませんね」
ルナルはそれを肯定した。
「しかし、サキは魔法の腕も素晴らしいものだし、頭も切れるときたものだ。そんな人材を魔族だからとむざむざ捨てるのはもったいないだろう?」
「まったく、その通りですね」
智将の言葉に、ルナルはつい笑いながら肯定している。
「ところで、ルナルとサキの関係を改めて聞いてもいいかな?」
「構いませんよ。ばれているのなら隠す必要はありませんから」
ルナルは、先との関係性について語り出した。
サキはルナルの部下であるソルトといとこの関係にあるとの事らしい。だからこそ、セインとルルがサキの顔を見て反応したのである。髪色とかは違うものの、顔の輪郭などに似たところがあったからだった。
そして、ソルト同様にルナルの幼馴染みで、魔王の座に就いた時に、魔王軍の編成の際には参加を要請していたらしい。しかし、サキにはことごとく断られていた。最後に断られたのが約十年前で、それ以降は音信不通となっていたのだった。
この事を話しているルナルの顔は、どことなく苦笑いを浮かべているようだった。
「しかし、音信不通になっていたと思ったら、まさかシグムスに居るとは思いませんでしたね」
「まあ、ちょっといろいろあったのですよ。原因はルナルにもありますけどね」
「私に?」
サキの言葉にルナルは驚いている。
「あまりにしつこく勧誘するからですよ。第一ソルトが居るのに、私までそれに付き合わせるつもりなのかと思いましてね。正直嫌気がさしていたんです。それに……」
「それに?」
「最後に直接会って勧誘された時に、ルナルの様子がおかしいように感じましたからね。頻繁に魔界のあちこちに足を運んでいましたし。それで、もしやと思って先んじて人間界に出向いてみる事にしたのですよ」
幼馴染みだからこそ、サキはルナルに何かを感じたのだという。ルナルの心情を推測して、先読みをした行動をしたというわけである。それが音信不通の理由だったのだ。
「でも、その際にプサイラ砂漠でちょっとしたドジを踏んでしまいましてね。その時にまだ一兵士に過ぎなかった智将様に助けて頂いたのです」
「なるほど、そういう経緯があったのですね」
サキから話を聞いたルナルは、先に勧誘の件で謝罪した後、智将へと向いて頭を下げる。
「サキを助けて頂き、ありがとうございました。ところで、サキはお役に立てていますでしょうか?」
「ああ、文句がないくらいこの上ない働きだよ。サキが居たからこそ、私はこの地位に居られると思っているからね」
「何を仰いますか。智将様の右脳があってこそで、私の力など微々たるものです」
「いやいや、対外的には私一人の功績とはなっているが、サキが居たからこそ思い切った作戦も取れたんだからな」
智将とサキは互いに謙遜し合っている。
「まったく、羨ましい限りですね。サキとソルトを一緒に抱え込みたかったですのに。やっぱり、ソルトと比べられるのを嫌ったのですかね?」
「ええ、まったくその通りですよ。でも、ルナルもしつこかったですね。いくら断ってもやって来たんですからね」
「……そこはもうしっかりと反省します。それでも、いい場所ができたようでよかったですね」
「はい、まったくもったいないくらいの場所ですよ……」
ルナルの言葉にサキはそう返すと、どういうわけか下を向いてしまった。ちょっとどういう事か分からないけれど、これは話題を変えた方がいいのかなとルナルは思ったのだった。
この智将の言葉に、場は沈黙に包まれる。だが、この沈黙を破ったのはルナルだった。
「はっ、智将様。私が魔王とかまた何の冗談ですか?」
ルナルはとぼけて見せる。だが、その心の内は明らかに動揺していた。
「ほう、否定してみせるか」
ところが、智将の方は完全に落ち着いているどころか、根拠を持ち合わせているようである。
「だが、先程、サキを見た際の反応はどう説明するつもりかね。表に出ないように気を付けていたのはさすがだとは思うが、それを見逃さない私だと思ったかね?」
智将の指摘に、ルナルの眉がわずかに動く。
「その反応は図星のようだね。明らかに思わぬところで知り合いに出くわしたような反応だったからね。違うかい?」
智将からの追及が飛んでくるが、ルナルはぐっと押し黙っている。だが、さすがのルナルもさすがに観念したようだ。ため息を一つ吐いて、頭を左右に小さく振った。
「さすが智将様ですね。わずかな動きも見逃さないとは……」
「ふふっ、認めるという事だね?」
「はい。私が今代の魔王で間違いありません」
ルナルは自分が魔王である事を認めた。その顔は観念したすっきりとした表情をしていた。
そして、自らを魔王だと認めたルナルは、ルルの方へと顔を向ける。ルルだけは自分が魔王だという事を知らないのだから。そのルルはじっとルナルの事を見ていた。
「驚かせてしまいましたね。ですが、ルルちゃんは大事な仲間ですから、安心して下さいね」
「は、はい」
ルナルがルルの頭を撫でていると、ルルはとても安心したように笑顔を見せていた。
ルルが落ち着くと、ルナルは先の方へと向き直る。
「久しぶりですね、サキ。まさかこんなところで会う事になるとは思いませんでした」
「そうですね。かれこれ十年ぶりくらいですかね」
ルナルとサキが笑い合っていると、
「ルナルと知り合いって事は、やっぱりその人は魔族なのか?」
セインが疑問をぶつけてくる。
「ええ、私は魔族です。ちょっとした理由があって、今現在はこのシグムスで智将様の副官を務めています」
「まあその通りだ。私の副官が魔族である事は、箝口令を敷いて対外的に漏れないようにしてある。だから、国外ではまったく話題にもなっていないはずだ」
サキの回答に合わせるように、智将は事情を付け加えている。
「確かに、聞いた事はありませんね」
ルナルはそれを肯定した。
「しかし、サキは魔法の腕も素晴らしいものだし、頭も切れるときたものだ。そんな人材を魔族だからとむざむざ捨てるのはもったいないだろう?」
「まったく、その通りですね」
智将の言葉に、ルナルはつい笑いながら肯定している。
「ところで、ルナルとサキの関係を改めて聞いてもいいかな?」
「構いませんよ。ばれているのなら隠す必要はありませんから」
ルナルは、先との関係性について語り出した。
サキはルナルの部下であるソルトといとこの関係にあるとの事らしい。だからこそ、セインとルルがサキの顔を見て反応したのである。髪色とかは違うものの、顔の輪郭などに似たところがあったからだった。
そして、ソルト同様にルナルの幼馴染みで、魔王の座に就いた時に、魔王軍の編成の際には参加を要請していたらしい。しかし、サキにはことごとく断られていた。最後に断られたのが約十年前で、それ以降は音信不通となっていたのだった。
この事を話しているルナルの顔は、どことなく苦笑いを浮かべているようだった。
「しかし、音信不通になっていたと思ったら、まさかシグムスに居るとは思いませんでしたね」
「まあ、ちょっといろいろあったのですよ。原因はルナルにもありますけどね」
「私に?」
サキの言葉にルナルは驚いている。
「あまりにしつこく勧誘するからですよ。第一ソルトが居るのに、私までそれに付き合わせるつもりなのかと思いましてね。正直嫌気がさしていたんです。それに……」
「それに?」
「最後に直接会って勧誘された時に、ルナルの様子がおかしいように感じましたからね。頻繁に魔界のあちこちに足を運んでいましたし。それで、もしやと思って先んじて人間界に出向いてみる事にしたのですよ」
幼馴染みだからこそ、サキはルナルに何かを感じたのだという。ルナルの心情を推測して、先読みをした行動をしたというわけである。それが音信不通の理由だったのだ。
「でも、その際にプサイラ砂漠でちょっとしたドジを踏んでしまいましてね。その時にまだ一兵士に過ぎなかった智将様に助けて頂いたのです」
「なるほど、そういう経緯があったのですね」
サキから話を聞いたルナルは、先に勧誘の件で謝罪した後、智将へと向いて頭を下げる。
「サキを助けて頂き、ありがとうございました。ところで、サキはお役に立てていますでしょうか?」
「ああ、文句がないくらいこの上ない働きだよ。サキが居たからこそ、私はこの地位に居られると思っているからね」
「何を仰いますか。智将様の右脳があってこそで、私の力など微々たるものです」
「いやいや、対外的には私一人の功績とはなっているが、サキが居たからこそ思い切った作戦も取れたんだからな」
智将とサキは互いに謙遜し合っている。
「まったく、羨ましい限りですね。サキとソルトを一緒に抱え込みたかったですのに。やっぱり、ソルトと比べられるのを嫌ったのですかね?」
「ええ、まったくその通りですよ。でも、ルナルもしつこかったですね。いくら断ってもやって来たんですからね」
「……そこはもうしっかりと反省します。それでも、いい場所ができたようでよかったですね」
「はい、まったくもったいないくらいの場所ですよ……」
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