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第二章『西の都へ』
首都シグメラ
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砂漠の主デザートシャークを倒したルナルたちは、シグムスに向けて再び移動を始める。
どこまでも同じ景色が続く砂漠の中を、ルナルは迷いなくペンタホーンを誘導していく。
走り続けること数時間、ようやく目の前に大きな砦のようなものが見え始めた。
「さあ、見えてきましたよ。あれが今回の目的地である砂漠の国シグムスの首都である『シグメラ』です」
ルナルが言う首都シグメラは、周りを大きな壁に囲まれていた。この壁によって、外敵や砂埃を運んでくる風を防いでいるらしい。
「シグメラの入口は東西南北の4か所にあります。私たちが向かっているのはベティス方面とを結ぶ東の門となります」
ルナルはシグメラについて説明していく。
「街の中にはオアシスは3か所ありまして、街の外にも点在しています。そのいくつかでは農業が行われていて、そこで収穫された食材は自国での消費はもちろん、周囲にも流通しています。実はアルファガドでも仕入れているんですよ」
「へえー、そうなのか」
「さすがルナル様です」
「まあ、だてにハンターはしていませんよ。情報が命ですからね」
セインとルルの反応に、珍しくドヤ顔を決めるルナルだった。
ルナルたちがシグメラの東門にたどり着く。入口には門番が二人立っていて、警戒するように辺りを見回している。ルナルたちがペンタホーンを降りて、入口へと歩きながら近付いていく。すると、
「待て、お前たちは何者だ!」
「魔物を引き連れているとは、怪しい奴らめ!」
入口の前で門番に止められてしまう。槍を交差させて通せんぼをする門番たち。予想外の反応をされてしまい、ルナルは面食らってしまう。
「ちょっと待って下さい。私たちはこちらの智将様のお招きで参ったハンターです。通して頂けませんか?」
怯えるルルの前に出て、ルナルが門番たちの説得を始める。
「む、だというのなら、証拠を見せてもらおうか」
門番がそう問い詰めてくるので、ルナルは荷物の中から智将からの手紙を取り出す。そして、それを門番たちに突き出しながら説明を続ける。
「私はベティスの街を拠点とするアルファガド所属のハンターでルナルと申します。この手紙にある通り、智将様からの直々のご指名で参った次第なのです。こちらの魔物はペンタホーンといいまして、私たちにとても懐いていて危険はありませんよ」
それを聞いた門番たちが一度顔を見合わせる。そして、
「では、確認させてもらう」
ルナルが差し出した手紙を門番が手に取ろうとする。その時だった。
「確認の必要はない」
門の中から声が聞こえてきた。
ルナルたちが声のする方を確認すると、そこには3、40代と思われる立派な格好をした男性が立っていた。
「こ、これは智将様。なぜこちらに?」
門番が怯んでいる。
そう、このマントをまとい、やや細身の剣を携えたこの男性こそが、『西の智将』と呼ばれる人物その人なのだった。
「その女性と連れの方は私の客人だ。通してあげなさい」
「し、しかし……魔物が……」
「何の問題もない。もし問題があれば私が責任を取る。それでも拒むか?」
「し、失礼しました!」
ごねる門番に智将が凄むと、門番たちは慌てて槍を引っ込めて門の両脇へと引き下がっていった。
門番が退いて落ち着いたルナルは、手紙を鞄へとしまい込む。
「お久しぶりでございます、智将様」
そして、姿勢を正して挨拶をする。それに釣られるようにして、セインとルルも頭を下げていた。
「堅苦しい挨拶は後にしようか。いつまでも門の前に居るわけにはいかないし、今は急ぐ。私の部屋で詳しい話はしようじゃないか」
くるりと後ろを向いた智将は、顔だけをルナルたちの方へと向ける。
「ついて来なさい。セインくんとルルくんも歓迎するよ」
智将がこう言うと、ルナルたちは驚いていた。
「これは驚きました。二人の事もご存じなのですね」
「まあね。その種明かしも、部屋に着いてからしてあげるよ」
智将がそう言うので、ルナルたちはおとなしく智将の後について街の中へと歩みを進める。
「それにしても、ペンタホーンか。おとなしいとはいっても魔物だ。それを手懐けて移動手段とする人物はまず見ない。門番が警戒するのは無理もない」
「あはは、ちょっといろいろございましてね。でも、そのおかげで移動が速くて助かっています」
歩きながら談笑をするルナルと智将。その後ろで、ルルは一人警戒している。
警戒するのは当然だろう。なにせルルは、生まれてからこの方、つい先日まで村から一度たりとも外に出た事がない。それだというのに、この智将と呼ばれる男は自分の事まで把握したいたのだから。これで警戒するなという方が無理なのである。
(この人、油断なりません!)
長旅で疲れているとはいえ、智将に対する警戒感を強めていくルルなのである。
一方で隣のセインも智将の事が別な意味で気になっていた。なにせ智将が扱う武器は剣だ。自分も剣を扱うがゆえに、シグムス軍の要と呼ばれる男の腕前に興味津々なのである。とはいえども、セインは初めてやって来たシグムスという国にも興味を示しているので、ルルほど智将への意識は集中していなかった。
こうして、それぞれがそれぞれに思いを抱きながら、シグメラの街にそびえ立つシグムス城へと歩みを進めていくのだった。
どこまでも同じ景色が続く砂漠の中を、ルナルは迷いなくペンタホーンを誘導していく。
走り続けること数時間、ようやく目の前に大きな砦のようなものが見え始めた。
「さあ、見えてきましたよ。あれが今回の目的地である砂漠の国シグムスの首都である『シグメラ』です」
ルナルが言う首都シグメラは、周りを大きな壁に囲まれていた。この壁によって、外敵や砂埃を運んでくる風を防いでいるらしい。
「シグメラの入口は東西南北の4か所にあります。私たちが向かっているのはベティス方面とを結ぶ東の門となります」
ルナルはシグメラについて説明していく。
「街の中にはオアシスは3か所ありまして、街の外にも点在しています。そのいくつかでは農業が行われていて、そこで収穫された食材は自国での消費はもちろん、周囲にも流通しています。実はアルファガドでも仕入れているんですよ」
「へえー、そうなのか」
「さすがルナル様です」
「まあ、だてにハンターはしていませんよ。情報が命ですからね」
セインとルルの反応に、珍しくドヤ顔を決めるルナルだった。
ルナルたちがシグメラの東門にたどり着く。入口には門番が二人立っていて、警戒するように辺りを見回している。ルナルたちがペンタホーンを降りて、入口へと歩きながら近付いていく。すると、
「待て、お前たちは何者だ!」
「魔物を引き連れているとは、怪しい奴らめ!」
入口の前で門番に止められてしまう。槍を交差させて通せんぼをする門番たち。予想外の反応をされてしまい、ルナルは面食らってしまう。
「ちょっと待って下さい。私たちはこちらの智将様のお招きで参ったハンターです。通して頂けませんか?」
怯えるルルの前に出て、ルナルが門番たちの説得を始める。
「む、だというのなら、証拠を見せてもらおうか」
門番がそう問い詰めてくるので、ルナルは荷物の中から智将からの手紙を取り出す。そして、それを門番たちに突き出しながら説明を続ける。
「私はベティスの街を拠点とするアルファガド所属のハンターでルナルと申します。この手紙にある通り、智将様からの直々のご指名で参った次第なのです。こちらの魔物はペンタホーンといいまして、私たちにとても懐いていて危険はありませんよ」
それを聞いた門番たちが一度顔を見合わせる。そして、
「では、確認させてもらう」
ルナルが差し出した手紙を門番が手に取ろうとする。その時だった。
「確認の必要はない」
門の中から声が聞こえてきた。
ルナルたちが声のする方を確認すると、そこには3、40代と思われる立派な格好をした男性が立っていた。
「こ、これは智将様。なぜこちらに?」
門番が怯んでいる。
そう、このマントをまとい、やや細身の剣を携えたこの男性こそが、『西の智将』と呼ばれる人物その人なのだった。
「その女性と連れの方は私の客人だ。通してあげなさい」
「し、しかし……魔物が……」
「何の問題もない。もし問題があれば私が責任を取る。それでも拒むか?」
「し、失礼しました!」
ごねる門番に智将が凄むと、門番たちは慌てて槍を引っ込めて門の両脇へと引き下がっていった。
門番が退いて落ち着いたルナルは、手紙を鞄へとしまい込む。
「お久しぶりでございます、智将様」
そして、姿勢を正して挨拶をする。それに釣られるようにして、セインとルルも頭を下げていた。
「堅苦しい挨拶は後にしようか。いつまでも門の前に居るわけにはいかないし、今は急ぐ。私の部屋で詳しい話はしようじゃないか」
くるりと後ろを向いた智将は、顔だけをルナルたちの方へと向ける。
「ついて来なさい。セインくんとルルくんも歓迎するよ」
智将がこう言うと、ルナルたちは驚いていた。
「これは驚きました。二人の事もご存じなのですね」
「まあね。その種明かしも、部屋に着いてからしてあげるよ」
智将がそう言うので、ルナルたちはおとなしく智将の後について街の中へと歩みを進める。
「それにしても、ペンタホーンか。おとなしいとはいっても魔物だ。それを手懐けて移動手段とする人物はまず見ない。門番が警戒するのは無理もない」
「あはは、ちょっといろいろございましてね。でも、そのおかげで移動が速くて助かっています」
歩きながら談笑をするルナルと智将。その後ろで、ルルは一人警戒している。
警戒するのは当然だろう。なにせルルは、生まれてからこの方、つい先日まで村から一度たりとも外に出た事がない。それだというのに、この智将と呼ばれる男は自分の事まで把握したいたのだから。これで警戒するなという方が無理なのである。
(この人、油断なりません!)
長旅で疲れているとはいえ、智将に対する警戒感を強めていくルルなのである。
一方で隣のセインも智将の事が別な意味で気になっていた。なにせ智将が扱う武器は剣だ。自分も剣を扱うがゆえに、シグムス軍の要と呼ばれる男の腕前に興味津々なのである。とはいえども、セインは初めてやって来たシグムスという国にも興味を示しているので、ルルほど智将への意識は集中していなかった。
こうして、それぞれがそれぞれに思いを抱きながら、シグメラの街にそびえ立つシグムス城へと歩みを進めていくのだった。
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