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第三章
第93話 おあずけ
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2日連続でふて寝をかましたミルフィは、トンカとナンカの二人の様子を見に行った。ビュフェの紹介でいい感じの土地を融通してもらって、そこでエレベーターの試作をしているのである。
魔石も自分で手に入れたものと購入したものを合わせてそれなりに数は確保できた。これなら事前に魔法を閉じ込めて用意しておけば、二人で勝手にやってくれるだろう。ミルフィは二人の姿を見ながらそう思った。
エレベーターは完全に二人に任せて、ミルフィはビュフェのところへと出向く。
理由は実に簡単。昨日手に入れたロックイーターリザードの肉を食すためである。そのためにはちゃんとした調理場は欲しいので、調っているビュフェの商会の調理場にお邪魔するというわけだ。
「ビュフェさん、失礼しますね」
「あら、ミルフィ様。よくお越し下さいました」
ミルフィを出迎えたのは商会の職員だった。
「あれ、ビュフェさんは今日はいらっしゃらない?」
「はい、商業組合や冒険者組合との間での交渉があるために、本日は不在でございます」
「そっかあ、残念ですか」
本当に残念そうに表情を沈ませるミルフィである。その様子を見た職員がミルフィに問い掛ける。
「どうかなされたのですか?」
「昨日、珍しいお肉が手に入ったので、ちょっと調理させて頂こうと思いましてね。ちゃんとした料理をしようとしても、こちらには私の使える場所はありませんから、こちらの厨房を使わせて頂ければと思いましてね」
ミルフィは下を向いたまま首を左右にゆっくりと振っている。
ミルフィの態度が気になる職員は、そのお肉について問い掛ける。すると、ミルフィはにこりと笑ってこう答えた。
「ロックイーターリザードです」
「はい?」
思わず耳を疑った職員だった。そのために、念のためにもう一度ミルフィに問い掛ける。
ところが、ミルフィから返ってきた答えは同じだった。
「申し訳ございません。それでは商会長の許可なしに厨房をお貸しすることはできませんね」
「どうして?」
文句を言い出すミルフィである。年相応のわがままがようやく炸裂していた。
答えは簡単だった。めったに手に入らない魔物の肉である事が一番の理由だった。
ロックイーターリザードは、少なくともランク5の冒険者が複数人必要な相手だ。ランク2でもどうにかなるストーンイーターリザードとはわけが違うのだ。
それを聞かされたミルフィは、思わず表情を歪めた。それもそうだ。ミルフィの魔法一発で沈んだ相手だからだ。
「冒険者組合の方からも聞かれましたけど、これってそんなに強い魔物だったのですか?!」
逆に確認を取るミルフィ。
「そうですよ。うちで雇っている冒険者が三人で相手をしてようやく倒せる相手ですからね」
信じられないといった表情で固まるミルフィである。
不意打ちだったら確かに怪しいところはあるかもしれないが、魔界でかっ歩している魔物に比べれば明らかに弱い魔物だ。
そもそも魔族の姫として魔力十分のミルフィには、雑魚も雑魚なのだ。
「ま、まあ。ビュフェさんにもお見せしたかったですから、仕方ありませんね……」
ミルフィは仕方なく諦めた。
ビュフェの商会を後にしたミルフィは暇になってしまった。
暇になってしまったものは仕方がないと、ミルフィは再びトンカとナンカの様子を見に行った。
「ああ、姫様」
「おい、トンカ。ここは外だ、お嬢さんって呼べ」
「ハッ!」
南の街に来て何度目かになるトンカとナンカの漫才である。思わず笑ってしまうミルフィだ。
ミルフィは特に気にもしないで、進捗状況を確認している。
「ひとまずはモデルとなるエレベーターが動く塔が完成しました。あとはエレベーターの実物を入れて試験するだけですな」
「2日間でよくここまでできましたね。4階建てですか」
でき上がった塔を見ながら、ミルフィは感心している。自分のところの職人とはいえど、ちょっと気になっていたからだ。
「嬢ちゃんが予算を無制限にしてくれたからな。材料を買い集めるだけでも結構大変だったぜ。勝手にそこらから集めるわけにはいかねえからな、ここじゃあよ」
トンカは腕を組んで唸りながら話していた。
「売り込む技術ですからね、ケチっていてはいいものはできません。それに稼ぐ当てならいくらでもありますし」
「お嬢様、まさか魔物でも狩ってるんですかい?」
ナンカが驚いたように反応していると、ミルフィは笑いながら唇に人差し指の背を当てていた。それを見た二人は何かを察したようだった。
「最終的にはここにミルフィ商会の支部を建てるつもりですよ。さっ、さっさと新型のエレベーターを完成させませんとね」
「合点!」
ミルフィの呼び掛けに、トンカとナンカは元気よく返事をしていた。
一生懸命エレベーターを組み立てるトンカとナンカを見ながら、持っている魔石に一つ一つ魔法を込めていくミルフィ。
「問題はエレベーター内部と壁に取り付ける魔石にこめる魔法ですね。これをミスってしまえばとんでもないことになります。慎重にこめなければ……」
そういってミルフィが取り出したのは、お肉にされた魔界鳥の魔石だった。
慎重に魔法をこめ始めたミルフィだったが、外から誰かの声が聞こえてきたのだった。
魔石も自分で手に入れたものと購入したものを合わせてそれなりに数は確保できた。これなら事前に魔法を閉じ込めて用意しておけば、二人で勝手にやってくれるだろう。ミルフィは二人の姿を見ながらそう思った。
エレベーターは完全に二人に任せて、ミルフィはビュフェのところへと出向く。
理由は実に簡単。昨日手に入れたロックイーターリザードの肉を食すためである。そのためにはちゃんとした調理場は欲しいので、調っているビュフェの商会の調理場にお邪魔するというわけだ。
「ビュフェさん、失礼しますね」
「あら、ミルフィ様。よくお越し下さいました」
ミルフィを出迎えたのは商会の職員だった。
「あれ、ビュフェさんは今日はいらっしゃらない?」
「はい、商業組合や冒険者組合との間での交渉があるために、本日は不在でございます」
「そっかあ、残念ですか」
本当に残念そうに表情を沈ませるミルフィである。その様子を見た職員がミルフィに問い掛ける。
「どうかなされたのですか?」
「昨日、珍しいお肉が手に入ったので、ちょっと調理させて頂こうと思いましてね。ちゃんとした料理をしようとしても、こちらには私の使える場所はありませんから、こちらの厨房を使わせて頂ければと思いましてね」
ミルフィは下を向いたまま首を左右にゆっくりと振っている。
ミルフィの態度が気になる職員は、そのお肉について問い掛ける。すると、ミルフィはにこりと笑ってこう答えた。
「ロックイーターリザードです」
「はい?」
思わず耳を疑った職員だった。そのために、念のためにもう一度ミルフィに問い掛ける。
ところが、ミルフィから返ってきた答えは同じだった。
「申し訳ございません。それでは商会長の許可なしに厨房をお貸しすることはできませんね」
「どうして?」
文句を言い出すミルフィである。年相応のわがままがようやく炸裂していた。
答えは簡単だった。めったに手に入らない魔物の肉である事が一番の理由だった。
ロックイーターリザードは、少なくともランク5の冒険者が複数人必要な相手だ。ランク2でもどうにかなるストーンイーターリザードとはわけが違うのだ。
それを聞かされたミルフィは、思わず表情を歪めた。それもそうだ。ミルフィの魔法一発で沈んだ相手だからだ。
「冒険者組合の方からも聞かれましたけど、これってそんなに強い魔物だったのですか?!」
逆に確認を取るミルフィ。
「そうですよ。うちで雇っている冒険者が三人で相手をしてようやく倒せる相手ですからね」
信じられないといった表情で固まるミルフィである。
不意打ちだったら確かに怪しいところはあるかもしれないが、魔界でかっ歩している魔物に比べれば明らかに弱い魔物だ。
そもそも魔族の姫として魔力十分のミルフィには、雑魚も雑魚なのだ。
「ま、まあ。ビュフェさんにもお見せしたかったですから、仕方ありませんね……」
ミルフィは仕方なく諦めた。
ビュフェの商会を後にしたミルフィは暇になってしまった。
暇になってしまったものは仕方がないと、ミルフィは再びトンカとナンカの様子を見に行った。
「ああ、姫様」
「おい、トンカ。ここは外だ、お嬢さんって呼べ」
「ハッ!」
南の街に来て何度目かになるトンカとナンカの漫才である。思わず笑ってしまうミルフィだ。
ミルフィは特に気にもしないで、進捗状況を確認している。
「ひとまずはモデルとなるエレベーターが動く塔が完成しました。あとはエレベーターの実物を入れて試験するだけですな」
「2日間でよくここまでできましたね。4階建てですか」
でき上がった塔を見ながら、ミルフィは感心している。自分のところの職人とはいえど、ちょっと気になっていたからだ。
「嬢ちゃんが予算を無制限にしてくれたからな。材料を買い集めるだけでも結構大変だったぜ。勝手にそこらから集めるわけにはいかねえからな、ここじゃあよ」
トンカは腕を組んで唸りながら話していた。
「売り込む技術ですからね、ケチっていてはいいものはできません。それに稼ぐ当てならいくらでもありますし」
「お嬢様、まさか魔物でも狩ってるんですかい?」
ナンカが驚いたように反応していると、ミルフィは笑いながら唇に人差し指の背を当てていた。それを見た二人は何かを察したようだった。
「最終的にはここにミルフィ商会の支部を建てるつもりですよ。さっ、さっさと新型のエレベーターを完成させませんとね」
「合点!」
ミルフィの呼び掛けに、トンカとナンカは元気よく返事をしていた。
一生懸命エレベーターを組み立てるトンカとナンカを見ながら、持っている魔石に一つ一つ魔法を込めていくミルフィ。
「問題はエレベーター内部と壁に取り付ける魔石にこめる魔法ですね。これをミスってしまえばとんでもないことになります。慎重にこめなければ……」
そういってミルフィが取り出したのは、お肉にされた魔界鳥の魔石だった。
慎重に魔法をこめ始めたミルフィだったが、外から誰かの声が聞こえてきたのだった。
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