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第三章
第74話 はやる気持ちを前に
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ミルフィが南の街へと向かう情報は、魔界から最も近い街に衝撃を走らせた。
オーソンもそんな衝撃を受けた一人である。
「ミルフィさん、本当に南に向かわれるのですか?」
お店に呼んで、わざわざ直に問い詰めるほどだった。
ところが、ミルフィの決意は本物である。いくら説得されようともまったく揺るぐ事はなかった。
その固い決意に、さすがのオーソンも諦めたらしい。
「分かりました。ミルフィさんが来られてから支援してきましたので、居ない間の事は私にも任せて下さい」
「ええ、頼りにしておりますとも」
にっこりと微笑むミルフィである。
さて、なぜまだミルフィがこの街に居るのか。それは、ビュフェたちの対応待ちのためだった。
ミルフィ自身はいつでも出られるように準備をしていたのだが、ビュフェたちは帰りの護衛の準備をしていなかったのだ。
そのせいで2日間ほど待たされることになってしまった。
ちなみにトンカとナンカの二人は、カフェのエレベーターの状態のチェックを行っている。待ってる間は暇だし、自分の作ったものがちゃんと使えているかというのは気になるからだ。
それと、待っている間にピレシーの暴走も止めに行くミルフィ。メディと薬膳づくりに没頭していて、最近は呼んでも出てこないのだ。
南の街へと向かうとなると、ピレシーの持つ知識は必要になってくる。彼が呼び掛けにすぐに応じないとなると、この上ない問題なのだ。
「まったく、薬膳づくりははかどっていますか?」
商会の厨房へと向かうと、この日もメディとピレシーはいろいろと料理をしていた。とはいっても、ピレシーは魔導書だし、メディは料理は専門外。厨房の料理人を一人捕まえてあれこれやらせているのだ。
「み、ミルフィ様ぁ……」
捕まって付き合わされている料理人が、ミルフィに泣きついてくる。いい年をした大人のはずだというのに、まだ2桁になったばかりの子どもに泣きついている。そのくらいにメディとピレシーに無理やり付き合わされているのだろう。なんだか可哀想になってくるミルフィである。
さすがに見ていられなくなったミルフィは、二人に対して説得を試みることにしたのだ。
「さて、今日まで好き勝手やっているのを放ってきましたけど、そうもいかなくなりました」
真剣な表情で話を始めるミルフィ。
「何があったというのかな?」
あまりに真剣な表情だったので、メディが問い掛けてくる。
「商業組合のアテムさんからの伝言です。そろそろポーションの在庫が切れるから、再開してくれ。とのことですよ」
「うむぅ、そんなに消耗が進んでいたか……」
ミルフィが伝えた話に、思わず顔をしかめて唸ってしまうメディである。
「それとピレシー」
”何かな、主よ”
呼ばれて反応をするピレシーだが、ミルフィの表情は険しいままだ。
「最近、私の呼び掛けに反応が鈍くなっていませんか? 少なくとも3回は無視された気がしますけど」
”むむっ、そんなことなどあったかな? 我は知らぬぞ”
慌てたように反応するピレシー。
「一度は知っておりますよ。私と一緒の時でしたからね」
そこにひょっこり顔を出すティア。商会の中でも信用のあるティアに言われてしまえば、さすがのピレシーもごまかしが効かないというものである。
”ぐぬぬぬ……。して、今回は何の用があるというのかな、主”
「あっ、ごまかしましたね」
話題を切り替えようとするピレシーだったが、即、ティアからツッコミを入れられてしまった。ミルフィのごまかしも通じないティアはさすがなのである。
その華麗なるツッコミを見たミルフィは、咳払いを1回入れて話を再開させる。
「実はですね、南の街に拠点を持たれている商会の方々がいらっしゃっていて、今回その方たちに同行して南の街へと行く事にしました。ティアは知っていますね」
ミルフィの問い掛けにこくりと頷くティア。なにせ、その間の管理をプレツェともども任されているのだから、知らないわけがない。
”なんと、そのような話になっておったか。それならば、我の力が必要になるのは必至というわけか……。分かった、そういうことなら任せるとよいぞ”
ピレシーはページを開いた状態で、その部分を天井に向けている。おそらく胸を張って踏ん反りがえっているのだろう。
ミルフィはその態度に呆れながらも、どうツッコミを入れていいのか分からなかった。なにせ食に関する知識にはどうあがいてもピレシーには勝てないからだ。結局はピレシーに頼らざるを得ないのである。
「出発は明日で、朝の早い時間に商業組合前に集合となっています。ティア、みなさん、明日からは商会の事をしばらく頼みますよ」
「お任せ下さい、ミルフィ様」
厨房に居た全員が、はっきりとした返事をしている。そのくらいにはミルフィへの信頼が厚いというわけである。この姿には、ミルフィもつい嬉しくて笑顔になってしまうのだった。
こうして、しっかりとした体制を確保して、ミルフィはいよいよ南の街へと向かうこととなる。
わくわくと高鳴る気持ちを抑えられないミルフィだが、万全の状態でその時を迎えるべく眠りについたのだった。
オーソンもそんな衝撃を受けた一人である。
「ミルフィさん、本当に南に向かわれるのですか?」
お店に呼んで、わざわざ直に問い詰めるほどだった。
ところが、ミルフィの決意は本物である。いくら説得されようともまったく揺るぐ事はなかった。
その固い決意に、さすがのオーソンも諦めたらしい。
「分かりました。ミルフィさんが来られてから支援してきましたので、居ない間の事は私にも任せて下さい」
「ええ、頼りにしておりますとも」
にっこりと微笑むミルフィである。
さて、なぜまだミルフィがこの街に居るのか。それは、ビュフェたちの対応待ちのためだった。
ミルフィ自身はいつでも出られるように準備をしていたのだが、ビュフェたちは帰りの護衛の準備をしていなかったのだ。
そのせいで2日間ほど待たされることになってしまった。
ちなみにトンカとナンカの二人は、カフェのエレベーターの状態のチェックを行っている。待ってる間は暇だし、自分の作ったものがちゃんと使えているかというのは気になるからだ。
それと、待っている間にピレシーの暴走も止めに行くミルフィ。メディと薬膳づくりに没頭していて、最近は呼んでも出てこないのだ。
南の街へと向かうとなると、ピレシーの持つ知識は必要になってくる。彼が呼び掛けにすぐに応じないとなると、この上ない問題なのだ。
「まったく、薬膳づくりははかどっていますか?」
商会の厨房へと向かうと、この日もメディとピレシーはいろいろと料理をしていた。とはいっても、ピレシーは魔導書だし、メディは料理は専門外。厨房の料理人を一人捕まえてあれこれやらせているのだ。
「み、ミルフィ様ぁ……」
捕まって付き合わされている料理人が、ミルフィに泣きついてくる。いい年をした大人のはずだというのに、まだ2桁になったばかりの子どもに泣きついている。そのくらいにメディとピレシーに無理やり付き合わされているのだろう。なんだか可哀想になってくるミルフィである。
さすがに見ていられなくなったミルフィは、二人に対して説得を試みることにしたのだ。
「さて、今日まで好き勝手やっているのを放ってきましたけど、そうもいかなくなりました」
真剣な表情で話を始めるミルフィ。
「何があったというのかな?」
あまりに真剣な表情だったので、メディが問い掛けてくる。
「商業組合のアテムさんからの伝言です。そろそろポーションの在庫が切れるから、再開してくれ。とのことですよ」
「うむぅ、そんなに消耗が進んでいたか……」
ミルフィが伝えた話に、思わず顔をしかめて唸ってしまうメディである。
「それとピレシー」
”何かな、主よ”
呼ばれて反応をするピレシーだが、ミルフィの表情は険しいままだ。
「最近、私の呼び掛けに反応が鈍くなっていませんか? 少なくとも3回は無視された気がしますけど」
”むむっ、そんなことなどあったかな? 我は知らぬぞ”
慌てたように反応するピレシー。
「一度は知っておりますよ。私と一緒の時でしたからね」
そこにひょっこり顔を出すティア。商会の中でも信用のあるティアに言われてしまえば、さすがのピレシーもごまかしが効かないというものである。
”ぐぬぬぬ……。して、今回は何の用があるというのかな、主”
「あっ、ごまかしましたね」
話題を切り替えようとするピレシーだったが、即、ティアからツッコミを入れられてしまった。ミルフィのごまかしも通じないティアはさすがなのである。
その華麗なるツッコミを見たミルフィは、咳払いを1回入れて話を再開させる。
「実はですね、南の街に拠点を持たれている商会の方々がいらっしゃっていて、今回その方たちに同行して南の街へと行く事にしました。ティアは知っていますね」
ミルフィの問い掛けにこくりと頷くティア。なにせ、その間の管理をプレツェともども任されているのだから、知らないわけがない。
”なんと、そのような話になっておったか。それならば、我の力が必要になるのは必至というわけか……。分かった、そういうことなら任せるとよいぞ”
ピレシーはページを開いた状態で、その部分を天井に向けている。おそらく胸を張って踏ん反りがえっているのだろう。
ミルフィはその態度に呆れながらも、どうツッコミを入れていいのか分からなかった。なにせ食に関する知識にはどうあがいてもピレシーには勝てないからだ。結局はピレシーに頼らざるを得ないのである。
「出発は明日で、朝の早い時間に商業組合前に集合となっています。ティア、みなさん、明日からは商会の事をしばらく頼みますよ」
「お任せ下さい、ミルフィ様」
厨房に居た全員が、はっきりとした返事をしている。そのくらいにはミルフィへの信頼が厚いというわけである。この姿には、ミルフィもつい嬉しくて笑顔になってしまうのだった。
こうして、しっかりとした体制を確保して、ミルフィはいよいよ南の街へと向かうこととなる。
わくわくと高鳴る気持ちを抑えられないミルフィだが、万全の状態でその時を迎えるべく眠りについたのだった。
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