メシマセ!魔王女ちゃん

未羊

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第三章

第50話 目的地にやって来た

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「ふぅ、ここが話に出ていた魔界に最も近い街ですね」

「よ、ようやく着きましたか……」

 ピンピンとしているアドンとは対照的に、レンダは息が完全に上がっている。これが冒険者組合と商業組合の職員の差なのだろうか。

「体力に自信があるとは言っていたくせに、情けない限りですね」

「た、旅は専門外ですよ……」

 言い訳をするレンダ。
 それを尻目に、ここまで護衛をしてくれた冒険者たちにお礼を言っているアドン。

「さあ、噂のお店を探しますよ。冒険者組合まで行ってから、彼らと別れて聞き込みです」

「分かった……」

 そんなわけで、レンダとアドンは冒険者たちと組合まで移動する。
 やって来た冒険者組合。ここではさすがに驚く二人である。

「さすがは魔界に近いとだけあって、冒険者たちがなかなかに屈強な人たちぞろいですね」

 言葉とは裏腹に、表情は楽しそうなアドンである。さすがは冒険者組合の職員といったところだろうか。

「アドン、一体何を楽しみにしてるんですか。俺たちは冒険者たちの舌が肥えた理由を探しに来たんでしょうが」

 アドンに鋭くツッコミを入れるレンダ。すると、これに反応したのはアドンではなく、今まで護衛をしてくれた冒険者だった。

「なんだ。あなたたちはミルフィちゃんのお店に用事があったのか」

「ミルフィ……? 誰なんですか、それは」

 聞いた事のない名前に、思わず質問してしまうレンダ。予想外の反応に、冒険者たちは思わず顔を見合ってしまう。

「商業組合なのに知らないのか? この街に突然現れて急成長している商会の会長の名前だよ」

「そうそう。まだこんな小さくて可愛い子なんだけど、その子が作る料理がまた絶品なのよね」

 冒険者たちは真面目な顔をして頷いてたり、笑顔でうっとりしたように話したりしている。
 その様子を見る限り、そのミルフィとかいう人物は、冒険者たちには相当受け入れられているようだった。
 二人はとても気になってしまう。

「むむむ……。そのミルフィとかいう人物のところに案内して下さい」

 レンダが鬼気迫るような顔で頼み込んでくるものだから、冒険者たちはあっけらかんとした表情で答える。

「別依頼になるから、依頼料としておごってくれるなら考えよう」

「くっ……」

 足元を見られて思わずためらってしまうレンダである。
 一緒に居たアドンは、レンダの肩にポンと手を置くと、首を左右に振りながら話し掛ける。

「私たちの負けです。ここはおとなしく聞き入れましょう」

 そんなわけで、レンダとアドンは冒険者たちと一緒に、冒険者たちに評判のお店へと向かう事にしたのだった。

 街の少しだけ外れた場所にあるそのお店は、今日もにぎわっている。
 立地条件の割に人が集まっている状況を見て、レンダが驚いている。
 商業組合の職員である彼は、商売の鉄則のようなものがしっかり頭に入っている。だというのに、それから外れた場所にあるそのお店は、レンダの中の常識を覆すほどににぎわっているのだ。

「な、なんだ、ここは……」

「ここがミルフィちゃんのお店だよ。3日営業して1日休みだから、タイミング逃すと凹むんだよな」

「今日は営業日だったみたいね。ミルフィちゃんってば居るかしらね」

 驚きのあまりに引いているレンダに対して、にこやかに話をしている冒険者たち。温度差が激しい。
 行列ができてはいるものの、時間のおかげか思ったより短い。なので、冒険者たちは店内での食事を選択したようだった。
 レンダとアドンは、よく分からないので彼らと一緒に並ぶ。やがて、ようやく席に案内されるレンダたちだった。

「いらっしゃいませ。こちらの席へどうぞ」

 制服に身を包んだミルフィが現れた。

「やあ、ミルフィちゃん。よかった今日はここに居たのか」

「あれ、みなさん。今回も依頼を探しに来られたんですか?」

「まあね。あと、ちょっとおまけの用事もあったからここまで来たんだ」

「おまけの用事?」

 ミルフィがきょとんとして覗き込むと、レンダとアドンの二人が目に入った。

「あれあれ、初めて見る顔ですね」

「ああ、こっからかなり遠い街の組合の職員なんだ。こっちのほそっちょろい方が商業組合のやつで、こっちが冒険者組合のやつだ」

 面倒なのか名前で紹介しない冒険者たち。
 しかし、立ち話で仕事の邪魔をするわけにもいかないと、案内された席に座る冒険者たちである。

「ご注文は何になさいますか」

「ああ、いつもので頼むよ。この二人にも同じやつを」

「いつものですか。畏まりました」

 注文を受けるとミルフィは壁際にある筒のところへ歩いていく。
 さすがに見慣れない二人は、あれが何なのか冒険者たちに質問している。

「あれは、下の階の厨房に注文を通すための筒だよ」

 これにはレンダもアドンも驚いていた。直接厨房に注文を伝えに行くものだと思っていたが、そういえばここは2階である。注文の度に階段の昇り降りは危険なのだ。そういった状況を鑑みれば、このシステムはありだと考えた。
 注文を終えて、しばらく待つ。
 そして、料理がついに運ばれてきたのだが、その時の運搬方法にも度肝を抜かれる二人だった。
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