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第二章
第48話 交渉の終わりに
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街に無事戻って来たミルフィたち。
オーソンと組合長たちは、魔界の真っただ中に出向いてきたというのに、かなり充実した表情をしていた。
「いやはや、世の中には知らない事が多かったな。そうだろう、アテム」
「まったくその通りですね、ウォズ」
組合長はそう言いながら、オーソンの方を見る。
「あなたもまったく人が悪い。このような情報を組合に隠しているとはね」
「ミルフィさんの立場を考えた上での判断です。黙っていた事は謝罪しますが、どうかご理解下さい」
アテムに窘められると、さすがにオーソンもその事は謝罪する。オーソンも商業組合の一員であるので、組合の意向に従う義務があるからだ。
しかし、ミルフィとの付き合いの中で、その立ち位置を見抜いていたオーソンは、全面的にミルフィのバックアップに回ったのだ。
「それにしても、魔界鳥とか食えたもんじゃないと思っていたが、あの料理には驚いたな」
「ええ、そうですね。魔界に近いこの街にとって、魔界鳥は意外となじみのある鳥ですからね。しかし、料理に薬草を使うとなると、いろいろとこちらとしても考えどころですね」
組合長たちがいろいろと考えている。
そんな組合長たちの姿を見て、ミルフィは嬉しそうに笑っている。いろいろと覚悟を決めた上で実行して、本当によかったと感じているのだ。
”大成功でよかったではないか、主よ”
「ええ、ピレシーが知恵を貸してくれたのも大きいですね」
”我は料理に関する知識しか与えられぬ。ここまでの印象を抱かせたという事は、主の人柄と覚悟があってこそだと思うぞ”
組合長たちの話す姿を見ながら、ミルフィはピレシーと今回の事を振り返っていた。
「正直、俺もひやひやしましたよ。いつミルフィ様が攻撃されるか心配でした」
「ふふっ、ありがとうございます、ピアズ」
ピアズが正直な気持ちを吐露すると、ミルフィは笑いながら労っていた。
「ミルフィさん、できる限り早く対策を講じますので、今しばらくお待ち下さい」
「はい、分かりました。すみません、私のわがままのためにいろいろと手を煩わせてしまって」
「いやはや、正体を聞いた時は驚いたが、できた嬢ちゃんで俺たちも驚いている。そんな嬢ちゃんだからこそ、俺たちも信じたくなったんだ。気に病む事はないぞ」
「ありがとうございます」
商会長二人の言葉に、ミルフィは素直に頭を下げていた。
二人の方は驚きのあまり、ついつい顔を見合わせてしまう。
なんといってもこの街は魔族と睨み合う最前線なのだ。そんな場所だというのに、まさか魔族サイドから平和的に侵略してくるとは思ってもみなかったのである。それはもう驚きしかなかった。
「ミルフィさん、これからもおいしい料理をよろしくお願いしますよ」
なんとも言えない空気になったところで、オーソンが優しくミルフィに声を掛けていた。
「はい。私がここまでやって来れたのは、オーソンさんのおかげですからね。おいしいものの探究と平和的な侵略、並行して頑張っちゃいますから」
「はははっ、侵略とは穏やかじゃないですね」
「えへへ」
オーソンに突っ込まれると、ミルフィはつい頭を擦りながら笑ってごまかしていた。
「よし、ピレシー。今回新たに手に入るようになった食材で、新しい料理を作りますよ。いいレシピを教えてちょうだい」
”心得た”
ミルフィがピレシーに話を振ると、頷くように体を傾けるピレシー。そして、ミルフィは商会長たちへと向き直る。
「それでは、私はこれにて失礼致します。今回は私たちにお付き合い頂き、本当にありがとうございました」
王女らしくきれいな挨拶をすると、ミルフィはピアズとピレシーと一緒に小走りに商会へと戻っていった。
その姿を見送った組合長たちは、思わずため息を吐いてしまう。
「やれやれ、幼いというのにしっかりとした子だな」
「あれでも、城ではかなり癇癪持ちだったそうですよ。城で出される食事に不満があったとかだそうで、かなり側近の方々は手を焼いたようです。ふふっ、あの姿からは想像がつきませんね」
「オーソン、お前だけいろいろと情報を持ちすぎていますね。あとであなたの商会でたっぷりお話を聞かせて頂きましょうか」
「お手柔らかに」
アテムが困ったような顔をしながらオーソンに迫ると、オーソンはにこやかに言葉を返していた。
そして、冒険者組合に到着してウォズと別れると、アテムはオーソンの営むレストランへと向かったのだった。
―――
こうして、魔王女ミルフィと人間たちとの間で行われた交渉はうまくいったようである。
これを機に、人間たちと魔族との間の関係は改善していくのかもしれない。
だが、これはあくまでもこの境界付近だけのは話だ。
この辺り一帯以外の人間も魔族も、この事をまだ知らないのである。
ミルフィの目指す食による世界征服を達成するには、まだまだ解決すべき課題はたくさんあるのだ。
はたして、これからも順調にミルフィの計画は進んでいくのだろうか。予断を許さない状況は、まだまだ続いているのだった。
オーソンと組合長たちは、魔界の真っただ中に出向いてきたというのに、かなり充実した表情をしていた。
「いやはや、世の中には知らない事が多かったな。そうだろう、アテム」
「まったくその通りですね、ウォズ」
組合長はそう言いながら、オーソンの方を見る。
「あなたもまったく人が悪い。このような情報を組合に隠しているとはね」
「ミルフィさんの立場を考えた上での判断です。黙っていた事は謝罪しますが、どうかご理解下さい」
アテムに窘められると、さすがにオーソンもその事は謝罪する。オーソンも商業組合の一員であるので、組合の意向に従う義務があるからだ。
しかし、ミルフィとの付き合いの中で、その立ち位置を見抜いていたオーソンは、全面的にミルフィのバックアップに回ったのだ。
「それにしても、魔界鳥とか食えたもんじゃないと思っていたが、あの料理には驚いたな」
「ええ、そうですね。魔界に近いこの街にとって、魔界鳥は意外となじみのある鳥ですからね。しかし、料理に薬草を使うとなると、いろいろとこちらとしても考えどころですね」
組合長たちがいろいろと考えている。
そんな組合長たちの姿を見て、ミルフィは嬉しそうに笑っている。いろいろと覚悟を決めた上で実行して、本当によかったと感じているのだ。
”大成功でよかったではないか、主よ”
「ええ、ピレシーが知恵を貸してくれたのも大きいですね」
”我は料理に関する知識しか与えられぬ。ここまでの印象を抱かせたという事は、主の人柄と覚悟があってこそだと思うぞ”
組合長たちの話す姿を見ながら、ミルフィはピレシーと今回の事を振り返っていた。
「正直、俺もひやひやしましたよ。いつミルフィ様が攻撃されるか心配でした」
「ふふっ、ありがとうございます、ピアズ」
ピアズが正直な気持ちを吐露すると、ミルフィは笑いながら労っていた。
「ミルフィさん、できる限り早く対策を講じますので、今しばらくお待ち下さい」
「はい、分かりました。すみません、私のわがままのためにいろいろと手を煩わせてしまって」
「いやはや、正体を聞いた時は驚いたが、できた嬢ちゃんで俺たちも驚いている。そんな嬢ちゃんだからこそ、俺たちも信じたくなったんだ。気に病む事はないぞ」
「ありがとうございます」
商会長二人の言葉に、ミルフィは素直に頭を下げていた。
二人の方は驚きのあまり、ついつい顔を見合わせてしまう。
なんといってもこの街は魔族と睨み合う最前線なのだ。そんな場所だというのに、まさか魔族サイドから平和的に侵略してくるとは思ってもみなかったのである。それはもう驚きしかなかった。
「ミルフィさん、これからもおいしい料理をよろしくお願いしますよ」
なんとも言えない空気になったところで、オーソンが優しくミルフィに声を掛けていた。
「はい。私がここまでやって来れたのは、オーソンさんのおかげですからね。おいしいものの探究と平和的な侵略、並行して頑張っちゃいますから」
「はははっ、侵略とは穏やかじゃないですね」
「えへへ」
オーソンに突っ込まれると、ミルフィはつい頭を擦りながら笑ってごまかしていた。
「よし、ピレシー。今回新たに手に入るようになった食材で、新しい料理を作りますよ。いいレシピを教えてちょうだい」
”心得た”
ミルフィがピレシーに話を振ると、頷くように体を傾けるピレシー。そして、ミルフィは商会長たちへと向き直る。
「それでは、私はこれにて失礼致します。今回は私たちにお付き合い頂き、本当にありがとうございました」
王女らしくきれいな挨拶をすると、ミルフィはピアズとピレシーと一緒に小走りに商会へと戻っていった。
その姿を見送った組合長たちは、思わずため息を吐いてしまう。
「やれやれ、幼いというのにしっかりとした子だな」
「あれでも、城ではかなり癇癪持ちだったそうですよ。城で出される食事に不満があったとかだそうで、かなり側近の方々は手を焼いたようです。ふふっ、あの姿からは想像がつきませんね」
「オーソン、お前だけいろいろと情報を持ちすぎていますね。あとであなたの商会でたっぷりお話を聞かせて頂きましょうか」
「お手柔らかに」
アテムが困ったような顔をしながらオーソンに迫ると、オーソンはにこやかに言葉を返していた。
そして、冒険者組合に到着してウォズと別れると、アテムはオーソンの営むレストランへと向かったのだった。
―――
こうして、魔王女ミルフィと人間たちとの間で行われた交渉はうまくいったようである。
これを機に、人間たちと魔族との間の関係は改善していくのかもしれない。
だが、これはあくまでもこの境界付近だけのは話だ。
この辺り一帯以外の人間も魔族も、この事をまだ知らないのである。
ミルフィの目指す食による世界征服を達成するには、まだまだ解決すべき課題はたくさんあるのだ。
はたして、これからも順調にミルフィの計画は進んでいくのだろうか。予断を許さない状況は、まだまだ続いているのだった。
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